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8:シーズン最終戦の死闘

いよいよ最終話です。

 

 第8章:シーズン最終戦

 

 すでに数試合前に3位が確定したフォーシーズンズが、ホームで最終戦を迎えることになった。

 迎える相手は帝王・博麗パイレーツ。

 しかし、博麗パイレーツは現在31勝16敗2分けで1位であるが、同じく31勝16敗3分けですべての日程を終えているゲーム差なしの2位につけているロッキーズとの優勝争いがこのゲームにまで影響している。

 この試合でパイレーツが勝てばパイレーツの優勝、フォーシーズンズが勝てばロッキーズの逆転優勝、そして引き分ければパイレーツVSロッキーズのプレーオフという、天下分け目の試合になっている。

 また、パイレーツの鬼人正邪が盗塁数でロッキーズの射命丸文と1個差で、最終戦で1盗塁を決めれば盗塁成功率の差で、2個決めれば個数でも盗塁王になるため、最終戦は積極的に走る可能性があった。

 しかしながら、現在153打席で規定打席に2打席足りないため、現在驚異の盗塁阻止率10割のレティが参考記録になってしまう。

 1盗塁をゆるしたところで、盗塁阻止率1位は揺るがないため鬼人正邪の積極盗塁という状況があったとしても四季映姫監督はレティをスタメンマスクで起用することにした。

 しかし、そんなレティはある理由から、鬼人正邪に盗塁をさせない決意を固めていた。

 

 というのも、レティが反感を持っているのは鬼人正邪の盗塁のやり方である。

 果敢に次の塁を責めるため盗塁企図数が多く、結果として盗塁成功率が下がるロッキーズの射命丸文に対し、相手キャッチャーやその場面を冷静に…というかレティからすれば相手を見下して、確実に決められる盗塁を企図する鬼人正邪は盗塁成功率が高いが、盗塁企図数でいえば射命丸文に大きく水をあけられている。

 レティとしてはその『上から目線』の盗塁が気に入らず、この今シーズン最後のパイレーツ戦での起用が決まったときに、たとえ負けても鬼人正邪に盗塁をさせないことに燃えていた。

「…なんか、怖いねレティ」

「…そんなことないでしょう」

 とはいうものの、普段冷静なレティに思わぬ気迫が漂っているため、盟友で今日の先発である多々良小傘だけがレティに声をかけてきた。

「…それより小傘。

 例の球、練習しておいてね」

「…あー、あれね…うん、たぶん大丈夫。

 だけどどうして?」

「…作戦があるの。

 その時に投げてもらうわ」

 不思議そうな小傘の顔に、レティは何も言わず練習を再開した。

 

 そんなレティの気迫を後押しするような出来事もあった。

 パイレーツが練習を終え、報道陣のインタビューを受けているニュースをレティが食堂で紅茶を飲みながら見ていた。

『監督、今日四番の博麗選手がスタメン落ちということですが?』

『ええ、どうやら練習で右ひじに違和感があったらしくてね。

 新人の経験も含めてスタメン落ちにしたの』

 八雲監督は余裕で、フォーシーズンズ『ごとき』、レティは主砲・博麗霊夢なしで勝てる、と言われているような気分になった。

『そして盗塁王を狙う、鬼人正邪選手です』

『どうも』

 そして八雲監督のインタビューが終わると、鬼人正邪のふてぶてしい姿が映った。

 気分が悪くなりそうだ、そう思ってレティが席を立とうとしたが、そのあとの鬼人正邪の声に、レティは立ちすくみ、テレビをにらんだ。

『霊夢がいなかろうが、今年3位だろうがフォーシーズンズが相手だしね。

 盗塁王と優勝は揺るがないでしょ』

 そう言ってニヤリとする鬼人正邪の姿に、レティは悪寒を覚え、そして改めて思った。

 コイツの盗塁王だけは、阻止してやる、と。

 そして、そう思ったのはそのテレビを一緒に見ていた小傘やスタメンの面々も同じであった。

 

 もちろん試合が始まると、『淑女たれ』を自認するパイレーツのこと。

 大事な試合であるため、前の試合でエース・八雲藍を温存していたのが効いたのか、非常に調子がいいピッチングを披露している。

 なお、4番には霧雨魔理沙、3番に比那名居天子、6番にルーミア、7番に初スタメンの橙というメンバーで試合を始めている。

 そして対するフォーシーズンズの先発は多々良小傘。

 パイレーツ戦では初マスクのレティが入った以外はベストメンバーでパイレーツを迎え撃つ。

 

 試合は1回、問題の鬼人正邪が打席に入るが、彼女の打率は決して高くない。

 しかし身長が比較的低いためフォアボールが多いことによって盗塁が生まれるのが特徴だった。

 したがって、コントロールのいいフォーシーズンズのピッチャーとは決して良くないというデータもある。

 そのようなこともあり、第一打席は見逃しの三振に倒れる。

 

 2回表に6番に入ったルーミアにヒットを打たれたものの、そのまま0点に抑える。

 その裏、フォーシーズンズは4番風見幽香凡退のあと、5番堀川雷鼓が2塁打で、6番ヘカーティア・ラピスラズリは三振に倒れるが、7番宇佐見菫子のレフト前ヒットで1点先制。

 今日はフォーシーズンズの応援席にそのファンに交じって応援するロッキーズファンも、大盛り上がりであった。

 

 3回表、二回目の鬼人正邪の打席、1アウトランナーなし。

 1-1からの3球目の3塁線を抜け、そのままレフトオーバーまで転がったヒットで出塁する。

 鬼人正邪の脚であれば余裕で2塁を狙える当たりであったが、記録はシングルヒット。

 無論盗塁狙いである。

 しかし2番フランドール・スカーレットは初球の高めのストレートを叩いてピッチャーフライに倒れ、2アウト1塁。

 そして3番比那名居天子の場面で、焦ったのかリードを多くとる鬼人正邪に、シーズン中あまりやらなかった多々良小傘が1塁に牽制球。

 牽制させるとは思っていなかったのか、鬼人正邪はこれに後れを取って牽制死。

 フォーシーズンズ、およびパイレーツファンからは大拍手、そして淑女を自認するパイレーツファンからは鬼人正邪へのブーイングが飛ぶ有様。

 さすがに、鬼人正邪にも危機感が芽生えたという。

 なお7回に鬼人正邪の第3打席を向かえるが、出塁すらできない焦りからか、完全なボール球に手を出し空振り三振に倒れている。

 

 その後、5回に、4番に入った霧雨魔理沙がホームランを放ち、同点詰め寄られるが、小傘も冷静に対処し後続を断ち切る。

 そして7回裏。

 それまで2安打1失点に抑え、好投していたパイレーツの八雲藍だったが、なんと8番・レティホワイトロックが、内角高めに甘く入った球を叩いてホームラン。

 今シーズン5本目のホームランを、最終のパイレーツ戦で放ち、貴重な勝ち越しの2点目に、フォーシーズンズ応援席は狂喜乱舞。

(…バーカ)

 1塁を回ったところで、茫然としているライトの鬼人正邪を一瞥し、心の中で悪態をつき、ダイヤモンドを一周する。

 

 そして9回表。

 鬼人正邪に第4打席が回ってきた。

 しかし多々良小傘に疲れが出たのか、それとも勝利することへの緊張か。

 低めに投げたカーブがストライクゾーンに入らず、フォアボール。

 鬼人正邪はニヤリと哂って1塁に向かった。

 続く2番・フランドールスカーレット。

 1球目、甘く入ったストレートを叩かれレフト前ヒットで、鬼人正邪は2塁へ。

 ここまでくると目が血走っているのが分かった…せめて1盗塁決めなければ、と。

 冷静さを失ってしまえば、とレティは自分の勝ちを確信する。

 3番・比那名居天子はファーストフライに倒れ、4番霧雨魔理沙との勝負を避けて敬遠。

 1アウト満塁、5番河城にとりの場面。

 レティは、鬼人正邪が河城にとりがヒットで生還するか、自身がホームスチールを決めなければ盗塁王になれないと考えているはずと考えた。

 1球目、ストレートのストライク。

 そして鬼人正邪の性格上、決め手があれば、他人を信用せずホームスチールで盗塁王を決めることを考えるだろう、と。

 2球目、内角高めのカーブをファウル。

 そして3球目、小傘に指示を出す。

(…小傘、頼む)

 指示は、外角高めのスライダー…そう小傘の隠し玉である。

 小傘は心配そうに一度首を振った。

 しかしレティは指示を変えない。

 もう一度首を振る小傘。

 そしてもう一度同じスライダーを要求…少しレティがイラついていた。

 仕方なさげに目を閉じて首を縦に振る小傘。

 セットポジションから、小傘は外角に大きくそれる球を投げた。

 それを見てニヤリとした鬼人正邪は、3塁を離れた。

 しかし小傘の球は大きくスライドし、そのままレティのミットに収まった。

 その様子に、鬼人正邪の顔が青ざめる。

(…)

 初めてレティが、見せた、嘲笑…のちに鬼人正邪は一瞬寒気を感じたと語る。

 滑り込んだ鬼人正邪に、レティがミットを当てた。

「…アウト!!!!」

 主審の声がするまで、一瞬球場が静まり返ったような錯覚をレティは覚えた。

 ワァー!!!!!

 キャー!!!!!

 レフト側の悲鳴と、ライト側のひときわ大きな歓声。

(…ナイスだ、小傘)

 心底嬉しそうにレティは、小傘にボールを返す。

 ふとパイレーツベンチを見ると、鬼人正邪が手袋を外して力任せに投げているのが見えた。

 パイレーツナインは、そんな鬼人正邪に声をかけようとしなかった。

 それは…荒れている鬼人正邪に触らないようにしていたのか、それとも鬼人正邪自身の性格で普段から慰められていないのか。

 そんな正邪を見て、一瞬だけ彼女を一瞬だけ不憫に思うレティであった。

 そして小傘はその一部始終を見て、動揺している河城にとりに対し、真ん中高めのストレートを投げる。

 ボールは力なくフライが上がった。

 そしてそれはセカンドの名手・秋穣子の真上にあり…そのまま彼女のグラブに収まる。

 わぁー!!!!!!

 ゲームセット、この瞬間に、今シーズンの幻想郷プロ野球の全日程が終了した。

 

今日はこの後のエピローグも追加します。

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