67.混戦と乱戦と大決戦
スケルトンロード。
吸血鬼と双璧を為す最強のアンデットモンスター。
かつて天と地を支える世界の破滅を目論んだ魔王の配下である『不死者の王』が英雄の亡骸を元に生み出したと言われている。
実際はAlive In World Onlineの前身のAngel In Onlineのエンジェルクエストのボス、26の王の1人『不死者の王・Undead』が召喚したモンスターだ。
その強さは下手なボスよりも強いとされていたらしい。
「あれが報告に会ったわたしを模したスケルトンロードね。確かにただのスケルトンロードじゃないみたい」
親父には現実世界に戻るたびにAIWOnの報告をしていたから巫女スケルトンロードの事は知っているが、こうして直に見るとその強さを感じているのだろう。
「ああ、どっかのバカが制御も出来ないのに呼び出したスケルトンロードだよ。だが、Deathの存在を考えれば最初から制御できないものだったみたいだな」
この巫女スケルトンロードは最初からDeathの支配下に置かれているのだ。支配権を奪うにはDeathを上回る召喚が必要になる。
まず普通の異世界人や天地人には無理だろう。
それよりも厄介なのが、巫女スケルトンロードの強さだ。
本来であれば英雄の亡骸を元に創られるのがスケルトンロードなのだが、この巫女スケルトンロードは親父――巫女神フェンリルを模して創られた。
それ故に強さは本物よりは劣るものの、それでも七王神に匹敵する強さを持っている。
これまでに巫女スケルトンロードとは2度ほど対戦したが、1度目はアイさんが相手を、2度目は使徒の証を使っての強化しての戦いだ。
神秘界では使徒の証は効果を無くして使用不能となっている。
つまり素の状態の俺では巫女スケルトンロードの相手はかなり不利になってしまっているのだ。
『前回は余計な邪魔が入ったけど、今度は思う存分戦いましょう』
巫女スケルトンロードは相変わらずカタカタ骨を鳴らしているが、テレパスの魔法で俺達に自分の意思を伝えてくる。
「鈴くん、随分と気に入られているみたいね。何をしたの?」
「それは俺が知りたいよ。普通に敵対したくらいしか記憶にないんだが」
「あれじゃなかったっけ。鈴鹿があいつの刀を破壊したじゃない。あれから鈴鹿をライバル?みたいに認定したんだと思うよ」
「あー、鈴鹿を強者と認めた訳ね。フェルも何処かバトルジャンキーの所があるからあの巫女スケルトンロードも似たようなところがあるのかもね」
「それは昔の話であって、今はそんなことないわよ。ないよね・・・?」
俺に執着している巫女スケルトンロードに疑問を思った唯姫が理由を尋ねるが当然俺には覚えがない。
トリニティが心当たりを思い出せば、お袋はそれが原因だとどこか懐かしむように言う。
と言うか、親父がバトルジャンキー・・・? 家でいる姿からは想像がつかんな。
だが、デスゲームであったAngel In時代を生き抜いた事を考えればありうるか・・・?
兎も角、目の前の巫女スケルトンロードは親父の性質も写し取ったらしく、不意の一撃を与えた俺に執着した訳だ。
「フォーメーションを変えるわよ。
鈴鹿とトリニティはあの巫女スケルトンロードに集中して。かなりの負担になるけど残りのスケルトンロードはマリーにお願いするわ。
わたしは『死を撒く王』と『不死者の王』――Deathを相手するわ」
「唯姫ちゃんも鈴鹿の方に集中してもらうわ。私とアッシュさんはマリーさんの援護ね。フェルは1人で相手をすることになるけど大丈夫よね?」
「当たり前でしょう。わたしを誰だと思っているのよ、巫女神フェンリルよ。1度倒した相手に負けるほど柔じゃないわよ」
「うわぁ・・・フェンリルさん、自分から巫女神って名乗るのですね。わたくしには到底真似できませんわ」
「訳が分からんが、AI-Onと同じように動いていいんだな? と言うか、巫女神って何だよ。フェンリルはそんな風に呼ばれているのか?」
七王神4人がそれぞれの対戦相手を決めるが、待ってほしい。
俺達にあの巫女スケルトンロードを相手しろと言うのか?
「あいつの相手は本家のフェンリルがするべきじゃないのか?」
「それじゃあDeathはどうするのよ。言っておくけどマリーがDeathの相手をしていると残りのスケルトンロードを抑える人が居なくなるわよ」
うっ、確かに。巫女スケルトンロードには及ばないが、他のスケルトンロードもかなりの強さだろう。
ローズマリーだと防御が主体になるのでDeathが相手だとお袋かアッシュが攻撃の援護に回る形になる。
必然的に残ったスケルトンロードを俺達3人とお袋かアッシュで相手と言うか、抑え込めと言われても後ろに流す可能性が大きい。
こうしてみるとローズマリーの盾役として超一流だと言える。
「ほら鈴くん、あたしもちゃんと援護するから。だから頑張ろ」
「ユキの祝福の刻印があれば対抗できると思うよ。そう悲観的になることも無いかと」
気後れしている俺に唯姫とトリニティが励ます。
ったく、女性陣がこうまで言ってくれているのに男である俺が逃げ腰じゃ格好がつかないじゃないか。
いいぜ、やってやるよ。素の状態の俺で巫女スケルトンロードを超えてやる。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
目の前の巫女スケルトンロードが刀を抜く。
右手で右の刀を、左手で左の刀を逆手で抜き、拳銃の様にくるりと回し順手に持ち替える。
くそ、ちょっとカッコいいと思っちまうじゃないか。
向こうではDeathを前に親父も同じように刀を抜き放っていた。
流石オリジナル。向こうの方がより洗礼されているな。
俺も負けじとユニコハルコンを抜き放ち、腰を少し落として左手を軽く添えて右下段に構える。
隣では唯姫が両手両足の自動義肢の祝福を起動させ、背中には唯姫の二つ名の『八翼』も展開させていた。
実は唯姫が両手足にはめている自動義肢は祝福が内蔵された祝福の刻印と呼ばれる特殊な自動義肢だった。
それぞれに戦士の翼・魔術の絆・遥かなる一歩・祈りの聖光と言う名を冠しており、3つの祝福が内蔵されている。
つまり唯姫は自前の並列思考と高速思考の2つの祝福に加え全部で14個もの祝福を使う事が出来、その強さはもはやS級に匹敵するほどだ。
「って、何で唯姫が隣に居るんだよ!?」
「え? だって鈴くんを援護するって言ったじゃない」
「いや、それは後方でって事だろ!? 幾ら祝福があるとは言え前線で戦うのは許可できないぞ!」
確かに戦士の翼の祝福には怪力や炎纏装、遥かなる一歩には瞬歩と天駆があるとは言え、前線で戦うと言う事は怪我がしやすい事でもある。
とてもじゃないが許可は出来ない。
「むぅ、鈴くん過保護すぎ。そりゃああんな目に遭ったんだから大事にしたいのは分かるけど・・・それじゃああたしがここに居る意味が無いじゃないの。
あたしだって戦うために鈴くんと一緒に居るんだよ」
そう口を尖らせつつ言いながらも唯姫はどこか嬉しそうだ。
「いや、だからそれは後方でって事でな・・・」
傍から見れば俺と唯姫はいちゃついているように見えるんだろうな。
そんなやり取りを敵さんは黙って見ているわけではなく。
『いちゃつくのなら後でゆっくりしてもらえるかしら?』
巫女スケルトンロードは瞬動で間合いを詰め、俺と唯姫の仲を裂くかのように2人の間を2刀でぶっだぎる。
『剛閃十字!』
俺は慌ててユニコハルコンを縦に構えつつサイドステップで距離を取る。
【敵の言う通りだな、主よ。いちゃつくのなら戦いが終わった後にして欲しいな。いや、我が居る前でもやられると砂糖を吐くので普段からもやらないで欲しいな】
ユニコハルコンの余計な会話を無視して唯姫の方を見ると祝福の瞬動で問題なく巫女スケルトンロードの攻撃を躱しつつ、『八翼』の無詠唱で素早く反撃をしていた。
「サンダージャベリン!
ウインドランス!」
雷属性と風属性の2本の槍が巫女スケルトンロードへと襲い掛かるが、敵は慌てることなく左右の刀で迎撃する。
確か巫女スケルトンロードの2本の刀は神木刀ユグドラシルと素戔嗚の太刀だったよな。
唯姫の魔力増幅の祝福で強化された魔法攻撃もあっさりと防がれてしまう。
と、思いきや、迎撃の直前にトリニティが放ったロープが巫女スケルトンロードの両腕の動きを阻害した。
「ルフ=グランド縄剣流・螺旋刺弾!」
左右で放った螺旋の動きを加えたロープがそれぞれ巫女スケルトンロードの左右の腕に絡みつく。
無論、その程度で動きを封じれるわけじゃない。
一瞬、動作が止まったものの、持ち前のパワーでトリニティごとロープを引きずり刀を振るい唯姫の放った魔法を迎撃する。
トリニティはそれに逆らわず素直にロープを離している。
俺はその一瞬遅れた隙を見逃さず、巫女スケルトンロードの迎撃と同時に攻撃を叩き込んだ。
「剣姫一刀流・瞬刃乱舞!!」
一度の瞬刃ではなく、巫女スケルトンロードの周りを瞬刃で駆け連打を叩き込む技だ。
だが巫女スケルトンロードは全部とは言わないが大半の致命傷になる攻撃を全て迎撃していた。
おいおい、トリニティが隙を作り唯姫の魔法攻撃と同時の連続攻撃だぞ。
幾ら二刀とは言え、迎撃するのにも限度って言うものがあるだろうよ。
『いいわね。そこの2人は邪魔かと思ったけど、思ったよりも楽しめそうね。
剣姫流の少年、貴方の実力はこんなものじゃないでしょ。もっと本気を出してもいいのよ?』
過度な期待はしないで欲しいな。前回は使徒の証で強化してたから互角に戦えてたんだよ。
とは言え、勘違いして油断してくれればいいが・・・まぁ数合交えれば直ぐにばれるか。
それよりも、結局なし崩し的に唯姫も前衛で攻撃に参加する羽目になってしまったな。
今からでも後方に下がってほしいんだが、巫女スケルトンロードが許しちゃくれないだろな。
唯姫の祝福の刻印による強化の所為で目を付けられたみたいだし。
だからと言って唯姫を前面に押し出す訳にはいかない。
この場合、俺が回避型の盾役として唯姫とトリニティの攻撃を通しやすいように巫女スケルトンロードを引き付けないといけないな。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
巫女スケルトンロードとの戦闘でよそ見をするほど余裕なのかと言われそうだが、ふと親父達の方が気になり戦闘中の隙を見てそちらの方を見てみると、そこには歴戦の強者の姿があった。
何度か目にしているが、スケルトンロードの相手をしているローズマリーの盾捌きはこれまでとは次元が違った。
大盾を自在に操り剣スケルトンロード、槍スケルトンロード、斧スケルトンロードの各攻撃を防ぐのではなくいなしていた。
それも必要最小限の盾をほんのわずかに動かすだけでスケルトンロード達の動きが崩れるのだ。
盾戦技のシールドバッシュも本来なら盾での攻撃技なのだが、技の勢いを利用してスケルトンロード達の戦技攻撃を弾いている。
また位置取りもいい。
3体ものスケルトンロードの攻撃を上手く受けるために相手との位置取りが絶妙なのだ。
後ろからの杖スケルトンロードの魔法攻撃の射線を3体や盾スケルトンロードで通さないようにしながらも目の前の3体のスケルトンロードの動きも制御していると言っていい。
殆んど攻撃をしていないにも拘らずスケルトンロード達は着実にダメージを蓄積していた。
お袋と言えば、ローズマリーが体勢を崩したスケルトンロードに遠距離からの魔法攻撃を叩き込む。
お袋は詠唱破棄が使えるらしく、ほぼノータイムでありとあらゆる魔法がまるで豪雨の様に降り注いでいた。
主に盾スケルトンロードを中心に攻撃を集中していて、盾スケルトンロードに本来の役割を果たせない様にしている。
アッシュは手数を重視したお袋とは逆に、威力を重視した大技の魔法を放ってアタッカーとしての役割をこなしている。
着実にスケルトンロード達にダメージを与えていた。
そしてこの戦場のメインとも言うべきDeathとの戦闘だが、対戦している親父の強さもまた別格だ。
その動きは確かに巫女スケルトンロードと同じなのだが、流石にこちらは本家本元、剣捌き、ステップ、魔法剣の使い方は親父の方が上だ。
左右の手から放たれる二刀はDeathを容赦なく襲い、間合いを取ろうにも巧みなステップや瞬動によりDeathの動きは徐々に削られていく。
勿論、Deathも神秘界の使徒を冠するだけの実力者で、『死を撒く王』と『不死者の王』を巧みに使い分けて親父に襲い掛かっている。
接近戦では戦士タイプである『不死者の王』がメインとなり大剣を振り回し親父を翻弄し、一瞬の隙を突いては『死を撒く王』に変わり、死神の鎌で一撃必殺を狙う。
この死神の鎌、Angel In Onlineの時は攻撃が触れるだけでも確率で即死攻撃判定があると言う厄介な攻撃だったらしく、『死を撒く王』の攻撃は全て躱さなければならなかったそうだ。
今回は即死能力が無いと言っているが、敵の言う事を鵜呑みにするわけにもいかず、親父は死神の鎌を受けずに躱すことに専念していた。
その為親父はDeathに対して決定的な攻撃は与えることは出来ずにいた。
こうして見れば親父達4人は七王神と言われるだけの実力者だと言う事が分かる。
その実力はS級、もしくはそれ以上とも言えよう。
ちょっと親父は即死攻撃を含ませている為苦戦しているが、お袋たちは現状が変わらなければこのまま遠からず決着が着くだろう。
それはDeathも感じ取ったのかもしれない。
Deathは現状を打破する為、更なる戦力を追加してきたのだ。
「ちぃ! 以前よりも強くなっていやがる! 世界を救った英雄の名は伊達じゃねぇか。
だがその快進撃もそこまでだ」
Death・『不死者の王』は強引に大剣を振り回し一瞬だけDeath・『死を撒く王』に変わり死神の鎌で親父から距離を取り、再びDeath・『不死者の王』に戻り素早く呪文を唱える。
「冥界軍召喚!」
Death・『不死者の王』の周りに幾つもの召喚魔法陣が出現し、次々とスケルトンロードが召喚される。
これまでの武器スケルトンロードとは違い、ショートソードと円盾を装備した一般兵のようなスケルトンロードだ。
その数24体。
「英雄になりそこないの骸を使ったスケルトンロードだ。それでも実力は一級品。さて、兵士スケルトンロードのこの数を捌き切れるかな?」
Death・『不死者の王』の言葉が終わる前に、兵士スケルトンロードは俺達に向かって襲い掛かる。
・・・ヤバい。
今は戦況は俺達に傾きつつあるものの、均衡している状態だ。
そこへこの24体もの兵士スケルトンロードがなだれ込めば一気にDeath側に傾く。
いや、親父やお袋たちは案外対抗できるかもしれないが、俺達の方がヤバい。
使徒の証なしでの巫女スケルトンロードの相手は唯姫の祝福の刻印で辛うじて保っている状態なのだ。
とは言え、幾ら愚痴を言ったところで戦況が変わるわけじゃない。
何とかもてる技能を駆使してこの状況を打破しないと。
と、思っていたのだが、再び戦況が変わる。
それも思いもよらぬ所からの助っ人の参戦だ。
「グルァァァァァァァァァッ!!」
突如獣の雄叫びが上空に鳴り響く。と同時に幾つも光の雨が兵士スケルトンロードに降り注いだ。
光属性魔法のレイブラストだ。
そして上空から降り注ぐレイブラストに混じり、巨大な獣が地面に叩きつけられるかのように音を鳴らして着地する。
ついでと言わんばかりに1匹の兵士スケルトンロードを踏み潰す。
「グルルゥゥゥ・・・」
その降り立った獣は巨大な竜だった。それも銀の鱗を持つ。
そう、スノウだ。
天と地を支える世界で別れたあのスノウだ。
デュオの話から神秘界に来ている事は知っていたが、まさかこのピンチに助っ人に現れるとは粋な登場じゃねぇか。
喉を鳴らし周囲の兵士スケルトンロードを威嚇している間に、スノウの背中から2つの影が飛び出す。
1つは手甲を身に着け、武器を使わず拳だけで兵士スケルトンロードと渡り合う獰猛な男だ。よく見れば見たことのある顔だった。
神秘界で最初に出会った人物、川べりで一時食事をしたことのある紫電だった。
そしてもう1つの影、こちらは剣を片手に一瞬の間に兵士スケルトンロードの間を通り抜けながら斬り抜けて行く。
その姿はまるで剣姫一刀流・瞬刃そのものだ。
だが、俺はその事よりもその影――どこから見ても普通の男にしか見えない――が使っていた足運び、つまり瞬動に見覚えがあった。
と言うより、俺も使っている瞬動――疾風迅雷流奥義・瞬だ。
この疾風迅雷流を使えるのは俺と師範であるおじさん――唯姫の父親だけのはずだ。
と言う事は、まさかこの人は――
「スノウ!? それにヴァイと疾風も!?」
親父がスノウの登場に驚き、さらには新たに現れた2人にも驚いていた。
親父のその様子からその2人も多分であるが七王神であると思われる。
「いよう! フェル。随分と面白い事になっているじゃねぇか。俺も混ぜろや!」
「ヴァイ、面白いは無いだろう。相手はあの『死を撒く王』だぞ。油断しているとお前も喰われるぞ」
「硬い事を言うなよ、疾風。そりゃあ最初は調査のためのダイブだったさ。けど、今の状況は俺達7人で魔王を倒しに行った時の23年前を髣髴させるじゃねぇか。
今盛り上がらないでいつ盛り上がるんだよ!」
「いつも何も最初からヤバい状況だよ。
まぁいい。取り敢えず俺達はこのお邪魔虫の排除を優先しよう。ヴァイはマリーたちの方を頼む。俺は唯姫達の方を援護する」
「了ー解!」
紫電――いや、ヴァイと呼ばれた男は無手のままローズマリーを包囲しようとしていた兵士スケルトンロードに向かって行く。
勿論スノウも光属性魔法で牽制しつつ、持ち前の牙や爪、尻尾などで日絵師スケルトンロードを排除していた。
そして疾風と呼ばれた男は瞬を使って俺達に襲い掛かろうとしていた兵士スケルトンロードを一閃していく。
「2人とも無事の様だな。唯姫、心配したぞ。鈴鹿も唯姫を守ってくれてありがとう」
「やっぱり・・・おじさん、なのか?」
「え? お父さんなの!?」
唯姫の驚きはこれまでにないほどだった。
そりゃあそうだろう。俺だって親父とお袋が現れた時は驚いたんだ。自分の親が現れれば誰だって驚く。しかもかなりのベテランプレイヤー――それも七王神ともなれば驚きは倍だ。
「詳しい話は後だ。まずは目の前のこいつ等から片付けよう」
小癪にも兵士スケルトンロードと連携しながら巫女スケルトンロードは俺達を翻弄していた。
だがこちらにも新たな戦力が加わったのだ。しかも片方が師弟で片方が親子と連携を取るのにも問題ないのだ。
状況は決して不利なわけじゃない。
「顕現召喚! アイン! ツヴァイ!
ツヴァイはヴァイの取りこぼしを片付けて! アインは私の側で守りを固めて!」
そしてお袋も負けじと戦力を追加する。
顕現召喚――聞いた事ない召喚魔法だが、お袋は2体もの生きた鎧を呼び出した。
1つアインと呼ばれ、ローズマリーにも劣らない大盾を持ち、お袋を狙う兵士スケルトンロードを弾いている。
どうやら防御専門の生きた鎧らしい。
もう1つはツヴァイと呼ばれ、身の丈もある大剣を扇風機の様に振り回し、ヴァイの手から逃れている兵士スケルトンロードを屠っていた。
こっちは攻撃専門らしいな。防御を一切考えてない特高仕様だ。
一時は不利になりかけた戦況が、再び拮抗状態へと戻る。いや、勢いがある分、こちらが優勢だ。
数の上ではこちらが不利だが、2人と1匹の戦力は思ったよりも大きい。流石は七王神だ。
Death側、特に水無月は状況の不利を悟って何かしらの行動に出るのではと横目で見てみるが、彼女は平然と戦場を眺めていた。
寧ろ笑っていた。
「まさか残り2つもこの場に揃うとは・・・私は運がいい。まだ見ぬ1つも時間の問題だな」
何の事だ・・・? いや、おそらくだが七王神の事を言っているのだと思うが・・・
そんな乱戦の中、Death・『不死者の王』が攻撃が流れ体勢を崩す。
その隙を親父は見逃さなかった。
一瞬にしてDeath・『不死者の王』の背後へと回り込んだ。
しかも目の前には複数の親父の残像を残したまま。
「ミラージュステップ」
特殊な足捌きにより、複数の残像を残すと言う戦技らしい。
残像に惑わされたDeath・『不死者の王』はものの見事に引っかかり背後から親父の一撃を喰らう。
「ホーリーランス!
シャイニングジャベリン!
――桜花聖光十字!!」
聖属性魔法と光属性魔法の魔法剣による刀戦技・桜花一閃と二刀流戦技の十字斬りを合わせた親父オリジナルの技――つまりこれが本家本元の剣姫二天流――を放った。
「死神の衣・シャドウクロス」
だが、親父の攻撃が届く一瞬でDeath・『不死者の王』はDeath・『死を撒く王』の死神スタイルに変わり、全身が黒の塊と化した。
まるで影で出来た死神だ。
そして親父の攻撃は影を切るようにすり抜け、斬られたDeath・『死を撒く王』はそのまま溶けるように消える。
現れた先は、まるでさっきのミラージュステップのお株を奪うように親父の背後だった。
「フェル! 後ろ!!」
お袋が叫ぶが間に合わない。
親父も当然気が付いていたが、兵士スケルトンロードが迎撃しようとしていた親父の動きを阻害する。
再びミラージュステップを使おうにも直前のステップの硬直もある上、必要なステップを刻む足場を兵士スケルトンロードに邪魔をされていた。
「死神の腕・ソウルテイカー」
親父は何とか兵士スケルトンロードを排除しつつDeath・『死を撒く王』の攻撃を迎撃しようとするが、死神の腕は容赦なく親父の体を貫く。
次回更新は12/29になります。




