118.「蜘蛛の糸」が垂らされました。
こんにちは、加瀬優妃です。
『田舎の民宿「加瀬優妃亭」』にお越し下さり、ありがとうございます。
今回の内容は……
「蜘蛛の糸」が垂らされました。
でございます。
さて、この回からは森陰五十鈴様との共同制作『FLOUT』の制作裏話となります。
なにとぞよろしくお願いします。
何と話は、2018年10月24日まで遡ります。
この『田舎~』のエッセイで言うと、『71.「卒業式」を迎えました。』の日です。
この頃は大改稿を終えていよいよ自分の創作……といったところですが、完全に出涸らし状態でした。『73.「リハビリ」に取り組みました。』にも書きましたが、色々あって、
「私の考えることなんて、どうせなぁ……」
と凹んでまして、絞り出してもネタも気力も何も出てこない。
そんな精神状態が4ヶ月ぐらい続いていました。
『ミネルヴァ』は影も形もない頃で、『続・テーヘンさん』は途中で投げ出した状態ですね。
とりあえず「ゲームブックを仕上げる」という目標は立てたものの、これはリサイクル活動であり創作活動とは言えないかもしれない。しかも表に出すまでには相当時間がかかる。(実際、ここから表に出すまで半年かかりました)
そんなことを考えていたら、森陰五十鈴様から「お飾り王妃に今日の一冊の打診がきた」という連絡が来てメチャクチャ浮かれた、と『71.「卒業式」を迎えました。』では書いたんですけども。
実はその翌日、森陰様からもう一つお話があったのです。
『実はかねてからやってみたいことがあります。
もしよろしければ一緒にやってみませんか?
それは「一つの題材で、複数の物語を、複数の作者で書く」というものです。』
これはどういうことか。
森陰様と私はゲームが好きという共通項がありまして、FF6のキャラで例えてくださったのですが……。
そうですね、「桃太郎」の物語を「桃太郎視点」と「鬼視点」で書くようなものですね。
別に「VS」でなくてもよいので、「シンデレラ」を「シンデレラ視点」と「王子様視点」で書く、とか。
あ、アニメで「ルパン三世」と「コナン」が共演し最終的に共闘していますが、あれを「ルパン三世視点」と「コナン視点」で書くとか。そういう感じですね。
いやー、びっくりしましたね。
そしてすごくすごく、涙が出るほどありがたかったです。
懸案事項として「相手のペースに合わせないといけない」「自分のアイディアが採用されないかもしれない」などを挙げてくださってましたが、もともと書くネタがない私にとってはそれはたいした問題ではない。
何て素敵な提案だ! しかも何だか面白そうだ! やってみたい!
自分でネタをひねり出すのは難しいけど、与えてもらえれば広げることはできるかも!
……だけど、不安もありました。
それは、私自身のことです。
私は『旅人シリーズ』という一つの作品を書きはしましたが、超ド底辺ですしこれ自体が十年以上のブランクを経て書いたもの。
力量が違いすぎる。案なんて全く出せないかもしれないし、対になる話を書くことで逆に足を引っ張ることになるかもしれない。
どう考えても森陰様の負担が大きくなりそうだ。
人選それで本当に大丈夫ですか?
……と。
声をかけてみた、でもこのレベルだと一緒に創作するのは難しいな、となるかもしれない。
あともう1つは、『ゲームブックの完成』と『続・テーヘンさんの完成』という二つの目標を掲げていたこと。
私は複数の話を同時に考えることができません。読む方ですら、一度に並行して頭に入れられるのは3作品ぐらいが限度です。
要は、脳味噌のキャパが小さいんですよね。
声をかけて頂いて本当に嬉しかった。それはまさに私にとっての『蜘蛛の糸』だったのですが、現状はすぐに「やりたいです!」と答えられるような精神状態ではなかったんです。
ですので、
「面白そうだし、やってみたい」
ということはまずお伝えし、その上で懸案事項として以下の内容を挙げました。
①2つのネタを半年以内に作品にする目標を掲げているので、この半年以内は動けない。
②ゲームブックを再開する場合は、同時平行が難しくなる可能性がある。
③一番の問題点は、元々が小説を書くことを趣味としていなかったため、発想力がないこと。そのため出てきたネタに対し広げることは出来てもネタを作れない。
……という私側の事情と、双方に関わるものとして
④両者の嗜好が合うか、まずはお互いの作品を読まなければならないと思う
という4点です。
特に④は心苦しかったです。自分のアレを読んでくれ、と提案するのは……。
だってなろう世界に辿り着く前、本当にただただ自分の好みだけで書いた作品。さぞかし不備だらけだろう、と……。
そりゃ改稿はしましたが、話の展開を変えたわけではないですしね。
だけど一緒に創作をする以上、私の嗜好と力量を知ってもらって、本当にそれでもいいのか改めてジャッジしてもらわなければ、と強く思いました。
「2019年3月頃まで保留にしましょう。その間に私も森陰様の他の作品を読みます。そして、それでもやってみたいと思えたら、また声をかけてください」
この頃――2018年10月頃は、凹みすぎて創作する楽しみすら見失っていた、本当に辛い時期でした。
自分の考えることはツマラナイものに思えて仕方がなかったんですね。
だけど、もし私の作品を読んでも「大丈夫、やれますよ」と言って頂けたら、
「私の考えることでも使えるモノはある」
と思えるかな、と。
肩の力が抜けて、前向きに取り組めるかもしれない。
本当に我儘で勝手ですが、私は決定権を森陰様に丸投げしたんです。
ズルいなあと思うのですが、自分ではどうしても決められなかった。
自分のことなのに自分で決められない。こんなことは人生でも初めてで、後になって「私は相当落ち込んでいたんだな」と改めて思いました。
さて、こんな勝手な申し出を、森陰様は快く了承してくださいました。
『お飾り王妃』の連載中だし他にも書きたい作品はあるので問題ないです、と言ってくださったんですね。
こうして、いわゆるお互いを知るための「保留期間」が始まったのでした。
ここでは共同制作がどういう経緯でどれぐらいの期間を経て作られたのか、日付を書き記しておこうかな、と思います。
何しろ四年間ですからね!
~共同制作の軌跡~
・2018年10月25日
森陰様から提案をいただく。
読んでいただきありがとうございます。(^^)/