4.初戦闘と初心者と盗賊
「はぁぁっ!!」
俺に跳びかかってきた角の生えた1m大のウサギ――ホーンラビットに向かって剣を振り下す。
体から力が抜ける感じがすると同時に剣の方に少しだけ力が加わる。
ザシュッ!
俺の振り下した剣が見事ホーンラビットの頭を斬り裂く。
頭をかち割られたホーンラビットはそのまま地面に伏して血を広げながら息絶えた。
だが俺はそれをじっくり見ている暇はない。
攻撃の隙をついて横からもう1匹のホーンラビットが飛んでくる。
俺はそれをサイドステップで避けると同時に剣を横薙ぎに振るう。
「キャン!」
攻撃を受けたホーンラビットは腹から血を流しそのまま地面に転がりながら体勢を立て直そうとする。
俺はその隙を与えず再び剣を掲げ、意思を持って剣に力を注ぐイメージをする。
再び体から力が抜ける感じがして剣に少しだけ威力が加わる。
そのまま振り下した剣がホーンラビットの頭に叩きつけられてホーンラビットはそのまま絶命した。
「ふぅ」
俺はホーンラビットを仕留めた後も残心し、反撃が無いことを確認して一息つく。
俺達は今、初心者案内人のトリニティに連れられ王都エレミアの南にあるザウスの森でモンスター相手に戦闘をしていた。
「お見事。凄いね、ちゃんと戦技を使えてるね。
いくら初期戦技とは言え初心者である異世界人が戦技を使おうとしても難しいって話だよ」
戦技と言うのはVRMMOでお約束とも言うべき必殺技みたいなものだ。
ゲーム的要素を一切廃止したAIWOnと言えど、それなりに遊び心はあった。
トリニティから戦闘における心構えから剣による攻撃方法などをアドバイスしてもらい、戦闘には主に戦技と魔法を駆使して戦うものだと聞いたのだ。
因みに俺が今使った戦技は剣戦技・スラッシュと言い、魔力を消費して剣の威力を少しだけ上げる誰でも使える初期戦技だ。
他にも槍戦技や斧戦技、果てまで拳戦技や蹴り戦技なんてものもあるらしい。
それらの戦技を使うためにはそれなりに練習が必要なのは言うまでもない。
「そうなのか? 魔力を消費する感覚がちょっと慣れないけど、他のVRでも似たような技はあるから使うのには簡単なんだがな」
「VRってのはよく分からないけど、鈴鹿さんはもしかして凄かったりする?」
「俺が凄いんだったら他の奴はもっと凄いんじゃないのか?」
唯姫とか廃人プレイヤー達はそれなりにVRMMOをやり慣れているからAIWOnと言えど、そんなに苦労はしてこなかったんじゃないだろうか。
「それはそうと、初戦闘はどうだった?」
「まぁ、なんていうか結構精神的にクルものがあるな」
俺が今斬ったホーンラビットから飛び出したのは血のエフェクトではなく血そのもの。
ポリゴンを斬った感触ではなく、肉を斬る感触。
そして何より倒した後に残るのはドロップアイテムなんかじゃなく、紛れもない命の失われた死体。
いくらVRとは言えこれはリアルすぎるだろう。
既にゲームを通り越して現実そのものと言っても過言ではない。
キャッチコピーの「現実を越えた現実」「もう一つの現実世界」は伊達ではないな。
これは気を引き締めていかなければならない。
ゲーム感覚でいれば間違いなく痛いしっぺ返しを食らう事だろう。
「異世界人にとってはそうでしょうね。
異世界では武力による争いが無いって聞きます。そのせいか大抵の異世界人はなんていうかお遊び感覚でこの世界に来ているみたいな感じなんですよ。
だから命のやり取りをする戦闘をしたらパニックになる人が多くて・・・」
それはそうだろうな。
俺達にとってはこの世界はゲームなんだから。
戦闘にしたって今までのVRなら経験値稼ぎでしかないんだし。
「それで俺達にいきなり戦闘を経験させようとしたのか」
「そうですね。
これはあたし流の案内なんですけど、一番初めにこの戦闘行為を行う事によってこの天と地を支える世界での生きる覚悟を決めてもらう事にしてるんですよ」
このトリニティの流儀には俺も賛成だ。
これはある意味平和ボケしている俺達に活を入れる意味でも十分な効果がある。
「今度はアイさんの番だな」
俺が戦闘をしている間、アイさんはトリニティと一緒になって俺の戦闘を見ていた。
取り敢えず最初は俺が戦闘を経験すると言うことで先番を譲ってもらったのだ。
「私はいいわ。今の鈴鹿くんの戦闘を見ていて十分為になったもの」
「そうは言うけど見てるのと実際やるのとでは感覚が違うと思うぞ」
もっともアイさんは電脳警備会社として色んなVRを経験してきているだろうからVRMMOの戦闘も大丈夫なんだろうけど・・・
流石にこのAIWOnは他のVRMMOとは違うからやっておいたいいだろうと再び進言しようとすると、アイさんはあさっての方向を見ておもむろに口を開いた。
「3時の方向から生命反応が4つ近づいて来ているわ」
「え!? ちょ! アイさんって気配探知が出来るんですか!? 初心者なのに!?」
アイさんの突然の技術にトリニティは驚いている。
もちろん俺も驚いていた。
いくら他のVRを経験していようと、そこまでは影響は無いはず・・・
「まぁ、丁度いいわ。鈴鹿くんの言う通り今度は私が戦闘を経験してみるわ」
そう言いながらアイさんは腰に下げている2本のうちの水色の剣を抜いた。
水色の剣は鞘も柄も水色だったが、その刀身までも透き通るような水色だった。
「グルルルルルル・・・」
現れたのは淡い青色の毛の狼だった。
数はアイさんが気配探知した通り4匹。
「ウェアウルフだわ・・・
もう少し森の奥に行かないと出ないモンスターなのに、こんなところまで来るなんて」
狼との戦闘で厄介なところは集団で襲ってくることだ。
それがモンスターとしてそれなりに力があるのだとすれば尚更危険極まりない。
俺はアイさんに助太刀しようと剣を抜こうとするが、アイさんはそれを手で制し悠然と狼たちの前に出る。
「さぁ、掛かってらっしゃい。それともただ見ているだけの臆病者かしら?」
アイさんがウェアウルフたちを挑発すると4匹が一斉にアイさんに襲い掛かる。
「ふっ!」
アイさんが水色の剣を横一線すると2匹のウェアウルフの首が飛ぶ。
残りの2匹は構わずにアイさんに突撃し噛み付こうとするが、アイさんは華麗に狼たちの咢を避けそのまま背後を取る。
アイさんは剣を振り下しウェアウルフを斬り裂き、そのまま振り下した剣を掬い上げて最後の1匹を斬り伏せた。
気が付けば戦闘は一瞬で終わっていた。
「ねぇ・・・アイさんって初心者なんですよね・・・?」
「・・・そのはず」
余りにもアイさんの戦闘が凄すぎてトリニティは思わず信じられないとばかりに呟いていた。
俺もアイさんの戦闘に見とれていた。
アイさんの持つ祝福による剣が凄いのか、アイさんの戦闘技術が凄いのか。
そんなアイさんはさも当然とばかりに剣を振り血を払いながら鞘に仕舞ってこちらに歩いてくる。
「うーん、やっぱり鈴鹿くんの言う通りだね。見るとやるとじゃ全然違うわ。
結構生々しい感じがするし、魔力を消費する感覚は他のVRじゃ無い感覚だわ」
「あんな一瞬で終わらせておいてその感想・・・?」
「それは経験の差としか言いようがないわね」
アイさんは苦笑しながら言ってくるが、そこまでの経験を積み上げるのにどれだけの時間、どれだけのVRを経験してきたんだか・・・
「まぁ、少なくともこれでこの世界の事を少し理解してもらえたと思います」
トリニティは気を取り直して案内人としての仕事を全うしようとする。
「それでお二人は剥ぎ取りとかは出来ますか?」
それは所謂モンスターの解体作業の事か・・・?
現代人として生き物の解体作業なんて普通は経験は無い。
当然動物に近いモンスターとは言えど、解体なんて出来るはずもない。
「ですよね~。
まぁこれから覚えて行けばいいので今回はあたしがやりますね」
他にモンスターが近づいてこないかアイさんが警戒をし、トリニティがホーンラビットとウェアウルフの剥ぎ取りをすることになった。
俺はトリニティの傍で解体作業を見る事にする。
しかし戦闘の生々しさと言い、この解体作業と言い、リアルすぎるこのAIWOnが何故大人気なんだろうか。
普通であれば忌避される要素が有りすぎるのに人気が衰えることは無い。
これはあれか? 今までに無いVRMMOと言う事で逆にそれが人気に拍車を掛けていると言う事だろうか。
簡単すぎる操作よりも手間がかかる作業を、楽よりも苦労を、ゲーム風よりもリアル風をと言う事なんだろう。理解しがたい感覚ではあるが。
俺が考察している間にもトリニティは剥ぎ取りを黙々と進めている。
今回の戦利品はホーンラビットの角と毛皮、ウェアウルフの毛皮、そしてホーンラビットとウェアウルフの肉だ。
但し流石に6体もの肉を持てないのでホーンラビットとウェアウルフのそれぞれ1体ずつを血抜き作業をして持ち帰ることとなった
因みにこれらの戦利品は素材屋等に売ってお金に換える。
肉の方は売らなくても自分たちで食べてもいいのだが、生憎肉を捌くほどの料理の腕前は無いので普通に素材屋か料理店へ卸すこととなる。
「さて、もし宜しければもう少し狩りをしていきませんか?」
案内人は荷物運びも兼ねているので、トリニティは大型の革のバックを用意していた。
2体の肉と角と毛皮を入れてもまだ少し余裕があったので、折角森まで来たのでどうせならとトリニティは提案してきた。
「俺は構わないぞ。アイさんは?」
「そうね、もう少し戦闘に慣れておいた方がいいからいいわよ」
俺達は王都に帰りがてらもう少しモンスターを狩っていくこととなった。
「ところでアイテムボックスなんて魔法なんかないのか?
あれば戦利品もたくさん持ち帰れるんだがな」
AIWOnは現実志向なので他のVRMMOにありがちな無限に収納できるアイテムボックスの機能は無い。
なのでこういう戦利品の持ち帰りの時は何かと不便だ。
「あることはあるんですが・・・アイテムストレージの魔法は時空魔法なんですよね。
時空魔法の使い手は今までたった1人しか確認されてないんですよ」
「それってさっき言っていた七王神の1人、時空神とかいう奴の事か?」
「そうなんですよ。彼しか時空魔法が使えないのでアイテムストレージの魔法は実質使用不可能ですね。
後はアイテムストレージよりはいくらか制限はありますが、闇属性魔法のシャドウゲージと言うのがありまね。ただ何分闇属性なので使用者が少ないんですよ」
ゲームではありがちだが、確かに闇属性と言うのはイメージが悪いからな。
だがこちらは使い手が居ないわけではないので覚えておいても損は無い。いずれ暇があれば覚えてみよう。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
初心者案内人を雇い、この世界の現実さを見てそれなりに出だしがいいと思っていたが、現実はそう甘くは無かった。
事件は王都へ帰る途中の何度か目の戦闘後に起こった。
ある程度戦闘に慣れて油断していたのだろう。
アイさんと一緒に襲い掛かってきた数匹のウェアウルフを蹴散らして残心を怠っていた隙を突かれた。
トリニティは案内人としてそれなりに戦闘訓練はしてあるが、基本的に案内だけで戦闘行為には参加しない。
そんな彼女はおもむろに腰に下げたロープを取出し放り投げる。
「ロープバインド!」
すると放り投げられたロープは生き物のように俺とアイさんに迫り体を縛り上げた。
俺達は為すすべもなく地面に転がされてしまう。
「なっ!? トリニティ! どういう事だよ!」
「どうもこうも見たまんまだけど? と言うかあんたらあたしを信用しすぎ。普通もう少し警戒するもんだよ。
まぁ平和ボケした異世界人だから仕方ないか。案内人ギルドだと言うのも信用を買ってたみたいだし」
トリニティは今まで案内人として丁寧な口調をしていたが、本性を現したので言葉使いもぞんざいになっていた。
「初心者案内人だってのも嘘だったのか?」
「残念、あたしが案内人だって言うのは本当だよ。
まぁ普通であれば何事もなく案内人の役割を全うしてたんだけど、今回は思わぬ獲物が飛び込んできたんでね」
トリニティはそう言いながら俺とアイさんの懐を探り革の財布を取り上げる。
初期配布アイテムの革の財布中には初期所持金として1,000ゴルド――銀貨1枚が入っていた。
トリニティに案内人の前金として1ゴルド払っていたので財布の中身は小銀貨9枚と銅貨9枚、小銅貨9枚と結構かさばる重さになっていたが。
「えっ!? うそっ!? 金貨がこんなに!?」
アイさんの財布の中身を確認していたトリニティが驚きの声を上げていた。
普通であれば俺と同じように初期所持金として1,000ゴルドのはず。
祝福の影響は所持金にも影響があるのか・・・?
「これは予想外の臨時収入だね。
まさか本命より財布の中身の方がいい稼ぎとは」
俺達から盗んだ財布を懐に仕舞いつつ、トリニティはアイさんの腰に下げている水色と青色の剣を取り上げる。
「なるほどね。祝福で授かった私の剣が目的だったわけね。確かにこの剣を売り払えばかなりの稼ぎになるものね」
「ま、そういう事。ランクが低いとは言え、祝福装備だからね。
欲を言えばその鎧も持ち帰りたいところだけどロープは外せないからお預けだね」
最初は普通に案内人をするつもりでいたが、アイさんの祝福装備を見て今回の強盗に切り替えたと言う事か。
「それで、俺達はこれからどうなるんだ?」
「悪いけどそのまま放置だよ。運が良ければ助かるかもね」
「息の根を止めて行かなくていいのか? 万が一俺達が生き残ったら衛兵に通報されるとか思わないのか?」
「そんなことしたら傷跡から剣で殺したってばれるじゃないか。まぁ万一生き残ったとしてもすっとぼけるだけさ。あたしがやったって証拠が無いしな」
いや、何言ってんだ? 証拠はありまくりだろう。
「その祝福装備から足が付くじゃないか。
門番に俺達と一緒に居るところを見られているんだ。少し調べればその剣がアイさんのだって分かる事だろう。
万一俺達が生き残った場合、どんな言い訳をするか分からないがその剣を持っている理由が不自然じゃないのか?」
「う、うるさい! そんな事よりお前らがここから生き残ることを心配しろよ!」
あまり深く考えていなかったのか、トリニティは俺が指摘したことに動揺していた。
まぁ、今回の強盗も突発的な思い付きだったらしいからそこまでは考えてなかったのだろう。
トリニティにとっての最善はここで俺達を間違いなく始末する事だが、彼女はそこまでの覚悟を持ってやっているわけじゃないみたいだ。
根っからの悪党ではなく、どちらかというとよくある大それたことが出来ない小悪党ってとこだろう。
「いやぁ、俺達の心配より自分の心配をした方がいいと思うぞ?」
「はぁ?」
何故なら俺と一緒に縛られているアイさんが何やらぶつぶつと呪文みたいな言葉を呟いていたからだ。
「ウインドカッター!」
アイさんの言葉と同時に俺達に向かって小さな風の刃が降り注ぎ縛っていたロープを斬り裂いた。
ロープを斬られたのを見てトリニティは慌てて身を翻しこの場から逃走を始めたが、すぐさま追いかけた俺によってあっさり捕まってしまう。
トリニティはただでさえ戦利品の入ったバックを担いでいるんだ。いくら逃げ足が速くても俺の脚力をもってすれば簡単に追いつくに決まっている。伊達に歩法を主とした疾風迅雷流空手を習ってるわけじゃない。
「くそっ! 何で魔法が使えるんだよ!? やっぱりお前初心者だってのは嘘じゃねぇか!」
俺がトリニティを抑えている間、アイさんが切られたロープを持ってきて逆にトリニティを縛り上げた。
その間トリニティはアイさんを憎々しく睨みつけていた。
「あら、初心者だってのは本当よ。私このAlive In World Onlineは初めてだもの」
「嘘付け! だったら何で初心者がいきなり魔法なんて使えるんだよ!」
「さぁ? それは乙女の26の秘密の1つと言う事で」
26個も秘密があるのかよ。って言うか乙女って・・・あ、いや、何も言うまい。
「くそ、虎紛いの事までしたのに何たる様だよ・・・」
「虎?」
「・・・多分、符丁の事ね。トリニティ、あなた盗賊ギルドに所属してるわね?」
アイさんの言葉にトリニティの表情が強張る。
「盗賊ギルドってのは犯罪者集団か何かってことか?」
「違う! 盗賊ギルドは犯罪者なんかじゃない! 何も知らない異世界人が勝手な事を言うな!」
「まぁ、犯罪者集団じゃないけどそれに近いものはあるわね。
光あるところに影があるように、国の発展には盗賊ギルドは付きものよ。
符丁には犬は国の密偵、鼠は情報屋、猫は窃盗、蛇は暗殺者と言った感じで付けられているわ。虎はさしずめ強盗って言ったところかしら」
ふーむ、盗賊ギルドは国おかかえの義賊組織ってところなのか?
必要悪と言う事なのだろう。
「あたしは元々は猫なんだ。今日は虎の真似事をしただけで虎じゃない」
「じゃあ何で虎――強盗の真似事なんかしたんだ?」
トリニティは少しの間黙っていたが、捕まっている現状を思い出し渋々理由を述べた。
「こ、今月のスリの稼ぎが悪くてギルドに収めるノルマが足りないんだよ。だから何としても稼ぎを出さなきゃならなくて、前に仲間に聞いた虎の真似事で補填しようとしたんだ。
一度くらいならばれはしないし、異世界人はこの世界に来る時女神アリスから支度金として必ず1,000ゴルドは持参しているって聞いたんだ。
それに異世界人は死んでも異世界へ戻るだけだから何も心配はないって」
なんとまぁ。命を狙われた理由がスリの補填って・・・
確かに俺達プレイヤーは必ず初期所持金としてお金を持っているから狙い目としては間違っては無いが、あまりにも計画がずさんなような気がするのだが。
「そう言えばアイさん、俺達はこの世界で死ねば復活は出来ないって聞いたけどその辺はどうなんだろう?」
「そうね、この世界で死んだらそれまでよ。他のVRMMOみたいに復活は無いわ。つまりこの世界でも命は1つだけ。
まぁ一度死んでしまった後に再び新キャラでログインは可能だけど、その場合は1か月経たないとログインは出来ないようになっているみたい」
何だと・・・!?
それじゃあ何か? ここで死んでいたら1か月も時間をロスしていたと言う事なのか?
只でさえ時間が無いのにおちおち死んでられないと言う事か。
「ところでこれ縛り上げたのはいいけど、鈴鹿くんこの後どうするの?
仕返しにここに放置していく? それとも衛兵に突き出す? 盗賊ギルドに放り投げる?
私はパーティーリーダーである鈴鹿くんに従うわよ」
いつから俺がパーティーリーダーになったんだ?
まぁ俺の目的は唯姫の捜索でアイさんは俺の補佐役で来ているから俺がリーダーなのはその通りなんだが。
トリニティはさっきまで威勢を張って睨んでいたが、アイさんが盗賊ギルドに放り投げると言った瞬間急に怯えだしてしまった。
そりゃあ盗賊行為に失敗しましたってなれば盗賊ギルドのメンツにも関わるし、それなりの制裁も待っているだろう。
・・・そう考えれば簡単に口を割ったトリニティは盗賊としては未熟としか言いようがないな。
俺は暫く考えて答えを出す。
「俺はトリニティを許そうと思う」
俺の答えにトリニティは驚愕の表情で俺を見てくる。
アイさんは答えが分かっていたかのように落ち着いて聞いていた。
別にトリニティが可哀相だからとかいう訳じゃない。
彼女のやったことは許されることではないし、この世界にとっても立派な犯罪なはずだ。
普通なら衛兵に突き出すところだろう。
だがそれをやらないのには訳がある。
「但し無罪放免とはいかない。条件がある。
俺の目的はこの世界に居る幼馴染を探すことだ。だからトリニティにはそれをサポートしてもらう。
具体的にはこの世界に不慣れな俺達への補佐、幼馴染を探すための盗賊ギルドの情報提供だな」
トリニティは二つの組織に属している。案内人ギルドと盗賊ギルドの両方だ。
案内人ギルドとして引き続きこの世界を案内してもらうし、盗賊ギルドとして唯姫の行方を探してもらう。
案内料や情報料? そんなの今回の件の見返りとして無料でやってもらうに決まっている。
「この条件を飲めないんだったら、衛兵か案内人ギルドか盗賊ギルドのどれかに突き出すまでだ。
どれに突き出してもらいたい?」
俺は断れないと分かっているトリニティに意地悪そうに聞く。
盗賊ギルドもだが、案内人ギルドもこんなことをされれば信用に関わる事なので突き出されたらトリニティにそれ相応の罰が待っているだろう。
「あんた意地が悪いぞ。どうやってもあたしの答えは1つしかないじゃないか」
そう言いながらトリニティは渋々俺達お抱えの案内人兼盗賊となった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
AIWOn情報交換スレ333
63:名無しの冒険者:2059/05/02(火)08:10:11 ID:J9lnT4nHR
AIWOnのwikiって情報少なくね?
63:四季葉・明日香・嵐昏:2059/05/02(火)08:12:13 ID:EVA2014Snd
あんた馬鹿?
そんなの少し考えれば分かるじゃない
64:名無しの冒険者:2059/05/02(火)08:14:25 ID:gGa444AsSin
まぁ普通であればwikiは攻略情報の宝庫でござる
65:名無しの冒険者:2059/05/02(火)08:15: 01 ID:OrE49BneOv
そこはAIWOnだからとしか言いようがないなw
66:名無しの冒険者:2059/05/02(火)08:16:11 ID:J9lnT4nHR
どういう事だよ?
67:名無しの冒険者:2059/05/02(火)08:17:41 ID:Ang8Dvl666
あの世界には盗賊ギルドなるものが存在するんですよ
68:名無しの冒険者:2059/05/02(火)08:19:34 ID:need9kill9
あ、盗賊ギルドと言うのはダンジョンの罠鍵担当だったり
情報を扱ったりする組織だね
69:名無しの冒険者:2059/05/02(火)08:20:11 ID:J9lnT4nHR
いや、さっぱり分からないんだが?
70:四季葉・明日香・嵐昏:2059/05/02(火)08:20:13 ID:EVA2014Snd
あんた馬鹿?
少しは頭使いなさいよ
71:名無しの冒険者:2059/05/02(火)08:22:01 ID:OrE49BneOv
まぁつまりあの世界は情報はお金になるんだよ
72:名無しの冒険者:2059/05/02(火)08:24:25 ID:gGa444AsSin
そういう事でござる
有益な情報はwikiに載せるより向こうの世界の盗賊に売ればお金になるでござるよ
73:名無しの冒険者:2059/05/02(火)08:26:34 ID:need9kill9
Wikiに載せたとしても情報の価値が下がらないよう直ぐに削除されるよ
そして削除した(wkiで発見した)人が向こうで情報を売ってぼろ儲け
なんせ情報はwikiからタダで入手してるものだかね
74:名無しの冒険者:2059/05/02(火)08:29:11 ID:J9lnT4nHR
ちょっ!? そんなんありなのか!?
ええ~~~!? じゃあwikiの情報は当てにならないのか・・・
75:名無しの冒険者:2059/05/02(火)08:31:41 ID:Ang8Dvl666
まるっきり当てにならないわけじゃないですよ
AIWOnの基本的情報と価値の無くなった当たり前の情報が載せてありますから
76:名無しの冒険者:2059/05/02(火)08:32:01 ID:OrE49BneOv
当たり前すぎる情報は普通に載せているぞ
77:名無しの冒険者:2059/05/02(火)08:34:25 ID:gGa444AsSin
どうしてもAIWOnの攻略情報が欲しかったらこの板の過去ログを探るか
AIWOnで盗賊を仲間に入れることをお勧めするでござる
78:四季葉・明日香・嵐昏:2059/05/02(火)08:35:13 ID:EVA2014Snd
盗賊を仲間にするときは身ぐるみはがされない様に気を付けておくことね!
79:名無しの冒険者:2059/05/02(火)08:36:01 ID:OrE49BneOv
因みに今最も高値で取引されているのはエンジェルクエストの情報だな
今回トリニティが行った虎――強盗は初めてだったので穴だらけです。
本来であればトリニティが聞いた仲間――先輩が取った方法は、プレイヤーが教会から出てくるのを待って外で接触する、王都の門から出るときにプレイヤーを先に生かす又は後から来てもらう、森に入ってから縛り上げた後モンスターを引き連れて餌にする、と言った風に第3者に見られない様にするのが基本です。
トリニティの取った方法は後日必ず捕まります。
次回更新は12/29になります。