表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Alive In World Online  作者: 一狼
第7章 Katana
38/83

37.闘争と狼人とトーナメント

 ――AL103年4月24日――


 『投槍の使徒』のクエストをクリアした俺は今ベッドの中で身動き一つとれないでいた。

 Gの使徒の証の特殊スキルによるデメリットだ。


 特殊スキル・Gemは分体を作り上げることのできるスキルなのだが、効果が切れれば24時間身動き一つとれないと言うデメリットを抱えている。

 リザルトを出し抜く為に止むを得ずGの使徒の証を使ったわけだが、今現在ベッドの中で不自由を強いていた。


 まぁ、ここぞとばかりにミューレリア姫が世話をしようとしてはいるが、何分姫様と言う身分の為に世話をすると言う事をしたことが無く、右往左往して世話どころではなくなってはいたが。


 幸い武闘トーナメントの団体戦予選は2日後なので俺が身動きできない間、トリニティには『闘争の使徒』の情報を集めてきてもらっている。

 ついでに『刀装の使徒』の情報もだ。




 ――AL103年4月25日――


 2日かけてトリニティに調べてもらった『闘争の使徒』の情報は以下の通りだ。


 『闘争の使徒・Bout』ヴォルフガング・ウルフェン。

 生粋の狼人(ウィーウルフ)であり、己の肉体のみで戦う武闘士(グラップラー)だ。

 『闘争の使徒』のクエストは武闘トーナメントのみでしか受けておらず、武闘トーナメントで『闘争の使徒』撃破又はトーナメント優勝でしか使徒の証は授けてもらえない。

 武闘トーナメントは武器魔法何でもありで、武闘とは銘打っているものの内容は命懸けの殺し合いなのだ。

 とは言え、流石に命を奪うまでの決着は稀で大抵は大怪我で済んでいるらしい。


 武闘トーナメントには個人戦と団体戦があり、どちらか一方にしか参加は出来ない。

 ただ、個人戦と団体戦の両方にヴォルフガングが参加しているからどちらでもクエストの挑戦は可能だ。

 団体戦の参加人数は2人~6人までとなっており、対するヴォルフガングは団体戦にも拘らず1人で参加しているとか。

 何でも1人の方が戦いをより楽しめると戦闘馬鹿(バトルジャンキー)を垣間見るセリフを吐いているらしい。


 一応、ヴォルフガングの戦い方を見ておこうと、特殊スキルのデメリットが消え動けるようになったので個人戦の予選を見に行ったのだが、どうやら『闘争の使徒』は特別枠扱いらしく、予選なしでいきなり本戦からだったので、戦い方を見ることは叶わなかった。


 仕方がないのでトリニティが集めた情報と、本戦での戦いを見て対策を立てるしかないか。


 ・・・まさかいきなり本戦一回戦で当たったりはしないだろうな?




◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 ――AL103年4月26日――


 そんな訳で、俺達は武闘トーナメント団体戦の予選の為に今闘技場に居る。


 闘技場の中心には円状のリングがあり、壁際にはそれぞれのブロックごとの控えの選手が座る席があった。


「にしても、予選とは言え結構集まってるね」


「『闘争の使徒』とのクエスト挑戦ともなれば出来る限り複数――団体戦の方が有利だからな。そのせいで団体戦の方に人数が集まってきているんだろうよ」


 トリニティは闘技場に集まったトーナメント参加者を見渡してうんざりした表情をしていた。

 昨日も個人戦の予選があったが、今日に比べれば微々たるものだった。

 団体戦の人数と個人戦の人数に差があるうえ、エンジェルクエストとしてみれば団体戦で挑戦した方が効率がいいからな。

 どうしたってこっちの方に人数が集まってしまうのだろう。


「クエストの挑戦者だけでなく、ただ純粋にトーナメントに参加してきている人も大勢いるわね。

 この武闘トーナメントに優勝すればかなりの名誉になるらしいわよ」


 特に武闘トーナメント・競獣レース・奴隷市が集中するこの天獣祭での武闘トーナメントの優勝には最高の名誉が付くらしい。

 その名誉でそのまま獣人王国に士官したり、己の流派の道場を開いたりと様々な恩恵があるので集まる人数もそれなりに多くなっているみたいだ。


「ま、どのみち俺達のやることはただ一つ。トーナメントを勝ち抜いて『闘争の使徒』ヴォルフガングを倒すだけだ」


 そう言いながら俺は闘技場に集まった参加者を見渡す。

 と、そこへ俺に声を掛ける人物が居た。


「あれ!? もしかして鈴鹿か!? おまっ、まさかマジでダイブしていたのかよ!」


 声のする方を見ると3人組の男が居た。

 1人は軽装の革鎧でショートソードを携えている。おそらく盗賊(シーフ)の類だろう。

 もう1人は厚手の鎧に身を包んだ戦斧と盾を装備した重戦士(ウォーリア)だ。

 最後の1人の戦士(ファイター)は如何にも初心者と言った雰囲気を纏い、装備も見た感じ新品で使い込まれた感じは見受けられない。


「ほぅ、ここに居ると言う事は武闘トーナメントの参加者ってことか。となると、それなりにこっち(・・・)での経験は積んでいると。

 まさか俺達に隠れてAIWOn(アイヲン)をやっているとは思わなかったぞ」


 盗賊(シーフ)が喚き散らす中、重戦士(ウォーリア)は面白いとばかりにニヤリとする。

 俺はこの2人の話し方や態度に見覚えがあった。


「もしかして・・・乱馬に咲慈か・・・? って事はそっちの戦士(ファイター)は桃太か?」


 まさかの現実(リアル)での友人との遭遇だ。


「おうよ。あとこっちではアトランダムだ」


「何その無駄にカッコいい名前」


 現実(リアル)では厳つい顔をしているが、AIWOn(こっち)では少しだけ整った顔をしている剛力乱馬は名前までカッコよくなっていた。


「あ、俺はチェリーね」


「咲慈・・・その名前はねぇだろうよ・・・」


 咲慈は何を思ったか童貞(チェリー)なんて名前を付けていた。

 見た目はAIWOn(こっち)でもチャラ男みたいな感じだが、名前の所為で全てが台無しだ。


「いやいや、その名前でギャップやイメージ戦略を狙っているんですよ」


「何のイメージ戦略だよ」


「あはは、咲慈・・・じゃない、チェリーはこっちでもこんな感じなんだよ」


「桃太。お前までこっちに来ていたのかよ」


「ああ、2人が楽しそうだったからね。俺も誘ってもらったんだ。

 っと俺はこっちでは桃太郎だ。何か慣れないな。この名前が違うってのは」


 桃太はVR慣れしていないのか、殆んど現実(リアル)と同じ顔で髪の色だけが少し桃色が掛かった黒髪をしていた。


「で、何でお前がAIWOn(アイヲン)に居るんだ? しかも美女2人を引き連れて」


 咲慈が俺の後ろに居るトリニティとアイさんを見てジロリと睨む。

 まぁ、こいつらにしてみれば学校をさぼってまでAIWOn(アイヲン)にダイブしていて女と遊びほうけているんだから恨むなって言う方が間違っているか。


「あ~~~~~~~~~~~~、まぁ色々だ。この2人は・・・色々訳があって行動を共にしているんだ」


「説明になってねぇよ! ちくしょーーー! 何なんだよ鈴鹿の奴! 美女を侍らせやがって!! いいぜ、早海が戻ってきたらチクってやる!」


 うん、それは無理だね。

 唯姫の奴は俺が助けに行かないと目覚めないし。

 と言うか、唯姫を助けるために2人に協力してもらっているんだし。


「チェリー、落ち着け。鈴鹿にも色々訳があるんだろう。前にも全て解決したら説明すると言ってたじゃないか。

 俺としては細かい理由を抜きにしてもいいさ。トーナメントで鈴鹿と戦える方が嬉しいからな」


「そうだな。理由は後でもいいさ。まぁ、大方ここに居るのも早海絡みだろう」


 どうやら乱馬は俺に対して思うところがあったらしく、トーナメントで戦う為細かい理由は聞いてこなかった。

 桃太も爽やかイケメン補正なのか、俺がAIWOn(アイヲン)に居る理由を大方見抜いていた。


「えー、2人ともあっさりしすぎー。もっと、こう、ねちっこく探ろうよ」


 不満を言いながらも咲慈は渋々引き下がった。


 余り突っ込んだ話をしてこないのはありがたいな。

 信頼してくれているのか、それともそれほど俺が思ったほどの友情が無いのかは分からないが。


「そう言えば、お前ら学校はどうしてんだ? 確か今は平日だったはず」


 俺はAIWOn(アイヲン)唯一のメニューを開いて天と地を支える世界(エンジェリン)現実(リアル)の日時を確認する。


「ああ、午後からはサボりだな。本戦は現実(リアル)では深夜に行われるから今日を凌げば影響はないよ」


 おいおい、学校を休んでいる俺が言うのもなんだが、それでいいのか学生。

 だが休んでAIWOn(アイヲン)にダイブしているのは桃太達だけではなかったみたいだ。


「まぁ俺達の他にも同じような事を考えている奴がいるみたいだしな」


 そう咲慈の言う方向を見ると、そこには見知った・・・見たくもない奴の顔があった。

 周りには例の如く女たちを侍らしている。


「おい、虫。貴様如きが武闘トーナメントだと? 身の程を知れ」


 言わずと知れた路傍の石ころ――志波光輝こと『破壊神』シヴァだ。


「ふん、今回は虫の取り巻きの有象無象も一緒か。精々足掻け。優勝はこのシヴァが頂くがな」


「けっ、ほざいてろ。今回こそは俺達が優勝を頂くぜ」


「そんなことを言っているからC級止まりなんだよ。前回は1回戦止まりだったと聞くが?」


「・・・っち。A級だからっていい気になるなよ。このトーナメントは階級なんて何の目安にもなりゃしないんだ。精々足下を救われないようにしな!」


 桃太達は俺とつるんでいる事で志波の奴に良く絡まれる。

 どうやらそれはAIWOn(アイヲン)の中でもそうらしい。

 一々突っかかる志波に咲慈が食って掛かる。

 乱馬と桃太は構わない方向で居るのか見事にスルーしている。


「おい、虫。この前のケリをこのトーナメントで付けてやる。ああ、それともこの予選で落ちない方を心配するのが先か?」


 高笑い、とまではいかないが、薄ら笑いを浮かべたまま志波の野郎はそのまま去って行った。


 この前・・・? ああ、プレミアム共和国の町中で剣を抜いて襲ってきた時のことか。

 あの時はアイさんの介入で有耶無耶になったからな。

 すっかり忘れていたが、志波の奴は結構根に持っていたんだな。


「そういや、お前ら前も武闘トーナメントに参加してたのか? もしかして『闘争の使徒』のクエストか?」


「ああ、前回はいきなり『闘争の使徒』に当たってボロ負けだったんでな。今回はそのリベンジだ。

 ま、今回はリベンジの他にも鈴鹿と戦いたいと言う理由も出来た。予選如きで負けてられないよ」


 乱馬は前のトーナメントを思い出したのか、拳に力を入れる。

 まぁ、負けられないのは俺も同じだがな。


 その後予選の時間になったので俺達は分かれてそれぞれのリングへと向かう。

 A~Gのブロックごとに分かれてバトルロイヤルでブロックの代表を決めるのだ。

 団体戦と言う事でそのチームの代表が1人でも残っていれば本戦の出場切符を手に入れる事が出来る。


 予選は滞りなく進み俺達は勿論のこと、乱馬のチームや志波のチームも予選を勝ち残った。




◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 ――AL103年4月28日――


 今日は武闘トーナメント団体戦の本戦だ。

 この前と同じく俺達は闘技場に居た。

 俺達の他には予選を勝ち残ったチーム6組と特別枠のヴォルフガングの闘争チームが控え席に座っている。


 司会の進行の元、予選ブロックの代表者が抽選を行いそれぞれトーナメントの枠を埋めている。

 その間に実況が試合開始までの繋ぎを行っていた。


『本日は武闘トーナメントの団体戦本戦です! 今日も実況はこのレイチェルがお送りいたします!』


 どうやら本戦からは実況が付くみたいだ。昨日の個人戦も彼女が実況をしていた。

 闘技場の観客席の一部が箱状になっており窓から実況出来るようになっている。

 拡声器の魔法(ぶっちゃけマイクだな)で闘技場に実況の声を響き渡らせていた。


 その実況のレイチェルは兎人(バニット)の獣人で何故かバニーガールの格好をしている。


 ・・・流行っているのか?


 まぁ、問題はレイチェルではなく、その隣に居る2人の人物だったりするのだが。


『解説はアーノルド=アルニム=アーマレスト国王陛下と、隣国羊王国のミューレリア姫にお越しいただいております!』


『うむ、今回の武闘トーナメントも大盛況の様で何よりだ』


『私の様なか弱い女性が武闘大会の解説などとおこがましいですが、よろしくお願いいたします』


 何で姫さんがアーノルド国王と一緒に居るんだよ! スノウまで一緒に!

 マクレーンの奴は何をやっている!?


 俺達3人がトーナメントに参加する為、ハーティーとマクレーンとミューレリア姫は観客席で俺達の応援のはず。


『それでは国王陛下、今回の団体戦の注目選手などは?』


『本命の『闘争の使徒』ヴォルフガングチームは勿論のこと、『破壊神』シヴァチームと『勇敢な使徒』マクレーンと『旋律の使徒』ハーティーの使徒コンビチームだな』


 そう、どういう訳かハーティーとマクレーンは2人でチームを組んで参加していたのだ。


「おい、どういう事か説明してもらえるんだろうな?」


 同じ控え席に座っている2人に半眼で睨みながら問う。


「そんな顔で睨むなよ。まぁ、ぶっちゃけ暇だったってのがあるな。お前らの用事が終わるまで俺は帰れないんだ。どうせならと暇つぶしでな」


「僕はもう一回鈴鹿と戦ってみたくなってね。こうして暇をしていたマクレーンに協力してもらったんですよ」


 ハーティーの理由はまだ分かる。だがマクレーンの理由はダメすぎるだろう。

 第一お前は姫さんの護衛でここに残っているんだろうよ。


 そのことを責めるとマクレーンはあっけらかんと答える。


「だからアーノルドの奴に預けているんだよ。奴は喜んで引き受けてくれたぜ」


 そりゃあいきなり見向きもされなくなった姫さんと合法的に一緒に居られるなら喜んで引き受けるだろうよ。


『ミューレリア姫はどなたか注目されている選手はいますでしょうか?』


『はい、勇者様です』


『おお、姫も国王陛下と同じく勇者マクレーンの居る使徒コンビチームに注目されているのですか』


『? いえ、マクレーン様ではなく勇者様――鈴鹿様の事ですよ。あ、この()は勇者様のお仲間の騎竜です』


『え? えーと、鈴鹿チームのリーダーである鈴鹿選手・・・ですか?

 で、その小さい竜が騎竜・・・?』


 姫さんんんんんんんっ!!! やってくれたよっ!!!

 姫さんのセリフに闘技場の観客席がざわつく。


『ふん! 腹ただしい事にその鈴鹿と言う腐れ野郎も注目選手の一人だな。

 使徒コンビチームの2人とその鈴鹿と言う男が数日前に我に挑んできた強者でもある』


『な、何と! 鈴鹿選手、あの『牛魔王』と恐れられていた国王陛下に戦いを挑んでいました! これはとんでもないダークホースの出現です!』


 おいおい、いいのか国王様!?

 敢えて勝敗を言わなかったみたいだが、少し調べればこの前の戦いの内容は知ることが出来る。

 国王が負けたと知られれば周辺国に弱みを見せるんじゃないのか?

 ・・・良く考えれば元々ミューレリア姫にぞっこんで腑抜けているのは知っているか。


『さて、トーナメントの抽選も終わりそれぞれの対戦相手が決定いたしました。これは面白い組み合わせですね』


『ふむ、上手い具合に闘争チームと使徒コンビチームが分かれたな。順当にいけば決勝で当たるか。

 ふん、鈴鹿チームは1回戦でシヴァチームにコテンパンに負けてしまえばいい』


 武闘トーナメントの組み合わせは以下の通りに決まった。



闘争チーム     ━┓

           ┣━┓

三匹の狼チーム   ━┛ ┃

             ┣━┓

シヴァチーム    ━┓ ┃ ┃

           ┣━┛ ┃

鈴鹿チーム     ━┛   ┃

               ┣━ 優勝

アトランダムチーム ━┓   ┃

           ┣━┓ ┃

KTNチーム     ━┛ ┃ ┃

             ┣━┛

ハンターチーム   ━┓ ┃

           ┣ ┛

使徒コンビチーム  ━┛



『おおっと、国王陛下はどうやら鈴鹿チームがお気に召さない様子』


 そりゃあ想い続けてきたミューレリア姫を取られていい気はしないだろう。

 とは言え、流石にロリコンはダメだろうよ。

 その辺りを分かっているのか実況のレイチェルは深くは突っ込まない。



 ― 一回戦第一試合 ―


『あ、そろそろ試合時間となりました。 

 まずは一回戦第一試合、闘争チームと三匹の狼チームの試合です!』


 闘技場の中心には石畳の円形状のリングがあり、そこに闘争チームと対戦相手の三匹の狼チームが立っていた。


 三匹の狼チームは名前の通り3人の狼人(ウィーウルフ)の獣人で構成されているが、闘争チーム・・・ヴォルフガングのチームも獣人で構成されていた。

 獣人王国主催と言う事見れば獣人のチームは珍しい事でもないのだが、今回のヴォルフガングのチームははっきりって豪華メンバー過ぎだ。


 何せ、3人の使徒がチームを組んでいるんだからな!


 『闘争の使徒』ヴォルフガングに『投槍の使徒』リザルト、『逃走の使徒』ミントがチームとして参加していたりする。

 何時もならヴォルフガングは使徒の特権で1人で団体戦に参加しているらしいのだが、何故か今回は他の使徒と手を組んでチームで参加しているのだ。


 はっきりって対戦相手の三匹の狼チームは涙目ものだろう。

 試合開始してものの数分もしないうちにあっという間に三匹の狼は地べたに這いつくばっていた。


 試合を終えて控え席に戻ってきたヴォルフガングが声をかけてくる。


「よう! お前さんとの試合楽しみにしているぜ!」


「それはこっちも願ったりなんだが、何で今回に限ってその2人も一緒なんだよ」


「あん? そりゃあお前と一騎打ちが出来るように梅雨払いの為だな。そっちの2人も曲者っぽいから戦ってみたいが、流石に1対3だと手こずると思って協力を要請したんだよ」


「俺も鈴鹿達とクエストと言う枠組みではなく、戦場で戦ってみたいと思ってな」


「にぱぱ。ボクもこの間のはちょーっと納得がいかなかったから仕返し、のつもりかな?」


 リザルトはクエストで身動きできなかった時と違い、自在に動き回りながらの戦いを俺達としたいと。

 ミントはミューレリア姫を使った罠が納得いかないから仕返しとして意地悪で参加したと。


 はぁーー、頭の痛くなる事で。

 でもまぁ、ヴォルフガングはそれだけ俺達の事を警戒しているってことか。


「ま、その前に一回戦で負けたら元も子もないからな。俺達と戦う前に負けんじゃねぇぞ」


 ヴォルフガングは狼人(ウィーウルフ)に相応しく、牙をむき出しにしながらニヤリと笑う。


 それはこっちも重々承知だよ。

 とは言え、対戦相手は油断できるほど弱いわけじゃないらしいからな。


 俺達の一回戦の対戦相手は志波の野郎だ。

 伊達に『破壊神』だのA級冒険者ではないのだろう。

 ここは気を引き締めなければ。



 ― 一回戦第二試合 ―


 リングに上がると志波は俺を見て薄ら笑いを浮かべる。

 取り巻きの女どもも一緒になってにやけた顔を見せていた。

 志波のチームは5人で、男が志波1人のハーレムチームだ。


「良く逃げずに来たな。この大観衆の前で無様に這いつくばるといい」


「あー、はいはい。御託はいい。てめぇのその天狗鼻へし折ってやるよ」


「お前ら、そこの2人の女性には手荒な事をせずに優しく取り押さえていろ。俺は虫に集中するから任せたぞ」


 志波は取り巻きの女どもに指示を出す。

 どうやら志波はトリニティとアイさんを取り巻きの女どもに任せ俺を徹底的に叩くつもりらしい。

 ざっと見たところ女どもにはアイさん達には荷が重そうに見えるがな。

 まぁいいか。2人には悪いが女どもは任せよう。俺は志波の野郎に集中するか。


『それでは一回戦第二試合、開始―――!!』


 志波は剣を抜き、呪文を唱えながら俺との間合いを詰めてくる。

 俺は何時でもユニコハルコンを抜けるようにしながら腰を落とし剣姫流のステップを刻む。


 志波の一撃を躱すもそれは気を引くための囮だったらしく、本命は左手に集中させた魔法だった。


「ライトニング!」


 雷属性魔法の上位魔法だ。

 極太のレーザーの様な雷光が至近距離で放たれた。


『おおっと! シヴァ選手、いきなり大技を炸裂だ――――!!』


 雷光は観客席の方まで伸びているが、この手の闘技場ではお馴染みの会場と観客席の間には物理魔法とも遮断する防壁が張られているので雷光は観客には届くことは無い。


「ふっ、他愛のない」


 志波はライトニングが決まったとばかりに結果を確かめずに決めポーズをしている。


「随分と余裕だな。躱されたってのに」


「なにっ!?」


 志波は背後から声を掛けた俺に驚いて慌てて振り向いた。

 俺はその隙を逃さず居合切りで志波の右腕を狙う。


「刀戦技・居合一閃!」


「マ・マテリアルシールド!」


 呪文の詠唱が無かったからおそらく緊急回避用のチャージアイテムを使ったのだろう。

 俺の一撃は魔法の壁に阻まれダメージには至らなかった。


『おおっと! 鈴鹿選手、シヴァ選手の雷を避けていたーーー!?』


『あ奴は剣姫流の使い手だ。あれくらいの攻撃は容易く躱すだろう』


『なんと! 鈴鹿選手はあの幻と言われた剣姫二天流の使い手なんですか!?』


『いえ、勇者様はその派生流派の剣姫一刀流の使い手です』


『えええっ!? 剣姫流に別流派があったんですかっ!? これは驚きました! 鈴鹿選手、とんでもない隠し玉を持っていました!』


 解説のアーノルド国王とミューレリア姫により会場は大いに盛り上がる。


「ちっ・・・剣姫一刀流だと? どうせ見かけ倒しの彼女たちを騙すための偽流派だろう」


 無論実況はこっちにも聞こえて来るので当然志波の耳にも入る。志波は気に入らないようで頭から否定してきた。

 ま、別に信じなくてもいいがな。

 だが俺の事を舐めていたのは認めたのか、簡単に背後を取られたのを屈辱に思ったらしく、志波の取り巻く雰囲気が変わったのを感じる。


「さて、偽物か本物かはてめぇの体で確かめな」


 剣を握りしめ、連続で攻撃を繰り出す志波の攻撃を俺は剣姫流ステップで躱しながらユニコハルコンを振るう。

 志波は片腕に付けたバックラーで俺の攻撃を防ぎながら、時折下級魔法で牽制しつつ剣戦技での攻撃を繰り出す。

 さっきとはうって変わって魔法を大技ではなく小技で放ってくるところが厄介だった。

 まぁ、紙一重で全部躱しているんだけどな!


『シヴァ選手と鈴鹿選手、お互いの攻撃が決まらない! その間にも女性陣の戦いが激白しています!

 おおっと、アイ選手の攻撃がカーリー選手に決まったぁ―――!! これは立てない! カーリー選手ダウンです!

 あぁ!? 何とトリニティ選手の武器は蛇腹剣だ! 鞭状になった剣を自在に操りパールバティー選手とサティー選手を追い詰めていく―――!!』


『ほう、あのアイと言う選手、かなりの強者だな。トリニティ選手も筋がいい。これはシヴァチームの女性陣には荷が重いな』


 どうやら後ろのトリニティ達は危なげもなく対応しているみたいだ。

 A級と言っても、志波がA級であって女どもはそこまで強くは無いんだろうな。


 俺は2人の事を信じて目の前の志波に集中する。

 志波の攻撃は鋭く威力があり剣と魔法を駆使した多彩な攻撃なのだが、これと言った脅威を感じなかった。

 迫りくる攻撃を淡々と躱し捌き合間を縫って攻撃する。


 こんな奴でもこれまでの攻撃を見ればA級と言うのは伊達ではないのが分かる。

 ・・・だが、怖くは無いんだよな。これだったら今まで戦ってきた使徒たちの方がまだ恐ろしげがあった。


『ちょっとこれは凄くありませんか? シヴァ選手の攻撃が一切当たらない! 鈴鹿選手、躱す躱す躱す!!』


『・・・やはりこうなったか。シヴァ選手の攻撃には気迫が無いのだ。確かに攻撃は鋭いが、相手に恐怖を与える様な攻撃ではない。

 あれだったらあ奴は余裕で躱せるだろうよ』


『気迫が無いと言う事は殺気が無いと言う事でしょうか?』


『いや、シヴァ選手も攻撃に殺気を込めているが、勝って当然、負けることなど考えてない他者を見下した温い殺気だ。

 これまでは己の才能や身体能力で相手を圧倒してきただろうが、戦場を経験してきた者には通じんだろう。

 その証拠にほれ、あ奴の攻撃が当たり始めた』


 志波の攻撃は俺に当たらないのが気に食わないのか次第に剣先が焦りで鈍り始めてきた。

 俺はその隙をついて剣姫流の攻撃をお見舞いする。


「剣姫一刀流・刃翼!」


 瞬で懐に入り、クロスステップで高速で左右に動きながら志波を左右から同時に切り刻む。

 志波は胸に×の字の傷を付けられたたらを踏んで後ろへと下がった。


「おのれ・・・虫の分際でこの俺様に傷を付けるだと・・・! 万死に値する!!

 もうこうなったら手加減はやめだ。周りなんかどうなってもいい。全てを吹き飛ばしてやる!!」


 怒りの形相を伴って志波は呪文を唱えながら向かってきた。

 おそらく上級呪文での範囲攻撃だろう。直ぐに放たず魔法を剣へ掛け魔法剣として攻撃してきた。


「リアクターブラスト!」


 このまま志波の剣を弾けは魔法剣が発動するので弾いて躱すことが出来ない。

 志波は魔法剣を振りまわしながら次々呪文を唱える。


「ゲヘナストーン!!」


 巨大な六角柱の石柱が闘技場のリングを砕く。


「エクスプロージョン!!」


 観客席をも巻き込まんばかりの巨大な爆炎が周囲を舐めまわす。


「トルネード!!」


 その爆炎をも巻き込んだ巨大な竜巻が天を突く。


 本当に見境が無くなったな。この志波(バカ)

 確かに広範囲による魔法攻撃は脅威だが、当然狙いも甘くなっている。

 俺は石柱を躱し、その石柱を盾にして爆炎を凌ぎ、竜巻による熱風を躱しながら唱えていた呪文を発動し、剣姫流奥義で志波事斬り裂いた。


「剣姫一刀流奥義・天衣無縫!!」


「がっ・・・!?」


 志波は信じられない面持ちで己の体の傷を見ながらその場に崩れ落ちた。


『決まったぁ―――――!! 鈴鹿選手、シヴァ選手の破壊攻撃をものともせずシヴァ選手ごと斬り伏せた―――――!!』


『わぁ勇者様凄いです!』


『ちっ!』


 流石に防いだとはいえ、爆炎の攻撃は体のあちこちに軽い火傷を負っていた。

 まぁ、ユニコハルコンで直ぐ治せるんだがな。

 周りを見ればアイさんとトリニティも無事だったらしく、わざわざ倒した対戦相手の女どもも一緒に志波の攻撃から守っていた。


 取り敢えず志波の石野郎を下して準決勝へ進出だ。


 控え席に戻ると乱馬たちが俺を信じられない目で見ていた。


「鈴鹿・・・お前メチャクチャ強かったんだな・・・」


「俺、流石に志波の奴に負けるんじゃないかと思ってた・・・鼻持ちならない奴だけど志波はA級だからな。

 てか、何だよ剣姫一刀流って。聞いた事ねぇよ!」


「凄いな、鈴鹿は。これがゲームだとしても予想を超える強さだね」


 うーん、咲慈の言いたい事は分かるが、あれでA級かぁ~

 同じA級でもデュオやウィルの方がまだ強かったんだけどな。

 これはあれか? ゲームとして認識している異世界人(プレイヤー)とこの世界で生きている天地人(ノピス)としての差か?


「俺の事はどうでもいいよ。次はお前らだろ?」


「どうでもよくねぇよ! くそっ! ゲーマーとしてのプライドがゆるさねぇ。絶対勝ち残ってやる!」


 何故か熱くなる咲慈。まぁ隣を見れば乱馬も口には出さないものの闘志を滾らせていた。


 会場は志波の後始末の所為で少し時間が掛かったが、第三試合が開催される。


「あれ、鈴鹿の友達でしょ? 強いの?」


「うーん、どうだろう? C級だとは言っていたからそこそこは強いんだろうけど。

 と言うか、トリニティの方が情報とか掴んではいないのか?」


「C級ともなると大勢いるからね。流石に全部を知ってるわけじゃないわよ。有名どころくらいかな」


 そうか、盗賊ギルドの方までは情報は上がってないか。

 まぁ、調べようと思えば調べられるんだろうけど、そこまで情報を集めるほどではないと。



 ― 一回戦第三試合 ―


『さぁ! 一回戦第三試合、アトランダムチームとKTNチームとの対戦です。

 アトランダムチームは前武闘トーナメントで『闘争の使徒』と当り一回戦負けでしたが、今回は新たなメンバーを加えての挑戦です。だが、その新メンバーはE級です! 戦力には期待できるのでしょうか!

 対してKTNチームは何とたった1人! いえ、実際には2人のチームなんですが、稲離選手と一緒に居る無地名選手はどう見ても明らかに素人! そこら辺に居る一般人と大差ありません!

 予選でも稲離選手1人のみで勝ち抜いてきたようです! 数合わせで無地名選手とチームを組んだのか!? これは流石に不利ではないでしょうか!?』


『稲荷選手は口元は布で覆っているとは言えあの形状は獣人――狼人(ウィーウルフ)狐人(フェネックス)のどちらかだろう。もしくは竜人(ドラゴニュート)の可能性もあるな。

 どの種族の獣人にはよるが、対戦相手のアトランダムチームにも素人1人が居る。案外いい勝負になるのではないか?』


 解説のアーノルド国王の言う通り、乱馬たちの対戦相手はフード付きのマントで全身を覆っていてどの種族かは分からない。

 口元を見るに狼とかにみられる形状をしているのでおそらく狼か狐かのどちらかと思われる。

 戦い方さえ間違わなければ乱馬たちは決して勝てない相手ではないのだが・・・




 試合の結果を見れば圧倒的戦闘力でKNTチームが勝った。


 KTNチーム――稲離は腰に下げた2本の刀を自在に操り乱馬たちを圧倒した。

 乱馬たちの攻撃も決して悪くは無かったのだが、稲離はそれを上回る攻撃で次々乱馬たちを屠っていったのだ。


 二刀流と言う事で剣姫流なのかと思いきや、見た事のない型で他の二刀流流派と言う訳でもなさそうだ。


 乱馬たちは悔しそうにしながら会場を後にした。

 2度目の『闘争の使徒』のクエストの挑戦は使徒と戦う事すら出来ずに失敗したのだからかなり悔しかったのだろう。


 最後の一回戦の試合も順当に消化され、次は俺達と闘争チームとの準決勝第一試合となった。

 え? 使徒コンビチームはどうなったかって? それは特筆することも無く、もうあっさりと準決勝進出を決めましたよ。



 ― 準決勝第一試合 ―


「よし、やっと鈴鹿とやれるな。最初に会った時からこいつかなりやるなって感じてたんだ。

 実際、シヴァとの試合は見事だったぜ。あれだけの力があればこの試合は楽しめる。思う存分やりあおう!」


 あー、どうやらヴォルフガングはゴーグロット王と同じような性質みたいだな。

 どっちも素手の武闘士(グラップラー)だし、頭がかなりバトル脳になっているし。


「ここでヴォルフガングに勝てば『闘争の使徒』のクエストはクリアなんだな? だったらこっちは遠慮なんかしないで全力で戦ってやるよ」


 俺のセリフにヴォルフガングは犬歯を覗かせてニヤリとする。


 とは言え、ヴォルフガングのチームは3人の使徒であることも然ることながら『闘争の使徒』の特殊能力が反則気味だったりするんだよなぁ~


昨日の個人戦、今日の一回戦と観覧していたが、魔闘気って何だよ。まんまマンガじゃねぇか。

 魔闘気を拳に集中させて攻撃力を高めたり、魔闘気を纏って防御にしたり、魔闘気をかめ○め波みたいに飛ばしたりと何でもアリだ。

 まんまドラゴ○ボールだ。


『さぁ! 『破壊神』シヴァを破った鈴鹿チームと3人の使徒で結成された闘争チームの準決勝第一試合が開始されます!』


『勇者様、頑張って~』


『ちっ、気に食わんが先ほどの試合を見る限り闘争チームとはいい試合をするだろうな』


 相変わらずアーノルド国王は俺を敵視している。

 ミューレリア姫が俺に注目するたびいちいち舌打ちをしてくるし。


 審判により試合の開始が宣言される。

 それと同時にヴォルフガングがミントとリザルトを伴ってこっちに向かってくる。


「よっしゃ! 行くぜ行くぜ! ミントとリザルトは彼女たちを任せた!」


「そうだな。ならばアイは俺に任せてもらおう。彼女の実力は未知数だ。この機会に実力を測るのもいいだろう」


「え? じゃあボクはトリニティを相手するね。あの蛇腹剣から逃げるのって楽しそう」


 どうやら奇しくも志波の時と同じく俺の相手をヴォルフガングが務め、トリニティとアイさんがそれぞれミントとリザルトが相手になるみたいだ。


「あら、じゃあ私はリザルトの相手をしてくるわ」


「あたしはミントね。そうね、丁度いいわ。この蛇腹剣を使いこなす相手にミントは最良の相手ね」


 そう言いながら2人はそれぞれの相手に向かって行く。

 そして俺は迫りくるヴォルフガングを迎え撃つべくユニコハルコンに手を掛ける。


「まずは小手調べだ」


 そう言うと同時にヴォルフガングの体から黒光りするオーラ――魔闘気が吹き上がり、両腕を腰だめに構えて集中させそのまま突き出した。


「魔闘波!」


 マジでまんまかめ○め波だな!


 俺は拳大に放たれた魔闘波を居合切りで抜き放ったユニコハルコンで弾き飛ばす。

 そのまま瞬で間合いを詰め剣姫一刀流・瞬刃をお見舞いする。


「おっと、瞬動を使って全体重を乗せた斬撃か。なかなかやるじゃねぇか」


 ヴォルフガングの体を斬りつけたものの、魔闘気によって阻まれ傷一つ付けることが出来なかった。

 こうも簡単に瞬刃を防がれるとちょっと傷つくなぁ。


 ヴォルフガングはそのまま魔闘気の威力を上げ俺に接敵する。


 俺の斬撃、ヴォルフガングの打撃、両者の攻防が闘技場のリング中央で繰り広げられた。


 左右の拳の連撃にフェイントを加えた回し蹴り、体のバネを駆使した天を突くようなアッパー、そしてその反動を利用した掬い上げの蹴り。

 対する俺も短距離移動による瞬刃にオリジナルアイスブリットの魔法剣での刀戦技・一閃による剣姫一刀流・氷華一閃、剣姫流ステップと斬撃を合わせた剣舞嵐刃。


 互いが互いを攻撃し躱し防ぎ爆発させる。


『おおっと、これは凄まじい攻防の応酬だ! 一回戦のシヴァ選手と鈴鹿選手の再現のようにも思われますが、これは威力が違う! 迫力が違う! 規模が違う! これは見ごたえのある展開だぁ!』


『ふん、中身のないシヴァ選手との打ち合いに比べれば違うのは当然だろう。こっちの姿が本来のあ奴の実力だ。

 そう、この姿こそ『牛魔王』としての我と対等に戦った姿だろうよ』


『ええっと、それは国王陛下が本気を出して戦った、と言う事でしょうか?』


『そうだ。我は本気であ奴――鈴鹿と戦った。本気でミューレリア姫を取られると思ってな。

 だが鈴鹿は我を見事に打ち勝ったのだ。もっとも使徒の証の特殊スキルを使ってだがな』


『何と!? 鈴鹿選手、アーノルド国王陛下の本気と戦って勝っていた!? これは『闘争の使徒』相手に期待できるか!?』


 レイチェルさん、ミューレリア姫が取られると思ったところはスルーですか?


 ヴォルフガングとの攻防を繰り広げる中で聞き取れた実況に思わず突っ込みを入れる。

 同じく実況を聞いていたヴォルフガングは更なる笑みを浮かべ攻撃の速度を増してくる。


「マジか、アーノルド陛下を倒したのかよ。いいねぇ、思ったよりも力を隠してたみたいじゃねぇか。

 まずはさっきシヴァを倒した奥義とやらを見せてもらおうか!」


 ちっ、段々とヴォルフガングの攻撃の速度が上がってきてこっちの攻撃より回避の方に気を回さなければならなくなってきた。

 ヴォルフガングの攻撃を避けながら魔法や魔法剣を放ち、その合間を縫って鞘の内側にそれぞれの属性の魔法を少しずつ掛けている。


 本来であれば魔法剣は一回の詠唱で一つの武器に一つの魔法しか掛けれない事だ。

 その為魔法の威力を上げるのに輪唱呪文で複数の魔法を一つの魔法として呪文詠唱し魔法剣を掛け威力を底上げする。

 だが奥義・天衣無縫はその制限が無い。

 隙を見てバラバラに魔法剣を掛け、鞘に剣を収めた段階で剣に魔法を融合して魔法剣を掛けれる利点があるのだ。


 俺はヴォルフガングとの攻撃の合間に天衣無縫の放つ準備をしていたのだが、どうやら先の志波との戦いやこの攻防中の呪文詠唱でそれを読んでいたらしく、天衣無縫を受けてやるから放って来いと言いやがった。


 攻撃を読まれているんだから隙を見て天衣無縫を放とうとすれば躱されてしまうだろう。

 だったら今、ヴォルフガングが自ら受けて立とうとしているこの瞬間なら攻撃を放つチャンスなのではないか?


 まぁ、そこまで言うのなら見せてやるよ!


 俺は攻防の隙を見て一瞬でユニコハルコンを鞘に納める。

 次の瞬間、斜め横に瞬きで短距離移動し、ユニコハルコンを抜き放つ。


「剣姫一刀流奥義・天衣無縫!!」






◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 Alive In World Online攻略スレ313


303:名無しの冒険者:2058/3/6(月)10:20:43 ID:KTn10sKL0ve

 『刀装の使徒』ぱねぇぇぇぇぇぇ!!


304:名無しの冒険者:2058/3/6(月)10:33:12 ID:S6rI6iRLrAlBut

 何がぱねぇのですか?


305:名無しの冒険者:2058/3/6(月)10:41:58 ID:Adl6Ms10r

 あー、Katanaかぁ

 確かにあれは厄介だなぁ


306:名無しの冒険者:2058/3/6(月)10:49:29 ID:h1B106expt

 ん? 『刀装の使徒』って結構謎に包まれているよな?

 そこんとこkwsk


307:闇を纏いし刃:2058/3/6(月)11:03:04 ID:Y3omTy818

 分かっている事と言えば

 種族:狐人

 武器:八本の刀

 職業:侍

 くらいじゃないか?


308:名無しの冒険者:2058/3/6(月)11:11:26 ID:MsTs8GLiRt

 彼の得意技のエアリアルブレイドを忘れてますよ


309:名無しの冒険者:2058/3/6(月)11:20:43 ID:KTn10sKL0ve

 >>308 あれ反則じゃね?


310:名無しの冒険者:2058/3/6(月)11:27:58 ID:Adl6Ms10r

 反則だよね~

 何あの空中に浮かぶ自在に襲ってくる刀@@;


311:名無しの冒険者:2058/3/6(月)11:33:12 ID:S6rI6iRLrAlBut

 もしかして『刀装の使徒』の使徒の証は戦って手に入れるのでしょうか?

 私は戦わずに手に入れたのですが・・・


312:名無しの冒険者:2058/3/6(月)11:39:43 ID:KTn10sKL0ve

 マジで? 何それ、ズルい


313:闇を纏いし刃:2058/3/6(月)11:55:04 ID:Y3omTy818

 あー、『刀装の使徒』は時折無償で使徒の証を提供することがあるって聞いたな


314:名無しの冒険者:2058/3/6(月)12:15:58 ID:Adl6Ms10r

 その基準が良く分からないんだよね

 積極的に戦って使徒の証を渡すこともあるし、一瞥しただけで簡単に渡すときもあるし


315:名無しの冒険者:2058/3/6(月)12:21:26 ID:MsTs8GLiRt

 気まぐれでしょうか?


316:名無しの冒険者:2058/3/6(月)12:25:41 ID:wi310Kme2R

 四天王の中で一番強い奴を相手にしなくてもいいならそれでいいじゃないか


317:名無しの冒険者:2058/3/6(月)12:37:58 ID:Adl6Ms10r

 いや、四天王一は『闘争の使徒』だろ?


318:名無しの冒険者:2058/3/6(月)12:45:58 ID:Adl6Ms10r

 あー、そこは意見が分かれるところだな









次回更新は12/29になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ