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66.果たし合い


「ンッ、ベイベー……戦わずに降参でも、俺は一向にかまわないぜ……?」

「……残念だけど、今の俺は以前の俺とは違う。そっちこそ降参したほうがいいよ」


 両手に握り拳を作ったエルナドの目は、剣を構えたガリクに対して鋭さを増すばかりであった。


「なるほど……ンッ、素人でしかも素手のくせに口はそこそこ達者みたいだね、ベイベー!」


 先に動いたのはガリクのほうであった。しかしあくまでも攻撃する素振りのみでフェイントだけだったが、エルナドは微動だにしない。


「もうちょっと近付いてくれなきゃ困るなあ。【無効化】できないじゃないかぁ……」

「フッ……何を【無効化】するつもりか知らないが、そう易々とは引っ掛からないのさ……チッチッチ……」


 既にスキル使いと多くやり合うことで距離感を掴んでいた二人は、中々その射程距離まで入らなかった。特にエルナドの【無効化】スキルは強力なことで知られていたので、ガリクほどの実力者でも安易に懐に入るような行動は致命傷になることを意味していたのである。


「ねえガリクって人、こっちへ来ないの? 見た感じ、相当な力を持ってるってオーラ出してたけど……実は大したことないんじゃ……?」

「フッ……ベイベー、その手の安い挑発には乗らないよっ。やっぱり、有名な怖がりやさんなだけあって、口は達者みたいだねえ、ベイベー?」

「あっそ。ただの言い訳に聞こえるけど?」

「ンッ……いつまで強がりが続くかなぁ……?」


 行くと見せかけて戻るというフェイントを繰り返すガリク。


「昔から窮鼠猫を噛むっていうよね……!?」

「はっ……」


 まさにガリクが飛び出すタイミングで、エルナドが飛び掛かってきたのであった……。




 ◇ ◇ ◇




「いつでもかかってきな。あたしのように、後悔だけはしないようにね……」


 大股開きで右足を前に出し、左手の拳を地面につけて低く構えるルディア。


「……後悔? 後悔なんてしないよ。絶対僕が勝つから……」


 対照的に、ライレルはあたかも普通に立っているだけであるかのような、力みのまったくない姿勢で剣を構えていた。


「そうそう、あたしが親の仇だと思って、捻り潰してやる気で来な。それであたしも心置きなく、全力で自分の孫娘くらいのあんたをぶっ潰せるってもんさ……うるぁっ!」


 ルディアが左の拳を地面に叩きつける。


「うっ……!?」


 土埃とともに向かってきたルディアは、まさに爆発的なスピードであった。剣術を極めたライレルであってもかわすのが精一杯であり、攻撃する余裕さえなかったのである。


「……おや、大したもんだね。あたしの噴火拳をかわしたやつはこれで二人目だよ。そのうちの一人はあたしの師匠さ。もう大分前に亡くなっちまってるけどねえ……」


「……はぁ、はぁ……」


 ライレルの息遣いはとても荒く、その顔は見る見る青くなっていた。


(……今のは、避けるだけで攻撃しなくて正解だった。もし反撃してたら充分な距離を取れず、【半減化】スキルを使われてた……)

「……ペッ、ペッ……」


 呆然とするライレルを尻目に、ルディアが自分の両手に唾を吐きかけて握りしめる。


「これはあたしの一種のルーティンみたいなもんでねえ。拳を少しでも重くするとか、そんなケチなもんじゃないよ。次は絶対当ててやるっていう思いを込めるのさ。これをやって避けられたやつなんて、未だかつて誰もいやしないから覚悟しな……」

「……」


 ライレルの表情に一層危機感が募っていく。


(どうしよう……。ルディアのスピードがあまりにも速すぎる。次は噴火拳を避けられるかどうかもわからないし、もし避けたとしても前より距離を縮められて【半減化】スキルを食らってしまうのは目に見えてる。そうなったら、今度こそ本当に勝ち目はなくなる……)

「おやおや、ぼんやりしちゃってどうしたんだい、小娘。悪魔の申し子とやらもさっきのですっかり意気消沈かい? 来ないならまたあたしのほうから行かせてもらうよ……」


 またしてもルディアが姿勢を低くして左手を地面につける姿勢になる。


(オルド様……お願い……。僕に、僕たちに……もう一度だけでいいからあなたの偉大な力を貸してほしい……。どうか、この村へ届けてほしいんだ……)


 伝説の拳聖を前に、ライレルは藁にも縋るような心境であった……。

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