4.宇宙生命体による犯罪対策課
「僕は警視庁に新たに設置された、『宇宙生命体による犯罪対策課』の刑事です。現在の法律では対応できない事件を扱う課で、似たような武器を使った事件を知っていたのもそのためです。批准が検討されている条約『宇宙生命体の保護条約』にちなんでWOA課、と呼ばれているんですけどね」
わかりにくいですよね、と桑野さんは笑った。それから、真面目な顔になって、あたしの前に膝をついた。あたしの視線に合わせてくれてるんだ。
「僕が必ず、犯人を捕まえて見せます。必ず」
また涙がこみ上げてきた。桑野さん、いい人だ。それがとても嬉しく感じた。
「だから、協力してくれませんか。いいえ、あなたの協力が必要です」
あたしはうなずいた。
おじいちゃん、きっと犯人を捕まえてくれる、いいえ、きっと犯人を捕まえてみせる。
「あの、それで、安全な宿泊場所とかって、どういう意味ですか? 家に帰るのはダメなんですか?」
「ええ……犯人が何を探していたのか、はっきりしていません。もしかすると博士の自宅の方にも犯人が行っている可能性があります」
じゃあ、そのまま帰宅したら、犯人と鉢合わせするかも知れないってこと?
体が震える。
「だから、身を隠したほうがいい。安全な宿泊場所はこちらで確保します。護衛もつけます。それから、できればご家族以外には連絡を取らないようにしてください」
「わかりました。あの……その、おじいちゃんは……」
「その……検視などが終わればご遺体はお返しできるんですが……安全が確認できるまではお預かりするつもりです。そのあたりも含めてご家族の方と相談しておいていただけますか?」
桑野さんの口調から、言いにくいことだと気がついた。そっか、おじいちゃんの葬儀だ……。パパとママ、帰ってきてくれるかな……。もし帰ってきてくれなかったら……あたし一人でお葬式、出すんだ……。
「では、今日の宿泊場所にご案内します。ああ、高校の方へは僕のほうからしばらく休校すると連絡しておきます」
「えっ」
「すみません、学校内までは護衛がつけられないので……」
申し訳なさそうな桑野さんの顔に、あたしはうなずいた。
「分かりました。よろしくお願いします」
「じゃあ、行きましょうか」
そうして、あたしは生まれて初めてパトカーに乗った。