6.イメージ効果理論と三大秘奥と流派
竜の巣へ向かうには水の都市ウエストヨルパから南の魔法生物の犇めく魔の荒野と飛竜が跋扈する飛龍の渓谷を抜けなければならない。
俺達は今、魔の荒野を2匹の走竜で駆け抜けていた。
「うぅ、何とも情けない姿だな・・・」
「ほらほら、ちゃんと捕まらないと落ちちゃうぞ~♪」
アイさんの腰にしがみ付く俺をトリニティは鬼の首を取ったようにからかっていた。
走竜の操縦方法は馬と変わらないので大抵の冒険者であれば騎乗することが出来る。
・・・が、俺は馬になんて乗ったことなんてあるわけが無い。
なので、何故か馬に乗ることが出来るアイさんとタンデムすることになったのだ。
トリニティの後ろに乗るという案も出たが、彼女はそこまで騎乗技術があるわけでも無く俺のプライドがトリニティに頼ると言う事を拒んだのだ。
因みに初心者異世界人のほとんどは馬に乗ることは出来ないので、長距離移動の為騎乗訓練から入る初心者案内人が居るらしい。
「2時方向、生命反応3つ。どうする?」
「勿論迂回して行く」
アイさんが気配探知で周りを探りながら走竜を走らせているので今のところモンスターとの戦闘は回避できている。
だが、回避できているとはいえアイさんの気配探知に引っかかる数が馬鹿にならない程多かったりする。
「8時方向、数10。明らかに群れで行動するモンスターね。
そんなに足が速いわけでもなさそうだからこのままスピードを上げて振り切るわよ」
「多分ジャイアントアントだな。C級のモンスターだ。
本来ならD級なんだが群れで行動するからC級扱いになっているモンスターだよ」
確かに群れを成すモンスターはそれなりに厄介だろうな。
だがD級と言う事はそれなりに対処すれば決して倒せないわけではないか。
「つーか、この魔の荒野はC級モンスターがウヨウヨしてるとこだぞ。下手すればB級のアイアンゴーレムなんかも居るってのに・・・
なんであたしはこんなところを駆け抜けているんだろう・・・」
トリニティは半ば諦めにも似た表情で遠い目をしていた。
D級冒険者のトリニティにとってはこの魔の荒野は足を踏み入れたくない領域なので気持ちはよく分かる。
だがまぁ、それは自業自得と言うものだろう。
「3時方向、数5。10時方向、3」
「なぁ、幾らなんでも数が多すぎやしないか?」
「・・・そうだな。普通ならもう少し遭遇率が低いはずなんだが」
モンスターの位置を把握しているアイさんが上手い具合にモンスターとモンスターの間を抜けていく。
だが、世の中そう上手く物事が進むわけでも無い。
左右から迫るモンスターの間を抜けた先に待ち伏せをしていたかのように別のモンスターが立ち塞がる。
「1時方向、数3。これは流石に回避しきれないわね。どうする?」
来た道を戻って大きく迂回すれば避けられるだろう。
その場合はかなりの時間を消費するわけだが。
「正面のモンスターを片づけよう。俺とアイさんで相手するからトリニティは後方支援を頼む」
「了解」
「ええ~!? マジで戦うのかよ」
そのまま走竜を走らせモンスターの姿を確認する。
ライオンの頭、山羊の胴体、蛇の尻尾、蝙蝠の羽。よくファンタジー物に出てくる魔法合成生物――キマイラだ。
「げ!? キマイラ!? あれB級と言っても差し支えないC級でもヤバい奴じゃないか」
悪いがトリニティの悪態に相手している暇はない。
俺とアイさんは走竜から降りて剣を構える。
流石に騎乗しながらの戦闘は無理なので一旦地上に降りなければならない。
トリニティも走竜から降りて、2匹の走竜を背後に追いやる。
この走竜は頭が良くてよほどのことが無い限り、戦闘行為を行っても離れていくことは無い。
「アイスブラスト!」
アイさんが先手必勝とばかりに氷属性魔法の氷の散弾を4匹のキマイラにお見舞いする。
つーか、何でアイさんは初心者なのに魔法が使えるんだ?
やっぱり初心者と言うのは嘘で、本当は熟練プレイヤーなのだろうか・・・?
1匹のキマイラは怯んだが、残りの2匹は逆に逆上してアイさんに襲い掛かる。
だがアイさんは慌てずに落ち着いて対処する。
水色の剣を構えて襲い掛かるキマイラに1振り。
「ガァァ!」
「グルァ!」
横に1振りされたはずの剣は何故か3本の傷跡をキマイラの顔面に刻み込む。
「うそ、剣戦技のトライエッジ・・・」
後ろからトリニティの驚きの呟きが聞こえてくるところを見ると、それなりに高レベルの戦技なんだろう。
いや、マジでアイさんって何者なんだ?
「鈴鹿くん、後ろのキマイラお願い。この2匹は私が仕留めるから」
何かアイさんに守られている感があるが、これまでの戦闘を見る限りじゃ間違いなくこの中ではアイさんが1番強いのだろう。
男として少し悔しいが大人しくアイさんの指示に従い俺は後ろのキマイラに向かって行く。
こうして改めてキマイラの前に立つと、モンスターの前に身を晒すと言う恐怖に身をすくませてしまう。
ホーンラビットの時はウサギを大きくしただけでそれほど恐怖を感じなかったが、キマイラは完全に肉食系でありVRにも拘わらず殺気をぶつけてきているのだ。
ゲームとしてみればモンスターの前に立つと言うのは当たり前なのだが、現実としてみれば明らかに自殺行為だ。
ちょっと考えても見れば分かると思うが、現実世界で日本刀を手に持ったからって熊や虎を相手しろと言って出来る人間は居ないだろう。
だがここで恐怖に駆られて何もできないじゃ唯姫を助けることは出来ない。
俺は恐怖を抑え込み、逆に殺意を込めてキマイラに立ち向かう。
怯みから回復したキマイラは目の前に来た俺に向かって噛み付いてくる。
「ガウッ!」
俺はそれを1歩前へ踏み込む形のサイドステップで避け、すれ違いざまに剣戦技・スラッシュで薙ぎ払う。
ホーンラビットの時とは違い、少し硬めの肉を斬り裂く感触が伝わってくる。
「ちっ、硬ぇな。流石C級モンスターってところか」
キマイラはすぐさま踵を返し俺に向かって左右の爪を振るってきた。
俺はバックステップで一旦距離を開け、左右の爪が振り下されたところで一気に距離を詰め頭上目がけて再び剣戦技・スラッシュを振り下す。
「セィヤァ!」
振り下された剣はルナメタル製という武器の性能も相まってか、キマイラの頭を叩き割る事に成功する。だが流石魔法生物と言うべきか、頭が割られた状態でなお俺に襲い掛かろうとしてきた。
大きく息を吸い込む動作を見せる。
火炎ブレスの前兆だ。
俺は慌ててバックステップで距離を取ろうとするが、その前にキマイラの足にロープが絡みついた。
「ルフ=グランド縄剣流・旋風刺弾!」
トリニティは放ったロープを右手で引きながら体に巻きつけるように回転させ、キマイラを引き寄せる。
その巻きつける反動と引き寄せる勢いを利用して左手で逆手に持ったショートソードをキマイラの喉へと突き立てた。
火炎ブレスを放つ直前も相まってキマイラの喉でくぐもった爆発が起きてそのままキマイラは息絶えた。
「ふっ、危ないところだったな。感謝しろよ?」
トリニティはドヤ顔をしながら如何にも自分の手柄の様に言ってくる。
まぁ、助かったのは事実だが、あれは俺が注意を引いていたからトリニティの攻撃の隙が出来ていたようなものなんだがな。
「ああ、助かったよ。うん、そのロープって異世界人を縛るために下げてたんじゃなかったんだな」
「んな! なわけねぇだろ! じゃあ腰にロープ下げてる奴はみんな犯罪者かよ!?
これは流派で使うために下げているロープだよ!
まぁ、あんときは別の目的で使ったんだが・・・」
最後の方は声が小さくなっていたりする。
それはそうと、何かまた新しい単語が出てきたな。
「流派ってのはさっきトリニティが使ってたルフ=グランド縄剣流って奴か?」
「そうだよ。まぁ細かい話は後でしてやるよ。今はこの場から離れた方がいいだろ」
確かに。正面のモンスターはこれで片付いたが、左右から別のモンスターが迫ってきているはずだ。
アイさんの方を見ると何の問題もなく、キマイラは2匹とも息絶えていた。
よく見るとそのうち1匹は首を斬り落とされたりしている。
「あたしはもう突っ込まないぞ・・・」
「気持ちは分かるが現実を見た方がいいぞ・・・
まぁそれより早くこの場を離れようぜ」
少し離れていた走竜を呼び戻し騎乗しようとするが、アイさんが待ったをかける。
「ちょっと待って。折角だからキマイラを持っていきましょう。
トリニティ、キマイラも剥ぎ取り素材があるんでしょ?」
「あ、ああ。キマイラからは核となる魔法結晶が取れるんだが・・・
流石に持っていくったって1匹でも無理があるぞ?」
アイさんは「大丈夫よ」と言いながら呪文を唱え始めた。
「シャドウゲージ」
放たれた魔法の効果により、アイさんの影が不自然に歪み波打つように広がる。
トリニティは信じられないと言う表情でアイさんを見る。
勿論俺も驚いている。
これはトリニティの言っていた使い手が滅多に居ないと言われているアイテム収納魔法だ。
「ちょっ! アイさん、どういう事だよ! あんたがシャドウゲージを使えるなんて聞いてねぇぞ!?」
「ああ、うん。王都に居る時トリニティを待っている間に覚えたの」
いやいやいや、覚えたのって・・・そう簡単に覚えれるものじゃないだろうよ。
そんな俺達を余所に、アイさんは3匹のキマイラを影の中に入れていく。
「なぁ、あたしの常識ってどっか間違っているのか? なぁ?」
「もう突っ込まないんじゃなかったのかよ」
トリニティの気持ちも分からんではない。
アイさんは規格外だ。もうこれは間違いない。
アイさんも言っていたが、これは俺にとっても都合がいい。アイさんを利用する形になってしまうが唯姫を探すのにはあって損するような力じゃない。
特にこの後向かうのはA級の危険度を誇るらしい竜の巣だからな。
「ん、4時と8時方向からさっきのモンスターが迫ってきているわね」
「と、早いとこ離脱しようぜ。トリニティもいつまでも現実逃避してないで行くぞ」
「現実逃避してねぇよ! あんたらの常識を疑ってたんだよ!」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
あの後もモンスターを躱せずに囲まれてしまい何度か正面突破をして突き進んだ。
その甲斐あってか日が暮れる前に魔の荒野を抜けて飛龍の渓谷の前まで来ることが出来た。
「今日はここまでだね。流石に日が落ちてからこの渓谷を抜けるのは危険よ」
「だな。流石に俺もそこまで無謀じゃないぜ。
となると、野営の準備をしなければならないな」
流石に魔の荒野を抜けたとはいえ見晴らしのいいど真ん中で野営をするわけにもいかないので、トリニティに野営に適した場所を見つけてもらいその場へと移動した。
野営の準備を終えた俺達は魔法結晶を剥ぎ取った後に残ったキマイラの肉を焼いて夕食としていた。
「アイさんがシャドウゲージを使えるならもう少しマシな食料を用意していたんだがな」
「確かにお肉だけじゃ栄養が偏るわね。冒険者らしいと言えばらしいんだけど」
移動時の食料としては保存が効く干し肉などが主となる。
あくまで腹を膨らませるだけの食料であって味は二の次だ。
トリニティの言う通りアイさんがシャドウゲージが使えるのが分かっていたのなら、野菜や調味料などを持って来てそれなりに豪勢な夕食となっていただろう。
「まぁ良いじゃねぇか。これはこれで美味いぜ」
俺は大量に焼けた肉にかぶりつきながら言うと当然の様に反論が飛んできた。
「これだから男って奴は・・・」
「若い子はお肉好きだもんね~」
肉が好きで何が悪い。
「それはそうと、俺達がここまで来ても美刃さん達に会わないと言う事は既にこの先の渓谷に居るってことなんだな。渓谷の中で野営しているのか?」
「そうなるな。美刃さん達の事だから渓谷の中でも野営は出来るだろうけど、あたしだったらごめんだね。魔の荒野で野営なんてものD級冒険者じゃあり得ないってのに」
「美刃さんはS級冒険者だから心配はないけど、他の人たちは大丈夫なのかしら?」
「ああ、心配ないよ。『月下』は美刃さんだけのクランじゃないんだ。A級冒険者が多数いるエレガント王国でもトップクラスのA級クランなんだよ。
中でもサブマスターの・・・鮮血の魔女デュオは有名だよ」
鮮血のって・・・物騒な二つ名だな。
あれか? 辺り一面血の海にするから付いた二つ名なのか?
「まぁ無事なら何の心配もいらないか。
明日は出来れば竜の巣に突っ込む前に美刃さんを見つけたいな」
「それはあたしも激しく同意」
「まぁ、仮にドラゴンと戦闘になってもなんとかなるわよ」
「「・・・・・・」」
アイさんの言葉に俺とトリニティは沈黙で答える。
普通であれば「なんとかなるわけないだろ」と突っ込むところだがアイさんの事だ、本当に何とかなるんだろう。
今日1日のアイさんの戦闘を見ていれば自ずとそう思えてくるから俺とトリニティは何ともいえない気分になる。
「ああ、戦闘と言えばトリニティが使っていた流派?ってのは何なんだ?」
見たところ戦技みたいな感じだったが、それとはまた何か違う感じがした。
「ああ、流派ってのは・・・あーその前にまずは『イメージ効果理論』の話が先だな」
「『イメージ効果理論』? なんだそりゃ?」
「正確には『イメージによる戦技・魔法に変化をもたらす効果理論』だったかな。
巫女神フェンリルが冒険者時代に提唱した理論だよ」
巫女神フェンリル――確か魔王を倒した七王神の1人だったよな。
7人の中でもリーダー格でかなりの逸話を残していると言う。この『イメージ効果理論』もその内の1つだとか。
「フェンリルはイメージによって戦技や魔法の在り方を変えたんだ。とは言っても威力とかを変えたわけじゃない。
発動の仕方を変えたって言った方が分かりやすいと思う。
鈴鹿の使っている剣戦技・スラッシュもデフォルトなら縦に振り下すしかできないんだ。
だけど横に払うイメージをしながら発動すると横薙ぎのスラッシュが出来るんだ」
・・・確かに。俺は横薙ぎのスラッシュも放っているな。
トリニティの言う通り剣戦技・スラッシュが縦切りにしか出来ないのであれば、俺の放ったのは『イメージ効果理論』の横薙ぎのスラッシュになるだろう。
「魔法も同様で杖先・目の前からの発動じゃなく、イメージ次第で背後や自分へ向かっての発動も可能になるんだ」
ああ、なるほど。正面の敵に体を向けておいて背後に魔法を放つと言う事も可能なのか。
確かにイメージ次第では戦闘の幅が広がるな。
「で、それを発展させたのが三大秘奥。
1つ目が最もメジャーで上級冒険者に必須と言われている『魔法剣』。
剣に発動する直前の魔法を纏わせるイメージをして、剣と魔法を同時に放つのがこの秘奥の最大の特徴だな」
「それはエンチャントとはまた違うのか?」
「エンチャント・・・ああ付与魔法とは違うな。
付与魔法は武器に属性を与えるが、魔法剣はその纏わせた魔法の威力と剣の威力が合わさったものだからな。
例えばファイヤーボールを纏わせた魔法剣でアイさんが使った剣戦技・トライエッジを放てば三爪の火炎剣が使えるって訳」
おお! なるほど! 戦技と魔法の組み合わせ次第では更なる効果が期待できるってわけだ。
「まぁただデメリットも存在するぞ。
付与魔法と違って剣に魔法をぶち当ててるようなものだから、剣が損耗するんだ。
下手に魔法剣を乱発していればあっという間に剣はおしゃかだな。
壊れない武器――伝説級の武器を使えばそんなことは無いだろうけど、伝説は伝説だからな」
「つーか伝説の武器を持ってるんじゃ魔法剣はいらなんじゃないか?」
俺の素朴な疑問にトリニティは少し考えて「言われてみればそうかもな」と答える。
剣と魔法の同時攻撃なのに、伝説の剣だと威力があり過ぎて魔法剣の意味が無いような気がするぞ。
「で、だ。2つ目の秘奥は『輪唱呪文』。
呪文の1小節を交互に唱えることで1つの魔法として認識させる奥義だな。
これを使えば重ね掛けが出来ない盾系の魔法を1つの魔法として発動させることが可能だ」
盾系とは火属性魔法で言えばファイヤーシールド――火炎と物理攻撃を少し減少させる薄い膜の盾を展開する魔法――水属性魔法で言えばウォーターシールド――水流と物理攻撃を少し減少させる薄い膜を展開する魔法――だそうだ。
但しこれらの盾系は一属性しか展開できない。
それをこの『輪唱呪文』は攻略し全属性同時展開が可能になると言う。
「但しこれもデメリットがあって、複数の呪文を唱えるとその分長くなるんで呪文失敗がしやすくなるんだ」
「そりゃあそうか。呪文を重ねれば重ねた分だけ長くなるんだもんな。それが1つの呪文と認識されていれば失敗する確率は多くなるわけだ」
「そういう事。
最後の秘奥は『圧縮呪文』。
これは呪文の1小節を1文字に縮めて呪文短縮するものだね。
イメージが最もし辛いものとして秘奥の中では一番難しいとされているよ」
ふむ、『圧縮呪文』か。ノタリコンみたいなものか?
確かあれは文や単語の連なりの頭文字を取って新しい単語を作ったり、単語からもとの文や単語の連なりを復元するやつだったはず。
しかしこうして見るとこの三大秘奥って魔法よりだな。
俺はそのことをトリニティに指摘すると――
「ああ、三大秘奥は確かに魔法よりだ。だから戦技を主とした『イメージ効果理論』として流派が発展した訳だ」
なるほど。ここで流派が出てくる訳か。
話に聞くところによると巫女神フェンリルは魔法よりの剣士だったらしい。
だから魔法を十全に使う三大秘奥が生まれた訳だな。
で、フェンリルが神の世界に渡った後、魔法より戦技をメインとして扱っている奴らは自分たちの力を最大限発揮するために『イメージ効果理論』で戦技を発展させたと。
「例えば剣戦技1つ取っても発展の仕方によって流派は数多くあるんだ。
剣戦技で有名どころの流派を上げるとすれば3つあるな」
力で全てを叩き伏せる鋼斬剛剣流
早さや技を持って斬り裂くテライト閃剣流
獣の力――獣化の戦技を組み合わせたヴァーラント獣剣流
力や速さ――よくあるパターンとは言え決して侮れないものがある。だからこそ有名どころに数えられているのだろう。
3つ目のヴァーラント獣剣流はトリッキーの類になるんだろうが、有名どころに数えられているくらいだ。獣化の力も相まって実用性も高いのだろうな。
「トリニティの使っているルフ=グランド縄剣流ってのはどう言う流派だ?」
「ルフ=グランドが開祖の短剣戦技、投擲戦技、鞭戦技の3つからなる複合戦技の流派だよ」
「鞭って・・・ああ、縄が鞭の代わりなのか」
俺はトリニティの腰に下げている縄を見て納得する。
「そうだよ。縄で叩きつけ相手の隙を作ったり、絡みつけてバランスを崩したりな。
後はこういう事も出来るな」
トリニティはおもむろに立ち上がり、放置していたキマイラの死体を敵に見立ててショートソードを投げつける。
「ルフ=グランド縄剣流・回帰牙剣」
が、次の瞬間トリニティの手元に戻ってきた。
「ルフ=グランド縄剣流・蛇絞牙剣」
トリニティはそのままショートソードをあさっての方向へ投げつけるが、空中で軌道を変えてショートソードは円を描くようにしてキマイラを斬りつけて再びトリニティの手者とに戻ってくる。
「なるほどね。ショートソードの柄に輪っかを付けてたのはそれが理由ね」
アイさんの指摘でトリニティのショートソードの柄を見れば2cmくらいの鉄の輪が付いており、そこには鉤爪のついたロープが掛かっていた。
ショートソードを投擲しても鉤爪で引っかけたロープで引き戻したり、ロープを鞭戦技で操りながらロープの先にひっかけた剣で斬りつけた訳か。
「言っとくがあたしの腕前じゃこの程度だが、熟練の使う縄剣流はこんなもんじゃないからな」
縄のトリッキーさに加えて剣の近距離・遠距離攻撃が可能な流派だ。
確かに使いこなせれば戦闘にはかなり有利になるな。
D級冒険者であるトリニティはルフ=グランド縄剣流を覚えて日が短いのだろうな。
「なるほどな。流派か・・・
トリニティ、武器を使わない格闘だけの流派ってのもあったりするのか?」
「あることはあるけど・・・
拳戦技と蹴り戦技を駆使して己の肉体のみで攻撃するヴァイト白戦流と拳で一撃のみを決める拳打一点流があるが、武器無しで戦う流派を覚えようなんて奴は戦闘狂だけだぞ?」
そうか、あるんだ。
確かにトリニティの言う通りこの世界のモンスター相手に武器無しで戦うのは自殺行為に等しい。
だが現実世界で覚えた疾風迅雷流空手は拳戦技や蹴り戦技の流派を上手く使えばこの世界でも使えるんじゃないか?
いや、疾風迅雷流空手は歩法がメインの空手だ。この場合は足捌きがメインの流派を覚えるべきだろうか。
ヴァイト白戦流と拳打一点流は一応頭の片隅に覚えておこう。
「あーそうだ。
流派と言っても戦技だけじゃなく、魔法と戦技を使う流派もあるんだろう?」
「まぁな。魔法剣を主体とした流派もあるしな」
「ふむ、なら魔法を覚えておいても損は無いか。
アイさん、折角だから初級の魔法でもいいから何個か教えてもらえるか?」
「あ、だったらあたしも覚えたい!
普通、魔法を覚えるのって流派から教えてもらうか、魔術師ギルドでお金を払って覚えるしかないんだ。覚えれる機会があるのなら覚えたい」
俺に便乗してトリニティもアイさんに魔法の教えを乞う。
普通であれば今日ログインしたばかりの初心者に何を言っているんだとなるが、まぁアイさんだもんなぁ。
「人に教えるって柄じゃないんだけどなぁ。
まぁ良いわ。初級の簡単なのでも良ければ教えるわよ」
こうしてこの野営を利用してアイさんから魔法を教えてもらう事になった。
もっとも一晩で覚えるほど魔法は簡単ではなかったことを言っておく。
魔力の流れを認識しなければ話にならず、今まで感じたことのないものを感じ取らなければならない苦労をしたからだ。
因みにある程度魔法を使えるトリニティは、直ぐさまアイさんから教えてもらった魔法が使えてドヤ顔をしていたのを追記してておく。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
AIWOn情報交換スレ296
896:メロディたんLOVE:2058/12/31(火)16:55:20 ID:m6DiTAN6v
なぁ、蛇って何なんだ?
897:名無しの冒険者:2058/12/31(火)16:56:52 ID:A910Res5
何って・・・蛇は蛇だろ?
898:名無しの冒険者:2058/12/31(火)16:57:06 ID:HkOj33sSn
蛇・・・としか答えようがないね
899:名無しの冒険者:2058/12/31(火)16:57:49 ID:Ki10cA10cH
それに至る経緯をkwsk
900:名無しの冒険者:2058/12/31(火)16:58:36 ID:nzo3IxtI73
>>896 もしかして盗賊ギルドの蛇の事ではないでしょうか?
901:名無しの冒険者:2058/12/31(火)16:59:46 ID:s61965whBL
もう少し質問を詳しくデスの
902:メロディたんLOVE:2058/12/31(火)17:01:20 ID:m6DiTAN6v
え!? 盗賊ギルドって蛇を飼っているのか?
903:名無しの冒険者:2058/12/31(火)17:03:22 ID:MacJ2016
いやいやw 蛇を飼ってるわけじゃないよw
蛇と言うのは符丁だね
904:名無しの冒険者:2058/12/31(火)17:04:39 ID:MdrSoks69
つまり蛇ってのは盗賊ギルドの暗殺者の事だな
>>902 何か厄介事かぁ?
905:メロディたんLOVE:2058/12/31(火)17:06:20 ID:m6DiTAN6v
え!? マジで!? 蛇って暗殺者の事なの!?
俺もしかしてヤバい・・・?
906:名無しの冒険者:2058/12/31(火)17:07:49 ID:Ki10cA10cH
ヤバいって命を狙われる事でもしたのか?
907:名無しの冒険者:2058/12/31(火)17:08:46 ID:s61965whBL
暗殺者に命を狙われるのは余程の事デスの
908:名無しの冒険者:2058/12/31(火)17:09:06 ID:HkOj33sSn
何があったのか詳しく説明してもらえるかな?
909:メロディたんLOVE:2058/12/31(火)17:11:20 ID:m6DiTAN6v
あー、俺AIWOnのNPCのメロディたんの追っかけをしてるんだけどさ
メロディたんの買い物する時も何を買うのかチェックしてるし
酒場ではいつも甘めの酒を頼んだりして喜んでたり
常日頃メロディたんを見てるからメロディたんの理解者だと自負してるんだが・・・
910:名無しの冒険者:2058/12/31(火)17:12:39 ID:MdrSoks69
・・・お前それストーカーじゃねぇか
911:名無しの冒険者:2058/12/31(火)17:13:06 ID:HkOj33sSn
>>909 ・・・それはストーカーだよ
912:メロディたんLOVE:2058/12/31(火)17:13:20 ID:m6DiTAN6v
そんなメロディたんが見たことのない怪しい男と楽しそうに会話してるんだよ!
その会話で「あの男あたしの周りちょろちょろして気持ち悪いんだけど
何とかならない?」「なら蛇でも使うか?」って
よくよく聞いたら「あの男」って俺の事だった
913:名無しの冒険者:2058/12/31(火)17:14:46 ID:s61965whBL
ストーカーデスの
914:メロディたんLOVE:2058/12/31(火)17:15:20 ID:m6DiTAN6v
ええ!? AIWOnじゃストーカー規制法なんてないんだぞ!?
915:名無しの冒険者:2058/12/31(火)17:16:39 ID:MdrSoks69
いや規制法が無くてもやっちゃ駄目だろ!!ww
916:名無しの冒険者:2058/12/31(火)17:16:55 ID:MacJ2016
いやいやw 法が無くてもストーカーは拙いでしょうw
917:名無しの冒険者:2058/12/31(火)17:17:46 ID:s61965whBL
暗殺者を向けられても仕方ないデスの
918:メロディたんLOVE:2058/12/31(火)17:19:20 ID:m6DiTAN6v
そんな!? メロディたんの為に何回も夜蝶館に通っているのに!?
919:名無しの冒険者:2058/12/31(火)17:19:49 ID:Ki10cA10cH
ぶはっwwwww
920:名無しの冒険者:2058/12/31(火)17:20:39 ID:MdrSoks69
ちょっwww お前何つーとこにwww
921:名無しの冒険者:2058/12/31(火)17:21:46 ID:nzo3IxtI73
最低ですね
922:名無しの冒険者:2058/12/31(火)17:22:46 ID:s61965whBL
処刑デスの
923:名無しの冒険者:2058/12/31(火)17:23:52 ID:A910Res5
ん? 何? どういう事??
924:名無しの冒険者:2058/12/31(火)17:25:06 ID:HkOj33sSn
夜蝶館は王都エレミアでも有名な娼館・・・風俗だね
多分そのメロディって子は盗賊ギルドの兎(盗賊ギルド管理の娼婦)だと思うよ
925:名無しの冒険者:2058/12/31(火)17:26:39 ID:MdrSoks69
つまり日本で言えば918はヤ○ザの女をストーカーしたって事だな
926:名無しの冒険者:2058/12/31(火)17:27:52 ID:A910Res5
うわぁwww
927:名無しの冒険者:2058/12/31(火)17:28:06 ID:HkOj33sSn
厳密に言えば盗賊ギルドとヤ○ザは違うけどね
919:名無しの冒険者:2058/12/31(火)17:29:49 ID:Ki10cA10cH
そして918のその後の姿を見たものは居ない・・・とw
次回更新は1/2になります。