第47話 島津豊久シャンパン思い差しコール
第47話 島津豊久シャンパン思い差しコール
「エントリーナンバー4番、『戦国アサシネ組@NS_CYBERPUNK』!
おおっと、甲冑姿での登場です! さすが『戦国』! コスプレにも余念がない!」
俺たちは司会者のかけ声で舞台に立った。
すると、俺に気付いた観客の一人が声をあげた。
「一人だけ武士じゃないぞ!」
「せからし! あげんもん誰が要っと! おいは『ねお薩摩』んもんぞ!」
「おお恐、ヤクザコスかよ!」
結局、俺は島津の大きいのが乗り乗りで貸してくれた、今様の衣装で出場した。
三つ揃いの黒い「スーツ」に、「しゃつ」なる黒い小袖、
全体的に黒を基調とし、帽子の飾り帯や飾り手ぬぐいなど、
さし色に赤から朱色の同系色の組み合わせでけばけばしい事この上ない。
さすがヤクザの感覚、装飾品もじゃらじゃらで激しくかぶいている。
しかも真夏なのに「くーらー」で寒いとか血迷った事を言って、
襟に毛皮のついた外套まで用意されてしまった。
「すげえ、戦国武将3人+ヤクザ! コスすげえ!」
「メンバーはRMがフライド丸! 続いて入室順に井伊直政! 島津義弘! 島津豊久!」
「プレイヤーネームも戦国なんだ!」
「井伊直政かっけえ! はまってる!」
「島津義弘はピザかよ! 鬼島津の名汚すなピザ!」
俺たちの登場で会場は騒然となった。
そこへ怒号が聞こえた。
「井伊直政死ねー! 貴様フライド丸に手出したら殺すぞ!」
「島津義弘殺すー! 揚弘の尻は俺の物! ジュヴーアサシネ!」
「貴様らぶち喰らしたれー! 」
子安どんと島津の大きいの、それからマンションの住民たちが応援に来てくれていた。
みんなも夏なのに黒尽くめで服装を揃えている。
「なんだ、あの物騒な軍団は、応援か?」
「極道かよ!」
「えー、それでは代表者からひとことよろしくお願いします!」
司会者が声を集める機械を差し出し、組の代表者である揚弘がそれを取り、
にたあと笑ってから話し始めた。
「どもどもー! 『戦国アサシネ組@NS_CYBERPUNK』代表、
島津豊久withフライド丸『ねお薩摩サイバーパンク』ツッコミ担当、島津豊久でーす!」
「島津豊久イケメンだけどちょっとチャラくね?…てかホスト?」
「会場のみんな、シャンパン入れてや! よろしゅうな! ハイ!
素敵なあなたからシャンパン、シャンパン、シャンパン入りましたあ!
朝までシャンパンコールぶちかませ、行くぜ、行くぜ、命懸けたシャンパンコール、
今宵はあなたと思い差し、身も心も捧げます、今日もシャンパン飲めるのは、
素敵なあなたのおかげ、ハイ! 感謝をこめていただきまーす!」
揚弘は立ち上がり、手を叩きながら、乗り乗りで挨拶をした。
「…シャンパンコール? てか、島津豊久なのに関西人なんだ?
関西弁ばっきばきじゃん!」
「それでは選手のみなさん、兵科と装備の選択をよろしくお願いします」
俺たちは会場内に用意された「げーむ」の機械と画面の前について、
任務に持って行く装備の選択をした。
これは事前に話し合って、もう決めてある。
「それでは準々決勝戦スタート!」
準決勝戦は「実況動画」なる物で有名らしい組だった。
大会の規定は事前に知らされてあり、体力が1000固定、武器の等級制限あり、
早く任務を完了した組が勝者との事で、俺たちもそれに合わせた練習を積んだ。
敵は有名な組ではあったが、戦国の過酷な状況を乗り越えて来た、
俺たち「戦国アサシネ組@NS_CYBERPUNK」の前では赤子同然だった。
「戦国アサシネ組すげえ! 圧倒だな!」
「島津義弘の四刀重装兵がすげえんだよ!」
「井伊直政の空爆、的確過ぎだろ!」
「いや、後衛の島津豊久の狙撃が神業レベルだろ」
「ヤクザのフライド丸は以外とショボいな、空気読め!」
準々決勝、準決勝と俺らは敵を圧勝出来、決勝に駒を進める事が出来た。
俺以外の3人は活躍して絶賛されたが、俺はあまり活躍せず、
後ろでちまちまと敵を撃っているだけだった。
「グッジョブフライド丸、あいつらお前の事絶対雑魚やと思てるで」
休憩の時、揚弘が声をかけて来た。
「井伊どんの『ぞんび』が言うから大人しゅうしちょったけんど、こいでよかと?」
「上等上等、まさかフライド丸がうちの大将とは誰も思わんよ、代表も俺やし。
次は極めんで、俺ら戦国の華」
「おいは『ねお薩摩』ん男じゃ、ボケ。こんフライド丸が戦国ん戦ば見しちゃるわ!
おいはフライド丸、こいでも戦国経験者ぞ!」
俺は控え室の床の大きな荷物に手をかけた。
決勝戦は電脳網協力戦で名前をちょくちょく見る人たちの組に決まりそうで、
別室で準決勝戦の最中らしい。
彼らの実力は最初にこの「げーむ」を始めた、この俺が一番よく知っている。
部屋主の「です☆さま」、脳筋中の脳筋、突っ込んで囲まれてもいいのに作戦を重視する。
十八番は釣り野伏せ、捨てがまり座禅陣、敵中突破…どこの島津だよ!
名前こそ「死神」だが、実際は「救世主」で、組の圧倒的な生命供給源である。
それから「パンツにスクリーントーン」、名前をころころ変えるが強者。
どの兵科を使ってもまんべんなく強い。
最大の強みは廃人のように長時間遊んできた事で、経験の豊富さは抜群。
この「げーむ」を知り尽くしている者だ、俺は彼を大将と読んだ。
「コルレオーネII」も要注意だ、誘導爆弾を使用する事が多く、
注意深く動かないと標的と認識されて、巻き添えになってしまう。
また、協力戦では飛行潜入兵の足場を奪ってしまう事もある。
組の盛り上げ役である「トレパクMASTER」もやばい。
歩兵のくせにいつの間にか近くにいて、敵の体力を奪っている。
敵を倒すと落ちる物資も気付けば彼に取られてなくなっている。
別室の準決勝戦が終わり、俺たちは再び招集され待機を命じられた。
舞台の袖で揚弘が言った。
「おい、次『です☆さま』がいてるで、やばくね? 」
「こん戦は体力制限があっと、『です☆さま』ん化けん皮剥がれっと。
絶対『ぱんつ』の方が強かと、揚…豊久さあ」
「エントリーナンバー4番、『戦国アサシネ組@NS_CYBERPUNK』さん、出番です!」
俺たちはまた円陣を組んで気合いを入れ、決勝の舞台に上がった。
「おおっと、『戦国アサシネ組@NS_CYBERPUNK』、全員甲冑姿です!
コスプレ完全! いよいよ合戦の狼煙を上げるか?」
「お、フライド丸甲冑姿キター! 似合うぞ! やっと空気読んだか!」
「貴様ら後でうっ殺しちゃる! 覚えちょれ! 貴様らが空気読みい!」
「エセ関西弁キター!」
「似非やなかと! 『まいるど関西弁』ぞ!」
俺が観客とぎゃあぎゃあ喧嘩しているのをよそに、
司会者は続けた。
「対戦者はエントリーナンバー8番、『電脳城島津組×ガンギマリ@DEEP』!」
「し、『島津』…?」
敵の組も俺たちの出たところと逆の舞台の袖から出てきた。
彼らの姿を見て、俺と揚弘は目をむいた。
「子安どん!」
「幸弘兄さん!」
対戦者は子安どんと島津の大きいの、それに新納どんと伊集院どんの、
「島津マンション」住民だった。




