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第23話 俺たちモダンウォーフェア

第23話 俺たちモダンウォーフェア


俺は家を飛び出して、まず隣の島津家に駆け込んだ。


「島津どん、穴開いたど! 出陣!」

「…来たか」


島津家では大きいのが茶を飲んでいた。

小さいの…揚弘はその膝で猫になっていた。


「扉がもう開くとはまるで我らを求めているかのよう。

行くぞ揚弘、みんなに同報メールだ」

「OKやで兄さん」


島津の大きいのは立ち上がり、着替えると言って別の部屋に入って行った。


「とにかく知らしたど、俺もちょと支度して来っど」


俺は揚弘にそう言い残して家に戻った。

家では子安どんも支度をしており、ほら貝を持ち運ぶための袋を探していた。

俺は市場でもらう、かさかさと音のする白い袋を彼女に投げつけた。


俺は以前子安どんに揃えてもらった「スーツ」なる3つ揃いの着物に着替え、

洗面所で子安どんの化粧道具を借りて、戦化粧を始めた。

眉墨と白粉はあるが、お歯黒はないようだ。

それを見た子安どんが、げらげらと笑った。


「こんな時に化粧かよ! お前はおかまか!」

「ちょうど良かとこに。子安どん、お歯黒なかとね?」


そう言って振り向いた俺に、子安どんは声を無くし、涙を流して更に笑った。


「何だその顔は! そんなんで戦に行くのか!」

「こいは戦化粧じゃ! きちんと化粧ばして出陣するが戦国の武士のたしなみじゃ!」

「まろだ、まろ! まろが戦かよ! これじゃ今様のイケメンにはなれんな!」

「ああん! 笑うな!」

「貸せ! そんなまろで戦なんかに行ったら私が笑われる、私が顔を作ろう!」


結局、俺は子安どんに戦化粧をしてもらう事にし、

子安どんはおれの作った顔をすっかり落として、新しく化粧を始めた。


「ふおお…こいが今様の『いけめん』ちゅうとか」


出来上がった戦化粧はとても自然で、どこをどう作ったのかさっぱりわからなかった。

それに和化粧とは違って艶がある。


「お前の顔は整っていても隼人の顔ではないから、『和風イケメン』を目指してみた」

「ふおお…」

「これなら笑われる事はないだろう」



そうこうしているうちに招集を受けたマンションの住民らが、

それぞれ武器を手に、うちの前にばらばらと集まり始めた。

島津の大きいのは大きな荷物を抱え、うちの前でみんなに短い銃と弾を配っていた。


「フライド丸」

「何や」


島津の大きいのに呼び止められた俺も、彼から短い拳銃と弾を配られた。


「何だその化粧は? ところでこれ、支給の武器。弾数は6発」

「おおきに、使わしてもらうな」

「早く行こうぜ、もうみんな集まった」


俺たちは土足のまま扉の前に集結した。

そして、みんなで一斉に中へと飛び込んだ…。



戦国の何も無い空間が裂けて、俺たちはそこから落とされた。

着いた先は島津のど真ん中ではなく、山道だった。

誰もいない、確かここに島津軍と東軍のやつらが来るはずだが…。

到着の時間がずれてしまったのだろうか。


「まだ昼過ぎだ、今頃はまだ関ヶ原にいるはずだ。

今のうち準備をしておこう、揚弘、みんなも手伝って」


島津の大きいのはそう言って荷物をほどいた。

俺たちは総出で、島津の大きいのが持って来た平たい円盤を設置する作業にあたった。


「何ねこれ」

「地雷といって、踏めば爆発する。設置したらそこは踏むな」


子安どんが地雷とは何かを教えてくれた。


「ほほう、こいで敵ん足ばくじくっちゅう訳か!

『ねお薩摩』にはこげなわっぜか武器が…」

「よその国では戦争で使った不発の地雷が地中に未だ残っており、

それを踏んで手足の無くなった一般人が大勢いて、問題になっている」


それから島津の大きいのは小さい揚弘と一緒に、何か機械を組み立てていた。

脚のついた箱で、箱には注ぎ口のような出っ張りが付いている。

そしてみんなでそれを運んで、道の真ん中に設置した。


「何ねそん脚の付いた箱は? 注ぎ口から水でも出て来るっちゅうとか?」

「セントリーガン、回転しながら自動で敵を撃ってくれる鉄砲だ」


そばにいた筋肉質な初老の男性住民が言った。

子安どんが下の家のデニーロさんと教えてくれた。

顔が濃い、絶対隼人の男だ。


「電脳じゃっどか? 新納にいろどん」

「新納…ああ、デニーロの事か。あの箱は電脳の極みさ。

電脳が敵か味方を見分けてくれるのさ…これはこれは、とびっきりの現代戦だねえ」


新納どんはくすくす笑った。


「ここなら鉄砲でも何でも好きにどんぱち出来るからね、

なるほど軍事演習にはぴったりのフィールドだ、腕が鳴るよ」


設置する武器をすべて設置し終えると、島津の大きいのはみんなを集めた。


「もうすぐ敵がやって来る…先頭は島津軍、我々はこの島津軍から潰したい。

島津軍は少数ながら精鋭揃い、続いて東軍が多勢で島津軍を追って来る。

負けてはならぬ、我々島津マンションがこの道を制するのだ。

ここで勝って、我らの安全を自分らで守れるようになるのだ。

では、本演習の作戦を発表する」


島津の大きいのはそう言うと、作戦を話し始めた。



地雷を設置した前方、山道を関ヶ原方面へ少し行ったところで、

俺はひとり地べたに横になって、寝ながら敵の到着を待っていた。

島津の大きいのは俺にここで待てと言った。

何で俺だけ。


…馬の足音がする、来たか。

俺は起き上がって、道の真ん中に立った。

家から持って来た刀「揚丸」…と命名した、に手をかけておく。


馬の足音の中にじゃりじゃりと音がして、軍は近づいて来る。

あれが島津軍か、ショボやな。


「何じゃ貴様、東軍の捨てがまりか?」

「誰が捨てがまりじゃ」

「…あ、これは!」


俺の顔を見た島津軍の者が目を見開いた。

その隙に俺はその男を斬った。

良くは見えないが、まあ体が覚えてるだろ。

揚弘が前に言ってた。


「おいはフライド丸…『ねお薩摩』が『島津マンション』ん者じゃ!」


残念だったな、揚弘。

歴史はまた変わる、揚弘も戦国武将じゃなくなっちゃうな…。

戦国の歴史にこの俺がお帰りだ。

今日は「ねお薩摩」のフライド丸として、俺やっちゃうよ。

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