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Alive In World Online  作者: 一狼
第4章 Fang
23/83

22.牙狼の使徒と永遠の巫女と猪人

 ――AL103年4月1日――


 俺達は今、マーチャキャラバンの護衛として夜の国ミッドナイトを目指している。

 昨日の隊列と同じく、3連結の馬車には先頭にマーチャ会長とアイさん、中央にはバイインと俺、最後尾にはバイナとトリニティが。


 同じ馬車の中でバイインが昨日の事を話してくる。


「いやー、鈴鹿さん達には感謝ですね。お蔭で取引が優位に進められましたよ」


「別に俺達の所為って訳でもないだろ。商売がうまくいったのはあんたらが上手だったからさ」


「そんなことないですよ。村の子供たちの危機に颯爽と助け出した冒険者。それを雇っていた僕達も評判が上がりましたからね。

 会長が騎獣縮小リングの希少(レア)アイテムを渡してまで雇っただけありましたよ」


「そこまで持ち上げると言う事はかなり儲けが出たのか?」


「ええ、予想以上に稼がせてもらいました」


 随分とご機嫌なバイインはホクホク顔で話をする。

 どうやら本当に俺達の行動で彼らに利益がもたらされたらしい。

 俺としてはただ単にターニャを手伝っただけなんだがな。


 昨日、子供たちが村の外に出ていたところを悪行冒険者が狙っていたので、それを阻止するためにターニャと共に殺生石の中の九尾城に乗り込んだ。

 九尾城の中では再生水晶の中で復活を待っている九尾の狐が居たり、それを世話(?)する3人の狐人(フェネックス)の少女が居たり、実はその3人の少女と村の子供3人と友達だったり、子供たちを追いかけて入り込んだ冒険者は吸血鬼(ヴァンパイア)化した仲間に殺されたりと、まぁ一晩で色々あった訳だ。


 最終的には無事子供たちを村へ連れ戻すことが出来たのだが、バイインの話によると村長の娘を含めた3人の子供たちの救出に護衛の冒険者を貸し出したマーチャキャラバンの株が上がったらしい。

 取引もそれをネタに(強請ったわけでは無いとの事)予想外の利益が出たとか。


「それにしても鈴鹿さんも子供たちに囲われて大変だったみたいですね」


「まぁ、な。今日なんか出発する時に泣かれたからなぁ」


 子供たちを救出した時にその現場に居た村長の娘のティナと蛇人(ラミア)のエナの娘ドナは、俺の戦いに痛く感動し懐かれてしまったのだ。

 村に戻ってから彼女らを相手するのに一苦労した。

 決してロリの王の証の力の影響だとは思いたくない。


 特にもう1人の警備長ターニャの娘のウルスは怪我をして避難していたので俺の戦いを見ておらず、ティナとドナの2人に熱く語られ見逃したことを凄く後悔していた。

 その所為か、俺に2人以上に必要に迫ってきてあの時はどうだった、その時はどうしたなどと根掘り葉掘り聞いてくるのだ。

 決してロリの王の証の力の影響だとは思いたくない。


 お蔭で必要以上に懐かれ、今日の出発の際には別れを惜しまれ大泣きされてしまった。

 そう、決して・・・決っっしてロリの王の証の力の影響だとは思いたくない!


 何とかなだめてまた会う約束はしたものの、次に来るのは何時になるやら。

 ちょっと後ろめたさを覚えつつも、全てが片付いた後に唯姫と一緒に来るのもいいかもと考える。


 マーチャキャラバン一行はモンスターを蹴散らしながら深緑の森を抜け、荒野をひたすら走り昼を過ぎたあたりで夜の国ミッドナイトへと辿り着いた。

 とは言え、名前の通り夜の国であるミッドナイトは吸血鬼(ヴァンパイア)が住まう土地の為、今の時間だと起きている住人が居ないので日が落ちるまで宿に泊まって休憩を取るらしい。


 俺達はここで別れることにする。

 夜の国までの護衛の契約だったため、俺達の役割はここで終わりだ。

 それに今は寝静まっている夜の国には用はなく、出来れば今日の内に『牙狼の使徒』の所へ行きたいところだからだ。


「出来れば鈴鹿さん達には専属契約を結びたいところですなの」


「あー気持ちは嬉しいが、俺達はやらなきゃいけない事があるからな」


「分かっているですなの。いろいろ聞いたですなの。

 エンジェルクエストを攻略している冒険者を引き止めるのは難しいですなの。だから惜しいですけどここでお別れですなの」


 マーチャ会長から護衛の追加報酬を貰い俺達は夜の国には入らずにここで別れた。

 別れ際にまた別の信頼できる冒険者を捜さなければと少し嫌味を言われたのは彼女の信頼を得ることが出来たのだろうか。




◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 俺達はスノウに乗って夜の国から西に進んでいく。

 夜の国から西は一面が雪景色に染まった平原だった。

 確かツンデレ平原とか言ってたな。・・・誰が何を考えて付けた名前なんだか。


「あ、見えてきた。あれが目的地なのか?」


 トリニティが指差した先には氷で出来た1本の巨大な桜の大樹がそびえ立っていた。

 冬華樹アイスブロッサム。それが氷で出来た桜の大樹の名前だ。


 その冬華樹の麓に『牙狼の使徒・Fang』が居るらしい。


「うわぁ・・・凄い綺麗・・・」


「これは・・・確かに凄いな」


 スノウを冬華樹の傍に降り立たせ、俺達はその光景に目を奪われていた。

 樹齢何千年とも思われるほどの桁違いな大きさの冬華樹は透き通るような氷で出来ていて、花びらは桜を思わせるような薄いピンク色をしていた。

 花の散り様は花びらがヒラヒラ落ちるのではなく、花びらがパキンと砕け散り氷の粉を振り撒く幻想的な景色を醸し出していた。

 俺達はその圧倒的な氷の大樹と所々降り注ぐ氷粉の景色を前に、『牙狼の使徒』の存在を忘れていた。

 否、冬華樹の根元で寝そべる巨大な銀狼すらもこの景色の一部として当たり前のように捉えてしまっていた。


 俺達の存在に気が付いた『牙狼の使徒』は、おもむろに頭を上げて声を発した。


「エンジェルクエストの挑戦者か。む・・・」


 『牙狼の使徒』はこちらを見ると何かに気が付いたかのように凝視してきた。


 ・・・? そう言えばつい最近も似たようなことがあったな。


「・・・まぁ問題はないだろう。

 我は『牙狼の使徒・Fang』だ。名はフェンリルと言う」


「は? フェンリルって神様になった巫女神・・・の事だよな? え? フェンリルって狼だったのか?」


「いや、それは別のフェンリルだ。我とその者はたまたま同じ名前を授かったに過ぎん」


 後で調べて分かったことだが、フェンリルと言うのは北欧神話の神様の名前になる。

 悪戯好きの神(トリックスター)ロキの息子にして世界を食らう狼として神話に名を連ねている神様だ。

 AIWOn(アイヲン)でもその設定の一部を使い、神狼としてこうして登場させているみたいだな。


「それで、あんたを倒せば使徒の証を手に入れられるんだな?」


 俺は改めて神狼フェンリルを見て、臨戦態勢を取る。

 神狼と呼ばれるだけあってその雰囲気は『始まりの使徒・Start』の老竜(エルダードラゴン)エルディディアルと同じものがあった。


 だが神狼フェンリルが次に発した言葉は俺の予想外のものだった。


「いや、我と戦う必要は無い。『牙狼の使徒』のエンジェルクエストは月の欠片をここに持ってくることだけだ」


「・・・え? それだけ?」


「それだけだ。

 我はこの地を呪いから守る冬華樹を守護している。その冬華樹を維持するのに必要なのが月の欠片だ。

 我は冬華樹を守護しているためこの地から動くことが出来ん。代わりに月の欠片を集めてもらうのが『牙狼の使徒』のエンジェルクエストになる」


 てっきりこの神狼と戦闘になるのを覚悟で来たんだが、まさか『牙狼の使徒』の内容がただのお使いだったとは。

 俺は予想外のクエスト内容に思いっきり脱力する。

 トリニティの方を見ても同じだったらしく、安堵している様子が分かる。

 アイさんは・・・まぁいつもの通りだったが。


「よし分かった。その月の欠片を持ってくればいいんだな。で、どこにあるんだ?」


「それを探るのもお主らの試練(クエスト)だ」


「え? 何のヒントも無し?」


「そうだ。頑張って探して来い。我はいつでも待っている」


 そう言って神狼は用が終わったとばかりに再び顔を伏せ眠りに着く。


 え? マジか? 何のヒントも無く探し当てて来いってのか?

 それって、無茶苦茶レベル高すぎねぇか?


 俺達は取り敢えず神狼から離れ、月の欠片についての事を話しあう。


「トリニティ、何か月の欠片に関する事を知ってないか?」


「知っている訳ないだろ。元々エンジェルクエストの情報はあまり出回ってない上、高値で取引されているんだ。

 月の欠片って言葉だって今初めて聞いたんだし」


 だよなー。知ってたら初めから言ってるだろうし。

 となれば何処から情報を手に入れたらいいもんだろうか。

 下手をすれば月の欠片を探し出すことは難しいかもしれない。


「大丈夫よ。私が知っているから。取り敢えずスノウに乗ってその地に向かいましょう」


 ・・・どうやら心配は杞憂だったようだ。アイさんがその情報を既に掴んでいるみたいだ。


「何かアイさんを見ていると盗賊(シーフ)としての自信を失いそうになるな・・・」


「アイさんと比べること自体が間違いだと思うけどな」


「あ、やっぱりそう思うか? アイさんの存在自体が規格外と言うか反則と言うか」


「・・・何か酷い言われようだけど、何か文句でもあるのかしら?」


「「いえ、何もないですよ?」」


 アイさんから暗に言いたいことがあるならどうぞと言われるが、俺とトリニティは敢えて踏込はせず2人口を揃えて口を噤む。


 ・・・まぁ、実際は聞きたいことは山ほどあるのだが、今はまだ聞いちゃいけないような気がする。

 今はアイさんを信じて一緒に行動してもらえるだけで十分だ。




◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 冬華樹から一転して今度は南西に向かってスノウを飛ばせる。

 そのスノウの背で俺達はアイさんから月の欠片の説明を聞いている。


「冬華樹は100年以上前の月神の巫女の使いが月神ルナムーンから授かったものなのよ。

 あの一帯は呪いに汚染されていてね、その呪いの元凶を倒し呪いを抑えたのが冬華樹なの」


「呪いの元凶を倒したんならもう呪いは無いんじゃ?」


「呪いの一番厄介なのは術者が居なくなったからって消えるものじゃないのよ。寧ろ死してなお呪いが強まるのが常ね」


「それで月の欠片なのか。あの冬華樹の力の源は月神ルナムーンだから力の一部である月の欠片が必要だと」


 トリニティが納得したように呟き、その続きを促す。


「で、肝心の月の欠片は何処にあるんだ?」


「まぁここまで言えば分かったと思うけど、月の欠片は月神の巫女から手に入れることになるわ」


「ちょっと待って。月神の巫女は100年前の大災害時に居なくなってしまったって聞くけど?」


 この天と地を支える世界(エンジェリンワールド)三柱神(みはしらのかみ)が支えていると言われている。

 そしてその力を発揮するのはそれぞれの巫女が居てこそだと。

 だが月神の巫女はルナムーン神殿があったセントラル王国が100年前の大災害と一緒に滅んでしまった為、今は不在のはずだと言う。


 因みに太陽神サンフレア神殿はプレミアム共和国にあり大災害から難を逃れ、勇猛神ブルブレイヴ神殿は辛うじてセントラル王国からミレニアム王国へと逃れたらしい。


「トリニティも聞いたことあるんじゃないかしら? 永遠の巫女の噂」


「・・・まさか、永遠の巫女が月神の巫女? 永遠の巫女って噂じゃなかったのか・・・」


「永遠の巫女って?」


 トリニティは信じられないと言った面持ちで噂の内容を説明する。


「永遠の巫女ってのはその名の通り永遠に生きていると言われている巫女だよ。

 何十年も姿が老いもせず若いままで生き続けているらしいよ。もしかしたら何百年も生きているかもしれないな。

 居場所も分からないから只の噂だと思っていたんだけど・・・」


「実はその永遠の巫女が月神の巫女で、100年前の大災害で滅んだと言うのは嘘だったわけだ」


「信じられないことにな」


 100年も生き続けるなんてにわかには信じられない話だが、ここがゲームの世界と考えればあり得るのか?

 だがこの世界の住人・天地人(ノピス)を見ればとてもただのAIには見えないんだよな。寿命を弄れるほど単純な存在には思えないんだが。


「それでアイさんはその永遠の巫女が居る場所へ向かっている訳だ」


「そうね。場所はそんなに遠くないから。セントラル遺跡から西に行った森の側よ」


「西の森って・・・不帰の森かよ。どうりで永遠の巫女の居場所が分からいはずだ」


「ああ、今は不帰の森って呼ばれているのね。その森とクリスタル湖に挟まれた場所に居るわ」


 トリニティの話によると不帰の森とはセントラル遺跡の西に広がる森で、遺跡探索者が探索範囲を広げ森に入ったきり出てこなくなったことから付けられた名前らしい。

 とは言っても全員が全員帰ってこなかったわけでは無い。噂が独り歩きして森に入ったら誰も戻ってこないとされたみたいだ。

 だがその曖昧な噂の所為で永遠の巫女の噂も信憑性が失われていたと。


 スノウを飛ばして数時間、森と湖に挟まれた平地に神殿が建っているのが見える。


「あれがルナムーン神殿か」


「意外と普通だな。100年も隠し通しているから何か特殊な神殿かと思ったけど」


 いや、トリニティよ。100年も朽ちずに存在しているだけでも特殊性有りまくりだぞ。

 確かに古めかしい感じの神殿だが、大災害時の大量モンスターの侵攻やらその後の100年の年月を考えれば今でも建っているのが不思議なくらいだ。

 これは月神の加護があるからとかそう言うのなのだろうか?


 俺達は神殿の近くに降り立ち向かおうとするが、神殿の前には1匹のモンスターが立ち塞がった。

 いや、モンスターか?


 見た目はオークだ。

 タダ違うのは口から生える大きな牙に引き締まった体。何より一番違うのは豚であるオークとは違い、全身が毛に覆われていると言う事だ。

 どちらかかと言うと豚と言うより猪と言った方がしっくりくる。


 その猪オークは俺達の姿を確認すると手にした槍斧――ハルバードを突きつける。


「お、おめだぢ何者だ! ここは神聖なるルナムーン神殿だべ!」


「いや、そのルナムーン神殿に用があって来たんだが・・・と言うか、喋った?」


 よくよく考えればボスなどの特殊性モンスターを除けば普通は喋らないはず。

 そう考えるとこの猪モンスターはボス並の強さを持つ特殊性モンスターと言う事か?


「オ、オラが喋っちゃ悪いだか!? オラが田舎者だからバカにしてるんだべ!」


「い、いや、そういう訳じゃないんだが・・・」


「問答無用だべ! ルーナ様に仇為す輩はオラが排除するだ!」


 そう言いながら猪オークは俺達に向かってハルバードを振るってきた。

 俺は咄嗟にユニコハルコンを抜き放ち、向かって来るハルバードを打ち払う。

 但しあくまで防衛の為であって、攻撃に転じる為じゃない。

 どうやら永遠の巫女の関係者っぽいし、モンスターとは言え一応話が通じるので出来れば話し合いで治めたいのでアイさん達には手を出さない様に指示をする。


 猪オークは時折槍戦技や斧戦技を織り交ぜながら攻撃を放つ。

 俺はそれを剣姫流のステップで躱しながら猪オークの実力に目を見張った。

 この猪オーク、意外と基礎がしっかりしていたのだ。


 力任せに振るうモンスターとは違い、重心の取り方、足捌き、上半身を使った武器捌き、明らかに普通のモンスターに出来る事ではない。

 とは言え、まだまだ粗削りなところがあるため俺には攻撃は届くことはない。


「当たらねぇだ!? ううう、ならこれならどうだべ!

 ――槍戦技・二連旋風閃大斬!」


 当たらないことに苛立ちを覚えた猪オークは槍戦技の大技を放ってくる。

 二連旋風閃大斬は威力の大きい技ではあるが、その分隙も大きく実戦では使いどころが難しい戦技だ。


 二連撃の突きの後、そのまま体を回転させ槍での横薙ぎを振るう。

 俺は二連突きをステップで躱した後、体重を乗せた横薙ぎをユニコハルコンで猪オークの手元に打ち付けた。

 てこの原理で完全に力が乗る前のハルバードを抑えたことでお互いが顔を近づけあう鍔迫り合いの状態になる。


「な、何で技が止められただ!? オラの力はそんなに弱くはねぇだ!」


「あー、取り敢えずちょっと落ち着いて武器を納めてもらえるか? 俺達は争いに来たわけじゃないんだ。あんたの言うルーナ様? 月神の巫女に会いに来たんだが」


「嘘だ! そう言ってオラを騙そうとしているんだべ! もう二度と騙されねぇべさ!

 虹の橋を渡ってお菓子の国に行けるだとか、月の国から来たルーナ様の兄妹だとか信じねぇだ!」


 俺達の前に来た冒険者はこいつに何を吹き込んだんだよ。

 つーかそんなん信じるなよ。


「武器を納めてください、アルベルトさん。彼らは私に害を為そうとしている敵ではありません」


 そんな俺達の間に割り込んできたのは1人の巫女だった。

 神殿の方からゆっくりと歩いてきた巫女はまだ10歳にも満たない少女に見えた。


 と言うかこの猪オーク、名前がアルベルトかよ。無駄に立派過ぎる。


「ル、ルーナ様! あうあう、すまねぇだ。オラてっきりルーナ様を狙う悪者かと・・・」


「大丈夫ですよ。彼らもアルベルトさんの事をちゃんとわかって下さって、傷付けまいとしてくれましたから」


 どうやらこの子が月神の巫女らしい。

 いや、この子と言うのは違うか。実質100歳以上の年上なわけだし。


「お客人様、失礼いたしました。

 アルベルトさんは私のみを案じての事の為ですので、出来れば許しを請いたいのですが」


「ああ、それほど気にしちゃいないよ。どちらかと言うと何でモンスターがあんたを守っているのかそっちが知りたいね」


「分かりました。取り敢えずは神殿の中へお入りください。詳しい事はそこでお話しいたします」


 月神の巫女ルーナは俺達を神殿の中へ案内する。

 てっきりアルベルトもついてくるものだと思ったのだが、彼は神殿の外で腰を下ろしてしまった。


「アルベルトさん、中に入ってもいいのですよ」


「オ、オラはここでいいだ。オラみたいな化け物が神殿の中に入るなんて畏れ多いだ」


 ルーナは少し困った顔をしたが、「分かりました、それではこの場をお願いしますね」と言って神殿の中へ入って行く。

 俺達もルーナに導かれ中に入る。




◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 神殿の一室の応接間で俺達とルーナはテーブルを挟んで向かい合い、お互い自己紹介をする。

 尤もルーナの事は知っているのでこちらの自己紹介が主だが。

 ただアイさんが自己紹介をした時に少しだけ訝しげな顔をしていたのが少し気になった。


「まずはアルベルトさんが貴方方に攻撃を仕掛けてしまった事のお詫びと、アルベルトさんに危害を加えなかった事のお礼を申し上げます」


 そう言ってルーナは深々と頭を下げる。

 見た目は少女なのでこの落ち着いた感じが凄くミスマッチに感じる。


「さっきも言ったが気にしていないよ。

 と言うか、あいつは何なんだ? オークのモンスターにしちゃ余りにも変わり種過ぎる」


「そうですね。彼はオークのように見えますがモンスターではないのです。

 オークからの進化した猪の獣人、私は猪人(ボアーク)と呼んでいます」


 は? モンスターじゃなく獣人?

 しかもオークから進化した猪人(ボアーク)だって?


「彼はオークの群れの中で生まれ、その毛色が違う所為で群れの中で迫害を受けてました。

 数年前、神殿の前に傷だらけになって横たわっていた彼を私が保護したのです」


「よく保護しようとしたな。言っちゃ悪いが見た目はオークっぽいから普通はモンスターと判断するだろ」


「いえ、それはあり得ません。彼はモンスターではないからこそこの地に踏み入ることが出来たのです」


 ルーナはトリニティの言葉を否定し、ルナムーン神殿の領域に入れたからこそ獣人だと判断したと言う。

 俺達が入るのに影響は無かったが、実はこの神殿の周りにはモンスターの侵入を阻む結界が敷かれているらしい。

 もしアルベルトが異色とは言えオークだったのならこの神殿領域内に入ることは出来なかったはずだと。


「・・・結界なんて張られていたのか」


「あら? 気が付かなかった? よく目を凝らしてみれば薄い光の幕が周囲を覆っているわよ」


 いやいや、アイさんと一緒にしないでくれ。普通はそう簡単に見分けることが出来る訳ないよ。


「まぁ、モンスター以外には効果が無い結界ですから。

 そんな訳でアルベルトさんは私に恩義を感じて神殿の守護を買って出てくれたのです」


「よくよく考えれば犬人(コボルト)も野生コボルトから進化した獣人なんだから、オークから猪の獣人が出ても不思議じゃないか」


「あー、そう言えば犬人(コボルト)はそうだったな。

 つーかAIWOn(アイヲン)・・・天と地を支える世界(エンジェリン)って獣人とモンスターの区別って意外とはっきりしているな」


「そうね。この世界は普通のゲームとは違うから獣人とモンスターの区別がつきにくいんだけど、何故か意外と区分けがしっかりしているわね。

 もしかしたら何かの伏線なのかもしれないわ。少し気を付けて見ていた方がいいわね」


 俺の素朴な疑問にアイさんも相槌をしてくる。

 言われてみれば何かのフラグなのかもしれないな。アイさんの言う通り少し気を付けてみて見るか。

 トリニティは時折俺達の会話に出てくる現実(リアル)用語に最早下手な突っ込みを入れずに静観をしていたりする。


「彼が来てから私の生活は少し変わりました。

 この100年間、平静を保っていたのですが思いのほか寂しかったのですね。人との会話がこれほど楽しいものだと思いもしませんでした」


 そう言いながらルーナはこれまでの過ごした年月を思い出したのか哀愁漂う表情をしていた。


 っと、そう言えば話が少しそれたな。

 ルーナの永遠の巫女を思わせる言葉に俺は本来の目的を思い出す。

 俺達の目的は月の欠片だ。ルーナにそのことを聞かなければ。


「アルベルトの事は分かった。あいつがモンスターじゃなく、獣人って言うのなら俺達が心配する事でもないだろう。

 まぁここに来る冒険者に言いようにからかわれているみたいだが。

 ・・・さて、そろそろ本題に入ろうか」


「そうですね。鈴鹿さん達の目的は月の欠片ですね」


 皆まで言わずともルーナは俺達がここに来た理由が分かっていた。


 そう言えば俺達の他にもエンジェルクエストを攻略している奴らが居るんだ。

 『牙狼の使徒』から月の欠片、そして月神の巫女であるルーナに辿り着きここに訪れるのは目に見えている。

 何度も月の欠片を求めた冒険者が来たのだろう。新たな冒険者が来れば月の欠片を求めてきたと思うのは当然だ。


「話が早いな。こっちとしては説明の手間が省けて楽だが。

 そんな訳で月の欠片を貰いたいんだが・・・どうだろうか」


「ええ、大丈夫ですよ。月の欠片をお渡しいたします。

 ただ・・・月の欠片の生成に1日掛かりますので、少々お待ちいただくことになります。

 大体明日の昼頃までには月の欠片をお渡しできると思います」


「分かった。ならそれまで待たせてもらってもいいか?」


「はい、この神殿には冒険者の方々がお泊り出来る施設もございますので大丈夫ですよ」


 時間的にはほぼ丸1日空くことになるな。

 さて、どうしようか。

 町中ならともかく、この神殿しかないところで1日過ごすのも時間がもったいない気がするなぁ。

 剣姫一刀流の鍛錬をしてもいいが、一度離魂睡眠(ログアウト)するのもありか?


「もし宜しければアルベルトさんとお話ししてもらえますでしょうか。

 彼は私以外の友人が居りません。オークの群れの中に居た時も仲間外れにされ、仲間や友人と言うのを知らないのです」


 あー、確かに群れの中で弾き者にされ、ここにきても話し相手がルーナしかいないんじゃ友達も出来ないか。


「まぁ、話し相手くらいにはなってやれるか。友達になれるかどうかはまた別の話だがな」


「ありがとうございます。それだけでも十分ですよ。

 先ほども申しあげたとおり、人と触れ合いと言うのは思いのほか重要なんです」


 流石100年生きた者の言葉の重みは違うね。

 と、そこでトリニティが永遠の巫女に関して疑問に思っていたことを質問する。


「なぁ、こう面と向かって聞くのも何だが、あんた永遠の巫女って本当なのか?

 人が100年生きるなんて聞いたことが無いよ」


 トリニティの質問にルーナは少し表情を曇らせながらも答えてくれた。


「はい、噂で私が永遠の巫女と呼ばれているのは知っております。

 ですが私自身も何故永い時を生きているのかは分からないのです」


 そう言って彼女が語ったのはこの100年の出来事だ。


 100年前、ある冒険者の力を借りて弱冠12歳で月神の巫女になり月神ルナムーンの力を天と地を支える世界(エンジェリンワールド)に行き渡らせた。

 そしてその後に起こった大量のモンスターによる大災害。

 セントラル王国中に溢れたモンスターは当然このルナムーン神殿にも及んだ。

 当時はルナムーン神殿があった地はアルテ村と呼ばれ大勢の村人がいたが、月神の巫女を賜ったルーナが居たことによって神殿の結界で村人を守ることが出来た。

 だが村は守れても王国は守れず、生き残った村人は少しずつこの地を離れ最後にはルーナ1人になってしまう。

 元々ルナムーン神殿があったからその気はなかったが、何故かルーナはその時からこの地を離れることが出来なくなってしまっていた。

 そうして10年20年と過ごすうち、己の体に老化現象がみられず自分が不老になったことを悟ったのだとか。


「最初は巫女になった影響かと思いましたが、他の巫女にその現象がみられないところを見るとどうやら私だけのようでした」


「永遠の巫女は不老不死って噂だが・・・死ぬことはないのか?」


「流石に死んだことが無いからそこまでは分かりません。試したいとも思いませんし」


 俺の質問に若干苦笑いをしながら答えてくれる。


 そりゃあそうか。幾らなんでも自殺して試すわけにもいかないからな。


「永い年月を1人で過ごすのは今にして思えば寂しかったですね。

 今はアルベルトさんもいますし、こうして冒険者の方々も時折尋ねてきますので寂しくはなくなりましたね」


 確かに100年もの年月を1人で過ごすことを考えれば普通なら気が狂うんじゃないか?

 ルーナはこうして気楽に話してはいるが、俺が想像もつかない程精神的損耗が激しかったんだろう。


 今ふと思ったんだが、これってゲームの設定なのか?

 100年生きたと言う設定で、2年前のAlive In World Online起動時に動き始めたAIじゃないのか?

 ・・・いや、違う。

 今まで会ってきた天地人(ノピス)――NPCはそんな軟な存在には見えない。

 つまりルーナは実際に100年の時を生きてきたのだ。


 現実(リアル)とゲームの時間の流れが違うのだから、ゲームの中だけ100年経過させるのも技術的には問題はないだろう。

 だが、そう考えるとこのAlive In World Onlineって何なんだ?

 わざわざそこまでNPCを動かして何をしたいんだ?


 はっきり言ってこのAlive In World Onlineは普通じゃない。

 いや、唯姫たちの意識を切り離してアルカディアに閉じ込めている時点で普通じゃないのは分かってはいるが、こうして天と地を支える世界(エンジェリン)を巡ってみると他のVRMMOと違いすぎるのを感じる。


 ・・・Arcadia社の目的は何処にある?




◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 ルーナはその後、月の欠片を生成する為祭壇へと向かって行った。

 俺達は明日の昼まで自由行動と言う事で各々思い思いに過ごすことにした。


 俺は取り敢えず体を動かそうと神殿の外に出ると、そこにはハルバートを振り回しているアルベルトを見つけた。

 ルーナの言葉じゃないが、俺はこの風変わりな猪オーク――猪人(ボアーク)が少し気になったので話しかける。


「よう、精が出るな」


「あ、さっきは済まなかっただ。オラ興奮しちまって・・・」


 アルベルトはハルバードを振り回すのをやめ済まなそうに俺に頭を下げてくる。


「ああ、気にするな。お前がルーナを守ろうと結果なんだ。見知らぬ人物が来たら警戒するのは当たり前だ。

 寧ろその自信の無さを何とかした方がいいぞ。もう少しふてぶてしくてもいい。

 そんなんじゃいざという時ルーナを守れないぞ」


 俺が気になったのはアルベルトのそのオドオドした態度だ。

 アルベルトは生まれの所為か、今まで迫害されてきた事を受け入れてしまい負け犬根性が付いてしまっている。

 唯一まともに接しているのはルーナだけで、他は時折来る冒険者くらいだと言う。

 そんなんで自信を付けろと言うのも過酷な話かもしれないが、今は良くても今後どうなるかは分からないのだ。


 まぁ単純に俺がアルベルトが獣人の力を生かしきれていないのが勿体ないと思っているだけだが。


「そ、そんな! オラどうしたらいいだ!?」


 アルベルトは俺の言葉に明らかに動揺してオロオロし始める。


「さっきも言ったが、まずは自信を付けろ。

 お前は獣人なんだから身体的(フィジカル)面では人間よりも優れているんだ。それは十分に誇っていいことだぞ」


「そ、そうか! オラ実は凄かったんだな!」


「そういや、アルベルトは誰かに武器の扱いを教えてもらったのか?

 思いのほか基礎がしっかり出来てたから後は応用が出来ればまだまだ強くなれるぞ」


「武器の扱いは時々神殿に訪ねて来るじっちゃんに教えてもらっただ。

 オラがルーナ様を守りたいとじっちゃんに言ったら、足腰を鍛える練習や武器の扱い方をオラに色々教えてくれただ。

 最後にじっちゃんに会ったとき暫く来れなくなるからって、これでルーナ様を守れってこのハルバートを貰っただ」


 ふーん、もしかしてそのじっちゃんはかなりやり手の冒険者か何かか?

 ここまで基礎を徹底的に叩き込んだとなれば、応用はしやすいからその先を見越しての指導だった可能性もあるな。

 まぁ単純に人を信じやすいアルベルトがただひたすら基礎を繰り返したからこその結果だろうけど。


「そうだな。他の冒険者もアルベルトに色々教えて行ったと思うけど、俺も1つ役に立つ技を教えてやるぜ」


「ほ、本当だか!? 必殺技を教えてもらえるだか!?」


「あ、いや、必殺技じゃないんだが・・・」


 とその時、大気が震えるような大きな音が響き渡った。

 空を見上げればアイさんが言っていた神殿と周囲を覆う結界が目に見えるほどの光を放っていた。


 アルベルトは音がすると同時に森側の方へと走っていく。

 どうやら結界が作動しているところを見るとモンスターの襲来らしい。

 アルベルトを追いかけ結界の境目に辿り着くと、そこには30匹ほどのオークの群れがひたすら結界を殴りつけている光景を目にした。


 そう言えばアルベルトはオークの群れを追い出されたんだっけ。

 ならば必然的に不帰の森にはオークの群れが存在していることになる。

 アルベルトにとっては不審者の警戒もさることながら、モンスターの群れ――特に自分を追い出したオークの群れにも警戒する必要があったって事だ。


 にしても・・・またオークかよ。

 しかも群れの中にはひと際大きな個体のオークが存在する。

 頭には王冠を被ったオーク――すなわちオークキングだ。

 ジパン帝国で見たオークキングとは個体が違うが、この短期間に2度もオークキングに出会うとは。


「またオークかよ!」


「しかもオークキングもいるわね」


 何事かと駆け寄って来たトリニティとアイさんがオークの群れを見てげんなりしていた。

 まぁ気持ちは分かる。


「結界があるとはいえこのままオークを放って置くわけにはいかないよなぁ」


「まぁ、月の欠片の生成の邪魔をされても困るし泊めてもらう恩もあるし、普通に倒すのでいいんじゃ?」


「ところで鈴鹿くん、アルベルトは何処に居るのかしら?」


 アイさんは外敵撃退の為の神殿の守護であるアルベルトを探す。

 その肝心の先行していたアルベルトはと言うと、既に結界を抜けオークの群れに突っ込んでいた。


「うおおおおおおおおおぉぉ! ルーナ様はオラが守るだ―――――!」


「ええい! また邪魔をするのか、この出来損ないが!

 下っ端野郎ども、あの出来損ないを蹴散らせ!」


 オークキングが後方から指示を出し、オーク部隊をアルベルトへと向ける。

 どうやらこのオークの群れは恒常的に神殿へ襲い掛かっている見たいだな。

 結界があるから今のところは侵入された形跡はないみたいだが。


「なぁ、なんでアルベルトの奴群れの中に突っ込んでいるんだ?

 結界があるんだからここから弓矢なり魔法なりぶちかませば無傷で勝てるんじゃないのか?」


 トリニティは群れの中で暴れているアルベルトを見て突っ込みを入れる。


「まぁ、確かにそうなんだが・・・アルベルトの奴、そこまで頭が回っていると思うか?」


「・・・ないね。簡単に騙されるからそこまで考えないんだろうなぁ」


「二人ともちょっと酷いんじゃないかしら?」


 アイさんは俺達を咎めるが、アルベルトの戦いを見ていればそう言われても仕方がないと思うぞ。

 折角の基礎が出来ているのに今あいつがやっていることは文字通り猪突猛進だからな。

 防御も何も考えないでただ武器を振り回しているだけ。


 あいついつもこんな戦いをしているのかよ。

 こんなんじゃ身が持たないだろうに。


「トリニティ」


「あいよ」


 取り敢えずアルベルトを一度こっちに引き戻す。

 トリニティがフル=グランド縄剣流の技でアルベルトをロープで縛り上げこちらへ引きずり戻す。

 オークの群れは再び結界内に入ろうと結界の壁を叩き始める。


「アルベルト、お前いつもこんな戦いをしているのか?」


「んだ。オラあいつらを許せねぇだ。オラだけじゃなく、あのオークキングはルーナ様を狙っているだ。

 だからオラがあのオークキングを仕留めるだ!」


 どうやらあのオークキングはルーナを、正確にはルーナの月神の巫女の力を狙っているらしい。

 以前、群れから追い出されたにも拘らず結界内に入り込んでいる事実を知ったオークキングは、群れに戻すことを条件にルーナを結界の外に連れ出すようにし指示したことがあったとか。

 当然アルベルトはそんな指示には従わず、ルーナを狙うオークキングを倒そうと躍起になっている。


 流石に1人でこの群れの数を退けることは出来ないので突っ込んではやばくなったら結界内に戻って傷を癒し再び突っ込むと言う、頭がいいのかバカなのか分からに方法で今まで撃退していたらしい。

 オークキングも一定数の被害が出れば流石に攻撃を止めて撤退するみたいだ。


 因みにどうやって月神の巫女の力を奪うかと言うと、オーク特有の性魔法で奪う事が出来るらしい。

 要は犯して奪うとか。流石はオークと言ったところか?


「アルベルト、意気込むのはいいが、少しは戦略を練ろうな。

 例えば結界を利用して弓矢とかハルバートの先だけを突き出してこっちからの一方的な攻撃をするとかさ」


「・・・そんな方法があっただか! オラ思いつきもしなかっただ!」


 俺の言葉にアルベルトは目から鱗と言った風に驚いていた。

 だけど少し考えてそのやり方を断ってきた。


「・・・その方法でオラ強くなれるだか?」


「いや、これはあくまで勝つための戦術だからな。強くなるのとは別だ」


「だったらオラは今までのように戦いたいだ! 戦って強くなりたいだ!」


 俺はアルベルトの言わんとすることが何となく分かった。

 要はこれは実戦形式で訓練なんだと。

 そしてその動機はルーナを守るための力を得たいが為なんだと。


「・・・よし、分かった。だが決して無茶はするなよ。少しでもヤバいと思ったら結界内に戻ってこい。

 それと今まで見たいにただ闇雲に突っ込むだけじゃだめだ。じっちゃんに色々教えてもらったんだろ? まずは立ち回りを覚えろ。出来るだけ相手を正面に来るようにしろ」


 俺はユニコハルコンでアルベルトの傷を治した後、再びオークの群れへと送り出す。

 アルベルトは大きく頷くと気合を入れ直して結界の外へ飛び出した。


「おい、いいのかよ。どう見ても自殺行為にしか見えないけど」


「いいんだよ。惚れた女の為強くなろうとしているんだ。応援してやろうじゃないか」


「なんだ、自分と同じ境遇だから同情しちゃったのか?

 ユキを助ける為に強くならなければ・・・! って言っていた鈴鹿みたいにさ」


「ばっ・・・! 唯姫とはそんなんじゃねぇって言ってんだろ!」


 トリニティにからかわれながらも俺達はアルベルトがオークの群れを撃退するのを見守っていた。

 損害が大きくなったのか、オークキングは捨て台詞を吐きながら群れを引き上げた。


「いいか、絶対月神の巫女を手に入れる! そこの出来損ないも許しはしない。覚悟しておけ!」


 捨て台詞を吐かれたアルベルトはというと、思いのほか晴れやかな顔をしていた。

 どうやらこの実戦形式の訓練で思いのほか強くなったと実感したらしい。

 俺のアドバイスが効果てき面で戦闘が有利に進められたとか。

 その所為かアルベルトに懐かれてしまった。

 アルベルトの奴、俺の事を兄貴何て呼び始めた始末だ。


 そんなこんなでルナムーン神殿に来てからの1日が終わったが、次の日の朝、あのオークキングが早々にリベンジに来た。

 しかもとんでもない土産を持って来て。






◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



  Alive In World Onlineスレ1


1:名無しの冒険者:2057/08/01(水)10:01:21 ID:Stert01Aiwon

 遂に正式オープン!

 思う存分Alive In World Onlineを語って下さい!


2:名無しの冒険者:2057/08/01(水)10:03:50 ID:J9lnT4nHR

 2げと


3:名無しの冒険者:2057/08/01(水)10:15:33 ID:A910Res5

 いやー、ちょっとログインしてきたけど凄いねこれ


4:名無しの冒険者:2057/08/01(水)10:18:33 ID:A910Res5

 殆んどリアルと変わらないじゃん


5:名無しの冒険者:2057/08/01(水)10:26:46 ID:F0kSb6C0nT

 そうなん?

 俺は残念ながらAIWOn買えなかった・・・orz

 次の出荷を待たなければ;;


6:名無しの冒険者:2057/08/01(水)10:33:19 ID:T1rA3sGkbj

 AIWOnの中の実況は暫くはお預けですね

 殆んどの人が夢中になって中々ログアウトしなさそう


7:名無しの冒険者:2057/08/01(水)10:42:25 ID:VR36936Dsk

 キャッチコピーに偽りなし

 これ本当にもう一つの現実だよ


8:デプ子:2057/08/01(水)10:49:59 ID:Dpbl16Slv

 今までのVRがおもちゃみたいに見えるデプ


9:名無しの冒険者:2057/08/01(水)11:09:12 ID:VR36936Dsk

 欲を言えばもう少しゲーム感が欲しかったね

 スキルやアイテムボックスが無いと味気なく感じるよ


10:名無しの冒険者:2057/08/01(水)12:12:21 ID:OTA3pRinss

 ただいまAIWOnから帰還!

 いやー凄いね。噂に違わないクオリティだわ


11:名無しの冒険者:2057/08/01(水)12:19:33 ID:A910Res5

 >>10 だよな!

 噂にあるゲームの中に移住が目的で開発されたって言われても納得できるレベルだよ


12:名無しの冒険者:2057/08/01(水)12:25:46 ID:F0kSb6C0nT

 そんなに凄いのか・・・

 ちくせう! やりたくなってくるじゃないか!


13:名無しの冒険者:2057/08/01(水)12:33:25 ID:VR36936Dsk

 >>11 気持ちは分かるがどうやって移住するんだよw


14:名無しの冒険者:2057/08/01(水)12:43:50 ID:J9lnT4nHR

 ふと気になったんだが、映画や漫画とかであるようにリアルとゲームの区別がつかなくなる・・・ってことはないよな?


15:デプ子:2057/08/01(水)12:59:59 ID:Dpbl16Slv

 >>14 マンガのみ過ぎでデプ


16:名無しの冒険者:2057/08/01(水)13:03:25 ID:VR36936Dsk

 >>14 映画の見過ぎwww


17:名無しの冒険者:2057/08/01(水)13:09:21 ID:OTA3pRinss

 >>14 漫画の見過ぎだよwww


18:名無しの冒険者:2057/08/01(水)13:12:33 ID:A910Res5

 よし、リアルで用事は片づけた

 もう一回ログインしてきます(≧д≦)ゞ


19:名無しの冒険者:2057/08/01(水)13:15:46 ID:F0kSb6C0nT

 いてら~

 後で報告よろ~








次回更新は6/29になります。

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