3:前半戦終了直前の快挙
そんな前半戦終了間際。
パイレーツのエース・八雲藍が肘の違和感で戦線離脱。
また、二番手投手の十六夜咲夜も不調で、ロッキーズとパイレーツの差が縮まり始めていた。
そんな中、相変わらず3位争いを続けるフォーシーズンズは、前半戦最後の白玉楼ゾンビーズとの試合を迎えていた。
この日の先発は、エース・アリス・マーガトロイドの予定だったが、体調不良で急きょ、多々良小傘が先発に。
スタメンマスクはもちろんレティ・ホワイトロックであるのだが、調整十分とは言えない小傘を心配しながら、この日の試合を迎えた。
立ち上がり1回、先頭打者の少名針妙丸にフォアボールを与えるものの、2番犬走椛をライトフライに打ち取り、3番小野塚小町の2-0からの3球目に、ゾンビーズ・西行寺幽々子監督は針妙丸に盗塁を指示。
それを察知した四季監督に外して2塁刺しを指示されたレティは、外角高めに早めのストレートを要求。
小傘はそこに速球を投げ、すかさずレティは2塁送球し、針妙丸を刺した。
(…)
いつもと表情は変わらないが、盗塁刺しは気分がいい、とレティは口癖のように言っているが、この日は特に気分がよかったらしい。
その後の1回の小野塚小町が凡退、続く2回、3回、4回を3者凡退に打ち取り、4回裏にフォーシーズンズは3番・リリーホワイトがヒットで出塁すると、続く4番・風見幽香の2塁打の間にリリーホワイトが生還して1点先制、5番・堀川雷鼓のセカンドゴロの間に風見幽香は3塁へ。
1アウト3塁のチャンスに、6番・ヘカーティア・ラピスラズリのライトフライの間に風見幽香がタッチアップで生還し2点目を獲得した。
2点をもらった多々良小傘はここから奮闘。
5回、6回、7回と3者凡退を続け、ノーヒットノーランの文字を意識せざるを得なくなる。
そして8回を迎える。
この回の先頭打者、4番魂魄妖夢を打ち取った後、5番の霍青娥。
1-0から1球レフトへの大きなファールで1-1になった後の3球目。
レティの指示は高めのストレート。
小傘がセットポジションからその球を投げた。
(…あ、早い)
スピードがあまり早くなければ、打たれても外野フライ…と思って指示したのだが、小傘は先ほどのファールに動揺し早めの球を投げてしまった。
カキーン。
さすがのレティが青ざめる…いけない、ホームランコースのボールだ。
打った霍青娥もボールの行方を見ながら、ほぼホームランを確証したようで、1塁ベースを超えたところで速力を弱めた。
しかし…ライト方向にとんだボールを追いかけていたライトのチルノはフェンスによじ登り…。
パスン。
「取ったー!!!!!」
雄たけびのようにチルノが叫んだ。
ワァー!!!
チルノの目の前にいたフォーシーズンズファンは大喜び。
レフト側のゾンビーズファンすら、チルノのファインプレイを拍手で祝福した。
唯一、打った霍青娥だけは恥ずかしそうにベンチに戻っていた。
思えば、1回のレティの盗塁刺しが流れをフォーシーズンズに引き寄せ、そしてこの7回のチルノのファインプレイ、これがノーヒットノーランを決定的にしたといっていいだろう。
その後、6番・ルナサ・プリズムリバーにフォアボールを与えてしまうものの、7番宮古芳香凡退。
続く8回も三者凡退、9回もツーアウトを簡単にとり、最後の打者、代打・メディスン・メランコリーをライトフライに打ち取り、先ほどファインプレイのチルノがボールをガッチリキャッチして試合終了。
多々良小傘のノーヒットノーラン達成であった。
前半戦はそんなこんなで、
1 博麗パイレーツ 25試合 19勝5敗1分 .760 勝ち点58
2 守矢ロッキーズ 25試合 13勝10敗2分 .520 勝ち点41
3 命蓮寺テンプルズ 25試合 12勝11敗2分 .480 勝ち点38
4 幻想フォーシーズンズ 25試合 11勝12敗2分 .440 勝ち点35
5 永遠亭レッドクロス 25試合 8勝16敗1分 .320 勝ち点25
6 白玉楼ゾンビーズ 25試合 7勝16敗2分 .280 勝ち点23
という順位表となり、3位以下すべてが勝率5割を切る中、故障者が出たとはいえパイレーツの優位は変わっていない。
レティの同期でどうも頼りない多々良小傘がまさかの大活躍。
そして、チルノもそれをサポートする大活躍。
この二人の大活躍にレティも思わずにっこり。