第64話 電脳シーマンズMADE IN HEAVEN♯DIGITAL
第64話 電脳シーマンズMADE IN HEAVEN♯DIGITAL
「つまりね今は他人同士でも、ずっとずっと昔に親戚…家族だったから、
白血球の型も一致するんじゃないかって考えがあるんだよ。
白血球の型の種類はいっぱいあるから、そう考える方が自然なんだよ」
島津の大きいのはそう言いながら、赤い色のお茶をいれてくれた。
揚弘も俺の隣で「しゅーくりーむ」の中身を、ちゅうと吸い出しながら頷いた。
「しゅーくりーむ」なる菓子は、どうやら飲み物の一種らしい。
俺も「しゅーくりーむ」の中身をちゅうと吸い出した。
「子安っさんの先祖って何しとったんやろね」
「さあ…切支丹で九州人のなみえばあちゃんまでしかわからん」
「フライド丸の先祖は?」
「おいが家は大坂が発祥で、そん前は東国とも京ともようわからん。
とりあえず家んもんらは大坂人ち思いたからし」
揚弘は2個目の「しゅーくりーむ」に手を伸ばした。
「へ、へえ…歴史ある家なんや、さすが元戦国武将やな」
「なんて家なんだ? 島津家か?」
「なんでおいがあげんカスん家…!」
俺は「しゅーくりーむ」を1個くわえ、もう2、3個掴んで、島津家を飛び出した。
家に帰ると、子安どんは仕事が手につかないらしく、菓子の空き袋をぎりぎりと噛み締めていた。
どうやら腹が減っているらしい。
そこへ帰ったもんだから、子安どんは俺の持ち帰った「しゅーくりーむ」をめざとく見つけ、
飛びかかって、口にくわえている1個を口で奪い取って直接食べ始めた。
「いただきだ!」
「ちょっ、こいはおいん…」
子安どんは俺より年上なはずなのに、時々すごく子供っぽく感じる。
「しゅーくりーむ」を食べていた唇は口づけに代わり、
手に持っていたのも食べられ、まだ欲しいのか指まで舐られた。
男の肉体は容赦しない、俺は自分が男の身である事を恨めしく思った。
恨みながら、人の道を忘れた。
俺は夏の氷菓になって、どろりと溶けていった。
「…なあ、子安どんがご先祖さあはどげん人やった?」
俺は傷跡を見られたくなくて、子安どんの白い背中に覆い被さりながら聞いてみた。
「さあな…岐阜、美濃の大垣で庄屋をやっていたと聞くけれど…」
「美濃…!」
「もしかしたら落ち武者狩りに参加して、戦国のお前を狩りに行ったかもよ」
子安どんはそう言って笑い、振り向いて俺の首に腕をかけて唇を奪った。
俺は笑えなかった。
「わかっているので一番古い人は、子安清兵衛って言ってな、
前に戦国に行った時、私を妻にしたあの殿じゃないかと思うのだ…」
…子安清兵衛は豊久さあの世界の豊久さあだよ。
だって俺、実際に見たんだから。
少しだけだけど、俺は豊久さあの世界の豊久さあを実際に体験したのだから。
豊久さあを殺そうとしたら、おやかたさあの愛に負けてしまったけれど。
豊久さあの世界は俺が前に酔いつぶれて見た、あの夢の世界にも繋がっている。
俺はあの夢の中で子安どんに良く似た女を抱いている。
あの女はやはり子安どんだったのだ。
あの世界の娘はその時の子供なのだ。
豊久さあの世界に入り込んだ俺が作った子供なのだ。
その娘が成長して子供をなし、更にその子供が子供をなし、
その血がずっと先の、この「ねお薩摩」まで続いていたとしたら…。
なんという事なのだろう、俺は子安どんの祖先なのだ。
そして子安どんは子安家の始祖にして子孫なのだ。
確かにこれなら「おーるまっち」しても何らおかしくはない。
「おっしゃあああ! 決勝進出!」
俺たちは冬のふさふさ祭りに合わせて開かれた大会に、
『戦国アサシネ組@NS_CYBERPUNK』として再び参加し、
決勝戦へと駒を進めていた。
「島津マンション」住民軍、「電脳城島津組×ガンギマリ@DEEP」は今回不参加であった。
「井伊直政、的確な空爆! そしてフライド丸の捨てがまり決まったあ!
島津義弘がシールドでそれをフォロー!
撃ち漏らしは島津豊久が超精密狙撃です!」
「『戦国アサシネ組@NS_CYBERPUNK』、殺! 害!」
俺たちは喜びに手を高くあげ、互いに合わせた。
「あいつらすげえ殺気立ってるな! さすが戦国!」
「甲冑コス決まってるぞ! かっけえ!」
「島津義弘、ピザだな!」
「島津豊久、てめえが捨てがまれ! 歴史と違うぞ!」
俺たち「戦国アサシネ組@NS_CYBERPUNK」は、前回の大会ですっかり有名になり、
甲冑姿も「こすぷれ」として名物となっていた。
「ボケが、歴史はなんぼでも変わるんじゃ!
今こそ歴史ぞ、命捨てがまるはこんおい、フライド丸じゃ!」
「『マイルド関西弁』キター!」
「さあて、決勝戦の相手が決まったようです!
『戦国アサシネ組@NS_CYBERPUNK』と優勝をかけて戦うのは…。
『電脳シーマンズMADE IN HEAVEN♯DIGITAL』!」
司会者の紹介で対戦相手の「電脳シーマンズMADE IN HEAVEN♯DIGITAL」が、
舞台の袖から出てきた。
「げっ! あいつら天界から!」
井伊どんの「ぞんび」が目をむいた。
俺は彼の影に隠れて、扇で顔を覆った。
「『電脳シーマンズMADE IN HEAVEN♯DIGITAL』、RMは島津義久、
続いて入室順に島津歳久、島津家久、島津忠恒!」
「…おやかたさあ!」
俺も目をむいた。
敵の面子に目眩がして、くらりとよろけた。
…島津家総出かよ!
「電脳シーマンズMADE IN HEAVEN♯DIGITAL」の面々は、直垂姿に統一されてある。
「戦国アサシネ組@NS_CYBERPUNK」の甲冑姿といい勝負だ。
「よろしくお願いします、お手柔らかにね」
おやかたさあは代表の揚弘に手を差し出した。
揚弘はたじろいだ。
「お、おう…」
「貴様ら何をしに来た?」
島津の勘違いデブは「電脳シーマンズMADE IN HEAVEN♯DIGITAL」、
島津家の面々を睨みつけた。
「ちょっとね、探している人がいるのさ」
「…豊久か! あれはこの義弘の! 渡さぬ!」
島津の勘違いデブは助けてと揚弘を横目でちらと見た。
揚弘もそれに気付くとうなずいた。
「島津豊久は俺やけど? 『戦国アサシネ組@NS_CYBERPUNK』代表。
その豊久に島津家が勢揃いで何の用や? …事と場合によっては殺す!」
揚弘がおやかたさあに毒づいたが、おやかたさあは揚弘の横をすり抜け、
井伊どんの「ぞんび」の背中に隠れている俺の、すぐ目の前で立ち止まった。
「誰も豊久とは言っていない。
私が探しているのはフライド丸、そなただ」
「おい?」
「えっ…なんでフライド丸て?」
揚弘も俺もあっけに取られた。
「さあ、両者準備をお願いします!」
「時間だ。あとで改めて話そう、フライド丸。
とりあえずうちに来てくれないかどうか、試合の間ゆっくり考えておいてよ」
おやかたさあはにこやかにそう言うと、準備に入った。
会場の拡大画面を見ると、おやかたさあが飛行潜入兵で、
よいよいの歳久さあが空爆支援兵、くそな方の家久さあが四刀重装兵、
忠恒さあ…のちに悪い方の家久さあが歩兵だった。
あの変な努力をしているおやかたさあが前に出るとは珍しい。
「フライド丸を島津家なんかに取らしたらあかん! 死守や、死守!」
「思わぬ伏兵…これが島津の釣り野伏せか! だが豊久は義弘のもの、渡さぬ!」
「おめえら仲いいな。事情はともかく井伊直政はいい奴、だから協力するぜ!」
「戦国アサシネ組@NS_CYBERPUNK」の3人は一致団結した。
「それでは決勝戦、連覇のかかった 『戦国アサシネ組@NS_CYBERPUNK』、
対するは島津家『電脳シーマンズMADE IN HEAVEN♯DIGITAL』!
井伊直政とフライド丸以外、島津家電脳お家騒動!」
「俺もある意味関係者! 島津の退き口! 関係者!」
井伊どんの「ぞんび」は司会者に噛み付いた。
「それでは始めてください、スタートです!」




