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37.熱視線


 バルドリア地方にほど近い場所にあるエイゼニルの町は、崩れた建物や食い荒らされた住民たちの腐乱死体で溢れ返っていたが、我が物顔で占領していたモンスターは全ていなくなっていた。


「……おかしい……遠目ではモンスターで溢れ返っていたはずなのに、自分たちが来たときには全部消えていて何もせずに終わってしまうなど……」

「……こんなの考えられませんわ。絶対おかしいですぅ……」


 ここを訪れた勇者パーティーのうち、戦士エスティルと魔術師マゼッタは望んでいるにもかかわらず未だにモンスターと戦うことができずにいたため不満を覚えていた。


 パーティーは三つのグループに分かれてしばらく休憩していたわけだが、彼女たちの疑惑に満ちた視線は自ずとオルドたちのほうに向けられるのだった。


「……マゼッタ、あのフェリルとクオンとかいう新人の二人が怪しいとは思わないか?」

「確かに……オルドに何か吹き込まれて妨害してるかもですねぇ……」

「……このままだと、ロクリアとアレクが元に戻ってもあいつらのせいで魔王退治後にオルドを殺せなくなる可能性がありそうだぞ……」

「しかも鑑定士だから、狂った振りをしてたらバレちゃうかもですぅ……」

「そ、それだ、マゼッタ。このままだと自分たちの計画が水の泡だ。やつらをなんとかして味方に引き込まないか?」

「ですねぇ。もしダメなら……」

「……そのときは、事故に見せかけて退場してもらうまでだ」

「でも、エスティル。どうやってこっちに引き込むつもりなんですぅ?」

「……マゼッタ、声が大きい」

「大丈夫ですよぉ、距離がありますし……」

「一応だ。耳を貸せ」


 マゼッタに耳打ちをするエスティル。まもなく、二人の顔にはなんとも嫌らしい笑みが浮かぶのだった……。




 ◇ ◇ ◇




「――ということだ、オルドよ」

「こういうわけです、オルド様」

「なるほどな……」


 耳がいい二人からエスティルたちの会話内容を聞いたわけだが、あまり驚きはなかった。腹黒いやつらが俺を陥れようとするのは当然のことだからな。


「ただ、耳打ちの内容は聞こえなかった」

「クオンもです」

「いや、それだけで充分だ。元に戻っても狂った振りをして俺を騙そうとしていたってことがな」

「グルルァ……まったく、とんでもない連中であるな」

「ウミュァア、不幸の臭いがします。あの二人のように……」


 クオンがどこを指差したかと思ったら、ロクリアとアレクが楽しそうに地面を掘って遊んでいた場所だった。今では首以外埋められて動けなくなったアレクの顔をロクリアが何か喚きながらひたすらビンタしているだけに見えるが……。


 あいつらみたいにただ単に幸せではない状態か、あるいは厄介事に巻き込まれる不吉さか……不幸の見た目は違えど、中身は同じだから深くは関わりたくないことに変わりない。


「それで、オルドよ。どうするのだ?」

「どうしますか? オルド様」

「ああ、軽く遊んでやるだけだよ」


 俺は二人に向かって目配せする。


「遊ぶ? 何をするつもりなのだ?」

「つもりですか?」

「あとのお楽しみだ」

「「……」」


 不服そうなフェリルとクオンの頭を撫でてやる。


「グ……グルルゥン……みょ、妙だ。何かが蕩けそうだ……」

「ウ、ウミュァアンッ……クオンもです。何かふわふわします……」

「……」


 もうこれ完全に俺のペットと化しちゃってるな……。


「はい、お手っ」

「グルルァ」

「ウミュァ」


 二人にお手まで覚えさせた。人間同士がやる握手の上位版として。


「エスティルとマゼッタがお前たちをどう口説き落としにかかってくるのか楽しみだな」

「それもだが、我はオルドの言う遊びというのが一番の楽しみである……」

「クオンもです……」

「……」


 なんだか二人の視線がいつもより熱い。ペットとしてホットな状態にさせすぎちゃったかな……? まあいいや、これならどんな手段を使われようとも大丈夫だろうし……。


 今はそれより、透明な状態でずっと追ってくる謎の人物のほうが気になる。姿だけでなく、音や存在感さえも意図的に隠しているのがわかるのだ。


 この魔法力を以てしてもほんの僅かしか輪郭を感じ取れないとは、やはりスキルか何かだろうか。一体どれだけ恐ろしい面をしてるんだろうな。俺は鬼の形相をしたロクリアの双眸を思い浮かべていた……。

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