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54.玉に瑕


「出てこいっ! ここにいるのはわかっているのだーっ!」


 王都の一角にある豪邸前、兵士たちの先頭に立って血眼で呼びかけたのは、前回の任務失敗でクビがかかっているパドルフ少佐であった。


「出てこないなら引き摺ってでも連れていくぞ!?」


 しかしいくら呼びかけても応答はなく、少佐が鼻を鳴らして槍を高々と掲げる。


「ふんっ! 全軍強行突破だっ! これは王命であるっ!」

「「「「「おおおっ!」」」」」


 普段は閑静な住宅街、兵士たちが大挙して突入する様はとにかく人目を引き、野次馬が集まるのには充分だった。


「――クンクン……ここが怪しいです」

「しょ、少佐ぁ! いました! ここに!」

「何い!?」


 犬の亜人を連れた兵士が叫び、パドルフが鼻息荒く向かっていくと、床の一部が開いて地下室につながっており、そこに置かれたテーブルの下で青年がうずくまっていた。彼こそ、【無効化】スキルを持つ臆病な男エルナドであった。


「おい、大人しく自分から出てこい! お前が最高峰スキルである【無効化】の所有者エルナドであることはわかっているのだからなっ!」

「……み、見逃してくれよおぉ……。俺、怖いんだ。あの賢者にまた逆らったら、今度こそ殺される……。そういう目をしてた。だから……」

「バカモンッ! ならば【無効化】で臆病な心を消せばよかろうにっ!」

「……きょ、恐怖心は俺の友達さ。兵士にはわからないだろうけど、これを【無効化】しなかったからこそ、今まで危険を回避して生きてこられたんだ……」

「……」


 しばらく周りの兵士とともにぽかんとした表情のパドルフ少佐だったが、まもなく額に青筋を浮かせながら見る見る顔を紅潮させていった。


「バッカモン!」

「ひっ……」

「お前の屁理屈など知るか! これは王命である! 引き摺ってでも――」

「――お待ちっ!」


 そこに颯爽と現れたのは、この青年と同じく有用なスキルの所有者として召喚された【半減化】スキル持ちのおばさんで、名をルディアといった。いつも以上の厚化粧と強面を振り撒き、周りを黙らせるほどの威圧感を放っていた。


「ここはあたしに任せとくれよ」

「ル、ルディアさん、ここはねえ、あなたの出番では――」

「――お黙り! あんたの残り少ない髪と〇×△#のサイズを半分にしてやろうか!」

「……しょ、しょれだけはどうかご勘弁をっ……」

「だったら大人しく引っ込んでな!」

「は、はひっ……」


 涙目で引き下がるパドルフ少佐。


「あたしがなんとかしてやるから黙ってそこで見てりゃいいのさ!」


 腕をまくってテーブルを蹴り上げるルディア。


「あひいっ……!」

「ったく、なっさけないねえ! そんなに凄い能力があるっていうのに。この前もそうだったけど、睨まれたくらいで大の男が怯むんじゃないよっ!」

「うぐっ……?」


 バチンと頬を叩かれるエルナド。


「……あれ?」


 その顔には、先程まであったような恐怖の色は薄くなっていた。


「あんたの友達だっていう恐怖心を、あたしの【半減化】スキルで大人しくしてやったのさ。これなら友達がいなくなるわけじゃないし、恐怖心も減ったしでいいこと尽くめだろ! 他人にしか使えないのが玉に瑕だけどねえ。とにかく、ぐずぐずせずにさっさとついてくるんだよ!」

「……あ、ありがとう、おばさん……」

「おばさんじゃなくてルディアって呼んどくれよ!」

「うん。ありがとう、ルディア……」

「……」


 青年エルナドに名前を呼ばれ、頬を赤らめるルディア。


「あ、あんたってよく見たらいい男だねっ! 度胸さえ磨けば変わるよ!」

「そ、そうかな?」

「もちろんさ。それにあたしの好みでもあるしねえ……」

「……え?」

「ウフンッ……」

「……」


 ルディアに顔を近付けられ、ウィンクされて気絶するエルナド。これにはパドルフ少佐も目を丸くするばかりだった。


「ぬ、ぬうう。恐怖心を【半減化】されたというのに、なんという威力――」

「――かっ!」

「お……おごっ……」


 急所の防御力を【半減化】された上に蹴られ、パドルフもまもなく気絶した。


「まったく、しょうがないねえ男どもは! 気絶時間も半減しないといけないね!」


 ルディアが後退した兵士たちに向かってウィンクした結果、みな一様に具合が悪そうに口を押さえるのであった……。

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