49.誓い
「ひ、被追放者の村だと……それは本当なのか!?」
王城、謁見の間にて、大臣からの報告に対し王が目を剥いて立ち上がる。
「はい、王様。確かでございます。賢者オルドが村長となり、そこに各地から追放された者たちを集めているとか……」
「なるほど、逆賊どもの巣窟というわけか! オルドのほかにどんなやつらが関わっているのだ……?」
「それが、大変言いにくいのですが……大司教のユリウスどのもいるとか……」
「……な、なななっ……と、ということはだ……もしや、やつがオルドにスキルを付与してしまったというのか……?」
「そのようで。しかもそれが【逆転】という、人に関するものであればなんでも逆にしてしまうという恐ろしい効果だそうで……」
「うぬうぅう……。なるほど、それで魔法力がないにもかかわらずアレクやロクリアに精神が病むほどの嫌がらせができたというわけか。これで全ての謎が解けたわい……コホッ、コホッ……」
玉座に座って苦し気に咳き込む王だったが、その表情には明らかに艶が戻っていた。
「王様、このようなときこそお休みになられては――」
「――バカを抜かすな、大臣! このようなときだからこそ手綱を緩めてはならんのだ!」
「……は、はあ。それで、これからどうするおつもりで……?」
「決まっておろう。潰すのだっ!」
「……し、しかし、中には一般市民も……」
「逆賊オルドが作った村だ。そのような村へ行く不届き者は全員逆賊とみなすべきであろう。投降してきた者は牢獄、そうでない者は誰であろうとただちに殺してしまえっ!」
「……ユリウスどのもでございますか?」
「当然……あ、待て。できればやつは生きたまま捕え、火あぶりの刑に処するのだ!」
「御意……」
大臣から王命を賜った伝令が立ち去り、宙を掴む仕草をした王の口元には薄らと笑みが滲んでいた。
(オルドめ……平民の分際で小癪な真似をしおってからに……。だが、お前のいない村などわしがひとひねりにしてくれようぞ……)
◇ ◇ ◇
「ラ、ラ、ライレル様あぁっ! 大変なことがっ! どけ! そこをどくんだ!」
「いてっ!」
「おい押すなよ!」
「なんだなんだ!?」
被追放者の村にて、混んだカフェの奥へ強引に押し分けるように入ってきたのは、ライレルの一番弟子だと自称するガリクであった。
「……はぁ、はぁ……」
「ど、どうしたんでしゅ?」
「どうしたの?」
ガリクのあまりの慌てぶりに、幼女店主のマチと最強剣士の少女ライレルが呆然とする。
「お……王都方面に不穏な動きがあると噂になっております……」
「ふ、不穏な動きでしゅか……?」
「どういうこと? ガリク。ま、まさか兵士がこっちへ来るとか……?」
「……はい。ほぼ間違いないかと。どうやらここが逆賊の村だとみなされているみたいで、早くも逃げ惑う者の姿も……」
「困りまちた……。ライレルしゃん、オルドしゃまがいないのにどうしましゅか……」
マチが不安そうにライレルの足に抱き付く。
「大丈夫。僕が絶対マチちゃんやこの村のみんなを守ってみせるよ。ガリクを除いて……」
「そ、そんな。ライレル様、俺も守って――」
「――ダーメッ」
「……おほぉっ。いいっ。快感っ……!」
ライレルに即座に否定されて体をくねらせるガリク。その不気味さは周りの者がみな白い目を向けるほどであった。
「……はあ。マチちゃん、ああいうガリクみたいな不審者には絶対関わっちゃダメだよ?」
「うんっ。見かけたらぁ、ライレルしゃまかオルドしゃまに通報するねー」
「……お、おほっ。俺、一応村人なのに、一番弟子なのに通報されちゃうっ。これぞ村八分プレイッ……!」
「さ、ガリクみたいな変態は放置して、みんなを安全な場所まで避難させよう。兵士たちは近くにある迷いの森を迂回しなきゃいけないから時間は稼げる!」
「「「おおーっ!」」」
カフェには多くの弟子が集まっており、師匠であるライレルに対して右手と大声を上げることで呼応してみせた。
(オルド様、見てて……。未来の花嫁である僕が、必ずあなたの作ったこの尊い村やみんなを守ってみせるからね。ガリク以外……)
「ぬほおっ……?」
ガリクの頬を思い切りつねりつつ、ライレルは恍惚とした表情を浮かべながら心の中でそう固く誓うのだった。




