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第49話  アバウト・トゥ・エクスプロード

第49話  アバウト・トゥ・エクスプロード


「バカか、誰が島津だ」


井伊どんの「ぞんび」は苦笑しながら、降って来る砲撃を眺めていた。

砲撃は俺の斜め上空からやって来る。

爆煙で視界が白く塗りつぶされ、どこから砲撃が来るのかもわからなくなった。

こういう時に上空に留まっていれば、無傷でやり過ごす事が出来る。

…もっとも運次第ではあるが。

俺はその運に賭ける事にした。


「島津豊久 IS ABOUT TO EXPLODE! 義弘の中で!

島津義弘 IS GONNA BE DOGGONE! 今行くぞ豊久あ!」

「豊久は俺! 間違うなデブが!」


島津の勘違いデブと揚弘が俺のいるところへと駆け出した。

「電脳城島津組×ガンギマリ@DEEP」の側でも爆発が起こった。


「さあ、生き残るのはどっちだ! 飛行潜入兵サクリファイス対決!

『戦国アサシネ組@NS_CYBERPUNK』大将フライド丸か?

『電脳城島津組×ガンギマリ@DEEP』RMです☆さまか?」


爆煙が晴れ、俺はようやく着地した。

…生き延びた。


「おし!」


会場の大きな画面を見ると、子安どんの「です☆さま」は死んでいた。

爆弾を直接自分に設置したんだから無理は無い。

島津の大きいのの「ぱんつ」が蘇生に向かっていた。


「『戦国アサシネ組@NS_CYBERPUNK』フライド丸、生き残ったあ!

奇跡の生還です! まるで島津の退き口を抜けて、大坂を出航した島津義弘のように!」

「あげん妄想デブと一緒にすんなカス! おいはフライド丸、フライド丸じゃ!」


俺は司会者に向けて吠えた。


「見事な捨てがまり戦法です! 捨てがまる事で、味方の安全を確保、

かつ、大量の敵を空爆に巻き込んでいる! しかも生きている!」

「捨てがまり戦法は味方ば逃がすためん時間稼ぎ…じゃどんおいはそうは思わん。

全ては生き延びてこそ! どこぞん豊久とかショボんごたけ死んだら何もならん!

敵ば全滅さして生き延びっ事、味方を最後まで守り続けっ事、

そいが真の捨てがまりぞ…!」


俺たち「戦国アサシネ組@NS_CYBERPUNK」は撃ち漏らした敵を、

それぞれに手分けして片付け、任務を完了した。


「おっしゃああ! 『戦国アサシネ組@NS_CYBERPUNK』、貴様らぐっじょぶぞ!」

「うおおお! フライド丸! かっけえ!」

「決勝まで実力を隠してたのか!」

「さっきのフライド丸、ガチ島津! 

チャラホストの島津豊久よか島津極まってたぞ!」


俺が叫ぶと、観客は総立ちし、俺たちに歓声を浴びせた。

「電脳城島津組×ガンギマリ@DEEP」の面々が俺たちに握手を求めてきた。


「島津義弘、貴様はあとでじっくり殺してやる」

「なんの、豊久はこの義弘が天界へ伴う」


島津の大きいのと島津の勘違いデブは手をつかみ合ってにらみ合っていた。


「井伊直政を殺りに来たが、まさかお前にやられるとはな…」

「子安どん…子安どんも強かったで、子安どん生きとったらおい勝てんかった…」


俺と子安どんも手を握り合っていた。


「…かっこ良かった、かっこ良かったぞフライド丸。

戦国でのお前を少しだけ見た気がした、きっとさっきみたいな感じだったのだろうな」


子安どんは俺の肩をぽんと叩いて、軽く抱きしめてくれた。

俺も抱きしめて、背中をそっと叩いた。


「あれ…『です☆さま』の中の人て、成富信じゃね? 『おいは揚丸』の」

「ほんとだ、よく見りゃ成富先生だ…」

「あ、『フライド丸』てプレイヤーネーム、『揚丸』が由来なんだ!」

「てかフライド丸て揚丸そっくりだな、モデルか?」


観客が子安どんに気付き始めた。

それから俺たちは司会者や雑誌の記者たちから、いろいろと質問され、

子安どんは観客らに「さいん」なる記名を求められ、

俺たちはなかなか控え室に下がる事は出来なかった。


それでもようやく会場を出て、俺たちは秋葉原の街を飲み屋へと歩いた。

子安どんは明日があるからと、先に帰ってしまった。

伊集院どんも仕事の時間だと言って帰ってしまった。

新納どんは買い物したいと別れて行った。

天界「こんび」は一緒に付いて来るらしい。


秋葉原という街は「ねお薩摩」の電脳の中枢なだけあって、

「ねおん」もいっそう多く、光に隙間がなかった。

通りにはひだの多い、きわどい格好をした女たちが立ち、客を呼び込んでいる。

どうやら今様の遊び女らしい。


「そういやさフライド丸」


引率の島津の大きいのがふと言った。


「お前なんであんな島津の兵法にまで通じているんだ?

戦国の世界では島津の家臣か何かだったのか?」

「誰が島津の家臣ぞ!」

「さっきのはどう見ても実際を知っている者の戦いだ、お前本当は誰なんだ?

どこの、なんて名前の者なんだ?」


俺はびくりとして、冷や汗をびっしりとかいた。

まずい、島津の大きいのはごまかせない。

落ち武者である事が露見すればただではすまない。


「ちょ…長寿院も…盛淳かな…?」

「は? フライド丸そんなじじいだったんか!」


井伊どんの「ぞんび」が真に受けて驚いていた。


「嘘申すではない豊久。盛淳はじじいだ、そんなぴちぴちフレッシュバディな訳なかろう!

じじいがそんな美味そうな体をしている訳なかろう!」


しまった、長寿院盛淳はまずかった。

島津の勘違いデブの家臣だった。

揚弘が島津の勘違いデブに飛び蹴りを入れた。


「豊久、俺! 俺が島津豊久! お笑い芸人! 勘違いすんなやデブが!」


揚弘が暴れたおかげでその場を切り抜ける事が出来た。

でも俺は気が気でなかった。

帰るべき過去は潰したが、天界には大勢の関係者がいるはずだ。

天界に連れて行かれてもただではすまないと言う事か。

その上、島津の勘違いデブも俺を豊久さあにして、天界へ連れて行こうとしている。

なんで俺があんなショボなんかに、やだよそんなの。


飲み屋で飲んで天界の二人とも別れ、島津の大きいのの呼んでくれた車で、

日の変わる頃に帰宅すると、子安どんは部屋で翌日の準備をしているようだった。

居間の低い机の上に紙切れが置かれてあった。

俺はそれを手に取って読んだ。


「浮舟の漂ふごとく君はまた 流さるかもと心乱るる」、

そう一首の歌が詠んであった。

漂う浮舟のように、俺がまたどこかへ流されて行ってしまわないか。

子安どんはずっと不安だったのだ、そして今もそれは拭いきれない。

俺は逃げ切れないのだろうか、いや、逃げ切ってみせる。

俺はこの「ねお薩摩」の人間になってみせる。


子安どんの歌の隣に、俺も書き添えた。

「漂ひて着きし港に舟寄せし 揚がる新地は愛の国なり」。


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