揺りかご
咲き誇る姿に想いを馳せる君。
テーブルの端っこに添えられた、うたた寝の花瓶。
華奢な首をもたげるように、目覚めの時を待っている。
今は沈黙、いずれおはようと言おう。
きっと君より先に。
君が昨日そうしたように、日射しの道を探してる。
待ちわびた休息の予定は頼りない揺りかごに乗せて、躊躇い続けるのは僕の声。
照れ臭い挨拶は、触れる指先で一瞬で。
返事を待つその先で、君はいつも振り向いてくれる。
喉に詰まった恥じらいは、句読点の代わりの咳払いで楽になる。
君が寄り添う日向にそっと、臆病な指先だけど触れてみた。
咲き誇る姿を、堪えた涙に浮かべて。
落ちる花びらを見届ける、そんなつもりで沈黙に寄り添っていた。
君の優しさの欠片を見つけられるから、僕はここにいる。
息を飲む美しさは欲しくない。
目を奪われる仕草は欲しくない。
君が昨日そうしたように、陽の差す道を歩いていく。
重くなった揺りかごを持って、君が振り向く先で待っている。
譲り合う静けさも、そろそろ終わりにして。
うたた寝する僕、揺りかごに眠る君。
休息と目覚めが混ざり合う、僕と君の沈黙。
躊躇うように咲いた花が、僕と君の間で揺れている。