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Alive In World Online  作者: 一狼
第7章 Katana
35/83

34.獣人王国と四天王と挑戦権

大神鈴鹿、『旋律の使徒』ハーティーとバンドを組む。

大神鈴鹿、剣姫二天流後継者ハーティーと戦う。

大神鈴鹿、『勇敢な使徒』マクレーンの手伝いをする。

大神鈴鹿、牛魔王と戦う。

大神鈴鹿、謎のジジイと出会う。

                       ・・・now loading


 ――AL103年4月21日――



「わぁ! これが出店と言うものなのですね!」


 羊王国の王女・ミューレリア姫は道に並ぶ出店を見渡して歓喜の声を上げる。


「ねぇ、勇者様。あれは何ですか? フワフワして雲みたいです」


「ああ、あれは綿あめだな。つーか天と地を支える世界(こっち)にもあるのか。これも異世界(テラサード)からの技術の流入かな」


「綿あめと言うものですか。勇者様、私あの綿あめと言うのを食べてみたいです」


 ミューレリア姫のおねだりに俺は親戚の子供をかわいがるような感じで、しょうがねぇなと出店のおっちゃんに話しかけ綿あめを購入する。


 まぁ姫だけでなく、一緒に観光している4人――アイさん、トリニティ、ハーティー、マクレーンにも買ってきてあげる。

 あ、あとスノウにも。


「わぁ、甘くておいしいです」


 嬉しそうに綿あめをほおばるミューレリア姫。

 それを勘弁してくれ、と胡乱な目で見ているマクレーン。


「姫・・・いい加減に帰ろう。国王陛下も姫を待っているぞ」


「折角、獣人王国のお祭りに来たのに直ぐに帰ろうだなんて、マクレーンはせっかちですね」


「いや、姫は祭りに来たんじゃないだろう。攫われてここに来たんじゃないか・・・」


 マクレーンの説得もなんのその、ミューレリア姫はたまたま獣人王国の天獣祭の時期に攫われてきたので折角だから祭りを見て帰ろうとなったのだ。

 無論、ロリの王の証で俺の虜になってしまったので俺も一緒にと。

 そして姫を護衛も無しにそこら辺に野放しにも出来ないのでマクレーンが護衛代わりに。

 後の3人はどうせならと大勢の方が楽しいだろうと。


 俺達は出店を見回りながら祭りの雰囲気を楽しんでいた。

 まぁ、若干1名ほど楽しめていない雰囲気ではあるが。


 本当は俺もこんな風に楽しんでいる暇は無いんだけどな。

 俺はこれからの獣人王国の使徒の事や、昨日のアーノルド国王との戦いで現れた爺さんとのやり取りを思い浮かべていた。




◇ ◆ ◇ ◆ ◇



「アイ・・・じゃと? いや、まさかな。

 お主、異世界人(プレイヤー)じゃな。アイとやらも異世界人(プレイヤー)なのか?」


「ああ、あのアイさんがあれだけ狼狽している姿を見るのは初めてなんだよ。それも爺さん、あんたを見てからだ」


 爺さんは鋭い眼光で俺を見ながら何か考えながらブツブツ呟いている。

 俺の質問なんか耳に入ってすらいやしない。


「いや、気のせいじゃろう。今さらここに戻ってくることなどは無いじゃろうて」


「おい! ジジイ! いい加減こっちの質問に答えろよ!」


「ふっ、お主若いのう。必ずしも全ての疑問に対して答えてくれるとは限らんのじゃよ。

 敢えて1つだけ答えるとしたら儂は謎のジジイじゃ!」


 いや、答えになってねぇよ!

 謎のジジイって何だよ!? 結局謎のままじゃねぇか!


「いい加減にしろよ、ジジイ。アイさんはあんたを知っている風だったけど、あんたはいったい何者なんだ?」


「そりゃあ儂の事は大抵の者は知っているじゃろう。儂有名人じゃもの」


「はぁ? 有名人を見たくらいでアイさんがああなるかよ。

 それに、有名人って言ったって天地人(ノピス)としてだろう? アイさんは最近天と地を支える世界(エンジェリンワールド)に来たからジジイとの面識は殆んど無いはずだ。

 それなのにジジイを知っているのは何かあるはずだ。ジジイ、あんたもアイさんを知っている感じだしな」


 ジジイはすっとぼけるだろうが、アイさんの名前を出した時の眼光は明らかに何か知っている様子だ。

 ジジイを天地人(ノピス)と言ったが、もしかしたらジジイの身体(アバター)を使っている異世界人(プレイヤー)なのかもしれない。


 あれ? そうすると何でアイさんはジジイの身体(アバター)で驚いているのかがおかしい。

 ジジイの中身なら兎も角外側の身体(アバター)天と地を支える世界(ここ)でしか見ることが出来ないはず。


 あれ?


 俺がジジイが異世界人(プレイヤー)天地人(ノピス)か悩んでいると、今まで俺達の様子を伺っていたアーノルド国王が口を挟んできた。


「そうか、貴様は最近天と地を支える世界(エンジェリン)に来た異世界人(プレイヤー)か。

 ならばこの御老人を知らないのも無理はないか。

 この御老人は最長の冒険者にして最強の冒険者、S級冒険者の『古強者(オールドマスター)』謎のジジイだ」


 ・・・・・・はい?


 え? このジジイがS級冒険者? 美刃さんと同等の?


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?

 ちょっと待てよ。つーか、二つ名が『古強者(オールドマスター)』って謎のジジイが二つ名じゃないのかよ!?」


「謎のジジイの名は正式に冒険者ギルドに登録されている。疑うのなら冒険者ギルドへ行って確かめてみればいいだろう」


 アーノルド国王の言葉に俺は二の句が付けられなかった。


 ええー? マジで謎のジジイが名前かよ。

 じゃあ謎のジジイが天地人(ノピス)で間違いはないのか。

 だとすると、余計アイさんとの関わりが分からん。


「まぁ、お主の言うアイとやらが儂を見て様子がおかしくなったらしいが、それは儂が口出しする必要はないじゃろう。

 例え儂が何かを知っていても。アイとやらの口から聞きだすべきことではないのか?」


 ・・・正論だ。


 謎のジジイが何者か、それを聞き出したところでアイさんが一方的に知っているだけだとすれば何の意味も無い。

 結局はアイさんの口から聞くのがいいのか。


「さて、と。儂はこう見えて忙しいのでな。悪いがもう行かせてもらうぞ。

 あ、そうそう。さっきも言ったが、今ここで見たこと聞いた事は人に言わない様に。特にアイにはの」


 は? ってやっぱりこのジジイ何か知っているんじゃないか!


 言うが否や、謎のジジイは現れた時と同様に何の気配も無く姿を消し去っていた。


 その後はアーノルド国王の肩を担ぎながら皆のところへと戻った。

 俺を見つけるとミューレリア姫が駆け寄って抱き付いてくるし、それを見てアーノルド国王は憎々しげながら俺を睨みつける。

 尤も、殺気を撒き散らすほどではなかった。

 あれは魔王因子による闇の衣の影響だろうか。


 アーノルド国王は全身ボロボロな上、魔王因子が取り除かれた影響で身体能力が落ちている。

 その為すぐさま医務室へ運ばれ、暫くは軍事行動は控え(国王主導の国軍訓練等)、内政の傍ら養生することになるらしい。

 因みに炎聖国ゴーグロット国王は怪我だらけもなんのそので、来た時と同様に颯爽と国に帰った。

 まるで暴風の様な王様だったな。


 俺達も今日は城で休むことになった。

 何故ならば俺に引っ付いているミューレリア姫が居たからだ。

 流石に国賓(?)を城下町の安宿に泊まらせるわけにもいかず、アーノルド国王が忌々しげに俺達を迎賓室へと迎え入れたのだ。


 俺は謎のジジイとの出来事は何も話さなかった。

 謎のジジイの言われた通りにしたのは少々癪だったが、確かにアイさんの口からその答えを聞くのが正しいと思ったからだ。


 そうだよ、アイさんには謎のジジイの他に俺達には言っていない秘密がある。

 俺は何時かアイさんが言ってくれるのを待っているんだ。

 今さら秘密の1つや2つ増えたところで同じだろう。


 一晩経てばアイさんの調子も戻ったらしく、昨日はごめんねと謝ってくれた。

 詳しい事は今は言えないけど何時か話すからと、言ってくれたのだ。


 取り敢えず今はそれでいいだろうと言う事で、改めてエンジェルクエストの攻略に挑むことになったのだが、一晩経っても、と言うよりこのままずっとこれが続くのか?と少々厄介事が増えたミューレリア姫が獣人王国の祭―天獣祭を見たいと言い出した。


 当然俺はそんな暇は無いと突っぱねるつもりだったが、マクレーンは早急に羊王国に姫を連れて帰らなければならないため、機嫌を損ねないでと頼み込まれた。

 いや、頼み込まれたと言うより脅迫された、が正確だろう。

 何せ言う事を聞かなければVの使徒の証を渡さないって言っているのだから。


 そんな訳で俺達は今、ミューレリア姫のご機嫌取り兼折角だから祭りを楽しもうと天獣祭を見て回っている。




◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 さて、と。祭りを楽しむのもいいけど、エンジェルクエストの事も考えないとな。

 獣人王国には4人の26の使徒――通称四天王が居るとの事だ。


 『闘争の使徒・Bout』『逃走の使徒・Escape』『投槍の使徒・Javelin』『刀装の使徒・Katana』の4人の「とうそう」の使徒だ。


 居場所の特定とどうやって接触するかだが・・・


「鈴鹿。あたしとアイさんは四天王の情報を集めて来るね。

 出店を見て回るのも面白そうだけど、あたし達の目的はエンジェルクエストだからね」


 あれこれ悩んでいるところにトリニティが四天王の情報収集に出向いてくれると言う。

 随分とまぁ盗賊(シーフ)らしくなったな。

 あの『災厄の使徒』以来、トリニティは俺達の専門盗賊(シーフ)として動いてくれている。


 ここはトリニティに任せるか。


「ああ、頼んだ。

 っと、今は祭りで人で溢れているから気を付けろよ。特にスリとか喧嘩とかな」


「あのね、元(スリ)のあたしにそれを言うの?」


 トリニティが半眼になって俺を見てくる。


 そういや、トリニティは元々スリの盗賊(シーフ)だったな。

 今は冒険者専門の盗賊(シーフ)――熊として俺達に付いて来ている。


 トリニティは文句を言いながら頭にスノウを乗せたまま、アイさんと情報収集へと向かって行った。


 残ったのは俺達はこのまま祭りを見て回るが、いい加減ミューレリア姫を何とかした方がいいのか?

 下手をすればこの後もずっと付いて回るような気がするなぁ。


「勇者様、明日からの競獣レース楽しみですね!」


 ・・・付いてくる気満々だよ、このお姫様。


 隣を見ればマクレーンが勘弁してくれと言った表情でげんなりしていた。

 ハーティーもやれやれと言った感じで見ているが、どう対処するかは俺に判断を任せている。

 ハーティーは俺達のパーティー仲間と言うよりは、部外者としての立ち位置を踏まえている節がある。

 『旋律の使徒』として過剰な仲間意識を持たないようにしているのだろうが、『牛魔王』と一緒に戦った時点で今さらではあるのだが。


 ともあれ、ミューレリア姫をどうするか悩んでいると、目の前にシュタン!と軽快な音が鳴り響く様に1人の女性が飛び降りてきた。


 驚いたことにその女性はバニーガールの格好をしていた。


 黒髪に黒のうさ耳のカチューシャ、黒のバニースーツに白のカフス、ストッキングは無しで生脚に黒のハイヒール。

 何処からどう見てもバニーガールだ。


 だがよく見ると、うさ耳のカチューシャと思っていたのは本物のうさ耳で、尻尾も飾りじゃなく本物の尻尾だった。


 目の前に降り立ったバニーガールは兎人(バニット)だった。


 いや、確かに女性の兎人(バニット)は頭にうさ耳が付いているからそれっぽく見えるが、まさかここまでマジにバニーガールの格好をしている兎人(バニット)がいるとは思いもしなかった。


 多分、異世界人(プレイヤー)の誰かが悪ふざけで異世界(テラサード)の文化を教えた結果がこれだろう。


「あれ? マクレーンが居る。珍しいね、この国に(とど)まっているの。いつもなら用が済めばさっさと羊王国に帰るのに」


「・・・今回は色々状況が変わってんだよ。

 そう言うミントはいつも何かから逃げ回っているな。今回は何から逃げているんだ?」


「にぱぱ、それ程でもないよ。ボクが逃げるのは楽しいからだよ」


 兎人(バニット)のバニーガール――ミントは嬉しそうに言うも、マクレーンは褒めてねぇよと突っ込みを入れる。


「それで今回逃げているのは・・・って、もう追いついてきた! 流石はヴォルだね! 『闘争の使徒』の名は伊達じゃないね!

 それじゃ、ボクは逃げるから! そこのキミとはもっとお話ししたいからまた来るよ!」


 そう言ってミントは再びとんでもない跳躍を見せてこの場から脱兎のごとく逃げだした。

 そこの君って・・・俺の事を指さしていたか?

 初対面のはずだが、俺なんかしたんだろうか?


 ミントが去った直後、通りの向こうから土煙を上げる様な怒涛の疾走を見せながら1人の狼人(ウィーウルフ)が駆け寄ってくる。


「この・・・! ま・ち・や・が・れぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」


 ドップラー効果を伴ってあっという間にヴォルだと思われる狼人(ウィーウルフ)が俺達の前を駆け抜けて行った。


「な、なんなんでしょうか? 勇者様。これも祭りの内なのでしょうか?」


 ミューレリア姫が突然の事に驚いているが、俺はミントが言った言葉に驚いていた。

 今駆け抜けて行ったのが『闘争の使徒』だと言う事に。


 そこへ更に追従するかのように新たな獣人が現れた。


 羽ばたきをしながらしなやかに俺達の前に降り立つ。


「ほう、ミントが足を止めたので気になってみればマクレーンじゃないか。

 それにそこに居るのは『旋律の使徒・Rhythm』のハーティー・ルグランと。面白い組み合わせだな」


 背中に翼が生えた鳥――鷹の獣人・鷲鷹人(イグルホク)だ。

 頭は猛禽類のそれで、鋭い目つきでこちらに視線を送る。

 羽鳥人(ハーピー)とは違い、ちゃんと腕があり足がある二足歩行の背中に翼の生えた鳥形獣人(♂)だ。


「おいおい、ミントにヴォルフガングだけじゃなくリザルトまで3人も四天王が揃ってるのかよ」


「なに、騎士団の要請で集ったに過ぎないさ。本来であれば俺は兎も角、ミントやヴォルフガングは自由人だからな」


「もう1人の自由人を忘れていないか?」


「彼は・・・特別だよ。俺達とは別の次元を歩いている。

 それよりマクレーンが観光をしているのは珍しいな。そこのハーティーと一緒と言うのもな」


 マクレーンと鷲鷹人(イグルホク)――リザルトの会話を聞いていると、どうやらさっき会ったミント、ミントを追いかけて行ったヴォルフガング、目の前のリザルトは四天王――26の使徒らしい。

 そしてもう1人の使徒はどうやらこの3人より特別枠っぽいな。


「俺がここに居るのは成り行きだよ。本当であればとっとと羊王国に帰りたいんだがな。

 あと、ハーティーはそこに居る鈴鹿のパーティーメンバーだよ」


「なるほどなるほど。面白い。使徒を仲間に加えるとは考えもしなかったな。

 君たちはこの国には観光できたのか? 今は天獣祭の真っ最中だからな。観光に来たのなら歓迎しよう。

 それとも何か他の目的・・・例えばエンジェルクエストに挑戦しに来たとかか?」


 リザルトはマクレーンと会話していながら視線はずっと俺に向いていた。

 会話の内容が俺に向くと狙いを定めたかのように問いを投げかける。


 どうやらリザルトには俺がただの観光に来たとは見えなかったらしい。

 しっかりとエンジェルクエストの挑戦者だと言う事で捉えられていた。


「そうだよ。俺は――俺達はあんたら四天王にエンジェルクエストの挑戦しにこの獣人王国に来たんだ。

 どうやって四天王と接触しようか考えていたんだが、まさかこうやってそっちから出向いてくれるとはな。手間が省けたぜ」


「やはりな。お前から溢れ出る(オーラ)はそこら辺の冒険者とは比べ物にならんからな。

 早速だが、この俺、『投槍の使徒・Javelin』リザルトのクエストを受けるか?」


 こっちにとっては願っても居ない事だが、流石に情報収集に向かったトリニティやアイさんを蔑ろには出来ない。

 それに何の情報も無く無策に挑むのも拙いだろう。

 トリニティやアイさんの情報を待っても遅くは無い。


 俺は少し考えリザルトに今は待ってほしいと伝えようとしたが、その前に再びバニーガール――ミントが目の前に現れた。


「あーー! その人たちにはボクが最初に目を付けたんだよ! 横取りはズルい!」


 シュタンと降り立ったミントはずかずかとリザルトの前に歩き指を突きつけた。


「その割には直ぐに居なくなったじゃないか」


「ヴォルが追いかけて来るから逃げるに決まってるじゃない。

 で、そこのキミ。もしかしてエンジェルクエストの挑戦者? だったらボクとやろうよ!」


 あれ? 何でミントにも俺がエンジェルクエストの挑戦者だって分かるんだ?

 これはあれか? 四天王には挑戦者が分かる特別な能力があるとか?


「待ちやがれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」


 声のする方を向けば、ミントを追いかけていたヴォルフガングが再び迫って来ていた。


「ありゃ? もう追いついてきちゃったよ。ね、ね、エンジェルクエストを挑戦を受けるのはボクが最初だからね! 細かい事はまた後で!」


 で、飛んできた時と同様に再び跳躍して目の前から飛び去っていく。


「ぜーはーぜーはー! くそ! ミントの奴、絶対捕まえて懲らしめてやる!

 で、マクレーンが何でこの国に居る? っとそこのお前、何かやりそうな雰囲気してるじゃねぇか。もしかしてエンジェルクエストの挑戦者か!?」


 だから何で分かる。


「モテモテですね。鈴鹿」


 ハーティーが茶々を入れるが、状況的にはウェルカムなんだよな。こっちから探すまでも無く使徒からクエスト挑戦を受けろって言ってくるし。


 ヴォルフガングはミントを追いかけるのを諦めた・・・訳じゃないか。

 取り敢えず一旦休憩と言ったところか? ミントとリザルトが話しているのが気になって足を止めたところ、どうやらクエスト挑戦者だと分かったので一丁やろうぜって感じになってるみたいだ。


 で、そこへ三度ミントが現れる。


「あーー! 駄目だよ! ボクが最初に挑戦を受けるんだから!」


「お! 戻ってきたな! まずはお前を先に捕まえて絞ってやる! その後でこいつらの挑戦を受けるのは俺が先だ!」


「2人ともいい加減にしないか。クエスト挑戦を先に受けるのは俺だ。俺が先に挑戦の声を掛けたのだからな」


 ヴォルフガングはミントを追いかけながら「俺にしろ!」と叫ぶし、ミントはミントでヴォルフガングから逃げ回りながら「ボクが先だよ!」と叫ぶ。

 リザルトに付いては冷静にこの場を納めようとしながらもしっかりと自己主張をしてきている。


 ・・・何のカオスだ、これ?


「・・・はぁ。俺はとっとと国に帰りたいんだよ・・・」


 相手されているようでされていないマクレーンのポツリとつぶやいた言葉にはどことなく哀愁が漂っていた。




◇ ◆ ◇ ◆ ◇



「ええっ!? もう既に四天王と会っちゃったの!?」


「まぁ、成り行きでな。

 俺としては直ぐにでもクエストを受けたかったけど、流石に何の情報も無しには出来ないから取り敢えず今日は帰ってもらったよ」


 トリニティとアイさんが四天王の情報を集めて戻ってきて、そこらの食堂で作戦会議と言ったところで、四天王と接触したことを告げると当然の如くトリニティは驚いていた。


 結局その日は3人の四天王にはお帰り頂いた。


 カオスになった現場では終いには野次馬が集まりだし、騎士団が出張ってくる羽目になった。

 騎士団の方では四天王が目立った行動をするのは良しとせず困っていた為、俺は後日改めてエンジェルクエストに挑戦することを告げて帰ってもらう事にしたのだ。


「はぁ~、何か気に入られちゃったみたいね。これなら苦労せずに四天王のクエストを受けられるかな?」


 トリニティの仕入れた情報によると、普通だと四天王の1人である『逃走の使徒』のクエストを受ける事すら一苦労するそうだ。

 クエスト自体も難題らしいが、クエストそのものを受ける為に『逃走の使徒』を探し出すことが難しいらしい。


 『投槍の使徒』も何処か武人気質なところがあり、自分のやりがいのある挑戦者でなければクエストを受けれないらしい。


 唯一誰の挑戦でも受ける『闘争の使徒』だけが簡単にクエストに挑めるとか。

 ただ、『闘争の使徒』は期間限定らしく、こちらはクエスト挑戦のタイミングが必要になるらしい。


「『闘争の使徒』は獣人王国の武闘トーナメントに参加すればエンジェルクエストを受けられるよ。

 と言うか、当然トーナメントで『闘争の使徒』に当たる必要があるから勝ち続けなければならないけど」


「ってことは、今は丁度天獣祭で武闘トーナメントを開催しているから丁度いいじゃねぇか」


 まぁ、トリニティの言う通りトーナメントを勝ち続け『闘争の使徒』――ヴォルフガングに勝たなければいけないが。

 もし負けたりすれば次の武闘トーナメントの再来月まで待たなければならない。

 負けるつもりはないが、これはとてもじゃないが負けれらないな。


「ちょっと待ってください。確か武闘トーナメントは個人戦、団体戦の枠が存在したはずですよ? もし個人戦のみの挑戦しか受け付けないのなら鈴鹿達は1人しかクエストを攻略できませんよ」


 ハーティーは特にエンジェルクエストを受けている訳じゃないので(使徒なので受けれないってのもある)心配する必要はないのだが、わざわざ俺達の為にクエスト挑戦を心配してくれていた。

 確かに個人戦のみだったら2か月後、4か月後と別々に挑戦をしなければならないしな。


「それは大丈夫よ。『闘争の使徒』は個人戦も団体戦も両方出場するから。あたし達は団体戦で挑戦すれば3人とも使徒の証を貰えるわよ」


「ん? てことは俺は個人戦・団体戦両方参加すればどっちかでBの使徒の証を貰えるんじゃないか?」


 トリニティが心配ないとヴォルフガングは個人戦・団体戦両方に参加していると言う。

 どれだけ闘いが好きなんだ、あの狼人(ウィーウルフ)

 まぁだから『闘争の使徒』なのかもしれないが。


 そして両方に参加しているのならそれだけ挑戦権が増えると思って口にするが、アイさんにやんわりたしなめられた。


「鈴鹿くん、残念だけどそれは出来ないわ。トーナメントに参加するには個人戦か団体戦のどちらかしか選べないのよ」


「あー、そう簡単に都合よくはいかないか。

 まぁいい、それじゃあ団体戦で『闘争の使徒』と戦うって事でいいか?」


 俺の決定にアイさんとトリニティは頷く。


 ただ問題なのは・・・


「武闘トーナメントは今日から4日後って事ね」


「まぁ、こればっかりはどうしようもねぇな。上手い事武闘トーナメント――天獣祭に来れた事だけまだマシか」


 これまた上手い具合に奴隷市・競獣レース・武闘トーナメントが同時期に行われる天獣祭に来れたので、2か月後にまた来なくても済んだのは助かる。

 まさかとは思うが、アイさんがその辺りを上手く調整を取って天獣祭に来るようにしたんじゃないだろうな。

 ・・・まぁ、幾らアイさんでもそこまでは出来ないか。


「じゃあその4日後のトーナメントの前に他の四天王の攻略を進めておく?」


「だな。今日会った四天王の様子だと『逃走の使徒』を先に挑戦した方が良さそうだ」


「えーっと、『逃走の使徒』って・・・確か女の人の兎人(バニット)だったよね。しかもバニーガールの格好をした。

 ふーん、へぇー、ほぅー、鈴鹿はああいったのが好みなんだ」


 トリニティが『逃走の使徒』の情報からミントの人物像を思い浮かべ半眼になって俺を見つめてくる。


 いや、別にそれが理由で最初に選んだわけじゃないぞ? 今日の様子から1番に選んだだけで。

 ・・・バニーガールが好きだと言うのは否定しないが。


 そんな様子を楽しそうに眺めていたミューレリア姫は「わぁ~勇者様、トーナメントに出るんですか? 私応援しますよ」なんて言っていたりする。

 マクレーンとしては姫を連れて帰ることが羊王国からの勅命だったりするので、否応なしに俺達に付き合う羽目になっている。


「・・・マジで勘弁して欲しいぜ。いつになったら国に帰れるんだよ」


 ・・・何かマクレーンが憐れになって来たな。






◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 Alive In World Online攻略スレ311


959:怒り新人:2058/3/3(日)7:10:01 ID:EVA2014Srd

 逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ


960:名無しの冒険者:2058/3/3(日)7:14:41 ID:MsTs8GLiRt

 『逃走の使徒』のクエストムズいよ


961:名無しの冒険者:2058/3/3(日)7:16:25 ID:I9raSaZaE3

 ですです、逃走さんの鬼ごっこ激ムズですぅー


962:名無しの冒険者:2058/3/3(日)7:20:13 ID:T65RgeOn

 え? 鬼ごっこだろ? そんなにムズいの?


963:名無しの冒険者:2058/3/3(日)7:23:59 ID:Kumo5Ttl910

 『逃走の使徒』のクエストって鬼ごっこなんだよね~


964:名無しの冒険者:2058/3/3(日)7:24:33 ID:MsTs4PplHs

 ??? 普通の鬼ごっこじゃないの?


965:牧葉・真理・苛巣鳥明日:2058/3/3(日)7:29:24 ID:EVA2014Forth

 >>959 ワンコ君は相変わらずだね~


 >>962 たかが鬼ごっこと思おうなかれ、広大なフィールドを使った鬼ごっこは最早鬼ごっこじゃないんだなぁ~


966:名無しの冒険者:2058/3/3(日)7:33:13 ID:T65RgeOn

 >>965 詳細詳しく


967:名無しの冒険者:2058/3/3(日)7:39:30 ID:Mgk162Not

 鬼ごっこって聞くと簡単そうに聞こえるけど・・・


968:名無しの冒険者:2058/3/3(日)7:44:41 ID:MsTs8GLiRt

 獣王都市全体を使った鬼ごっこ

 『逃走の使徒』が逃げるのを鬼である挑戦者が追いかけると言うクエスト


969:牧葉・真理・苛巣鳥明日:2058/3/3(日)7:45:24 ID:EVA2014Forth

 鬼:挑戦者

 兎:『逃走の使徒』

 時間:丸1日

 場所:獣王都市全体


 これでただ単純に追いかけて行けばいいだけだと考えてると痛い目見るよ~


970:名無しの冒険者:2058/3/3(日)7:49:25 ID:I9raSaZaE3

 フィールドの広さと時間がおかしいですぅー


971:名無しの冒険者:2058/3/3(日)7:53:59 ID:Kumo5Ttl910

 時間も丸1日あるから十分に見えるけど、実際は全然足りないんだよね@@;


972:名無しの冒険者:2058/3/3(日)7:54:41 ID:MsTs8GLiRt

 鬼ごっこと言うよりかくれんぼに近いかな?


973:名無しの冒険者:2058/3/3(日)7:57:13 ID:T65RgeOn

 何か大昔テレビ番組で流行った逃走者みたいだね


974:怒り新人:2058/3/3(日)8:00:01 ID:EVA2014Srd

 逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ


975:牧葉・真理・苛巣鳥明日:2058/3/3(日)8:04:24 ID:EVA2014Forth

 >>974 や、兎ちゃんが鬼だから逃げなきゃクエストにならないでしょw









次回更新は12/23になります。

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