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半魔族の軌跡  作者: 未唯
0章
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0-1

 

 薄暗く月明かりが微かに足下を照らすような、そんな森の中を、休むことなく走る。何かに追われるかのように、時々辺りに視線をやりながら、それでも足を止めて、休むことはしない。

 身体が覚えるくらいに、何度も下見をしたため、目的地までの道順に不安はない。


 ただただ、腕に抱くものが今しばらく静かであることだけを祈る。

 もう少し、もう少しの間だけーー。


 信頼できる場所を探した。

 お金や名誉よりも、情を優先してくれるような、そんなお人好しを……。それがどれほど贅沢なことを言っているかは百も承知である。自分ですら……頼みに行く立場である、自分ですら、きっとこんな依頼を受けることはしないだろう。


 だが、見付けた。

 どん詰まりになり、いっそ誰かが夜逃げしようかとまで思い詰めた時、ようやく見付けたのだ。


 ーー人情溢れる彼を。


 歓喜の想いを必死で殺し、何度も、下見をしたのだ。ずっと、ずっと観察を続けたのだ。


 そして、決めた。


 彼に宝を託すことをーー。



 どうか、どうか……我らが主の宝を、守ってくれ……。

 どうか、どうか……健やかに、育ってくれ……。



 立ち止まると、一気に汗が吹き出た。

 息を整えることすら惜しむように、ポケットからペンダントを取り出すと、ソッと首にかけた。キラリと月明かりに反射して、メダルが光った。封書をお腹周りのリボンに挟み込み、準備は完了だ。

 後は、タイミングを図るのみだ。


 逸る気持ちを抑え、瞬くことを忘れたかのように、ジッと扉を見続ける。



 早く、早く……!



 一秒が何分にも感じられてきた頃、ようやく扉が開いたーー。



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