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欠落者  作者: Luna
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私の感情は欠落している


きっと【ちゃんとした大人】は子供みたいなことを言っていると嘲笑うだろう


これは私の人生と思考の世界だーーーー








初めて違和感を感じたのは忘れもしない

幼稚園に通っていた頃のこと


朝の体操を当たり前の様にみんなと行っていた

そんなある日



【なんでこんなことをしているのだろう】



急に浮かんできた言葉に動けなくなる

先生に声をかけられ、我に返る


当たり前のように行っていたことが当たり前だと思えなくなった瞬間だった

翌日から【当たり前】がわからない自分が怖くなり朝の体操の時間が恐怖の時間に変わった


ませていたのもあるのだろう

周りの感覚についていけない

先生たちの困った顔

なぜ困っているのか理解できなかった




小学校に上がる前に引っ越しが決まった

父の転勤ということになっていたが本当は父の躁鬱が理由で引っ越したのは後から知った

父方の祖父母に助けを求めるため、隣に引っ越そうと母が考えたのだろう


何をするにも【楽しい】がわからない

ただあるのは原因のわからない苛つきのみ

馴染めない私を勝手な自己主張が邪魔をする

思い通りにいかない意見の言えない子

周りの楽しそうな雰囲気が不可解だった


ただ1人、同じクラスに浮いている男の子がいた

悪戯好きで最初は嫌いだった初恋相手

両思いだったが所詮は小学生

周りが茶化すので呆気なく終わり、その後も両思いだったのだろうが思いを告げることなく男の子は転校していった

成人してから出会っていたら今でも一緒にいたのだろうかと考えたこともあったが、今考えるとそもそもあれが【好き】だったのかさえ疑問だ

浮いている者同士、惹かれるものがあったのだろう




小学校高学年に入り、父の躁鬱が幼い私でもわかるほどに症状が現れ始めた

仕事に行かず寝ているかキレているかのどちらかだ

野球が好きだった父は応援しているチームが負けるとよく物を投げた

機嫌を取りたかった私は野球のルールを覚えた

野球に興味を持つことはなく、ただ怒鳴り声を聞きたくないがためにとった作業に過ぎなかった




ある日、夜中に目が覚め、父の声が聞こえてきた



『あいつは役に立たないけど、野球のことはよく覚える』



今も脳にこびりついて離れない父の言葉だ

あの頃から多少なりともあった感情は消失したのだと思う

ほとんど笑わなくなった






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