表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Alive In World Online  作者: 一狼
第8章 Intelligence-Inspiration-Imagination
42/83

41.知恵と直感と想像

 羽鳥人(ハーピー)・チキル種は真っ赤な髪と純白の羽を持ち、黄金の卵を産む獣人だ。

 その生態ゆえ、貴族のみならず一攫千金を狙う冒険者にも狙われている種族でもある。

 俺の知っている限りでは、深緑の森の奥深くで人馬(ケンタウルス)蛇人(ラミア)の村で守られているはずだ。


 それが目の前で奴隷として扱われていた。


「貴様、獣人の分際で稼いでいるからと言っていい気になっているわけでは無いだろうな。

 先ほども賭け腕相撲とやらで騒いでいたらしいじゃないか」


「少なくとも賭け腕相撲は都市長様もお認めになられたギャンブルです。何か問題があるのなら都市長様にお願いしますよ」


「・・・ふん、獣人如きが生意気な。いずれその生意気な口を利けなくしてやる。精々今のうちに残りの人生を謳歌しておくんだな」


 そう捨て台詞を吐きながら貴族様は奴隷獣人を引き連れて出ていく。

 俺はこの一連の光景を見て思わず呟いてしまう。


「・・・なんだ、ありゃ」


「この都市の貴族は俺が獣人でありながら稼いでいる事や使徒であることが気に入らないんだよ。

 事あるごとにああやってちょっかいを掛けてくるんだ。

 今回はまぁ、嫌がらせをしないだけましだったな」


 ハーティーも人族至上主義だったが、これに比べればハーティーの方がまだマシだったな。

 こうまで露骨に獣人を見下してくるとは・・・扱いも酷そうだ。

 あの貴族が引き連れていた獣人は生傷も絶えないようにも見えたし、何よりも目が死んでいた。


「つーか、何で獣人を引き連れていたんだ? 意味がなさそうに見えるんだが。

 しかも獣人たちを見れば如何にも暴力を振るわれているってアピールしているじゃないか。奴隷法とかじゃ違法なんじゃ?

 羽鳥人(ハーピー)のチキル種なんか、もろ違法だろ」


「ああ、あれは、どれだけ獣人奴隷を従えているか誇示しているだけの貴族の見栄っ張りだな。後は獣人は逆らうとこうなると言う見せしめでもある。

 奴隷法は・・・ここではあってないようなものだ。あまり大きな声じゃ言えないが、役所やら騎士団やらは貴族の息が掛かっていて色々と裏取引がされてんだよ」


「・・・腐ってんな」


 あまりの実態に俺は呆れた声しか出なかった。


「腐ってんのは人族至上主義だけであって、それ以外はまともな都市なんだ。意外な事にな」


 いや、それだけでも十分まともじゃないと思うぞ?


「獣人であるバダックは何も思うところは無いのかよ」


「・・・さぁな。今の俺は自由奴隷の身分だ。都市からの命令には従わなければならないさ」


 さっきの貴族への態度を見るからにバダックも何か思うところがあるんだろうな。

 余計な横やりが入った所為で白けてしまったが、気を取り直してバダックは酒盛りを続けた。


 もう30分くらいしてからトリニティ達が帰ってきた。


「あれ? なんかあったの?」


「まぁ、ちょっとな。それより『知恵の使徒』の居場所はちゃんと調べて来たのかよ」


 どうやらトリニティは場の空気が少しおかしい事に気が付いたみたいだ。

 この件に関してはおいそれと解決できるようなものでもないので、取り敢えず後で話すことにして先に『知恵の使徒』を片づけることにした。




◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 トリニティの案内で俺達は『知恵の使徒』の元へと向かう。


「で、どうやら向こうもあたし達を待っていたみたいでね。結構あっさりコンタクトが取れたのよ」


「は? 何で『知恵の使徒』が俺達を待っていたんだよ? ・・・会ったことないよな?」


 トリニティが『知恵の使徒』の居場所を探っていると、向こうから連絡があったと言う事らしい。

 具体的には小竜を連れた男1女2のパーティーが自分を訪ねるのであればブルブレイヴ神殿に来て欲しいと。


「会ったことは無いわよ。多分」


「何かの罠なんじゃないのか?」


「そこら辺は大丈夫よ。盗賊ギルドも裏をちゃんととっているらしいから」


 盗賊ギルド経由の情報か。確かにガセネタを捕まえさせられたとなっては盗賊ギルドの信用に関わるから信憑性は高いか。


 多少の疑問を感じながらも俺達はハレミアのブルブレイヴ神殿に到着する。

 神殿の巫女さんに取り次いで『知恵の使徒』の居ると思われる部屋へと案内された。


 そこに居たのは緑髪の眼鏡を掛けた童顔で、150cmの小柄な身長にスレンダーな体型の少女が居た。

 但し人間ではなく、耳が尖っている種族――エルフだった。


「初めまして。私は『知恵と直感と想像の使徒・Intelligence‐Inspiration‐Imagination』のソフィアテレサだ。

 見ての通りエルフだ。こう見えて歳は200歳を超えている」


 え゛? どう見ても15・6の少女なんだが。

 幾らエルフが人間の4倍以上生きていると言っても若すぎだろう、これ。


「えーと、俺は鈴鹿だ。エンジェルクエストを攻略している冒険者だ」


「あたしはトリニティ。このパーティーの情報担当を担っている盗賊(シーフ)よ。

 で、この子はスノウ。小っちゃいけど立派なドラゴンよ」


「クルゥ」


「私はアイよ」


「知っているとは思うが、俺はバダック。『力の使徒』だ。今は鈴鹿達のクエスト真っ最中だな」


「ほう、まさか『力の使徒』までも来るとは予想外だな。だがこれは嬉しい予想外だ」


 バダックが自己紹介をするとソフィアテレサが少し目を見張った。

 何やら意味ありげに呟いている。


「なぁ、初めましてと言ったが、あんたは俺達を待っていたみたいだ。どういう事だ?」


「何だ、そんなに私が君たちを待っていたのが不思議なのか? 少し考えれば分かる事でもあるだろうに」


 いや、分からんて。


 『知恵の使徒』の名を冠しているだけあって、ソフィアテレサは頭がいいのだろうか?

 頭がいい人の典型的な性格で常人を見下すようなことが無ければいいのだが。


「ああ、そう言う事ね。『神託の使徒』の神託を受けたのね」


「そう言う事だ。今日この場に君たちが現れることを神託で受けていたんだ」


 ああ、なるほどな。


 アイさんの答えに俺は納得する。

 そう言えば獣人王国でも臨時軍師として雇われていて『神託の使徒』に神託を賜って奴隷市を襲ったテログループを未然に防いでいたっけ。


「私は人助けが趣味でね。この都市で行おうとしている人助けに君たちから助力してもらえると神託を受けたんだ。

 ただ、ここに『力の使徒』まで来るとは思ってもみなかった。これは嬉しい誤算だ」


「人助けが趣味って・・・もしかして獣人王国の臨時軍師も人助けの一環なの?」


 トリニティも思い出したのか、ソフィアテレサが獣人王国でしてきたことも人助けなんじゃないかと思ったみたいだ。


「うむ、その通りだ。私はこれまでに200年溜めこんだ知識を使い、人々の役に立てるようにとその知識を奮っているんだ。

 軍師はその一環だな。特に軍師は知識を奮うのに最適な職業と言えよう」


 おおう、200年生きていればそれだけ知識も溜まるよな。

 あれ? もしかして、あのことも何か知ってたりするのか・・・?


「私は『知恵と直感と想像の使徒』だが、全ては知識が元になっていると思う。知識を元に知恵と直感を働かせ、想像する。

 おそらくだが、女神アリス様は私の知識を役に立てよと使徒に任命したのではないかと思うんだ」


「あー、確かに使徒に任命される奴は何かしら理由があるよな」


「ほう、やはりバダック殿もそう思うか。バダック殿がどういった経緯で使徒に任命されたのかは気になるが、おいそれと聞いてもいいのではないだろうな」


 まぁ、おそらくバダックの使徒任命は、自由奴隷が何かしら関係しているのだろう。

 ソフィアテレサもそれを察してそれ以上は聞いてはこなかった。


「で、あたし達は何をすればいいわけ? 人助けって言っても誰をどう助けるのかすら聞いていないんだけど」


「いやいや、待て。その前に俺達は『知恵と直感と想像の使徒』のクエストを受けに来たと言う事を忘れるな。

 まぁ、その人助けがクエストになるんだろうけど」


 トリニティは既に人助けをする気満々なのだが、俺達はクエストの内容すら聞いていなんだよ。

 場合によっては人助けは本当に趣味で、クエストはまた別だと言う事すらあり得るのだ。

 尤もその心配は無いようだった。


「ああ、鈴鹿君の言う通り私の人助けがクエストになる。

 但し覚悟してもらいたいのは、今回の人助けは一筋縄じゃいかない。下手をすれば命の危険性もあるうえ、社会的な破滅もあり得る。それでも受けてくれるか?


「愚問だな。命の危険はエンジェルクエストなら当たり前だし、社会的破滅も関係ねぇよ」


「ちょっとぉ、もっと詳しく聞こうよ。鈴鹿は異世界人(プレイヤー)だから社会的破滅って気にならないだろうけど、あたし的には困るかもしれないじゃない。

 あ、でもクエストを受けるのには間違いはないわよ」


「心配しなくてもそれくらいで怖気づく人はここには居ないわよ。少なくともこっちも人助けの為にエンジェルクエストを受けているようなものだし」


「あ、俺は元々クエストで鈴鹿達に従うってんで、異論はねぇよ」


 俺達を見渡し、頷いたソフィアテレサはにっこりとほほ笑む。


「有りがたい。今回の人助けは流石に私1人じゃきつかったんだ。これだけの人手があれば確実だ」


「で? この際命の危険は置いておくとして、トリニティの気にしている社会的破滅って何なんだ?」


 さっきはさらっと流したが、トリニティの言う通り言われてみればこの世界で活動するのに破滅させられると身動きが取れなくなる可能性がある。

 例えば冒険者資格とか剥奪されたりすれば、町の出入りやら最悪エンジェルクエストの受注が無効化されたらこれまでの時間が無駄になってしまうからな。


「何、これから獣人奴隷を助けるために第四衛星都市ハレミアに喧嘩を売りに行くから、下手をすれば貴族共に恨まれ社会的身分が破滅する可能性があるだけだ」


 ソフィアテレサの何気ない言葉に俺達は思わず絶句する。




◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 トリニティとアイさんがソフィアテレサが獣人王国で手に入れた情報を元にハレミアの奴隷事情を調べに向かう。主に獣人奴隷に関することを探りに。

 バダックは違法獣人奴隷の協力者に心当たりがあると言う事で、その人物を呼びに行っている。

 何でも人族至上主義を掲げるハレルヤの貴族の中で、唯一人族獣人共存主義を掲げている大物貴族らしい。


 そして残った俺とソフィアテレサはこの町の奴隷商の商品の出入りの書類について目を通していた。


「で、鈴鹿君は何を聞きたいのだ?」


 2人っきりになるとソフィアテレサはおもむろに俺に質問を投げかけた。


「・・・何で俺が聞きたい事があるって分かったんだ?」


「それは勘だよ」


 流石は『知恵と直感と想像の使徒』と言ったところだろうか。

 俺はソフィアテレサが200年掛けて溜めこんだ知識と、使徒としてのその知恵と直感の力を借りれば俺の目的の情報が得られるんじゃないかと思ったのだ。


「ならまどろっこしい事は抜きだ。アルカディアについて何か知っていることは無いか?」


「アルカディア・・・エンジェルクエストの報酬の事か?」


「ああ、俺は幼馴染を助けにアルカディアに行かなければならない。だがそのアルカディアの情報が一切出てこなくてな」


 俺は唯姫が異世界人(プレイヤー)として天と地を支える世界(エンジェリンワールド)に降り立ち、エンジェルクエストをクリアしてアルカディアに向かった事と、その所為で異世界(テラサード)で唯姫の体が眠りから目が覚めない事を伝えた。


「ふむ、なるほど。君の幼馴染はアルカディアに行ったっきりで戻ってこなくなったと。

 確かディープブルーと言ったか? 彼女の事はよく覚えている。アルカディアに意欲的だったからな。あれからの事を考えると間違いなくそこへ到達したのだろう」


 どうやらソフィアテレサは唯姫の事を覚えていたみたいだ。

 廃人ゲーマーの性でエンジェルクエストを貪る様に攻略していったのだろう。ソフィアテレサにはその時の印象が強かったと見える。


 因みにこれまでの使徒に唯姫の事を聞いたら、覚えているのは殆んどいなかった。

 その他の使徒にとっては唯姫はエンジェルクエストを攻略する冒険者の内の1人にしか過ぎなかったのだろう。

 『災厄の使徒』は聞きようがないが、神狼フェンリルは流石に人の顔1人1人覚えるまでには至っていないし、ハーティーやマクレーンは上記の覚えていないそうだ。

 唯一『探求の使徒』『正しき答えの使徒』『偽りの答えの使徒』『神託の使徒』のラナ=クエノスだけは使徒の特性故か唯姫の事を覚えていた。


「しかしいいのか? その情報だと、君もアルカディアに行って戻ってこれなくなるぞ」


「その辺りはたぶん大丈夫だ。おそらくだが非常脱出用の出口があるはずなんだ。

 その出口を見つける為にもアルカディアの内部の状況などを知りたいんだが、どうだ?

 ソフィアテレサは何処までアルカディアの情報を掴んでいる?」


「これまたおかしな話なんだが、私は使徒でありながらアルカディアの事は何も聞かされていない。おそらく他の使徒も同様だろう」


 やはりか・・・どれかの使徒ならアルカディアの事を知っているのではと思ったが、使徒はあくまで女神アリスから天地人(ノピス)が任命されただけで何も知らないのだろうし、知らされていないのだろう。


「だが、私の想像で良ければ話そう」


「っ! 分かるのか!?」


「言ったろ。あくまで私の想像になるがな。

 鈴鹿君はアルカディアの事をどこまで知っている?」


「アルカディアの名前がはっきり出ているのはエンジェルクエストの報酬にだな。

 そしてここからは噂の類いだが、アルカディアは神の世界で争いの無い楽園、神の力を授かる場所、永遠の命を与えられる世界とも言われている」


 俺の知っている情報にソフィアテレサは鷹揚に頷く。


「そうだ、それはほぼ間違いない。但しそれは『神』にとっての世界の事だろうな」


「どういう事だ?」


「この世界は8人の神――八天創造神が創り、太陽神サンフレアと月神ルナムーンと勇猛神ブルブレイヴが支え、天使エーアイが治めていたと言われている。

 そして100年前に八天創造神の1人の神が裏切り、天使エーアイに魔王の力を与えて世界を混沌に陥れようとした。

 それを防いだのが7人の冒険者。後の七王神だな。一番有名なのが巫女神フェンリルだ」


 それは一番最初に天と地を支える世界(エンジェリン)に来た時にトリニティから初心者案内人(ビギナーガイド)として聞いていたな。


「八天創造神はアルカディアに住まい、魔王エーアイを倒した七王神をアルカディアに招いて神にしたと言われている。

 それがエンジェルクエストの報酬で神の力を授かると噂になっているのだろう。

 だが、私の記憶によれば100年前はアルカディアなんて世界は聞いた事も無い」


 そう言えばソフィアテレサは200年生きているんだから、100年前の大災害を体験しているんだよな。

 実体験者の証言はそれだけで信憑性があるじゃないか。


「魔王を倒した七王神は二度と私たちの前に姿を現すことが無かったから神の世界に招かれていたと思っていたが、神の世界=アルカディアだとは何処にも記述されていないんだ」


「じゃあ何処に行ったんだよ」


 そこまで言って俺は気づく。

 そう言えばフェンリルは現実世界(リアル)での23年前のデスゲーム・Angel In Onlineのプレイヤーだったはず。

 Angel In Onlineの運営会社Access社とAlive In World Onlineの運営会社Arcadia社の繋がりを考えれば、その七王神は異世界人(プレイヤー)ではないかと言う事に。


「何処に行ったのかと聞かれれば何処かとしか言いようがない。正に神のみぞ知ると言う訳だ。

 ならその『神』――八天創造神は何処に居る? 少なくともアルカディアじゃない。もしかして・・・いや、これはまだ確証が無い。

 兎も角、アルカディアは最近創られた世界なんじゃないかと私は考える。

 まずは天と地を支える世界(エンジェリンワールド)を創り世界を創る実験をして、準備が整ったから神が住まう世界を改めて創ったのではと」


「なるほどな。だからこそ『神』にとっての楽園ってわけだ」


「そう言う事だ。但しまだアルカディアは完成していないのではないかと思う」


「その理由がエンジェルクエスト、か?」


「何の為に冒険者たちを集めているのかはまでは分からん。だが力ある冒険者がアルカディアに集っていることは間違いない。

 その力を使って『神』が何をしようとしているのか・・・もしかしたら『神』にとって都合のいい理想郷(アルカディア)を創ろうとしているのかもな」


 ここまで話を聞いて俺はソフィアテレサに感心していた。

 彼女はほぼ正確にこの世界の事を理解しているのではないかと。

 はっきりと明言はしなかったが、ソフィアテレサは八天創造神と七王神を同等の存在だと認識しているっぽい。

 つまり八天創造神も異世界人(プレイヤー)ではないかと疑っているのだ。


 そして俺もここまでの話で、八天創造神が責任逃れをした旧Access社幹部、現Arcadia社の幹部ではないかとの考えに至った。

 自分たちを『神』として崇めさせ、自分たちの思い通りになる世界を創りあげる。如何にも悪党がやりそうなことだ。

 それに八天創造神の裏切りの神、これはスケープゴートにされたAngel In Onlineの最高責任者の事じゃないのか?

 そう考えれば色々な事に辻褄が合うような気がする。


「さて、ここまでが私の想像なのだが、想像に想像を重ねるようで申し訳ないが、未完成の理想郷(アルカディア)は鈴鹿君の言う通り緊急脱出路があると思う。

 8人の『神』・・・いや、裏切りの神が抜けたから7人の『神』か。その7人の『神』はお互い自己主張が激しいと言われているので7人全員がそれぞれ脱出路があるのかもしれない」


「『神』がお互い協力していない――?」


「そうだ。八天創造神はあくまでお互いの利益の為に一時的に協力しているに過ぎない――はず。

 それ故に理想郷(アルカディア)の内部もお互いが干渉しない様に世界を構成しているだろう」


 なるほどな。もし八天創造神が現実(リアル)のArcadia社の幹部だとしたらあり得るだろう。何せ欲に塗れた人間様なんだからな。

 何の目的でAlive In World Onlineを創り、その中に理想郷(アルカディア)を創ったのかまでは分からないが、相手が人間であるなら付け入る隙はあるはずだ。

 上手い事『神』の目を欺きながら理想郷(アルカディア)から唯姫を救い出して脱出する。


 そうと決まれば天と地を支える世界(エンジェリンワールド)の八天創造神に付いても少し調べないとな。

 後は、現実世界(リアル)でのArcadia社幹部の情報か。


「サンキュー。随分と助かった。かなり唯姫を救出するめどがついてきたよ」


「私の様な者の知識でも役に立てたのなら嬉しいことこの上ないな。

 だが、気を付けろよ。先も言ったが、力ある冒険者を集めて何か事を為そうとしている。『神』の力に飲み込まれるなよ」


「ああ、分かっている。唯姫たちが戻って来れないのもそれが理由なんだろうな」


 ログインしっぱなしで魂が抜けたような状態になった唯姫たちは理想郷(アルカディア)で何を見て感じているのだろう。

 『神』に奴隷のように働かされている光景か?

 それとも科学の実験の様にフラスコに入れられた光景か?


「む、トリニティ君たちが戻ってきたようだ。

 鈴鹿君には申し訳ないが、今からは私の協力へ意識を集中してくれ」


「ああ、これだけ有意義な情報を貰ったんだ。喜んで手を貸すぜ」




◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 ソフィアテレサは獣人王国で臨時軍師として招かれていた際、奴隷市場について奴隷の情報を入手していた。

 特に獣人奴隷について調べていたらしい。

 明らかに不正入手である獣人奴隷が多数見受けられたからだ。

 羽鳥人(ハーピー)・チキル種などがその最たる例だ。


 だが、奴隷市に出されている獣人奴隷たちは書類上では何の不備も無い。

 奴隷商が正式な手続きで入手し、奴隷法に基づき奴隷市での販売をしていたのだ。

 奴隷法に基づいている限り、幾ら使徒であり臨時軍師であるとは言え違法性の考慮される獣人奴隷を解放することは出来ない。


 そうして調べているうちに、巧妙に隠されてはいるが一番最初の入手先がエレガント王国の第四衛星都市ハレミアであると言う事が判明したのだ。

 ソフィアテレサは違法獣人奴隷の大元を断つべくこの地へと足を運んだわけだ。


「ソフィアテレサが入手したこの情報、間違いなくここハレミアから出された奴隷だって裏付けが取れたわ」


「そうね。羽鳥人(ハーピー)・チキル種、蜘蛛人(アラクネ)・アルビノ種、兎人(バニット)・シルヴァニア族、麒麟(ジェラフィン)・ホワイトラプラ種と言った通常ではありえない獣人奴隷がここから出たのが確認できたわ。

 それにしてもよくもまぁ、これだけの希少(レア)種を集めたのね。麒麟(ジェラフィン)・ホワイトラプラ種なんかはレア中のレアよ」


 トリニティとアイさんがソフィアテレサが手に入れた情報の裏付けを取ってきたのを告げる。

 羽鳥人(ハーピー)・チキル種以外に聞いた事のない希少(レア)種が居たらしいが、種族以外にも人数的にかなりの数になっているらしい。


「問題は・・・どうやって奴隷としているか、だな」


「そうだ、それが一番の謎なんだ。

 無理やり連れてきて、あるいは獣人狩りで連れてこられた獣人たちは何故か皆揃って口を閉ざしているんだ」


「それは奴隷の首輪で命令されているからじゃないのか?」


「いや、少なくとも借金奴隷の白の奴隷の首輪にはそんな機能は付いていない」


 ソフィアテレサの言う事には白色の奴隷の首輪には命令権は付いていないらしい。

 それなのに違法に連れてこられたはずの獣人奴隷たちはその違法性を訴えないでいると。


 因みに犯罪奴隷の黒の首輪には命令をすることが出来るが、奴隷法により命を奪うような命令は出来ない様になっている。


 ああ、そういや奴隷の首輪を嵌めるのは誰にでも出来るものなのか? それ専門の役人とかが居たりしないのだろうか?

 もしかしてその首輪を嵌める人物を抱き込んで白色の首輪に細工をしたりする可能性もあるな。


 俺がそのことを聞き出そうとした時、バダックが1人の人物を連れて戻ってきた。

 見たところどこぞの貴族らしく、上等な服に精悍な顔立ちをした20代の若者に見えた。


「悪い、少し遅れた。ちょっと手続きに手間取って遅くなっちまった」


「あーっと、遅くなったのは構わないが、そちらさんは?」


 俺達の視線はバダックの隣の人物に向いている。

 何せこの都市の貴族に喧嘩を売ろうとしているんだ。どうやら味方の貴族を連れて来たようだが、これ以上の部外者は俺達のやろうとしていることが貴族側に漏れる可能性がある。

 ・・・獣人奴隷の情報を探っている時点で今さらか?

 いや、だとしても人数が少ない方が動きやすいのは確かだ。

 最終的には大勢の人の手を借りることになるだろうが、今は少人数で早い動きをした方がいいはずだ。


「おうよ、今回の一番の協力者だぜ」


 バダックは自慢げに隣の人物を推した。

 その人物の正体は確かに一番の協力者だった。何せこの都市の一番の権力者だったのだから。


「私は第四衛星都市ハレミアの都市長のイーグレッド=ベルトランデだ。私にも貴女方の獣人奴隷解放の手伝いをさせて欲しい」






◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 AIWOn冒険者ギルドスレ154


650:名無しの冒険者:2058/10/01(火)11:43:35 ID:KyoNew3Hcp

 冒険者ギルドの受付嬢は巨乳なのはテンプレ


651:名無しの冒険者:2058/10/01(火)11:54:15 ID:BnyUSn1Bcp

 冒険者ギルドの受付嬢が美人なのはテンプレ


652:名無しの冒険者:2058/10/01(火)12:09:41 ID:NaIchchP0cp

 冒険者ギルドの受付嬢が人気者なのはテンプレ

 後、巨乳は氏ね


653:名無しの冒険者:2058/10/01(火)12:15:59 ID:sUo5tONan0t

 >>652 気持ちは分かりますが落ち着いてください


654:碇原動:2058/10/01(火)12:17:26 ID:EVA2014Zero

 熱いな


655:名無しの冒険者:2058/10/01(火)12:22:11 ID:P6so7GdaN

 どういう訳かAIWOnも例にもれず冒険者ギルドの受付嬢は巨乳美人だな


656:名無しの冒険者:2058/10/01(火)12:25:35 ID:KyoNew3Hcp

 トリスさんの乳、眼福ものです ∑d(゜д゜*)ィィ!!


657:鈴原錯乱:2058/10/01(火)12:34:44 ID:EVA2014wille

 これだから男の人は・・・勘弁して欲しいわ


658:名無しの冒険者:2058/10/01(火)12:40:59 ID:sUo5tONan0t

 待ってください。美人受付嬢はトリスさんだけではありませんよ

 フローラさんやサーナリアさんも居ますよ


659:名無しの冒険者:2058/10/01(火)12:42:11 ID:P6so7GdaN

 実際は見た目だけで受付嬢が出来る訳じゃないからそれなりに事務能力はあるんだろうけどね


660:名無しの冒険者:2058/10/01(火)12:54:15 ID:NaIchchP0cp

 でも見た目だけで選んでしまうのもまた事実

 後、美人は氏ね


661:名無しの冒険者:2058/10/01(火)12:55:35 ID:KyoNew3Hcp

 >>658 その人たちは巨乳かね? ←重要!!


662:碇原動:2058/10/01(火)12:59:26 ID:EVA2014Zero

 確かに。女性の胸がふくよかなのは重要だ


663:名無しの冒険者:2058/10/01(火)13:03:15 ID:BnyUSn1Bcp

 ええー、胸で受付嬢を選ぶのー?

 見た目で選ぶんでしょ?


664:名無しの冒険者:2058/10/01(火)13:06:59 ID:sUo5tONan0t

 フローラさん達は普通の胸でしたが、そんなに重要なんですか?


665:鈴原錯乱:2058/10/01(火)13:09:44 ID:EVA2014wille

 そんなに巨乳がいいんかい、この男共が!


666:名無しの冒険者:2058/10/01(火)13:12:35 ID:KyoNew3Hcp

 私、女ですよ


667:鈴原錯乱:2058/10/01(火)13:13:44 ID:EVA2014wille

 え゛???


668:碇原動:2058/10/01(火)13:18:26 ID:EVA2014Zero

 女性の胸がふくよかなのは重要だ!!!!











次回更新は2/27になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ