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Alive In World Online  作者: 一狼
第10章 Alive
54/83

53.「生きる」使徒と女神アリスとアイ

 ―――25個の使徒の証を確認しました。特設フィールドに於いて『「生きる」使徒・Alive』のエンジェルクエストを開始したします。これより1時間後、特設フィールドへ転移いたします。その間にエンジェルクエストの準備をしてください。繰り返します―――


 突然脳内に鳴り響くアナウンスに俺とトリニティとアイさんは驚く。


「マジか。1時間後にAの使徒・・・『「生きる」使徒・Alive』のクエストが始まるのかよ」


「え? 何々? どうしたの?」


 突然様子がおかしくなった俺達にアーシェがどうしたのか訊ねてきた。

 アーシェの問いに戸惑いながらもトリニティが答える。


「使徒の証が25個揃ったからAの使徒のクエストが始まるのよ。これから1時間後に特設フィールドに転移してね」


「ええ!? いきなり!? え? じゃああと1時間もしたら鈴鹿達とお別れなの!?」


「そう、なるな」


 これまでの情報によればAの使徒――『「生きる」使徒』の情報は出まわってない。

 これは『「生きる」使徒』が最後のクエストで、攻略後そのままアルカディアに行ってしまうからだと予想はしていた。

 つまり、クエストの成否にかかわらずアーシェの言う通り1時間後には強制的に別れを迎えるのだ。


 ・・・ん? 成否にかかわらず・・・?


「そんなぁ・・・鈴鹿達にまだちゃんとしたお礼もしていないのに・・・」


「これからAの使徒のクエストを受けると言うのであれば、準備が必要なはずです。私たちにその準備のお手伝いをさせてもらえませんか?

 これは私とアーシェからのささやかなお礼です」


 落ち込んでいるアーシェを見かねて、お袋さんがこれから迎える『「生きる」使徒』のクエストの準備を手伝う事をお礼にしたいと言ってきた。


 これには俺達は素直に受け取ることにした。

 武器や防具に関してはドワーフの隠れ里で整えていたから問題は無かったが、生活消耗品やポーション等の薬品の補充や聖属性のマジックアイテム等を提供してもらう事にした。


 特にポーションは殆んど使用することが無いからこれまで補充することが無かったのだ。

 『「生きる」使徒』のクエストは何が起こるか分からないから出来る限りの対応を取るため、集めれるものは集めることにした。


 アーシェのお袋さんは直ぐに神殿内の神官たちに指示を出し、物資をかき集め用意してくれた。

 ついでにくそ坊主を拘束し、地下の一室へ監禁するようにも指示を出す。それと関連してくそ坊主と共犯関係のあった枢機卿1名と大神官2名も拘束・監禁された。


 後ほど教皇と他の枢機卿と協議をし、くそ坊主らの処遇を決めるそうだ。


 ただでさえAlice神教の最高位である天徒皇様を操っていたんだからかなり重い処罰が下るだろうな。

 聞くところによると、アーシェのお袋さんは『天界の使徒』の任を受けて間もない頃にまだ大神官だったくそ坊主に誘拐され堕天の腕輪により洗脳の呪いを受けたらしい。

 その所為でアーシェが取り残されてしまい寂しい思いもさせてしまったのだ。それだけでもくそ坊主のした罪は重いだろう。


 そうして準備が進んでいる中、俺はちょっと疑問に思った事をトリニティに聞く。


「なぁ、トリニティ。『「生きる」使徒』の情報は殆んど出て来てないんだよな?」


「殆んどと言うより、全然、ね。

 ・・・ごめんね。本当ならこうなる前に先を読んでそれなりに準備を怠らなければ情報を集めてたんだけど・・・

 他の25個のクエストが終わってから集中して集めようと思ったのが裏目に出ちゃって」


 トリニティは謝ってくるが、情報が1つも出ていないと言う事が情報だと証明してくれていた。

 だがそれはこれから起こるクエストが普通じゃないと証明しているようなものでもあった。


「トリニティは気が付かないか?

 『「生きる」使徒』のクエストがクリア出来ればアルカディアに行くから情報が出てこないのは分かる。

 だけど、失敗した場合は? クエストを受けた者達はどうして天と地を支える世界(エンジェリン)へ戻ってきていない?

 戻ってきているのなら情報の1つや2つ聞こえてもおかしくないだろう?」


「あ・・・」


 そうなのだ。クエストが失敗したのならアルカディアに行かないのだ。ならどこへ行く? 普通なら天と地を支える世界(エンジェリンワールド)へ戻ってきているはずだ。

 だけど誰も戻っては来ていない。戻ってきているのなら『「生きる」使徒』の情報があるはずだ。

 それが無いと言う事は、誰も天と地を支える世界(エンジェリンワールド)へ戻ってきていない事を証明している。


 つまり『「生きる」使徒』のクエストの失敗は死を意味するかもしれないのだ。


 トリニティも今更ながらそのことに気が付いた。


 そしてもう1つ。現実世界(リアル)でも『「生きる」使徒』の情報が一切出ていないのだ。

 あくまで異世界人(プレイヤー)はこの天と地を支える世界(エンジェリンワールド)では身体(アバター)を操っていて、本当の体は現実世界(リアル)にある。

 天と地を支える世界(エンジェリンワールド)で死んだとしても、二度と同じ身体(アバター)AIWOn(アイヲン)をプレイできなくなるだけで、現実(リアル)の体は無事なはずだ。

 ネットワークが発達したこの現実社会で『「生きる」使徒』の情報が一切出てこないのはおかしいのだ。


 この事をアイさんに確認したが、間違いなく『「生きる」使徒』の情報はネットワークには出ていないとの事だ。


 唯姫たちのように昏睡状態者を輩出している時点で普通じゃないのだが、これはもしかしたら『「生きる」使徒』のクエストは一筋縄じゃいかないのかもしれない。

 十分気を引き締めてないと。


 集めてもらった物資をアイさんの闇属性魔法のシャドウゲージに次々入れていく。

 その様子を眺めていたアーシェがふと聞いてきた。


「ねぇ、そう言えばスノウはどうするの?」


 ・・・あ。


「あー・・・流石にスノウはアルカディアまで連れていかれないよな・・・」


「そうね。幾ら騎獣とは言え、エンジェルクエストを受けていないから無理でしょうね」


 だよなぁ~


 アイさんにスノウの事を聞いてみるとやっぱりと言うか、無理そうだった。


「って事は、当然この後のクエストの特設フィールドへは連れて行く事が出来ないのよね」


「そっか、スノウともここでお別れか・・・」


 偶然セントラル遺跡で出会い、何故か俺に懐いたので一緒に旅することになったスノウ。

 スノウのお蔭で移動手段には困ることが無かったのは有りがたかった。

 俺達が約2か月ほどでエンジェルクエストを攻略できたのもスノウのお蔭だ。


 俺達は別れの挨拶をするべく神殿の外で寝そべっているスノウへと近づいて行く。

 スノウは俺達が近づいてきたのに気が付き頭を上げて嬉しそうに声を上げる。


「グルゥ♪」


「スノウ・・・今までありがとうな。どうやらここでお前とはお別れらしい。俺達はもう少しすれば『「生きる」使徒』のクエストを受ける為特設フィールドへ転移されるんだ。

 そしてクエストをクリアすればそのままアルカディアに行く。お前は騎獣だから連れて行けないんだ」


「グルゥ・・・」


 俺の言葉を理解したスノウは寂しげに鳴き、頭を傾げ俺に頬ずりをしてきた。

 そしてアイさん、トリニティと続けて頬ずりをする。


「スノウ、ありがとうね。貴方のお蔭で随分と助かったわ。これからは自分の好きに生きなさい」


「スノウ・・・これまでありがとう。ここでお別れなのは寂しいよ。ずっと一緒だったものね、あたし達。鈴鹿なんかよりずっと。

 でも考えてみれば凄い事だよね。伝説の騎獣があたし達と一緒に旅してたんだもの。

 あたしの一生ものの自慢だよ」


 一頻りの別れの挨拶を終えスノウは名残惜しげに佇んでいたものの、何かを決意したかのように表情を改め翼を広げて大空へと飛び立った。


「グルルゥゥゥゥゥゥ――――――!!!」


「元気でな!」


「さようなら!」


 俺とトリニティは飛び立つスノウに最後の言葉を投げ掛け、アイさんは黙って見送っていた。

 俺達はスノウの姿が見えなくなってもスノウが飛んで行った方向を黙って見つめている。


 だが何時までもそうしていられない。

 残り時間が10分を切ったからだ。


 ――特設フィールドへの転移まで残り10分です。繰り返します。特設フィールドへの転移まで残り10分です――


「さて、いよいよ時間だ。アーシェ、アーシェのお袋さん。色々補給の方、助かったよ」


 俺達の後ろで黙って俺達とスノウのやり取りを見守っていたアーシェとお袋さんに最後の別れの挨拶をする。


「ううん、ボクの方こそ助かったよ。鈴鹿達が居なければボクはお母さんに会えなかったし助けれなかった。

 そう言った意味ではボクの鈴鹿達を見る目は間違ってなかったんだよね」


「言うじゃねぇか。でも、ま、それは自慢じゃねぇが事実だからな!」


「鈴鹿こそ言うじゃん」


 アーシェは最後の別れを湿っぽくならない様に出来るだけ明るく声を掛けてくる。

 俺もそれに乗ってアーシェを元気づける。


「鈴鹿さん、アイさん、トリニティさん。本当にありがとうございました。貴方方のお蔭で私は自分を取り戻すことが出来ました。

 そして・・・アーシェをここまで連れて来てくれた皆様に心より感謝を申し上げます」


「いいえ、あたし達はアーシェの望みを叶えただけですよ」


「貴女が自分を取り戻せたのも呪いを受けていても自分を見失わないでいたからよ。そう言った意味では貴女は女神アリスより選ばれた『天界の使徒』なのよ」


 アーシェのお袋さんは俺達のお蔭だと感謝の意を述べてくるが、トリニティの言う通りアーシェと言う切っ掛けがあったからに過ぎない。


 と言うか、アイさん、何やら聞き捨てならない言葉が出て来たよね?

 あの洗脳の呪いは受け続けるとマジで自意識が喪失するヤバいものだったんだ。

 まさしく『呪い』なんだな。


「よし! 行ってくる!」


「それじゃあ!」


「また、会いましょう」


 俺達の足下に転移魔法陣が現れ光りに包まれる。


「絶対クリアしないと承知しないんだから!」


「貴方方に女神アリスの加護が有らんことを」




◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 光が収まると、そこは何もない真っ白な空間だった。

 そして目の前には見覚えのある、純白のドレスに身を包み長い黒髪をツインテールに纏め上げた1人の女性が佇んでいた。


「女神アリス・・・」


「えっ!? 彼女が!?」


 俺の言葉にトリニティが驚きの声を上げる。


 そっか、トリニティは会うの初めてか。そりゃあ天地人(ノピス)が女神に会うなんてそうそうあるわけもないか。


 俺も会ったのは最初のログインのキャラメイク時の一度きりだから忘れてた。

 それなのに思い出したのはこの空間がキャラメイクフィールドに似てたからだ。


「ようこそ。エンジェルクエスト最終クエスト『「生きる」使徒・Alive』の特設フィールドへ」


「・・・あんたが『「生きる」使徒』なのか?」


 まさかとは思うが、女神アリスが『「生きる」使徒』だとしたらシャレにならねぇな。

 キャラメイク時は分からなかったが、今こうして対峙しているとその強さが普通じゃないのが分かる。


 ただ・・・決して敵わない強さじゃない、ように感じるのは気のせいか・・・?


「いいえ、私は『「生きる」使徒・Alive』ではありません。どちらかと言うと見届け人兼送迎人と言ったところです」


 送迎人・・・? 何だそれは・・・?


「あの・・・それじゃあ『「生きる」使徒』は・・・? クエストは一体どんな内容なのでしょうか?」


 トリニティが恐る恐る聞いてくる。

 まぁトリニティにとっては天上の人物であるからこのような態度になるのは仕方あるまい。

 と言うか、俺の態度の方がおかしいんだろうな。普通は。

 ただ俺――異世界人(プレイヤー)にとってはキャラメイク時のナビゲーションAIの認識が強いからこうなるのは仕方ないと思う。


「『「生きる」使徒』は彼女。クエスト内容はこの小島で24時間『「生きる」使徒』から生き延びる事です」


 そう言って女神アリスが手を振ると、そこには別の1人の女性が立っていた。

 ストレートに流した黒髪に整った顔立ち、すらりとした体型は女神アリスと似ている。

 だが微動だにせず、無表情のその様子はまるで魂の無い操り人形のように見えた。


 そして手をもう一振りすると真っ白な空間からポリゴンのように枠が組み上げられ、海や砂浜、生い茂る木々が生え、瞬く間に島が出来上がっていた。


 小島って言ったが、組み上がる過程を見た感じだと1kmや2kmじゃきかないくらいデカい島だぞ、これ。

 この中でクエストをやるのか。

 女神アリスの言う分には『「生きる」使徒』から24時間生き延びるらしいが、この島の広さだとそれほど難しい事じゃ無いような気もするな。


「確認なんだが、この島でその『「生きる」使徒』から24時間生き延びればクエストはクリアなんだな?」


「はい、そうです」


「それは生き延びるために『「生きる」使徒』を倒しても問題は無い、そうだな?」


 俺の目論見としては早々に『「生きる」使徒』を倒して残りの時間を余裕を持って過ごしたいんだが・・・そう簡単にはいかないだろうな。


「はい、そうです。ですが1つだけ言わせていただきます。

 『「生きる」使徒』は私が力を注ぎ作り上げた分身でもあります。そこに思考は存在せず、命令されたことを忠実に実行する人形のようなものではありますが、その分戦闘能力に関しては26の使徒の一角を占める強さを誇っております。簡単に倒せるとは思わない事です」


 人形のように見えたのは思考が存在しないからなのか。

 だったらつけ入る隙は十分にある。思考が存在しないと言う事はそこには感情が存在しない。つまりその行動は機械的になりがちで行動のパターンも分かりやすいはずだ。


「ねぇ、ちょっと待って。鈴鹿はクリアする気満々だけど、それはあたしもその気なんだけど・・・これって、クエスト失敗=死なんじゃ・・・」


 俺はトリニティに言われ気が付く。

 確かにクリアする気満々だったから失敗した時のことを考えなかったが、言われてみれば失敗したら死ぬな、これ。


「そうですね。クエストが「生き延びる」ことを前提としていますので、生き延びることが出来なければ死んでしまいます。

 『「生きる」使徒』も全力で貴方方を殺しに向かいますので全力で生き延びてください」


「クエストの拒否は・・・?」


 トリニティはその気はないのだろうが、確認の意味を込めて聞いてきた。

 まぁ、出来れば命懸けのクエストは拒否したいのが心情だからな。


 だが、女神アリスは容赦ない一言を叩きつける。


「不可能です。25個の使徒の証が揃った時点でこのクエストは強制になります」


 そうか、これが天と地を支える世界(エンジェリンワールド)に情報が出てこない理由だな。

 死んでしまったら情報もクソも何も無いからな。


 ただちょっと疑問に思ったのだが、この特設フィールドに来る前にアーシェ達にAの使徒が『「生きる」使徒』だって言ってたはずなんだが。

 俺達の他にも準備に1時間があれば『「生きる」使徒』の情報を伝えられそうなものだがな。


 そしてもう1つ、未だ不明瞭な点がある。俺が特設フィールドに来る前にも考えていた異世界人(プレイヤー)による現実世界(リアル)での情報だ。

 これも何かカラクリがあるのか?


 そのことを女神アリスに聞こうとするが、その前にクエストが開始されることとなった。


「これ以上の質問・時間経過は認められません。これよりエンジェルクエスト最終クエスト『「生きる」使徒』のクエストを開始いたします。

 このクエストの参加者は鈴鹿・トリニティの2名とします。

 そこの彼女・・・アイはこのクエストには参加することは出来ません。但し、鈴鹿・トリニティの両名がクエストをクリアすればアイにもクリア資格を授けます」


「は?」


「ちょっ、ちょっと待ってよ! 何でアイさんが参加できないのっ!?」


 ここに来てまさかのアイさんのクエスト参加不可。

 まさかのあり得ない事態に俺達は慌てるが、当のアイさんや女神アリスは予定調和と言った感じで物事を進めていた。

 そして女神アリスの爆弾発言で更に俺達は混乱する。


「それでよろしいですね? 姉さん。

 姉さんの力はバランスブレイカーです。流石にこのクエストの参加は認められません。

 尤もこれまでのクエスト全てに姉さんが関わっていること事態が既にバランスを崩しているのかもしれませんが・・・」


「・・・分かったわ。ここは大人しく貴女の言葉に従うわ。アリス」


「姉さんがその気になれば私の拘束は何の意味も無いですが」


 って、ちょっと待て!!

 今、女神アリスがアイさんの事を姉さんって言ったぞっ!?


 確か女神アリスの姉は元天使で魔王で、女神アリスはNPCでアイさんはプレイヤーで!?


 ヤバい、頭が混乱しているのが分かる。


 そんな俺達の戸惑いを余所に、女神アリスは『「生きる」使徒』のクエストを開始する。


「それでは貴方方と『「生きる」使徒』をこの小島のどこかへランダム転送します。

 そこからクエストを開始いたします」


 俺とトリニティ、『「生きる」使徒』の足下に転移魔法陣が現れ光りに包まれる。




◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 光が収まり気が付けば俺は森の中に居た。

 だが俺はそれどころじゃなかった。


 先ほどの女神アリスが口にした言葉―――アイさんの事を姉さんと言った事が頭の中でグルグル回っている。


 天と地を支える世界(エンジェリンワールド)の言い伝えによれば、かつて天地を支える世界(エンジェリンワールド)を管理していた天使エーアイに八天創造神の裏切りの神が魔王の力を与えて魔王エーアイとなって世界の支配を目論んだ。

 それを後に七王神と呼ばれる冒険者が魔王エーアイを倒し、管理者が居なくなった天と地を支える世界(エンジェリンワールド)を妹の天使アリスが引き継いだ。

 その功績を認められ八天創造神より女神アリスに昇神した。


 つまりアイさんは魔王エーアイでNPC・・・?


 いやいやいや、アイさんは紛れも無く現実世界(リアル)で生きる人間だ。

 じゃあ、女神アリスが実は中身の入ったプレイヤー・・・いや、この場合はGM(ゲームマスター)か?

 それで現実世界(リアル)ではアイさんと姉妹だとか。


 でもそれだとこの世界の設定である女神アリスと魔王エーアイは・・・?

 あまりにも設定が現実世界(リアル)とリンクしすぎているような気がする。

 それに・・・魔王エーアイ――A.I.――アイ。

 偶然にしては出来過ぎだ。


 これまでアイさんには何かあると勘繰ってきた。

 23年前のデスゲームAngel In Onlineの生き残り、Angel Inプレイヤーではないかとも。

 それが実はAlive In World OnlineのGM――幹部と知り合いで裏では黒幕と繋がっていた――?

 そう考えればアイさんのこれまでのあり得ない実力・未知の能力も説明が付く。


 嫌な考えが俺の頭の中を駆け巡る。

 そしてそのことに集中していた俺は割と近い場所から聞こえてくる木々をかき分ける音に気が付くのが遅れた。


 俺は舌打ちをしながらユニコハルコンを抜き放つ。


【主よ、落ち着くのだ。倒すべき相手を見間違うなよ】


「待って、あたしよ」


 ユニコハルコンの声で落ち着き現れた人物を見れば、そこにはトリニティが居た。

 どうやら転送先はお互い近い場所だったらしい。


「大分混乱しているみたいね」


 トリニティは俺の慌てふためく様子を一目見てそう判断した。


「・・・あたしもよ。混乱している。けど間違えないで。今は『「生きる」使徒』のクエストの真っ最中よ。

 諸々の悩みはまずはクエストをクリアしてから、でしょ?」


 ・・・参ったな。まさかトリニティに諭されるとは。

 確かに今は俺の些細な悩みに惑わされている暇は無い。下手をすれば今までの苦労がここで水の泡となって消え去ってしまうのだ。

 だったらやるべきことは1つ。さっさとこのクエストをクリアしてアイさんに問い詰めるのだ。


「そうだな。まさかここまで来てリタイヤするわけにもいかないしな。

 まずは全力で『「生きる」使徒』のクエストをクリアする。その後でアイさんにはこれまで黙っていた秘密を話してもらおう。

 流石にアイさんの抱えている爆弾(秘密)は大きすぎる。ここら辺で解体処理をしておかないと下手に爆発して被害が大きくなったんじゃシャレにならん」


「ようやく鈴鹿らしくなった。それでこそよ」


 俺の様子がいつもの雰囲気に変わったことでトリニティは安どの表情を見せる。


 俺はこの時前向きにとらえていたが、結局最後までアイさんの口からその秘密が語られることは無かった。

 それどころかアイさんと行動を共にできるのがこれで最後だと言う現実を後に突き付けられるのをこの時の俺は知らなかった。

 知っていれば何としてもアイさんと会話をする機会を設けたのだが、その時には後の祭りだった。




◇ ◆ ◇ ◆ ◇



「それじゃあ早速、って行きたいところだけど・・・」


「ああ、このまま直に当たるのは愚策だな。まずは状況の整理と周辺の確認をしないと。

 このクエストはどちらかと言うと『逃走の使徒』の鬼ごっこや、『投槍の使徒』の目標物にタッチするのに似ているからな」


「そうね。愚直に向かうのは失策だものね」


 鬼ごっこの時は最初はまさしく愚直に突っ込むだけで逃げられっぱなしだったからな。

 このまま『「生きる」使徒』に出向いたところで返り討ちが関の山だ。


 さて、まずは状況の確認だが・・・


「トリニティ、近くに『「生きる」使徒』居ないか?」


「少なくとも危険は感じられないから今すぐ襲われることは無さそうよ。近くにも多分居ないと思うわ」


 トリニティのS級祝福(ギフト)・危険察知に引っかからないと言う事は当面は大丈夫だと言う事か。

 こうなると気配探知や魔力探知を覚えておかなかったことが悔やまれる。


 この手の探知系はアイさんが一手に担っていたから覚える必要性を感じてなかったんだよな。

 ・・・って、あ! 今更ながらにアイさんのシャドウゲージに預けていた諸々のアイテム・物資の事を思い出した。


「やべぇ・・・ポーションや、マジックアイテムがまるっきり手元に無ぇ・・・予備の刀もアイさんに預けっぱなしだ」


「あ」


 アイさん1人抜けただけでここまで戦力ダウンになるとは・・・これまでどれだけアイさんに頼りっきりだったのか。


「えっと、じゃあ今手元にある物だけでやっていかないといけないのね・・・」


 今互いに身に着けている装備に、緊急用に持っていたポーションが1つずつ。

 食料も携帯食1食分。

 幸いクエストは24時間だから食料の心配はそれほどでもないが、『「生きる」使徒』対策として用意していたマジックアイテム等がまるっきり使えなくなったのが痛い。

 特に予備の刀――妖刀はかなりの戦力になっただけに使えなくなったのはかなりの痛手だ。


「嘆いていてもしょうがねぇ。どっちにしろ『「生きる」使徒』を倒すしか俺達に道は無いんだからな」


「・・・?」


「どうしたんだ、トリニティ」


「何か違和感が・・・なんだろ? あたし達何か勘違いしているような・・・?

 まぁ、気のせいね。それで、次はどうする?」


 俺達が次にしたことは、島の状態の確認だ。それとその過程で目標の位置の確認。

 後は鬼ごっこの時の応用で、観測者(スポッター)罠師(トラッパー)追跡者(チェイサー)を用意する。

 厳密に言えば追跡者(チェイサー)は追いかけると言うより罠を利用し戦う戦闘者(バトラー)といた方がいいかもしれないが。


 まずは島の状態を確認する為なるべく高い場所へと向かう。

 幸いこの島には小さな山があり、そこへ登れば島の全体が見渡せそうだった。


 周囲を警戒しながらなんとか山頂へ到達する。

 そこで島全体を確認すれば直径20kmはあろうか島だった。

 木々の生い茂った森や、砂漠のような砂地、岩だらけの荒野、シマウマなどが居そうな草原、島と言うにはあまりにも多種多様な環境が整ったモデル区域とも言えた。


 ・・・おい、これの何処が小島だよ。


「うわぁ・・・これって結構広いよね?」


「・・・だな。『「生きる」使徒』を見つけるのも一苦労しそうだな」


 島全体を確認したところで次は罠の設置だ。

 トリニティに罠を設置しやすそうな場所を探してもらい、俺は周囲を警戒しながらトリニティの護衛をする。


 とは言え、トリニティの専門は盗賊(シーフ)なので町中とかの罠は得意だが、町の外・・・自然環境での罠は専門外だ。

 どちらかと言うと狩人(レンジャー)の専門だな。


 まぁ無い物ねだりをしてもしょうがないので、トリニティには出来る範囲での罠を設置してもらう。

 設置する場所は俺達が最初に居た森周辺だ。


 島全部を見回る時間もないし、最初に居た場所ならある程度把握している。

 そしてトリニティ曰く、視界が遮られるところに罠は設置しやすいらしい。


 ある程度罠を設置してから次の段階へ移行する。

 『「生きる」使徒』を探し出し観測し、設置した罠に追い込んで動きを封じ込める。

 その上で一方的に攻撃を仕掛け、『「生きる」使徒』が罠から抜け出せば戦闘を中断し次の罠へと追い込む。

 これを繰り返し出来るだけ無傷で『「生きる」使徒』を倒す。


 俺達は『「生きる」使徒』を探し出そうと森を抜けたところで異変に気が付いた。

 森を抜けた先は岩だらけの荒野となっている。

 その岩と岩の間を何かが飛び跳ねて近づいて来ていた。


 最初は何かの動物かモンスターかと思ったが、この島には俺達以外の動物は存在しない。

 するとアレは・・・


「『「生きる」使徒』!!」


 こっちが探し出す前に向こうが俺達を先に見つけてしまった。


「鈴鹿、こっち!」


 俺達は森に引き返す。

 向こうから見つけてくれたのは探し出す手間が省けたが、いきなりだったので少し動揺してしまう。

 観測しながら少しずつちょっかいを掛けて罠に嵌めるつもりだったが、逃げながらの罠に誘い込む方法になるとは。


 逃げる俺達。追いかける『「生きる」使徒』


 トリニティが上手い事誘導し、俺達は罠を悟られないように逃げつつ『「生きる」使徒』を見事罠に嵌める。


 罠と言ってもなんてことは無い。木々の間にワイヤーを張り、足で引っかけると周囲から別のワイヤーで体を拘束する物や、ただ単純に追加で上から土砂物を注ぐ落とし穴、デュオ特性の罠魔法・トラッピングバインドなどなどだ。


 『「生きる」使徒』はものの見事に設置した罠に次々に掛かっていく。

 そう、次々にだ。


 奴は某映画の殺人マシーンの如く罠なんかお構いなしに強引に突破してくるのだ。


 ワイヤーに縛られながらも歩を緩めず最後には力技でワイヤーを引きちぎり、落とし穴も拳一つの拳圧で降り注ぐ土砂物を吹き飛ばし落とし穴から飛び越えてくる始末。


 勿論その僅かな拘束時間にも俺達は攻撃を仕掛けるが、『「生きる」使徒』の無表情さがダメージを負っているのか判断付きかねない。

 おまけに拘束時間が短いので決定的なダメージが与えられない。


「ちょっ、鈴鹿どうするの、これっ!?」


「待て待て待て、今考えてる!」


 一度ターゲットをロックオンしたら逃がさないのか、脇目もふらず真っ直ぐに追いかけてくる『「生きる」使徒』。

 ある意味罠に嵌めやすいが、こうまで罠にかかり強引に突破されると用意した罠が追いつかないのだ。


 案の定、用意した罠はあっという間に無くなってしまった。


 当初の予定では罠にはまっている最中、俺が『「生きる」使徒』を相手し、その間にトリニティが次の罠を用意する・・・はずだった。


「と、取り敢えず一旦距離を取らないと!」


 俺は振り返り『「生きる」使徒』に向かって剣姫一刀流・剣舞嵐刃(ソードダンス)を放つ。

 森の中の足場の悪い中での剣舞嵐刃だが、目的は倒すことじゃなくその場に動きを留める事。

 そして俺の背後でトリニティが補助魔法を放つ。


「ライト!!」


 俺のすぐ背後で光量最大・持続時間ゼロの閃光が弾ける。

 ライトはただ明かりを灯すだけの生活魔法だが、使い方によってはこのように目暗ましにもなるのだ。


 俺の背後で炸裂した為俺は目を焼かれなかったが、まともに閃光を眼に受けた『「生きる」使徒』は一時的に視力を失う。

 その隙の俺達は一目散に逃げ出し距離を取る。


「はぁ・・・はぁ・・・ここまでくれば安心だね」


「いや、取り敢えず距離は稼げたがまだ近い。気を抜けばあっという間に追いつかれるぞ」


 そう、安心したのも束の間、背後から『「生きる」使徒』の気配(プレッシャー)が追ってきているのを感じるのだ。

 気配探知なんてスキルは無いのだが、ここに来て会得したか?


 同様にトリニティも感じたのか、慌てて再び走り出す。

 その視界の端で『「生きる」使徒』がこちらを向いている姿が見えた。


 バキバキバキッ!!


 障害物の木々もなんのその。『「生きる」使徒』は俺達を見つけると一直線に駆け抜けてくる。


 くそっ! 逃げ切れない。ここは腹を括るか? 罠に嵌める作戦は通じなかったが、ここで『「生きる」使徒』を撃破すれば後は安心して残り時間を過ごせる。


「トリニティ! 迎撃するぞ!」


「了解!!」


 俺は踵を返し向かってくる『「生きる」使徒』を迎え撃つ。

 トリニティは森の中に溶け込み姿を消す。

 森の木々を利用して死角から攻撃を仕掛け、俺の援護をするのだ。


 ターゲットの俺を見据えたまま『「生きる」使徒』は無言のまま拳を振るう。

 どうやら『「生きる」使徒』の攻撃手段は素手のようだ。だとすれば武闘士(グラップラー)魔想闘士(マギフィスト)と言ったところか?


「剣姫一刀流・瞬閃!」


 森では足場が悪いが、真っ直ぐに突っ込むだけの瞬動は使える。

 瞬動の威力に刀戦技・居合一閃を咥えた瞬閃で『「生きる」使徒』の脇を抜けながら一撃を入れる。


 明らかにダメージがあるにも拘らず『「生きる」使徒』は傷を無視し、振り返り俺に反撃をしようとする。

 だが、茂みから飛び出してきた銀の蛇――トリニティの蛇腹剣がまるで蛇のように伸びてきて『「生きる」使徒』の反撃を阻む。


 本来の蛇腹剣は刀身を分割して伸ばし刀身の軸になっている弦で鞭のように振るう武器だが、今のトリニティの蛇腹剣は刀身を分割して伸ばすことなく、刀身が繋がったままの蛇腹状態としてまるで蛇のような刀身となっていた。

 その状態だとほぼ刀身の長さだけの攻撃範囲しかないのだが、何故かあり得ない距離を蛇腹剣が這って『「生きる」使徒』に襲い掛かっているのだ。


 これはトリニティの蛇腹剣の3のギミックの内の1つ、無限刃モードだ。

 このモードは魔力が続く限り刃を無限に生やすことが出来る。つまり刃を無限に生やせば刀身を繋いだままの蛇腹状態が可能となり、遠く離れた場所からの攻撃も可能となるのだ。

 因みにこの無限刃モードは鞭のように操らなくても魔力で自在に動かすことが出来、蛇のような動きも可能なのだ。


 無限刃モードの蛇腹剣の切っ先が蛇が噛み付くように突き刺さり『「生きる」使徒』の動きを封じる。

 その隙をついて呪文を唱え、再び剣姫流の技を放つ。


「剣姫一刀流・氷華一閃!!」


 俺のオリジナルアイスブリットの氷属性魔法に刀戦技・桜花一閃を合わせた氷華一閃が『「生きる」使徒』へ突き刺さる。


「致命傷のダメージを確認。(ビースト)モードへ移行します」


「は?」


 どうやら今の一撃はクリティカルヒットだったらしく、『「生きる」使徒』の生命活動に異常をきたしたらしい。

 が、それが引き金となって新たなモードへと移行したようだ。


「GU・・・GUGAAAAAAAAAAA!!!」


 『「生きる」使徒』は四つん這いになり、まるで獣のような雄叫びを上げる。

 そして森の木々を足場としてまるでピンボールのように迫りくる。


 やべぇ・・・! 森を戦場に選んだのが裏目に出た。


 今の『「生きる」使徒』の動きは森に適していた。

 その動きはまるで猿を思わせる人間離れした機動力だ。


「がっ!!」


 すれ違いざまに次々爪が振るわれ、牙が掠める。

 俺はすぐさまユニコハルコンで傷を治すも、それをも上回る攻撃に瞬く間に血だらけになる。

 流石にこの動きにはトリニティの蛇腹剣・無限刃モードも追いつかない。


【主よ、回復が追いつかない。流石にこのままじゃ倒されてしまうぞ】


 分かってるよ!


 このまま森に居続けるのは分が悪い。俺は『「生きる」使徒』の攻撃を躱しながら森を駆け抜ける。


「トリニティ! 場所を変えるぞ!」


 その意を汲み取り、トリニティは蛇腹剣を無弦モードにして分割した刃を飛ばし『「生きる」使徒』の機動力に対抗する。


 何とか『「生きる」使徒』の攻撃を躱しながら森を抜けた先は水平線が見える海と純白の砂が広がった砂浜だった。


 森よりもマシだが、ちとマズイな。

 足が砂に取られるのは向こうも同じだが、こっちは2つ足、向こうは4つ足だ。砂上の安定性や機動力は向こうが上だ。


 案の定俺は『「生きる」使徒』の攻撃に晒されることになる。

 ユニコハルコンのお蔭で致命傷は無いが、状況は良くもなってはいない。


【主よ。先程よりはマシだが、このままではじり貧だぞ】


 言われなくても分かっているつーの!


 トリニティも森から出てきて無限刃モードで攻撃を仕掛けようとしているが、獣のような動きに翻弄されて捉えきれないでいた。


 ちぃっ! 出来れば使いたくなかったが仕方がない。

 倒してしまえばデメリットも関係ないから、残りの時間はそれほど心配はない。使いどころはここだな。


「特殊スキル起動!! Fang! Start! Power! Zone! Bout! Labyrinth! Intelligence‐inspiration‐imagination!」


 Fangで神狼(フェンリルイド)化し、StartとPowerで更に身体能力を上げる。

 Zoneで感覚を鋭くし、Boutで魔闘気を纏い、更にLabyrinthで四属性の力を持たせる。

 そして今回はIntelligence-inspiration‐imaginationで未来予想をも加える(正確には知識量による予想だが)。


 獣VS獣。2匹の獣が己の生存を掛けて争う。


 互いの魔法()()が繰り出され、肉が削られ血飛沫が飛ぶ。

 一見互角のようにも見える戦いだが、ハッキリ言って圧倒的有利なのはこちらだ。


 ほぼフルブースト状態の使徒の証の特殊スキル使用で負けるはずがない。

 身体能力の爆発的上昇に属性効果付与に未来予知まで付いているのだ。これで負ける方がどうかしている。


 俺の連続攻撃を喰らい、獣の如く振る舞っていた『「生きる」使徒』の動きが一気にダウンする。

 その最大の隙をついて俺は剣姫一刀流奥義を放つ。


「剣姫一刀流・百花繚乱!!!」


 特殊スキルの身体能力と知覚を最大に生かした奥義。抜いて斬って収める。この居合を連続で放ち、その都度複数の融合魔法を鞘の内側に掛け居合魔法剣を放つ。

 この奥義を喰らって無事で済むはずがない。


「GAAAAAAAAAAA・・・・・・」


 一瞬にして『「生きる」使徒』は戦闘不能状態にとなった。


「ふぅ・・・これで『「生きる」使徒』のクエストもクリアだな。後は残りの時間を・・・」


 『「生きる」使徒』を倒し俺は安心しきっていた。

 トリニティも倒された『「生きる」使徒』を見て歓喜の表情を浮かべている。


 だが次の瞬間、俺達は絶望に包まれることになる。


「戦闘不能状態を確認。SystemAliceより魔力供給を要請。再生モードへ移行します。

 再生まで残り600秒――」


 おい・・・今なんて言った? 再生モードだと? しかもSystemAlice――女神アリスの事か? そいつから魔力供給して復活するだと?


 つまりこの『「生きる」使徒』は何度倒そうが女神アリスの力で蘇ると。


 この時になって俺はようやくこの『「生きる」使徒』のクエストのクリア条件を勘違いしていたことに気が付いた。

 初めから女神アリスが言ってたじゃないか。


 クリア条件は『「生きる」使徒』を倒すことじゃない。生き延びる事(・・・・・・)だと。


 女神アリスは『「生きる」使徒』が再生することを知っていたから簡単に倒せると思わない事だと言っていたのだ。


 マズイ・・・失敗した。それも大失敗だ。


 俺はこの後の事を予想してトリニティを抱えて一目散にこの場から逃げ出した。


「ちょっ!? 鈴鹿!?」


「黙ってろ! 今は一秒でも早くこの場から離れないとヤバいんだよ!」


 有無を言わさずトリニティを担いだまま神狼(フェンリルイド)の身体能力で砂浜を抜け森を抜け荒野を駆け抜ける。


 出来るだけ『「生きる」使徒』から離れるように島の反対側の崖へと着いたところで一息を付く。

 特殊スキルの使用時間は残り5分と言ったところか。


「ちょっと、鈴鹿どういう事か説明して」


「トリニティ、俺達は勘違いをしていた。このクエストのクリア条件は生き延びる事。『「生きる」使徒』を倒すことじゃないんだ。

 そしてさっきのを聞いただろ。『「生きる」使徒』は決して倒せない。もし倒すとすれば魔力供給源である女神アリスを倒してからと言う事になる」


「それって・・・」


 トリニティもようやく状況が呑み込めたのか顔が青褪めていた。


 そう、本当ならクエストが始まった時点で俺達は『「生きる」使徒』から隠れて居なきゃならなかったんだ。

 24時間『「生きる」使徒』に見つからず、ひっそりと。


 それを勘違いした俺達は戦いを挑んでしまった。

 しかも24時間のデメリットが伴う使徒の証の特殊スキルを使用してまで。


「トリニティはここに隠れていろ。俺は残り時間ギリギリまでここを離れて後は見つからないように隠れる」


 丁度ここは海に面した崖となっていて隠れる場所は幾らでもあった。


「ちょっと待ってよ! 何で別行動をとるのよ!? 鈴鹿この後碌に身動きが取れなくなるじゃないの! そんな状態で1人でいたら・・・って、まさか・・・」


 どうやらトリニティも気が付いたようだ。

 特殊スキルの効果が切れた俺はどうやっても足手まといなのだ。

 そんな俺が居ればトリニティまで巻き込まれかねない。


 だから考えた末出た結論はトリニティだけを生き延びらせ俺はここでリタイヤする事だ。

 勿論最後まで諦めるつもりはないが、確率的には生き延びるのは低いだろう。


 これまでの2か月は無駄になるが、この身体(アバター)が死んでしまっても別の身体(アバター)AIWOn(アイヲン)をプレイすることが出来る。

 まぁその場合は全くの別人としてプレイしなけれなならないからこれまで知り合った天地人(ノピス)達とは赤の他人同士になるが。


 一転、トリニティは天地人(ノピス)が故にここで死んでしまえばそれで終わりだ。

 元々俺の唯姫を助けるためのアルカディア行のエンジェルクエストに付き合ってくれたトリニティの善意での行動だ。

 そんな善意の行動を無意味にしてまでトリニティをここで死なせる訳にはいかない。


 だからトリニティとはここで別れてトリニティの生き延びる確率を上げる。


「鈴鹿・・・」


 トリニティはボソリと俺の名前を告げる。少し俯いてその表情は伺えない。

 そして次の瞬間、顔を上げて思いっきり俺の顔をぶん殴った。


 ガヅンッ!


「ふざけないで! あたしが鈴鹿を見捨てる? そんな事が出来るのなら『災厄の使徒』の時に助けになんか来ないわよ!

 いい!? 例えどんな状態だろうとあたしは鈴鹿を見捨てない! あたしと鈴鹿、2人で最後まで生き延びるのよ!!!」


「待て、だが特殊スキルのデメリットで俺は殆んど戦えなくなるぞ。それどころか今回はIの使徒の特殊スキルも使ったから頭の働きも鈍くなる。

 はっきり言って足手まとい以外のなにものでもないぞ」


「そんなへ理屈はどうでもいいの!! どうせ鈴鹿はそんな状態になっても最後まで諦めないんでしょ?

 だったらあたしも最後まで鈴鹿をサポートする。そう決めたの!! だからこれ以上ごちゃごちゃ言わない、いいわね!!」


「あ、ああ・・・」


 トリニティの有無を言わさない言葉に俺は思わず頷いてしまった。


 本当に生き延びる確率なんか低いのにな。

 だが有難くもあった。こんな状況になっても見捨てずに付いて来てくれる事に。

 ったく、いつの間にこんなに逞しくなったんだか。最初の頃が嘘のようだな。


「ああ、生き延びるぞ。2人で、必ず!」


「うんっ!!」




◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 そこからの出来事は泥沼と言っていいほど無様な生き様だった。

 ああ、生き様と言う言い方だと死んでしまったことになるな。

 まぁ、何と言うか見栄えなんか気にしてられない程、我武者羅に生き延びていた。


 あの後暫くは『「生きる」使徒』に見つからずに済んでいたが、一度見つかると執拗にどこまでも追いかけてくる。

 もしかしたら一度ターゲットをロックすると自動追尾探知とかが発動するのかもしれない。

 ただこれは一度死んでしまうと機能が停止するっぽい。


 何故ならこんな状態の俺だったが、トリニティとの協力で奇跡的にもう1度『「生きる」使徒』を倒すことに成功した。

 そして復活した後は俺達を目視するまで見つかることが無かったのだ。


 と言う事は、最初から『「生きる」使徒』に見つからないように隠れていればこのクエストの攻略は簡単だったってわけだ。

 それに失敗した俺達は現在こうして必死になって『「生きる」使徒』から逃げている。


「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・鈴鹿、残り時間は後どれくらい?」


 『「生きる」使徒』のクエストを開始したのが聖Alice神殿でアーシェのお袋さん――『天界の使徒』を攻略した後だから・・・開始時間は10時頃だったか?

 俺はAIWOn(アイヲン)の唯一のメニューを開き天と地を支える世界(エンジェリンワールド)での時間を確認する。

 現在の時刻は8時だ。


「後2時間ってところだな」


「まだ2時間もあるの・・・」


 俺の答えにトリニティはげんなりする。

 これまでの戦い(?)を考えれば後2時間でも長いくらいだ。


 俺達は食事や睡眠を碌にとれずに20時間以上も生きもがいている。

 特に足手まといの俺を抱えているトリニティには尋常じゃないくらい負担が掛かっているだろう。


「・・・って、また近づいてきたみたいよ」


「そうだな。見つからないうちにここから離れよう」


 この極限状態が生存本能を刺激したのか、俺達は2人揃って気配探知を身に着けていた。

 トリニティはS級祝福(ギフト)の危険察知も合わせてずば抜けた範囲での探知を可能にしていた。


 最初の頃は『「生きる」使徒』に接近を許し逃げる為の迎撃を頻繁に行っていたが、後半になると迎撃戦闘が殆んど無くなっていた。

 だからだろう。疲労と空腹、睡魔、それに油断。気が付いた時にはすぐ傍まで『「生きる」使徒』の接近を許していた。


 ガサッ


 音のする方を見れば『「生きる」使徒』が拳を振り上げていた。


「しまっ・・・!」


「鈴鹿!!」


 トリニティが蛇腹剣を鞭状にして『「生きる」使徒』の拳を弾く。

 万全な状態ならまだしも、力の抜けた状態でのトリニティの迎撃は拳の軌道を僅かに変えるだけだった


「ごふっ・・・!」


 『「生きる」使徒』の拳は俺の脇腹を抉り拳圧で吹き飛ばされる。

 そして止めを刺そうとばかりに『「生きる」使徒』の追撃の拳が振り上げられる。


 ・・・ここで終わるのか・・・? ここまで無様に生き延びて来たのに、後ちょっとなのに・・・これで終わり・・・なのか?


「蛇腹剣・無限刃モード!」


 魔力も殆んど無い状態なのにトリニティは蛇腹剣に魔力を流し、無限刃モードにして刀身を伸ばし『「生きる」使徒》に絡みつかせ動きを阻害する。


「こんなところで負けない! あたしは、あたし達は最後まで生き延びるのよ!!」


 ・・・ああ、そうだ。俺達は生き延びるんだ。生き延びて唯姫に会いに行くんだ!


「こいよ。また返り討ちにしてやるよ。

 俺達は何度でもお前を倒し生き延びてやる。ああ、そうだよ。例え無様な格好だろうと何だろうと生き延びたもの勝ちなんだよ!

 俺達は例えどんな状況だろうと生きて生きて生き延びてやる!!!」


 正に拳を振り下ろそうとした瞬間、俺とトリニティの啖呵を受けた『「生きる」使徒』の動きが俺の眼前でピタリと止まる。


異世界人(プレイヤー)1名の魂の精製を確認。天地人(ノピス)1名の魂の生成を確認」


 そう告げると、『「生きる」使徒』はモンスターが消えるように光の粒子となってこの場から消え去った。


「・・・・・・・・・どう、いうこと? あたし達、生き延びたの・・・?」


「・・・・・・・・・分からん。分からんが、もう『「生きる」使徒』は襲っては来ないだろう」


 俺とトリニティは訳も分からずただその場に呆然と立ち尽くす。


 おそらく俺達は何かの条件に達したのだろう。それが『「生きる」使徒』が消える結果に繋がったと。

 ああ、くそ。Iの使徒の証の影響で頭が回らん。

 だが何にせよ、俺達は生き残った。今はこの生を噛みしめよう。


 そうして俺達は残りの時間をただただ呆然と過ごす。




◇ ◆ ◇ ◆ ◇



「24時間経過しました。2名の生存を確認。『「生きる」使徒』のクエストをクリアしました」


 女神アリスの声が響くと共に、形成されていた島は逆順を辿るように色が消えフレームが消え最後には何もない真っ白な空間が広がっていた。

 そしてそこには女神アリスとアイさんが佇んでいた。


「アイさん・・・もういい加減、隠している秘密を話してもらうよ」


「・・・そうね。隠し通せる雰囲気でもないし、多分、鈴鹿君は知っておいた方がいいのかもしれないわね。後でちゃんと話すわ。

 でもその前に・・・『「生きる」使徒』のクエストクリアおめでとう。これでアルカディアに、唯姫ちゃんに会いに行けるわよ」


「ありがとう。そうか、やっと・・・なんだな。アイさんに言われるとそう実感するよ」


「トリニティもおめでとう。最後まで鈴鹿君を見捨てないでくれてありがとう」


「そんな・・・仲間を見捨てるなんてあり得ないよ。そう教えてくれたのは鈴鹿やアイさんでしょ。あたしはあたしの出来ることをしたのよ」


「ううん、それでもよ。ありがとう」


 アイさんが俺達に労いの言葉を掛ける。

 おそらくだがアイさんも思い悩んだんだろう。自分の抱えている秘密の一端が暴露された事で俺達から批難されるのではないかと。

 だがそれでもアイさんは俺達に声を掛ける。俺達を仲間として思っているから。


「これで全てのエンジェルクエストをクリア致しました。

 クリア報酬としてこれよりアルカディアへ転送いたします」


 空気を読んでか知らずか、女神アリスは己の任務を忠実に執行するかのようにエンジェルクエストの報酬――アルカディア行の転送を開始した。


「って、おい、何の説明も無しにいきなりアルカディアかよ」


「説明は不要です。全てはアルカディアに行けば分かります」


「全て、ね。まぁいいさ。あんたの後ろに誰が居るかはもう言わなくても分かる。あんたが何者だろうと、あんたはそっち側の人間だ。

 そんなあんたからの説明もイマイチ信用できないしな」


「それは・・・」


 これまではっきり言葉を口にしてきた女神アリスにしては珍しく言い淀む。


「鈴鹿、何の事?」


「後で説明するよ。後でな」


 何のことか分からないトリニティは不安そうに俺と女神アリスを見てくる。

 トリニティにAIWOn(アイヲン)の全てを話す訳にもいかないしな。何処まで話していいものやら・・・

 って、これじゃあアイさんのことを言えないな。


 そうこうしているうちにアルカディア行の転送魔法陣が展開する。


 首に下げたペンダント型の使徒の証の魔法陣が展開し、最後のAの刻印に光が灯る。

 それと同時に26の刻印が記された魔法陣が足下に広がり徐々に光を放ち転送を開始する。


「余計なお世話ですが、アルカディアで貴方の望みが叶う事を願ってます」


「・・・本当に余計なお世話だな」


「一つ言い忘れてましたが、この転送には使徒の証の力を使い切りますので、アルカディアでは使徒の証の恩恵を受けられないと思って下さい」


 おい、何でそんな重要な事をこの土壇場で言う。

 つまりアルカディアでは特殊スキルの使用は不可って訳かよ。

 これは少々キツイな。俺の剣姫一刀流の奥義の一つ・百花繚乱は特殊スキルを前提とした奥義なのだ。

 アルカディアの状況が不明だが戦力はあるに越したことは無いのだ。

 それが使えないとなると・・・


 そんな俺の思惑をよそに、転送魔法陣の光量が最大になり辺り一面が光りで埋まった瞬間に俺達は転送を開始した。


 それと同時に謎の声が響き渡る。



 ――見つけた――



 ――見つけたわ――



 ――見つけましたわ――



 そしてアルカディア行の転送魔法陣とは別の魔法陣が広がり新たな光が俺達を包み込み、俺達は転送された。






◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 Alive In World Online有名人スレ160


565:名無しの冒険者:2059/06/10(火)16:09:23 ID:Ha96U6Fu

 やっぱクラン『月下』の美刃が一番有名だよな


566:名無しの冒険者:2059/06/10(火)16:12:33 ID:Ko10RaTaig

 待て待て、姫を忘れてもらっちゃ困る


567:名無しの冒険者:2059/06/10(火)16:18:02 ID:ELEIN106Fn

 謎のジジイは?


568:名無しの冒険者:2059/06/10(火)16:25:59 ID:I9raSaZaE3

 >>567 プレイヤーの中で有名なひとですぅー

 ちゃんとログ読んでくだいよぉー


569:名無しの冒険者:2059/06/10(火)16:33:41 ID:HkOj33sSn

 話がループしている君たちにhotな情報を提供しよう

 最近名を上げてきている新人がいる

 鈴鹿、アイ、トリニティの3人組なんだが聞いた事ある人もいるんじゃないか?

 まぁトリニティは天地人なんだけど


570:名無しの冒険者:2059/06/10(火)16:34:22 ID:nzo3IxtI73

 >>566 姫ってデプ子姫の事?

 そう言えば最近見かけてないわね


571:名無しの冒険者:2059/06/10(火)16:36:41 ID:HkOj33sSn

 何と驚くことにこの3人組エンジェルクエストをほぼ2か月で9割方クリアしていると言う


572:怒り新人:2059/06/10(火)16:39:36 ID:EVA2014Srd

 あ、僕聞いた事ある

 鈴鹿って人、餓狼の二つ名を持っているんだよね

 アイって人は黒姫、トリニティって人は猫目だったかな


573:名無しの冒険者:2059/06/10(火)16:41:49 ID:s61965whBL

 確かエンジェルクエストを最速でクリアしている方デスの


574:名無しの冒険者:2059/06/10(火)16:45:05 ID:Mdi93KnG2

 ちょっと待って、これまでの最速で7か月だったよね

 それを遥かに上回る2か月って・・・


575:メロディたんLOVE:2059/06/10(火)16:46:16 ID:m6DiTAN6v

 >>572 いやいやいや、2か月ってありえないだろ


576:名無しの冒険者:2059/06/10(火)16:49:50 ID:Kumo5Ttl910

 あー、そう言えば獣人王国の武闘トーナメントで優勝していたわ


577:名無しの冒険者:2059/06/10(火)16:52:11 ID:KyoNew3Hcp

 ジパン帝国ののじゃー大戦でも大活躍だったそうじゃない

 尤も最終的には何故か女帝に嫌われたみたいだけど


578:名無しの冒険者:2059/06/10(火)16:59:59 ID:I9raSaZaE3

 最近の『災厄の使徒』での大戦で鈴鹿って人が斬り込み部隊をしたって聞いたですぅー


579:名無しの冒険者:2059/06/10(火)17:03:23 ID:Ha96U6Fu

 噂だが、クラン『月下』の美刃やデュオと仲が良いって話も聞くぞ

 鈴鹿って奴は氏ねばいいとおもう


580:メロディたんLOVE:2059/06/10(火)17:10:16 ID:m6DiTAN6v

 どうやっても移動だけで1ヶ月以上はかかるぞ

 エンジェルクエストはセントラル大陸だけじゃなく海を渡ってのイーストエンド大陸にもあるんだから


581:名無しの冒険者:2059/06/10(火)17:12:41 ID:HkOj33sSn

 >>560 ところが竜を騎獣にして空を移動してたら?


582:メロディたんLOVE:2059/06/10(火)17:15:16 ID:m6DiTAN6v

 可能・・・だな

 空を飛ぶだけでかなりの時間短縮になる

 マジか、すげーな


583:名無しの冒険者:2059/06/10(火)17:18:49 ID:s61965whBL

 >>572 餓狼はリアル友から情報デスよね?

 黒姫は全身黒装備から、猫目は分かりませんデスの


584:名無しの冒険者:2059/06/10(火)17:20:33 ID:Ko10RaTaig

 黒姫とはデプ子姫に対する挑戦だな!


585:名無しの冒険者:2059/06/10(火)17:24:05 ID:Mdi93KnG2

 でもちょっと待ってよ

 竜の騎獣ってありえないんだけど


586:名無しの冒険者:2059/06/10(火)17:25:11 ID:KyoNew3Hcp

 女盗賊だから猫目だって噂だよ

 後は元スリからきてるみたい


587:名無しの冒険者:2059/06/10(火)17:28:41 ID:HkOj33sSn

 まぁ騎竜がいたからエンジェルクエストが攻略できるわけでも無いけどね

 元々そいつらの自力が凄いってのもあるよ


588:名無しの冒険者:2059/06/10(火)17:33:22 ID:nzo3IxtI73

 で、その鈴鹿さん達は今何処??








エンジェリン編 -終-


次章より


アルカディア編 -始-


*********************

次回更新は7/1になります。

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