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40.暇


「ま、まさかあの勇者パーティー様からの依頼だなんて……。会えて本当に光栄っす……」


 遡ること数時間前、エスティルとマゼッタの前には感激した様子の冒険者風の男がいた。


 マゼッタが転送魔法で単身王都へ戻り、冒険者ギルドに破格の報酬で依頼の広告を貼ると、それに釣られて広場にやってきた男をこのエイゼニルの町まで連れてきたというわけだ。


「お前なら誰にもバレずに筆跡を真似できるのだな?」

「へい、もちろんっすよ」

「相手には鑑定士や隠れた力を見出すシスターもいますけど、大丈夫ですかぁ?」

「へい、そりゃもう! ぜってえバレねえと思いやす。あっしには【模倣】っていうスキルがありやして……スキルとか最高クラスの剣術、魔法を真似するとかは無理っすけど、それ以外のことなら大体は大丈夫だと思いやすし、筆跡くらいならお手のものっす」

「それならいい。ではこれを頼んだ」


 オルドからの手紙、それに白紙とペンを渡すエスティル。


「これから自分が言うことをその白紙に書いてほしい。この手紙と同じ筆跡でな……」

「……こ、これって……結構ヤバイやつっすよね……?」


 手紙の内容に対して危険を感じたのか、見る見る青ざめていく男。


「お、おいら、金より命のほうが大事かなあ……なんて……へへっ……」

「お前は何も考えなくていい。マゼッタ、あれを」

「はいですぅ」


 金貨がぎっしりと詰まった小袋を男に握らせるマゼッタ。中身を見た男の目は、今にも飛び出さんばかりに見開かれていた。


「……こ、こんなに……!? いやー、破格とは聞いてたけど想像以上っす……」

「で、やるのか?」

「やるんですかぁ?」

「や、やりますっ! 是非やりますとも!」

「「……」」


 エスティルとマゼッタは顔を見合わせ、にんまりと邪な笑みを浮かべるのだった。男は言われた通りに手紙を書いたあと、二度と王都に戻ることはなかった……。




 ◇ ◇ ◇




「――と、こういうわけだ、オルドよ」

「なのです、オルド様」

「なるほどなあ……よくもまあそんな小賢しい真似をする暇があるもんだ……」


 フェリルとクオンが呼び出された日の夜、俺はこっそり二人に会っていた。


 あいつらにどういう口説き方をされたのか知るためだが、実際に聞くと本当によくやっていると感心してしまう。おそらく俺の筆跡を真似て偽の手紙を書いたやつはもうこの世に存在してないだろう。


「……で、どうだ? その証拠とやらであいつらの話を信じたか?」

「グルルゥ……オルドよ、我が容易に欺かれると思ったら大間違いだ」

「ウミュァア、クオンもですよ」

「そうか。さすがは伝説の化け物だな」

「しかし、我々でなければ信じたかもしれない」

「クオンもそう思います」

「えっ……」


 二人の言葉は割と心臓に悪いものだった。


「おいおい……そんなに俺の筆跡に似てたのか?」

「うむ。我は匂いでなんとか判断できたが、あれは寸分狂いもなくオルドの筆跡であった。仮に実際の鑑定士でも本物だと判定していたであろう……」

「クオンも、文字から溢れ出る不幸の臭いですぐ偽物だとわかりましたが、それがなかったらショックのあまり森へ帰ったかもしれません……」

「……なるほど。そこまで精度が高いなら個人の技術というよりスキルによるものだったのかもな。ま、あいつらもよくこんなことを思いついたもんだが、相手が悪かったってことだろう」

「うむ」

「ウミュッ」


 まさか、フェンリルと九尾の狐が人に化けてるなんて思いもしないだろうしな。それも俺の仲間として。


「とりあえず、フェリルたちはあの手紙に騙されたってことにして話を進めていくか。そっちのほうが面白そうだし」

「……わかった。では、次はオルドよ、そなたの番だ」

「ん?」

「オルド様がどんな遊びをするのか知りたいです」

「まさか忘れたとは言わせぬぞ?」

「あぁ……それなら、これからすぐにわかるからもう少しの辛抱だ」

「「……」」

「そんなにいじけるなって。よしよし……」

「グルルゥ……」

「ウミュゥ……」


【逆転】スキルを使う必要もなく、撫でたらすぐに二人の不満も収まったみたいだ。偉く安いもんだが、これぞ正真正銘俺のペットになったってことだな。

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