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1章:正捕手 レティ・ホワイトロック

 2月に入り、幻想フォーシーズンズもキャンプ入りした。

 毎年、フォーシーズンズの主砲・風見幽香の出身地に近く、その功績をたたえて太陽の畑風見幽香スタジアムと命名された野球場を中心にキャンプを張るナインである。

 そしてそれは、キャンプに入って数日目のこと。

「レティさん」

「…あ、ハイ、監督」

 いつもの通り、ブルペンで多々良小傘のボールを受けていたレティ・ホワイトロックは、四季映姫監督に呼ばれた。

「小傘さんの様子はどう?」

 小傘、レティの若いバッテリーが一緒に練習するのを知っている四季映姫は、小傘の調子を尋ねる場合には必ずレティに聞いていた。

「あ、ええ、いい仕上がりです。

 真っ直ぐもカーブも、仕上がってきまして。

 後は…」

「後? 小傘さんのボールはその二種類では?」

「…ええ、実はスライダーを覚えてもらってます」

「あら、そうだったの。

 どうして?」

「ええ…」

 と、レティは少し言いよどんでから、小傘に聞こえないように答えた。

「…実は小傘、少し球威が落ちているように見えまして」

「それはよくないわね。

 まだ2年目というのに…」

「ええ、あの初登板でKOされて以降、直球のキレが少し悪いんですよ。

 カーブも決め球にはなりませんし…それで新しい決め球が必要かなと思いまして」

「…全く、小傘さんのことは本人よりもあなたに聞くほうが早いというのも考えものですね」

 ため息をつきながらも、少し嬉しそうな四季監督。

「それと…レティさん。

 今シーズンは、私、監督をメインに、選手としてはサブ的な役割に徹します」

「…と言いますと?」

 意図が分からず、レティは四季監督に聞き返した。

「もう…あなたを今シーズンの正捕手として使う、と言いたいのです。

 もちろん、開幕スタメンもあなたのつもりですから、けがなどないように」

「…えっと…あ、ハイ!

 すいません、わかりました!」

 その声を聴くと、あきれ顔をしていた四季監督が笑顔を見せた。

「なので…小傘さんだけでなく、皆さんのボールを受けてくださいね。

 今年のキャンプの目標は、これでお願いします」

「あ、ハイ!」

 そういってレティが監督に敬礼すると、小傘が近づいてきた。

「監督、なんだって?」

「あぁ、小傘…うん、今年、正捕手として期待してるって言われた…」

「あぁ、そういうこと…あーそうだよね、うん」

 少しすねたように声を出す小傘。

「あー、リグル」

「ハイ?」

 するとレティは隣で、エース・アリス・マーガトロイドの球を受けていたリグル・ナイトバグに声をかけた。

 リグル・ナイトバグは今年のドラフトでチームに入ってきたルーキーキャッチャーで、打撃を期待されている選手である。

「アリスさんの球、私が受けてもいいかな」

「え、あ、私は構わないですけど…」

 そういってリグルは不思議そうにアリスのところに行って一言二言話す。

 するとアリスはそれを聞いてレティに目配せをした。

「アリスさんもそれでよさそうですよ」

 そういってリグルはレティに声をかけた。

「よし、じゃぁ、小傘の球、受けてみてくれるかなリグル。

 小傘のストレートとカーブのキレを試してあげて」

「あ、わかりました! 小傘さん!!」

 そういってリグルは小傘に近づき、「小傘さん、私が受けます!!ストレートお願いします!」と元気に声をかけた。

 それを見届けると、レティはアリスに近づく。

「アリスさん…先ほど監督から、今シーズンの開幕捕手を予定しているといわれました。

 あまり昨シーズンはアリスさんとバッテリー組めてませんでしたし、少し投げてみてもらえませんか」

「いいわよ。

 そう…開幕スタメンを譲ったってことは…あなたが今年の正捕手候補なわけね。

 今年は頑張りましょうか!」

「ハイ!」 

 そういってアリスとレティは投球練習を始めた。

 

 そんなこんなでキャンプでは様々な投手の投球を受けたレティ。

 宿舎では同室の小傘の投球フォームの研究に付き合い、まさに野球三昧の1か月を過ごし、満足いくキャンプを締めくくることができた。

 

プロ野球といえばまずはキャンプです。

主人公のレティが二年目のシーズンという設定です。

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