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12.踏み台


「わあぁ……」


 俺は被追放者の集落に戻ると、メアリーのために建物を用意してやった。こっちでいつか道具屋をやりたいと言うから早速かなえてやったわけだ。風の魔法で木を切り倒して一から作るのではなく、彼女の元パーティーの宿舎をそのままこっちに転送して改装しただけだが。


「素材とかは自分で集めてくれ」

「はい、もちろんです! あの……」

「ん?」


 メアリーの顔が赤い。どうしたんだろう。風邪かな……?


「どうしたんだ?」

「……その、私を……オルド様の奴隷にしてください!」

「あぁ、奴隷ね……って、ええ?」


 なんてことを言いだすんだ、この子は……。


「オルド様は私の恩人です。目が見えるようになったことで、一度パーティーリーダーやメンバーの元へ帰って挨拶をするつもりでいたので、二度……いえ、今回の道具屋の件で三度助けていただいたことになります。なので、オルド様のためならなんでもしたいんです」

「……そっか。それなら仕方ない……」

「……はい。覚悟はできてます。私の命でも体でもなんでも、差し上げます……」

「じゃあ、早速俺の奴隷に命令だ。この道具屋を守ってくれ」

「……え?」

「いつでも俺が何か買えるように、言い方は悪いが馬車馬のように働いてくれ」

「……は、はいっ! いつでもお待ちしてます……!」


 メアリーのやつ、耳まで真っ赤だ。まあこの子がこれで満足するならこういうのもありだろう。


「「じー……」」

「……あ……」


 いつの間にか、フェリルとクオンに冷たい目で見られていた。


「……最初のお客さんだな、メアリー」

「ふふ……そうですね。どちらかというと、オルド様のほうに用事があるみたいですけれど……」

「ははっ……」


 奴隷のくせにメアリーも言うようになった。この道具屋もしばらく安泰だろう。


「……あの、もう一つお願いが……」

「ん? なんだ?」

「盲目に戻してください!」

「……お、おい、何を言い出すかと思えば……」

「目が見えるようになったことで、以前のほうが凄く落ち着けることに気付いたんです。なので……」

「……わかった。変わってるな、メアリーは……」

「そうみたいです……」


 まあいいだろう。俺は【逆転】スキルでメアリーを盲目にしてやった。失ってみて初めてわかることがあるというが、逆のパターンもあるなんてな……。


 さて、周囲も暗くなってきたしそろそろ夕飯といくか。明日はいよいよ勇者アレクとの再会だな。きっと単細胞なやつのことだから俺の予想通りに動いてくれるはず。楽しみだ。


「……」


 俺は両手を握りしめ、宙を睨みつける。脳裏に浮かんでいるのは当然、憎たらしい勇者パーティーの面々。少しずつこの手で壊してやるよ。お前たちの幸せをな……。




 ◇ ◇ ◇




「「「ええっ!?」」」


 美しい夜景が見渡せる王城の一室、僧侶ロクリア、魔術師マゼッタ、戦士エスティルの三人が驚嘆の声を上げる。勇者アレクから聞かされたのは、元賢者のオルドからの手紙にしたためられていた内容だった。


「……その、オルドっていう人は何を考えてるのかしらね。勇者様に手紙を出すこと自体失礼極まりないのに、会おうとか……常識知らずっていうか、いくらなんでもバカすぎない?」

「あれじゃないですかぁ? アレク様に謝って、退職金でもせびるつもりかもですぅ……」

「ありえん。ゴミ男め。恥という言葉を知らないのか……」


 延々とオルドに対する悪口大会が始まり、アレクが苦笑する。


「まーまー。お前らが怒るのはもっともだがよ、落ち着けって。あんな価値のないゴミカスのためにカッカするだけ損だぞ。それに、こんなチャンスそうそうないんだからよ」

「「「チャンス?」」」

「そそ。あんだけボコったのに残念ながらオルドの心はまだ壊れてなかったんだが、これってよ……裏を返せば、これから盛大にぶっ壊せるチャンスがあるってことだろ?」

「「「なるほど……」」」

「というわけだからよ、お前たちも俺についてきて、隠れて様子を見て存分に楽しんでくれ。あのバカがこれ以上ないくらい壊れていく残酷ショーをよ……」

「……はい。とても楽しみね。というかオルドっていう人、どこの馬の骨か知らないけど、私たちを楽しませるための踏み台になるんだからありがたく思ってほしいものよね」

「ですねえ、いっぱいいじめて泣かせて、最後は惨めに死んでほしいですぅー」

「まったくだ。とことん壊して、アレク様との力の差を存分に見せつけてやらねば……」

「おう! ……っと、その前に楽しもうぜ?」

「「「はぁーい……」」」


 今宵のアレクたちは大いに盛り上がった。

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