12.巨石と美女と宝石の使徒
「美刃さん!」
「ん、久しぶり・・・2日ぶり?」
肉塊モンスターから放たれた極太のビームを斬り裂いた美刃さんは、何事もなかったかのように俺に向かって片手を上げる。
肉塊モンスターは新たに現れた美刃さんに恐怖を覚えたのか、触手を振り回しながら土煙を撒き起こし逃げの一手を選んだ。
「ギョギョギョギョギョギョギョギョギョギョッ!」
「あ! 逃がすかよ!」
肉塊モンスターを追おうと駆け出そうとするが、それを美刃さんが止めた。
「・・・ん、致命傷だから放って置いて大丈夫。それより連れの心配をした方がいい」
そうだ、そう言えばトリニティが気を失ってたんだっけ。
美刃さんに指摘され俺は慌ててトリニティの元へと駆け寄る。
肉塊モンスターの攻撃を受けたわけじゃないので命には別状はないが、あのモンスターが精神攻撃などの特殊能力を持っていた可能性もある。
トリニティを介抱しているアイさんに様子を尋ねると、ただ目の前の出来事のショックで気を失っていただけだった。
「なんだよ、心配掛けやがって」
暫くするとトリニティが目を覚ました。
「あれ・・・あたし・・・ああ、気絶してたのね。ごめんなさい、迷惑を掛けちゃったみたいね」
「・・・・・・なんだ? 急にしおらしくなって。やっぱり何か変な精神攻撃でも受けたのか?」
いつもの悪態ついた態度ではなく、そこら辺に居る少女の様な態度に俺は目を丸くして見ていると、そのことに気が付いたトリニティは慌てて取り繕う様に悪態をつき始めた。
「なっ、誰がしおらしいって!? 目の前で人が食われて平気でいるほどお前たち程神経が図太くないんだよ!
って言うか、鈴鹿の方が精神攻撃を受けているんじゃないのか? あたしがしおらしく見える様な幻覚を見せられるような」
目を覚ました時の様子が嘘のように捲し立てる様子を見て、俺は最初のは幻覚だと思う事にした。
そう言えばトリニティの言う通り、目の前で人が食われた様を見ても随分と冷静でいられたな。悪夢には出てきそうだけど。
血なまぐさい世界で冒険をする異世界人に配慮して身体には精神負荷が掛からないようになっているのか、ただ単に俺の神経が図太いだけなのか・・・
「まぁ、そんだけ悪態が付ければもう大丈夫か。
あ、そう言えばさっきはありがとう。美刃さんが助けてくれなきゃちょっとやばかったよ」
「・・・ん、どういたしまして」
「それより何で美刃さんがここに? 今度はクランで遺跡の探索にでも来たのか?」
「それは私が呼んだからよ」
ん? アイさんが呼んだと言う事は・・・
「え? 美刃さんが地下迷宮のスペシャリスト!?」
俺とトリニティは思わず美刃さんを見る。
美刃さんはここぞとばかりにブイサインでドヤ顔・・・ドヤ顔?(美刃さんは無表情だから分からん)をしていた。
「そうよ、多分美刃さんほどこの地下迷宮が詳しい人は居ないと思うわよ。
何せ美刃さんほどの実力者が3ヵ月以上も籠りっぱなしで隅々まで攻略したんだからね」
・・・そりゃスゲェ。迷宮案内人も真っ青だな、それは。
「じゃあ、美刃さんは『宝石の使徒』と『迷宮の使徒』の居場所が分かると言う事か?」
「・・・ん、バッチリ」
これは心強いな。
ただでさえ隣の大陸まで広がる地下迷宮の攻略に半年はざらって言われているんだからな。とてもじゃないが唯姫を探し出す時間がとても足りない。
だが26の使徒を攻略するとなるとまた話は別のようだった。
「え? 『宝石の使徒』と『迷宮の使徒』は地下迷宮に何体も居る?」
「・・・ん、そう。この2人の使徒は自分の分体を地下迷宮に放っている」
「えっと、その分体を倒してもエンジェルクエストを攻略したことになるのか?」
トリニティは猫かぶりの口調ではなく、いつもの口調で美刃さんに尋ねる。
さっきのやり取りで既にトリニティの素性はバレてしまったので今さら隠す必要は無く、いつも通りの態度をとっていた。
「・・・ん、大丈夫。その分体を倒しても使徒の証は手に入る」
「『迷宮の使徒』はミノタウロスで決まったポイントに分体が居てね、美刃さんならそのポイントが何処にあるのか全部把握してるのよ」
「・・・ん、基本は地上への出入り口付近に門番として構えている。
後は地下迷宮の重要施設、宝物庫などに警備としているわ」
「問題は『宝石の使徒』の方なのよね。こっちは地下迷宮を徘徊しているから幾ら複数の分体が居ると言っても探すのに一苦労しそうなのよ。
そのあたりは美刃さんが任せてって言ってるけど・・・」
アイさんは本当に大丈夫なの?と言った感じで美刃さんを見ている。
俺はアイさんと美刃さんのやり取りを見ながら頭を巡らせる。
ミノタウロス・・・迷宮にはお約束のモンスターだな。『迷宮の使徒』には持って来いだろう。
だがミノタウロスとなると些か苦戦を強いられるのは間違いないだろう。
多分B級・・・いやA級モンスターと言っても過言ではないはず。
そして『宝石の使徒』。名前からして鉱石のモンスターか何かか?
そう思って美刃さんに尋ねると、その正体は女性型モンスターだそうだ。
見た目はまるっきり人間の女と変わらずに、分体ごとにそれぞれ特殊能力を保持していると言う。
赤い髪をした分体はルビーと呼ばれ、主に力に特化している。その力は素手で地面を割るほどの怪力だとか。
緑色の髪をした分体はエメラルドと呼ばれ、主に戦技に特化している。ありとあらゆる戦技を使いこなし冒険者を翻弄しているとか。
銀色の髪をした分体はダイヤモンドと呼ばれ、主に防御に特化している。戦技だろうと魔法だろうとアイテムだろうとどんな攻撃も防ぎきる鉄壁の防御力だとか。
青色の髪をした分体はサファイアと呼ばれ、主にスピードに特化している。手にしている武器は小剣なのだが、その速さから繰り出される攻撃は一撃必殺の威力を持ち、その速さ故こちらの攻撃が当たることは無いんだとか。
紫色の髪をした分体はアメジストと呼ばれ、主に魔法に特化している。繰り出される魔法の威力で全てを薙ぎ払うんだとか。
これらの分体がそれぞれ地下迷宮を徘徊しているらしい。
・・・こうして見ると『宝石の使徒』の能力も無茶苦茶だな。
攻略しやすいのはルビーとエメラルドか?
ダイヤモンドはほとんど攻撃してこないからこちらから一方的に攻撃し放題だが、どこまで俺達の攻撃が通じるか。あ、アイさんが居れば問題ないか?
サファイアは捉えきれないと話にならないし、この中でサファイアのスピードに追い付けるのは俺だけだろう。俺のスピードがどこまで届くのか・・・あ、こっちは美刃さんが居れば対応できるのか?
アメジストは魔法無双がちょっとやばいな。範囲攻撃を連発されればこっちには為す術がない。
・・・あれ? アメジスト以外何とかなりそう?
「・・・ん、それじゃあ26の使徒の所へ案内するから付いて来て」
さっきの戦闘に巻き込まれない様に避難させていたのだろう。
そう言って美刃さんはいつの間にか呼んでいた自分の騎獣のスレイプニルの手綱を取っていた。
・・・え? これから地下迷宮に行くんじゃないのか?
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
てっきり俺はこのまま地下都市コバルトブルーに戻ってそこから地下迷宮へ向かうのだとばかり思っていたが、美刃さんは自騎獣のスレイプニルに乗ってセントラル遺跡から東を目指す。
俺達もスノウの背中に乗って、美刃さん先導の元ゆっくり東へと飛翔する。
因みに俺達がこれまで供にしてきた走竜は美刃さんがクラン『月下』で引き取った。
何でもいつ戻ってくるか分からない走竜を騎獣ギルドから永遠にレンタルするわけにもいかないので、クラン『月下』で買取をしてくれたそうだ。
それでその走竜達は美刃さんが遺跡の転移魔法陣を使ってエレガント王国の『月下』のクランホームへ連れて行った。
なんと驚いたことにこのセントラル遺跡にも転移魔法陣があったのだ。
当然、セントラル遺跡に転移魔法陣があるのは極秘情報なので、この事は他言無用と念を押された。
何でも王族、貴族、A級以上の冒険者にしか使用許可が下りないんだとか。
もっとも王族貴族が遺跡に来ることは無いので、実質A級以上の冒険者しか使えない。
水の都市の転移魔法陣と繋がっており、王都へ移動するには水の都市を経由して行くことになる。
美刃さんが走竜を王都へ置いてくるのを待ってから美刃さんの先導の元、東のあるポイントを目指して騎獣を走らせる。
「なぁ、美刃さんは何処へ向かっているんだと思う?」
美刃さんの騎獣スレイプニルも走竜に比べれば格段に速いのだが、それでも白銀騎竜のスノウに比べれば速度は落ちる。
なので、美刃さんに合わせての移動速度で進むスノウは意外とゆっくりとした雰囲気を醸しだしていた。
そんなゆったりとした空気に飽きを感じたのか、トリニティがそんな質問をしてきた。
「まぁ普通に考えれば他の地下迷宮へ潜ることの出来るポイントだろうな。
なんせ広大な地下迷宮には地上へ出る事の出来るポイントが幾つかあるみたいだし」
「その予想で間違ってないわね。
幾つかあるとは言ってもポイントは限られているわ。それでこの方向にあるポイントは・・・多分あそこね」
「ん? アイさんはそのポイントが分かるのか?」
「私は行ったことないけど噂でちょっとね」
現実世界で26の使徒を調べた時についでに調べた情報なのか?
「じゃあそこから地下迷宮へ潜るのか」
「多分ね。距離的にはそんなに遠くないからもう少しで着くはずよ」
そうこうしているうちに、地上に広がる草原の中に一際巨大な岩石がそびえ立っているのが見えてきた。
その岩石は15mもある巨大なものだった。
「うわぁ、すっげぇな。あれ・・・もしかしてあれがそうなのか?」
あまりの巨大さにトリニティが驚愕の声を上げる。
もちろん俺もその凄まじい大きさに驚いていた。
「ええ、あれがこの平原で一番鉱石が採れると言われていたロック鉱岩石よ。
あの岩石の麓に地下迷宮の入り口があったはず」
美刃さんはロック鉱岩石の前にスレイプニルを止めて降りた。
俺達もスノウをロック鉱岩石の傍へと降ろして美刃さんに近寄る。
「・・・ん、これが『宝石の使徒』の本体。
ここで『宝石の使徒』と戦えばわざわざ地下迷宮で使徒を探す必要は無い」
「・・・は?」
突然の美刃さんの言葉に俺は一瞬思考が停止する。
アイさん達も同様に美刃さんが何を言っているのか分からなかったみたいだ。
「えっと、この巨大なロック鉱岩石が『宝石の使徒』の本体?」
「・・・ん」
「分体は地下迷宮に居て、実は本体は地上にあると」
「・・・ん」
なんだそりゃ!
わざわざ地下に降りなくても『宝石の使徒』と戦えるなんて抜け道があったのかよ!
「・・・ん、それとも地下迷宮に行って分体を探す?」
「いや、探す必要もないなら時間のロスがないここでの方がいいよ」
「ほう、ならばここで私と戦うと言うのですか」
突然声が聞こえたと思ったら、ロック鉱岩石が光りだし1人の女性が姿を現した。
腰まで届く長い金髪に金の瞳。一目見て美人と言えるほどの容姿をしているが、どこか作り物の様な雰囲気が拭えない。
プロポーションもメリハリが効いていてスタイルがいいのだが、着ている服がスーツとタイトスカートと言った現実世界でのキャリアウーマンが着る様な服装と同じだった。
「・・・ん、『宝石の使徒』久しぶり」
「久しぶりですね、美刃。私の前に現れたと言う事はエンジェルクエストの挑戦に来たと言う事ですか?
ですが貴女は既に私を攻略した身。ならば彼らが挑戦者と」
そう言いながら金髪の美女――『宝石の使徒』が俺達を見る。
俺とトリニティを見た後、アイさんを見てその表情が少しだけ驚いたものに変わる。
「ふむ、少しは私に挑戦する実力はありそうですね。
確かに私の後ろにある巨石は『宝石の使徒・Gem』の本体です。そして私は本体に一番近い分体です。
ですが私に挑戦すると言う事はそれ相応の覚悟はしてもらいますよ」
そう言うと、『宝石の使徒』の前に彼女と同じ姿の女性が5人現れた。
但し髪の色がそれぞれ赤髪、緑髪、銀髪、青髪、紫髪と色違いだった。
多分これが美刃さんに聞いた地下迷宮に居る分体なのだろう。
しかし何故全種の分体を召喚したのだろう。
・・・何やらやな予感がするんだが。
「地上に居る私に挑戦すると言う事は私を含めたこの6人の分体と戦って全て打ち倒してもらいます」
やっぱりかよ!
と言うか聞いてねぇよ、美刃さん!
・・・いや、考えてみれば当たり前か。
わざわざ地下に潜らずに『宝石の使徒』と戦えるなんて都合が良すぎたんだ。当然それ相応のリスクが伴うのは必然だ。
「・・・ん、迷宮地下に行って分体を探す?」
美刃さんが再度同じことを訪ねて来た。
戦闘と言う点から見れば地下迷宮に潜って分体と戦った方がリスクが少ないだろう。
だがそれには地下迷宮の探索だけで時間が掛かりすぎる。
当然俺の答えは決まっている。
「いや、時間が惜しい。ここで『宝石の使徒』と戦う」
俺がそう答えると流石にトリニティは嫌そうな顔をしたが、悪いが彼女には拒否権は無い。
「それと、こっちには人数差がありすぎるから美刃さんを加えてのパーティーで戦わせてもらう。
それとも一度攻略した奴は再度挑戦できないとかあるのか?
美刃さんも悪いけど助っ人を頼む」
「いいえ、問題はありません。私だけに限らず、他の使徒でも何度でも挑戦することが出来ます」
「・・・ん、私も構わない」
『宝石の使徒』に確認を取るが、既に攻略した者でも再度挑戦は可能みたいだ。
美刃さんも快く引き受けてくれた。
流石にこの人数の使徒相手にたった3人での挑戦はきついからな。
S級冒険者の美刃さんが居るだけでもかなり負担が減るはずだ。
「それでは準備が宜しければ始めさせてもらってもよろしいですか?」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
ロック鉱岩石の巨石を前にして6人の『宝石の使徒』が陣形を取る。
最後尾に金髪の分体が位置し、その前には紫髪の分体が、最前列には銀髪が位置し、その後ろには赤髪・青髪・緑髪の分体が並んでいた。
銀髪でこちらの攻撃を防御し、後方の緑髪の魔法で遠距離攻撃、赤髪・青髪・緑髪の3人は遊撃と言ったところか?
そう言えば金髪の分体の能力って何だ?
美刃さんに確認を取ると、全ての能力を兼ね備えた完全体だと言う事らしい。
マジか・・・下手をすればあの金髪1人で全滅の可能性もあると言う事か。
美刃さんを金髪にぶつけて足止めをするか・・・?
いや、最後尾に居ると言う事は司令官の役割を果たしているのだろう。
よく見れば金髪以外の分体は表情が無く、命令を聞くだけの人形に見える。
金髪が司令官として命令を出しているうちは戦闘には参加はしないはずだ。
ならば俺達の取る作戦は美刃さんが防御主体の銀髪を抑えてもらって、ワイルドカードであるアイさんが紫髪の魔法を迎撃、残りの赤髪・青髪・緑髪は俺とトリニティで撃破する形になる。
下手をすれば銀髪には全ての攻撃が防御される可能性があるので、ここは攻撃過多である美刃さん1人に集中してもらおうと言う魂胆だ。
アイさんはどうせまた魔法に対しても色々対策が出てくるんだろうさ。
「それで美刃さんにはあの金髪が動いたらそっちの方を抑えてもらいたい。アイさんに負担が掛かるが銀髪と紫髪の2人を抑えてもらう」
「・・・ん、了解」
「分かったわ」
「うえぇ、マジかよ。2対3なんて無茶苦茶じゃねぇか・・・」
「しょうがないだろ。ただでさえこっちは人数差で負けてるんだから。多少の無茶は必要なんだよ」
文句を言うトリニティを強引に納得させ、俺達も陣形を取る。
「それでは行かせてもらいます!」
作戦を終え、準備を整えた俺達に向かって『宝石の使徒』達が向かって来る。
同時に俺達も『宝石の使徒』に向かって走る。
「ダイヤモンドは美刃を封じ込めて。ルビー・サファイア・エメラルドは少年と少女を撃破。アメジストは後方の黒衣の剣士を全力で攻撃」
どういう訳か金髪の指示は俺の作戦と同じ展開となった。
まずは一足先に飛び込んだ美刃さんの攻撃を銀髪の分体が止める。
流石防御主体の分体だけあってS級冒険者の美刃さんの攻撃を容易く受け止めていた。
そうして銀髪を抑えてる間に俺とトリニティが赤髪・青髪・緑髪の分体に肉薄する。
俺はスピード主体の青髪に向かって行く。
剣姫一刀流・現実世界での疾風迅雷流の速さがあれば、スピード主体と言っても追いつけない速さじゃない。
だが速さは攻撃力に直結する。速い速度での攻撃は馬鹿に出来ないものがあるのだ。
青髪は両手に短剣を持って攻撃を仕掛けてくるが、その威力は大剣で攻撃されるのと同等もしくはそれ以上の威力だ。
俺はその攻撃を剣姫一刀流の足捌きで回避しながら一刃刀ユニコハルコンで青髪を攻撃するも、俺の攻撃も紙一重で躱される。
お互い攻撃を繰り出しながら躱し続ける。
トリニティの方は緑髪と対峙していた。
戦技主体の分体らしく、トリニティが短剣戦技を放てば同じ戦技で迎撃をしている。
そして緑髪の特殊能力なのだろうか所々で「Weapon Change」と呟きながら武器を持ち替えそれに対応した戦技で攻撃を繰り出していた。
トリニティはその都度武器が変わる攻撃に手を焼いていた。
そしてそこへ力主体の赤髪が動き出す。
向かってきたのは俺の方だ。
青髪と連携して青髪の攻撃の合間を縫って思いっきり拳を振りぬく。
ブォン!
空気すら打ち抜く拳を紙一重で躱すも、その衝撃波で態勢を崩され僅かながらダメージを負う。
そしてそこへ青髪が更にスピードを上げて攻撃してきた。
「Second Gear」
ちょっ!? スピードが上がるのかよ!?
さっきまでの速度は速いと言う程度でしかなかったが、今の速度は俺と匹敵するほどの速さだ。
さっきまでの余裕は一気に吹き飛んだ。
セカンドギアと言う事は、もしかしたらサードギアとかフォースギアとか段階的に速度が上がるのかもしれないのだ。
おまけにそのスピードにも拘らず、見事に合間を縫って赤髪が攻撃を繰り出すのだ。
これはちとマズイ。甘く見過ぎていたか?
もしかしたら青髪を美刃さんに対応してもらうのが良かったのかもしれない。
美刃さんのあのモード剣閃三日月なら十分対抗出来るだろう。
だが今は泣き言を言ってられない。
「トリニティ!」
俺の合図でトリニティが腰に掛けているロープを放り投げる。
「人使いが荒いな!
――ロープバインド!」
緑髪と相対しながらもトリニティは器用にも無属性魔法の縄捕縛を青髪に向かって放つ。
青髪は高速で移動しているので放たれたロープは辛うじて絡まるだけにとどまった。
だが不完全とは言え、その動きを一瞬でも阻害できれば十分だ。
「剣姫一刀流・瞬刃!」
剣姫一刀流の歩法と疾風迅雷流の歩法はよく似ている。
剣姫一刀流の歩法は円運動による回避、一瞬で間合いを詰める瞬動。主にこの2点だ。
その中で瞬動は疾風迅雷流の奥義・瞬と同じなのだ。
つまり瞬動=瞬と言う事になる。
俺はまだ奥義である瞬は使えないが、未熟ではあるがそれに近い歩法は使える。
そして剣姫一刀流・瞬刃は瞬動で移動しながら、その移動力を以って体ごと剣で叩きつける技だ。
さっきも述べたが、速度は攻撃力にも直結する。
瞬動で放たれる体ごとぶつかる剣の攻撃威力は計り知れないものがある。
まぁ俺は瞬動を使えないから疑似瞬動で技を繰り出すことになるのだが、それでも威力は十分だ。
俺の放った瞬刃はロープに絡み取られた青髪の腕を見事に切り落とした。
切り落とされた右腕は砕け、青色の宝石の欠片が舞い散った。
そして俺は技の繰り出した直後を狙われ赤髪の拳に身を晒していた。
――しまったっ!?
辛うじてユニコハルコンを盾にするが、赤髪はお構いなしに武器ごと拳を俺に叩きつけた。
「ぐはっ!」
赤髪の攻撃により俺は数m吹き飛ばされ地面に転がされた。
「ルビー・エメラルド追撃! サファイアは少女を!」
金髪の指示により追撃に緑髪が俺に迫り、今度は青髪がトリニティと対峙する。
「Rabbit Power」
赤髪も当然追撃に回り、足に力を込めて大ジャンプで俺の頭上へ飛び上がった。
「Bare Power」
そしてそのまま拳を握り止めの一撃を振りかぶる。
「インフィニティアイスブレード!」
そこへアイさんの援護――無数の氷の刃が飛んできた。
紫髪と魔法合戦を繰り広げているにも拘らず上手く隙をついて俺へ祝福の武器・インフィニティアイスブレードの特殊能力を使い、緑髪と赤髪の妨害をしてくれた。
「マテリアルプチシールド」
だがそれを防御主体の銀髪が許さずに、美刃さんを相手しながら幾つもの小さな光の盾を展開し氷の刃を迎撃する。
確かマテリアルシールドはどんな物理攻撃も一瞬だけ防ぐことが出来る防御魔法だが、再使用時間が30分と長いため大抵の戦闘では1度しか使えず切り札として使われている魔法だ。
しかし銀髪が展開した魔法は拳大の小さな光の盾が次々現れて氷の刃を防いでいる。
多分このプチシールドの魔法は再使用時間が短い魔法なのだろう。
だがそれでもアイさんの放った氷の刃は2・3光の盾を抜けて俺を攻撃しようとしていた赤髪と緑髪を退ける。
俺はその間に素早く起き上がり腰に着けた革袋からポーションを取出し一気に飲む。
赤髪の一撃は確実に俺の体に深いダメージを負わせた。
下手をすれば肋骨の何本も折れているかもしれない。
ポーションでは体の傷は治らないが、今は無理やり体を動かすための体力だけは回復させておく。
「Third Gear」
青髪のスピードがまた一段上がる。
トリニティは青髪のスピードに付いて行けず翻弄されていた。
所々危うい場面もあったが、トリニティは紙一重で躱していた。
あの速さは俺をも上回っている。とてもじゃないが捉えられる気がしない。
つーか、背後からの攻撃を避けるなんてどんな勘してんだ、あいつ。
「美刃さん! トリニティの援護お願い!」
アイさんが無数の氷の刃を放ちながら銀髪をその場に釘付けにしていた。
美刃さんはそれを見て頷き青髪の方へと向かった。
銀髪に降り注ぐ氷の刃は最早豪雨と言っていいほどの数が降り注いでいた。
あそこの一帯だけが地形が変形している。
おまけに銀髪を相手しながら紫髪の魔法を迎撃しているし。
自分で指示しておきながら何だが、アイさんのスペックは一体どうなっているんだ?
まぁそんな事を考えている暇はないんだが。
俺は再び目の前に迫る赤髪と緑髪を相手取り、剣姫流のステップで躱しまくる。
先程の青髪のスピード攻撃に比べれば躱せない速度ではない。
「Leon Power」
「Weapon Change 槍戦技・五穿鳳花」
赤髪の動きが直線的な攻撃から、しなやかな力強い攻撃に変わる。
拳も握りから鉤手の様に開いた爪の攻撃を連続で繰り出す。
そして緑髪の槍に持ち替え放たれた戦技が――ひと突きで5つの閃く突きが俺を襲う。
槍戦技の方はデフォルトらしく、5つの突きが綺麗に横並びで空間を抉る。
『イメージ効果理論』を用いれば5つの突きの位置を自在に変えることが出来るのだが、『宝石の使徒』の分体――人形らしく、そこまでの応用は利かないみたいだ。
俺はバク転しながら槍戦技を躱し、続いて迫りくる赤髪の左右の鉤手をユニコハルコンでそれぞれ打ち払う。
そして当然ながら俺も為すがままという訳ではない。
2人の攻撃を躱しながら呪文を鞘へと魔法剣を次々掛けているのだ。
そして今準備が整った。
「槍戦技・旋風十字閃」
緑髪が放つ槍の十字薙ぎ払いを紙一重で躱しながら一度ユニコハルコンを鞘に納め、緑髪の懐に飛び込みながら居合抜きを放つ。
「剣姫一刀流奥義・天衣無縫!!」
火・水・風・土・氷・雷・無、それぞれの初級属性魔法を鞘に魔法剣を掛け、鞘に納めた瞬間にユニコハルコンへと魔法剣が移る。
そして7属性を纏った魔法剣の居合抜きが緑髪を斬り裂く。
ズガンッ!!!
その一撃は緑髪の体を分断し、次の瞬間緑髪の分体は宝石の欠片となって消え去った。
「まずは1体!」
返す刀で赤髪の肩を貫き動きを止め、氷属性魔法のアレンジアイスブリットで右足を砕く。
機動力を封じて素早く唱えた魔法剣で止めを刺す。
「ストーンブリットスラッシュ!」
土属性魔法の石の弾丸を纏った魔法剣が赤髪を斬り裂きながら弾丸が体を貫く。
勿論、石の弾丸は氷の弾丸と同様にライフリングを付け回転させたアレンジを利かせている。
魔法剣を受けた赤髪は緑髪と同様に宝石の欠片となって消え去った。
「これで2体!」
そしてここで分体のリーダーである金髪が動いた。
「ふむ、分体を2体も倒しましたか。ならば今度は私が動きます」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
AIWOn冒険者ギルドスレ21
335:名無しの冒険者:2057/09/30(日)00:31:12 ID:Mgk162Not
やっとD級冒険者になれた~><ノ
336:名無しの冒険者:2057/09/30(日)00:32:52 ID:pu4pu4pu4
おめでとー
337:名無しの冒険者:2057/09/30(日)00:34:36 ID:ExpL49Ff10
オメデト―!!ヽ(〃∀〃)ノ
338:名無しの冒険者:2057/09/30(日)00:35:40 ID:HNP9Oi414
おめ
339:名無しの冒険者:2057/09/30(日)00:37:09 ID:AYa20Kwii
誰か南のザウスの森でスタンビートボアの討伐クエスト手伝ってください
340:名無しの冒険者:2057/09/30(日)00:38:24 ID:TKMNNN48
そう言えばふと思ったんだけど冒険者ランク昇級ってどうなってるんだろ?
341:名無しの冒険者:2057/09/30(日)00:39:41 ID:aL10Nigh10
E級からD級は10回のクエスト成功と1回のモンスターの討伐だよね
342:名無しの冒険者:2057/09/30(日)00:40:36 ID:ExpL49Ff10
その1回のモンスター討伐は言って見れば冒険者ギルドの昇級試験だね
343:碇原動:2057/09/30(日)00:41:14 ID:EVA2014Zero
>>340 私が手伝おう
344:名無しの冒険者:2057/09/30(日)00:42:52 ID: Mgk162Not
あ! そうそう、D級になるためモンスターと戦ったよ!
345:名無しの冒険者:2057/09/30(日)00:43:09 ID:AYa20Kwii
>>343 Thx! 南門で待ってます!
346:名無しの冒険者:2057/09/30(日)00:44:24 ID:TKMNNN48
じゃあD級からC級の昇格って複数のモンスター討伐かな?
347:名無しの冒険者:2057/09/30(日)00:45:36 ID:ExpL49Ff10
だね。D級クエストの何度かの成功の後、昇級試験でC級モンスターの討伐になるね
348:名無しの冒険者:2057/09/30(日)00:46:52 ID:pu4pu4pu4
そのD級クエストの何度か成功ってどのくらいなの?
349:名無しの冒険者:2057/09/30(日)00:48:36 ID:ExpL49Ff10
うーん、その辺は冒険者ギルドの判断だね
それまでのD級クエストの内容が比較的簡単のだと数をこなさなきゃいけないみたいだし
350:名無しの冒険者:2057/09/30(日)00:49:40 ID:HNP9Oi414
もしかしてC級モンスターを沢山狩っていきなりC級とかあり?
351:名無しの冒険者:2057/09/30(日)00:50:24 ID:TKMNNN48
それ相応の実力があるか判断されるんだね
352:名無しの冒険者:2057/09/30(日)00:51:36 ID:ExpL49Ff10
そうだね^^
実力がある人は一足飛びにC級やB級なんてものありだろう
まぁその場合冒険者ギルドのクエストを通さないで直にモンスターを倒さないといけないけど
353:名無しの冒険者:2057/09/30(日)00:53:41 ID:aL10Nigh10
ああそっか、冒険者ギルドだとそのランクのクエストしか受けさせてもらえないもんね
354:名無しの冒険者:2057/09/30(日)00:54:36 ID:ExpL49Ff10
後はエンジェルクエストを攻略していくと自動的にランクが上がっていくよ
355:名無しの冒険者:2057/09/30(日)00:56:52 ID: Mgk162Not
え? マジで?
356:名無しの冒険者:2057/09/30(日)00:57:36 ID:ExpL49Ff10
エンジェルクエストを1つ攻略すると自動的にD級に
後は攻略した数が10個になるとC級、20個になるとB級、23個でA級
・・・だったかな?
355:名無しの冒険者:2057/09/30(日)00:59:52 ID: Mgk162Not
じゃあわざわざ昇給試験受けなくてもエンジェルクエストで昇給できたんだ!?
356:名無しの冒険者:2057/09/30(日)01:01:41 ID:aL10Nigh10
いやいやいやw 相手ドラゴンだよ?w
次回更新は3/7になります。




