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第46話 戦国アサシネ組@NS_CYBERPUNK

第46話 戦国アサシネ組@NS_CYBERPUNK


それから俺と揚弘は「ぱーてぃ」で天界「こんび」に声をかけてみた。


「面白そうだな、全国の猛者が集結とは腕の鳴るところぞ。

戦国の武将の誇りにかけてこの戦、なんとしても負けられぬ!」

「義弘 will follow 豊久! これが追わずにいられるか!

義弘も参加するぞ! 優勝して豊久が愛をこの手に勝ち取るべし!」


理由はともかく天界「こんび」も乗ってくれたので、

俺たちは申込書を書いて送る事になった。


「…揚弘、あいつらん住所どげんすっと?」

「うちの同居人でええやろ、うちからあいつらに知らしたらええ」

「『ちーむ』名もどげんすっと、『天界withねお薩摩サイバーパンク連合あさしね軍』か?」

「何やの、そのセンスないネーミングは」


揚弘は俺の後ろ頭をはたいて、少し考え込んだ。

そして、申し込み用紙に書き込んだ。


「『戦国アサシネ組@NS_CYBERPUNK』、どや?

『ねお薩摩サイバーパンクの戦国殺害隊』言う意味や」

「ほほう、さすが今様の武者。かっこ良かあ! かっこ良かあ!」


組の名前も決まり、俺たちは暇さえあれば稽古に励んだ。

揚弘は夕方から仕事があるので、俺たちはそれに合わせて、

丑三つ時から朝方までを主な活動時間とした。

子安どんも仕事でその時間は起きているので、俺にも都合がよかった。


「お前はプロゲーマーにでもなるつもりか」


子安どんは呆れていたが、時々飲み物や食べ物を差し入れてくれ、

一応俺を応援してくれているらしかった。


「『すまーとふぉん』ば欲しかと」

「まあがんばれ。コミケと日にち違うから試合には行ってやる」

「ほんま? おい頑張っと! 手柄ば立てて『ねお薩摩』一番ん武者んなっと!」


俺は画面の前に座ったまま振り返り、仕事中の子安どんに抱きついて、

上目遣いで目を覗き込んで笑った。

子安どんは俺の頬をむにいと両方から掴んで言った。


「お前は可愛いな…私の真っ黒な作風と絵じゃ、どうも男臭過ぎて、

揚丸の、本物の、ぷりぷりとした可愛らしさはいまいち出し切れていない。

うん、参考になったぞ、これだこれ」

「むい」


子安どんは変な顔だなと笑って、今度は俺の頬をぎゅうと押し潰した。

そして唇を奪うと、仕事部屋へと戻って行った。

俺頑張る、超頑張るよ。

優勝の先に子安どんの愛があるなら、俺はどこまでも頑張れる。

顔を近づけて間近に張り付かないと見えないほど、

目の悪い俺には前しか見えない、前へ、前へ、ただ行くしかない。

横という視野は俺にはない、先へ、先へ、ただ突っ走るまで。


…あ、だから子安どんの揚丸は突っ走るのか。

俺の事よく見てるな、たぶん揚丸も目が良く見えないのだろうな。

揚丸にされた事に不快感を感じたけど、子安どんは俺の事を細かなところまで、

本当によく見て、絵の中で精巧な再現をしているのだな。

俺は子安どんに愛されている、これが作品の髄になるという事か。

俺も子安どんを愛している、愛だけが俺を動かしている。


「戦国アサシネ組@NS_CYBERPUNK」は、出場の申し込みが無事受け付けられ、

8月の本選の前に行われる予選会に出場した。

当日は井伊どんの「ぞんび」と島津の勘違いデブの、

天界「こんび」も心が作る肉体を引っさげてやって来た。

会場は女っ気のなさそうな、地味な男ばかりで、

天界「こんび」のような年齢の高い者はいなかった。


「エントリーナンバー13番、『戦国アサシネ組@NS_CYBERPUNK』!

RMはフライド丸、メンバーは入室順に井伊直政、島津義弘、島津豊久です!」

「やっぱプレイヤーネームも戦国なんだ! 笑える!」

「おいおい、島津義弘ピザだな!」


そして、俺以外の3人は「げーむ」での名前でまず笑われた。

でも競技が始まり、俺たちの稽古の成果を見ると、笑う者はいなくなり、

会場はしんと静まり返った。


「あいつら戦国のくせに強ええ…!」

「おいも組んやつらも戦闘経験者ぞ、戦闘の達人ぞ!

戦場は戦国ん合戦場だけやなか、電脳網ん戦場ば突っ走っど!」


俺たちは予選を勝ち抜き、本選への出場を決めた。


「なんだ、関西弁? てかエセ?」

「ああん! 『まいるど関西弁』!  似非やなかと! 

こいが電脳都市『ねお薩摩』ん言葉ぞ!」

「薩摩! 東京のどこがネオ薩摩だよ! くっそ笑える!」


俺は「まいるど関西弁」を笑われてしまった。

わかりやすいように、共通語である上方の言葉で頑張って話しているつもりだが、

どうやら彼らの耳には完全ではないらしい。

天界の井伊どんの「ぞんび」や島津の勘違いデブの方がまだ、

「ねお薩摩」弁が身に付いて、「ねお薩摩」の者らしい、くそう。



本選は子安どんの「こみけ」なるふさふさ祭りの前日に行われた。

会場は秋葉原なる電脳の中枢にある建築物の一角に設けられていた。


「ええい、天界ん『こんび』はまだか! 遅かと!」

「道が混んどんのやないか? コミケ期間やし…」


俺たちは会場の入った建築物の前で、井伊どんの「ぞんび」と、

島津の勘違いデブの「天界『こんび』」を待っていた。

そろそろ準備しないといけない時間だ。


「すまん! 遅れた!」


すると、歩道の向こうの角から井伊どんの「ぞんび」が駆けて現れた。

珍しい、鎧直垂姿か。

何やら重たそうな大荷物を両脇に抱えて、背中にも背負っている。


「義弘もっと早う走らんかこのデブ!」

「む、無理い…!」


井伊どんの「ぞんび」は角の向こう側に怒鳴りつけた。

島津の勘違いデブが、のろのろと走っているのか歩いているのか、

かなり遅れて角を曲がって、脂肪みっちりのだらしない姿をようやく現した。

島津の勘違いデブもまた、鎧直垂姿に大荷物を抱えている。


俺たちは「選手控え室」なる部屋に集まった。

井伊どんの「ぞんび」と島津の勘違いデブは大荷物を解いて、

中に納められた装備を着け始めた。


「アホか! 『げーむ』ん大会に大鎧で参加すっもんがどこんおっと!」

「いや、本戦は正式の合戦じゃないか。観客もいる、ここは身支度をきちんとせねば」


井伊どんの「ぞんび」は真顔で答えた。


「そうだぞ、戦に天界の筒っぽは礼を欠くではないか。

ここは一番、美しく装って豊久が心を掴むのが肝要!

ラブメイクス義弘、ラブリー!」

「お前らの分も持って来たぞ、重かったけど」


井伊どんの「ぞんび」は床に置かれた荷物を指した。


「要らん! そげんもん要らん! おいは優勝ばしに大会来たと! 

笑われに来たんやなかと!」

「ええなこれ、『コスプレ』っちゅ事やな…盛り上がんで!

島津豊久withフライド丸『ねお薩摩サイバーパンク』の世界デビューや…!」


揚弘まで何食わぬ顔で具足を身に着けていた。

乗り乗りだな! おい!


出番がいよいよ近づき、大会の係員に出場待機を命じられると、

俺たちは円陣を組んだ。

島津の勘違いデブに手を握られそうになったが、それをはたいて退け、

最後井伊どんの「ぞんび」の上、一番上に手を置き直した。


「最善を尽くせ! 手柄を立てよ! 我ら戦国の武将の名にかけて!」

「ここが我らの関ヶ原ぞ、敵中突破! GONNA BE, GONNA BE ALRIGHT!」

「お笑い芸人島津豊久、脳筋揚げ揚げ揚殺機見参! テンション揚げ揚げで行くで!」

「おいたちは『あささん』、敵は『あさしね』ぞ! 貴様ら敵ん首ば取りい! 殺しい!」


俺たちは気合いを入れた。

その殺気で周囲に引かれてしまった。


「『戦国アサシネ組@NS_CYBERPUNK』、殺! 害!」


俺たちはときの声を上げ、係員の合図で決戦の舞台にあがった。


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