81.再生
「えっ……俺、生きてるっていうのか? 何故……」
「「「わああぁっ!」」」
わけがわからなさそうに自身の体を見る男、フェルナンド。俺が生き返らせたことで、ライレルたちを筆頭に村人たちから歓声が沸き上がっていた。
「フェルナンド! オルド様が蘇らせてくれたんだよ!」
「ええっ……!」
ライレルの言葉で、フェルナンドがはっとした顔で俺のほうを見やる。
「フェルナンド、村人たちのために盾になってよく頑張ってくれたが、まだ死ぬには惜しい人材だ。これからも村人たちのことを頼む」
「あ……ありがたき幸せ、オルド様……」
ひざまずくフェルナンドの目尻が光る。ダラスという少年の記憶を取り戻してやる前にほかにもやることがあって、その一つが死んだ村人たちの蘇生だ。
というわけで彼を始めとして現在進行形で生き返らせているわけだが、そのうちの一人はやたらと怯えていて、精神がやられている感じだったのでそれを逆にしてやった上で、過去の嫌な記憶も取り除いてやった。
もちろんこれは自己申告で、戦いの厳しさを教訓として胸に留めておきたいという村人の意向も優先してやる格好となった。
「さあ、待たせたな、ダラス。次はお前の番だ」
「う、うん……」
ダラスはここに来て不安そうな一面も覗かせている。多分、とんでもないものを見てしまっているんじゃないかっていう自覚というか、予感めいたものがあるんじゃないかな。
「大丈夫だ、不安を取り除いてやる」
「あっ……」
ダラスの顔が晴れやかなものに変わった。ライレルによるとこの子の両親の仲は非常に悪いらしく、ただでさえ重いものを背負ってるわけだしなるべく軽くしてやりたかったんだ。
「さあ、記憶を戻すぞ?」
「うんっ!」
やり方は簡単だ。この子の失った記憶に関して、失ってない状態と【逆転】させてやればいい。
「……あ、あ……」
ダラスの顔が見る見る驚きの色で彩られていく。
「お、思い出した、全部……」
「大丈夫か、ダラス?」
「う、うん、大丈夫。すぐ落ち着いたよ。母さんと父さんの喧嘩で慣れてるから」
「……」
悲しいがたくましく育ったもんだ。
「ゆっくりでいいから、何があったか詳しく話してほしい」
「うん……俺、父さんと母さんが喧嘩中にいたたまれなくなって家を飛び出して……でも、行くところなんてなくてどうしようか途方に暮れてたら……何かいつもと様子が違うって気付いたんだ」
「……いつもと様子が違う?」
「うん。その日は何かイベントとかもないはずなのに、城の周りに兵士が沢山いてすっごく物々しくて、何か起こるんじゃないかって町の人が不安そうに噂してて……」
「噂?」
「捕まえた狂戦士についての話だった。なんにも悪いことしてないのに狂戦士の兄妹が捕えられてて、これからどっちかが処刑されるんじゃないかって。それでこっそり忍び込んだんだ」
「ふむふむ……って、そんな厳戒態勢なのによく忍び込めたな」
「俺、家にいるより町をぶらぶらしてることのほうが多いからさ、果物屋の荷車が城の中に入っていく時間帯とかも知ってて、その箱の中に入ったんだ」
「なるほど……」
「それで俺、狂戦士の処刑シーンを見ちゃったんだ。ギロチンの前で、ヴァイドっていう男が言ってた。『俺が死ぬことで妹の命が助かるなら喜んで死ぬ』って……」
「……」
「なんか理不尽で可哀想で……俺しばらく見入ってたら兵士の一人に見つかって、急いで町の中まで逃げたんだけど、家に帰る前に捕まえられちゃって……そこで記憶が途切れたんだ」
「よく頑張って話してくれた」
俺はダラスの肩をポンと叩いた。きっと、この少年はそこまで逃げたからこそ助かったんだろう。町の中に逃げ込めば一般人から目撃されることも多くなるから、口封じのために子供の命を奪うわけにもいかない。それでなんらかの方法で記憶を消したんじゃないかな。
……って、待てよ? その狂戦士の妹って、まさか……。
俺は気付けばボロ小屋のほうを見ていた。狂戦士の一族なんてそうそういないだろうし、兄の存在がいることも話に出た人物と共通している。ヴァイドという男の妹があの少女であることはほぼ間違いないな……。




