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Alive In World Online  作者: 一狼
第2章 Labyrinth
11/83

10.老犬と剣姫一刀流と26の使徒

「いや、断る」


「は?」


 俺の答えに毛並みがくたびれた爺さん――老犬人(コボルト)はポカンとした表情をした。

 直ぐにその答えの意味を理解し慌てて俺に食って掛かってきた。


「ちょっ、ちょっと待つんじゃ!

 お主、世界最強とも言われたフェンリル様の剣姫二天流を覚えれるチャンスなんじゃぞ!? それをこうもあっさりと断るとはお主何を考えておるんじゃ!」


「あー、まぁ、その剣姫二天流が凄い流派だってのは何となく分かるよ。

 けどなぁ、二刀流って実は結構扱いにくいんだよな。

 攻撃力もあるし見栄えもいいから流行りそうなものだけど、実際はそうでもないんだ」


 そう、二刀流と言えばマンガやアニメ、ネット小説等でそれなりの人気を誇る剣術だが、実際のところ扱うにはそれなりの技術がいる。

 まぁだからこそ扱える主人公等は人気なんだろうが。


 二刀流で剣を扱うと言う事は、片手で剣を振り回さなければならないと言う事だ。

 それはすなわち剣を片手で扱える筋力を必要としている事を意味する。

 でなければ折角手数が増えても扱う筋力が無いせいで攻撃力が下がっていては二刀流の意味が無い。

 あともう1つ上げるとすれば、左右の剣を同時に扱うバランスが必要になる。別の言い方をすると左右の剣のリズムが合わなければ芯の入った攻撃は出来ない。

 左右に振った剣のタイミングがバラバラだと威力は出ないし、折角の手数の利点が生かされなくなるのだ。


 俺がそのことを述べると爺さんは「ほぅ」と呟き、何やら目つきが鋭くなり俺を見据えていた。


「二刀流を習ってもその難しさで途中で止めちまった奴もいるんじゃないか?

 その難しさが故、剣姫二天流も使い手がそんなにいないと見たがどうだ?」


「ほっほっほっ、お主なかなか鋭いところを突くのう。確かに剣姫二天流を扱える者は極僅かじゃ。

 じゃが、剣姫二天流の真髄は二刀流に非ず。

 華麗なステップにより左右の剣で舞い踊るような攻撃こそが剣姫二天流の真髄じゃ。

 とは言え、お主の言う通りステップを刻みながらの二刀流の習得は困難を極めるからのう。ならば剣姫一刀流を覚えてみないか?」


「剣姫一刀流?」


 名前から判断するに剣1本での剣姫二天流ってところか?


「そうじゃ。ワシが若いころフェンリル様に習った剣姫二天流から編み出した剣姫一刀流じゃ。

 とは言っても単純に剣を2本から1本に変えただけの流派じゃがな。

 実践で何らかの理由で剣を1本失ったからと言って剣姫二天流を使えませんでしたとは言えないからのう。剣が1本になっても扱える流派として編み出したわけじゃ」


 ふむ、爺さんの言う剣姫一刀流なら覚えれるか?

 爺さんは剣を2本から1本に変えただけの流派と言ったが、中身はかなり違うものだろう。

 それだけ二刀流と一刀流の扱いには差があるはずだ。

 だが今の俺にはその剣姫一刀流を覚えるのは実力を付け為に持って来いなのではないだろうか。

 何やら流派を覚えたいと思った直後、ご都合主義の様に流派を教えてくれる人物が現れたが俺にとっては好都合なはずだ。


 そんな葛藤をしていたところに、宿の看板娘のニルちゃんが俺達を見つけ駆け寄って来た。

 正確には俺ではなく爺さんの方へとだが。


「ニコおじいちゃん、こんなところに居た。もう、勝手に部屋から出ないでよね。

 お客さんごめんなさい。ニコおじいちゃん何か変な事言ってなかった?

 ニコおじいちゃんたらボケちゃって、若いころはフェンリル様に剣を習ったことがあるんだーとか言っちゃって・・・」


 は? えーと、フェンリルに剣姫二天流を習ったって言うのは爺さんの痴呆なの・・・か?

 つーことは、剣姫一刀流と言うのも爺さんの妄想・・・?


「むぅ孫よ。ワシは本当にフェンリル様に剣を習ったのじゃぞ。桜花十字閃ーとか言っての」


「あーはいはい、分かったから大人しく部屋に閉じこもっててよ。ニコおじいちゃんボケちゃってあちこち徘徊するんだから、探すこっちの身にもなってよねー」


 ニルちゃんに話しかける爺さんの目はさっきまでとは打って変わって穏やかな眼差しをしていた。

 そんな爺さんの表情をニルちゃんは呆れたように眺めながら爺さんを部屋に連れ戻そうとする。


「孫よ、また部屋に居なければならないのかのう」


「そうよ。それとあたしは孫じゃなくてひ孫よ。しっかりしてよねニコおじいちゃん。

 あ、お客さん剣の練習の邪魔をしてごめんなさい。またニコおじいちゃんが来ても今度は相手しないで放って置いてくださいね」


 爺さんたちはそのまま宿の方へと戻って行ってしまった。

 俺は何ともいえない気持ちになりながらも訓練を再開する。




◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 爺さんの一騒動の出来事を振り払うかのように午前中ずっと剣を振り続けていた。

 午前の練習を終えて俺は昼食を摂るために宿の方へと向かう。

 どうやらまだアイさんは帰魂覚醒(ログイン)していないみたいだ。トリニティも町の散策から戻ってきていない。

 仕方ないから俺は1人で昼食を摂ることにした。


「あ、お客さん昼食ですか?」


「ああ、何かお勧めの定食を頼むよ」


 宿の食堂にはニルちゃんが愛想を振り撒いており、昼食を食べに来たお客の給仕をしていた。

 意外と混んでいたのでカウンターの席に案内された。

 昼食は宿泊料とは別料金なので俺は頼んだ定食の料金を支払う。


「お客さん、さっきはごめんなさいね。ニコおじいちゃんたらたまーにあんな風に剣を振っているお客さんにちょっかいを掛ける事があるのよ」


「ああ、気にしてないよ。爺さんは若いころ冒険者とかやってたんじゃないのか?

 だから剣を振っている人が気になっているとか」


 あの爺さんの放つ雰囲気(オーラ)はただ者じゃない感じがするんだが。


「えー、いっつも部屋でボケーってしているニコおじいちゃんが? ないない」


「いや、そんなことは無いぞ。ニルは知らなくてもしょうがないが、ニコじいさんは若いころ冒険者としてそれなりに名を馳せてたらしい」


 俺の言葉を否定していたニルちゃんにカウンターの向こうから1人の雄犬人(コボルト)が話しかけてきた。

 この宿の主人でありニルちゃんの父親だ。


「えっ、あのニコおじいちゃんが? 信じられない。とてもそんな風に見えないんだけど」


「まぁ巫女神様云々は流石に眉唾だと思うが、ニコじいさんが冒険者だったと言うのは本当の話らしい。俺も親父にニコじいさんの冒険譚の話をよく聞いたものだ。

 それよりもお喋りはするなとは言わないが、しっかり給仕の方を頼むぞ」


「あ、ごめんなさい」


 父親に注意をされてニルちゃんは慌てて給仕の仕事へと戻っていった。

 俺は目の前に出された定食を黙々と平らげながら、午後の予定を考えていた。

 とは言ってもまだ形にならない剣の訓練を続けるだけなのだが・・・




「ニルちゃん、悪いけど爺さんともう一度話をさせてもらえないかな?」


 昼食時の喧騒も落ち着いたところで俺はニルちゃんに爺さんの所へと案内してもらう。


「え? いいですけど・・・もしかしてニコおじいちゃんやお義父さんの話を真に受けたりしてます?」


「それをこれから判断するのさ」


 と言いつつも、俺の中では既に爺さんから流派――剣姫一刀流を習う事に決めていた。

 ニルちゃんに案内され、爺さんの閉じ込められている(?)部屋へとたどり着く。


「爺さん、さっきあんたが言っていた剣姫一刀流を俺に教えてもらえないか?」


 部屋の中でボーっとしていた爺さんに話しかけるが、ワザとなのか本当にボケたのかこちらをジッと見たまま首をかしげていた。


「はて、何の話じゃ? ワシはただのボケたジジイじゃぞ?」


「爺さん、そう言うボケはもういい。孫やひ孫が爺さんの話を信じてもらえないからボケたふりをしてるんだろうけど、俺は爺さんの話を信じるぜ。

 爺さんあんた言ったよな、俺の歩法は剣姫二天流に通じるものがあるって。

 それは逆のことも言えるんだぜ。爺さん、あんたの足運びは紛れもなく武術を学んだ者が身に付けたものだ」


 俺の言葉に再び爺さんの目が鋭くこちらを捉える。

 そして俺は畳み掛けるように爺さんへ流派の教えを乞う。


「俺はこの天と地を支える世界(エンジェリン)に幼馴染を探しに来たんだ。

 今あいつは神の世界・アルカディアに行ったまま行方不明だ。俺はあいつを探し出すためアルカディアに行かなければならない。

 そのためには力がいる。

 爺さん、俺に力を授けてくれ!」


 爺さんは暫く一層鋭くなった目つきで俺を見据えていたが、何やら納得したように肯いた。


「ふむ、よかろう。折角編み出した流派を誰にも伝えずに失うのも勿体ないからのう。

 老い先短い命じゃ。ここで出会ったのも何かの縁。お主には存分に剣姫一刀流を叩き込んでやろうぞ」


 おい、勿体ないから流派を教えるのかよ。

 つーか、剣姫一刀流ってまだ誰にも教えてなかったのか?

 うーん、マジで実戦で使える流派なんだろうな・・・ちょっと不安になってきた。


「あ、そうだ。俺達明日にでもここから出ていくから今日中に剣姫一刀流のイロハを教えてもらえるか」


「は? お主とんでもないことを言いよるのう・・・普通1日で流派を実践レベルまで鍛え上げるなんて不可能じゃぞ?

 ・・・ふむ、幼馴染を探し出すために時間が無いと言う事か・・・

 よかろう。その代わりそれ相応の覚悟をしてもらうぞ」


 さっきまでのボーっとしていた雰囲気が打って変わって、覇気に満ちた爺さんがこれからの訓練に頭を巡らせて俺に気合を掛けてくる。


「望むところだ!」




◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 午前中訓練した場所と同じ宿の裏庭で俺と爺さんは対峙していた。


 俺の今の格好は直ぐにでも実践に投入できるようドラゴンレザー製の全身鎧を身に着けたフル装備だ。

 因みにミスリルウッドの円盾は剣姫一刀流に必要ないと言う事で外してある。


 爺さんも同じく全身火竜(ファイヤードラゴン)の鱗と水竜(ウォータードラゴン)の鱗を合わせた鎧を身に着け、左右には火竜(ファイヤードラゴン)の牙で出来た赤の刀と水竜(ウォータードラゴン)の牙で出来た青の刀を携えていた。


 裏庭の隅には今の時間お客がいなくて暇をもてあそんでいるニルちゃんが、半信半疑と言った様子で俺達を見ていた。


「それではお主に剣姫一刀流を教えるにあたって最初にこの教えを絶対守ってもらおう」


「ん? なんだ? さっきはそんな事言わなかったじゃないか」


 爺さんの突然の絶対遵守の教えに俺は少々戸惑った。


「ワシを師匠と呼ぶのじゃ!」


 裏庭に爺さんの声がエコーするかのように響き渡る。


「・・・・・・断る」


「が―――ん! 何てことじゃ・・・弟子がいきなり逆らいおった・・・」


 俺の無情な答えに爺さんは地面に手を付いて項垂れた。


「爺さん、そんな事より教えを頼むよ」


「つれないのう・・・もう少し付き合っても良かろうに。

 さて、お主には時間が無いと言う事なので実践方式で剣姫一刀流を授けよう。

 何、やることは簡単じゃ。ワシの剣姫二天流と一緒に踊ってもらう、それだけじゃ」


 踊ってもらう・・・つまり爺さんの剣姫二天流とタメを張るくらいの実力を身につけろと言う事か。


「お主が重点的に訓練する点は3つ。

 1つ、常に足を止めず動き続ける事。

 ステップですべての攻撃を躱すのじゃ。今のお主の足捌きならそれほど難しい事でも無かろう。

 1つ、常に動きながら呪文を唱え続ける事。

 どんなに激しい動きでも呪文を途切れさすな。取り敢えず今のお主に使える魔法を重点的に訓練するのじゃ。他の呪文はおいおい覚えればよかろう。

 1つ、魔法剣を放つために剣と魔法のタイミングを合わせる事。

 躱しながらの攻撃のタイミング、呪文の唱えるタイミング、この2つが合わさなければ剣姫流とは言えん。

 これらの事を全て体で覚えてもらうぞ」


 なるほど。歩法で攻撃を躱しつつ呪文を唱えて魔法剣を最良のタイミングで放つ、これが剣姫一刀流の基礎であり真髄でもあるんだろう。


「では訓練を開始しようかの」


 爺さんは左右の刀を掲げ俺に向かって踏み込んでくる。




 爺さんは最初の宣言通り容赦が無かった。

 左右の刀を振り回し、寸止めどころかマジで鎧の上から斬りかかってきている。

 俺はそれを必死に歩法で避けながら爺さんの言いつけどおり呪文を紡ぎ魔法剣を放つタイミングを体で覚えようとする。


「遅い! もう半歩踏込を強くするのじゃ!」


「呪文が途切れておるぞ! 限られた呼吸の中で素早く短く呪文を唱えるのじゃ!」


「タイミングがずれておる! 相手の動き自分の動きを見極め呪文を唱え魔法剣とするのじゃ!」


 爺さんから容赦ない指摘がバシバシ飛んでくる。

 しかも爺さんも俺以上に動きながら攻撃しながらだ。マジで爺さんハンパネェよ。


「・・・うそ・・・ニコおじいちゃんがこんなに凄いだなんて・・・」


 爺さんの凄まじい攻撃にニルちゃんは目を丸くしていた。

 まぁニルちゃんにとっては爺さんはボケて徘徊するおじいちゃんにしか見えなかったのが、実は使い手の少ない剣姫二天流を目の前で扱っているのだ。

 それは驚きもするだろう。


 訓練は日が暮れるまで続けられた。

 途中、トリニティが戻ってきて俺の訓練を見て「何やってんだ?」と感じで見てきたが、当然俺にはそんなのに答える余裕なんか無い。

 因みにニルちゃんは宿の仕事があるので、最初の方をちょっと見てから戻っていった。

 少しショックを受けていたのか足下がふらついていたが。


 トリニティが戻ってきたとほぼ同じくらいにアイさんも帰魂覚醒(ログイン)してきた。

 俺と爺さんのぶつかり合いを見て何やら納得したように黙って訓練の様子を見ていた。

 トリニティは流石に俺達を見ていては飽きると思ったのか、アイさんと会話をして何やら盛り上がっていた。


「ぜーはーぜーはーぜーはーぜーはーぜーはーぜーはー!」


 打撲擦り傷だけでなく、切り傷もこしらえた俺は地面に大の字になって息を切らしながら横たわっていた。


「ふぅぅ・・・今日のところはこれまでじゃ。流石に1日では流派を覚えるのは無理じゃから、最低でも明日1日は続けてもらうぞ」


 爺さんから明日も剣姫一刀流の訓練をすると言ってきた。

 そりゃそうだ。たった1日・・・いや半日で流派を覚えようとは少し虫がよすぎる。

 まぁ俺としては明日1日で剣姫一刀流がものになれば文句のあるはずもない。


「ああ、それと今夜夕食を食べてからワシの部屋に来るのじゃ。剣姫流の魔法理論を一夜で叩き込んでやる」


 爺さんは1日の全てを無駄なく使うつもりらしい。

 体を動かさない時は魔法を覚えるのに使うと。

 と、そんなことを考えていたら爺さんが膝をついて咳き込んでいた。


「ごほっ! がふっ!」


「ぜーはー・・・爺さん、大丈夫、なのか?」


「げほ・・・・・・大丈夫じゃわい。少し無理をし過ぎたみたいじゃ。久方ぶりに体を動かしたからビックリしたようじゃの」


「ぜーはー、そう、か。無理、すんな、よ」


「ふん、お主が無理をさせたのじゃろう?」


「・・・違いねぇ」


 何とか息を整えた俺はふらつく体をアイさんとトリニティに支えてもらい、爺さんはアイさんに支えてもらいながら宿へと戻っていく。




◇ ◆ ◇ ◆ ◇



「ふーん、それであんな激しい訓練をしていたわけか」


「まぁ、ここで強くなっておくに越したことはないから明日1日くらいなら問題ないわね」


 夕食を摂りながらアイさんとトリニティに爺さんから剣姫一刀流を習う経緯を話した。

 トリニティは相変わらず興味なさげに、アイさんは俺の流派取得に賛成して1日出発が延びるのを了承してくれる。


「それはそうと、アイさんの方はどうだったんだ? 随分時間が掛かったみたいだけど26の使徒の事は調べられたのか?」


「あー、確かに時間が掛かったわね。wikiでも見れば一発かと思ったけど、あっちじゃwikiは全く役に立たなかったわ」


「ん? どういう事だ?」


 アイさんの話によるとAIWOn(アイヲン)――天と地を支える世界(エンジェリン)は他のVRMMOとは違い、情報は金になるらしい。

 よってwiki何かの情報サイトは盗賊ギルドに情報を売るのに邪魔になるので、又はサイトに載せた情報が売りに出され直ぐ削除されるのでwikiに載っているのは基本的な事と古い情報しかないのだとか。


「という訳で今までの掲示板から26の使徒の話や噂話を拾い集めるのに時間が掛かっちゃったの」


 アイさんは某掲示板等に載っている情報を取捨選択してきたと簡単に言うが、それを約半日で終わらせてきたって・・・流石はアメリカ最先端の電脳警備会社(サイバーガーディアン)のエージェントってところか。


「それで、盗賊ギルドでも高値で取引されていると言うエンジェルクエスト――26の使徒の情報ってのは?」


 トリニティの催促を受けてアイさんは26の使徒の情報を提示する。



 Aの使徒  『??の使徒』  ???

 Bの使徒  『闘争の使徒』  Bout

 Cの使徒  『模倣の使徒』  Copy

 Dの使徒  『災厄の使徒』  Disaster

 Eの使徒  『逃走の使徒』  Escape

 Fの使徒  『牙狼の使徒』  Fang

 Gの使徒  『宝石の使徒』  Gem

 Hの使徒  『天界の使徒』  Heaven

 Iの使徒  『知恵と直感と想像の使徒』 Intelligence-Inspiration-Imagination

 Jの使徒  『投槍の使徒』  Javelin

 Kの使徒  『刀装の使徒』  Katana

 Lの使徒  『迷宮の使徒』  Labyrinth

 Mの使徒  『竜宮の使徒』  Mermaid

 Nの使徒  『偽りの答えの使徒』  No

 Oの使徒  『信託の使徒』  Oracle

 Pの使徒  『力の使徒』  Power

 Qの使徒  『探求の使徒』  Quest

 Rの使徒  『旋律の使徒』  Rhythm

 Sの使徒  『始まりの使徒』  Start

 Tの使徒  『??の使徒』  ???

 Uの使徒  『正体不明の使徒』  Unknown

 Vの使徒  『勇敢な使徒』  Valiant

 Wの使徒  『警告の使徒』  Warning

 Xの使徒  『XXXの使徒』  XXX

 Yの使徒  『正しき答えの使徒』  Yes

 Zの使徒  『覚醒の使徒』  Zone



 流石に26人も居ると壮観だな。

 ん? 名前の分からない使徒がいるが、アイさんでも分からなかったのだろうか。


「おおー、凄いなこれ。これだけの情報は盗賊ギルドに持っていけばひと財産になるぞ。

 これだけの情報を集められるって、お前たちの世界(テラサード)は凄いところだな」


「言っておくが、異世界(テラサード)が凄いんじゃなく、アイさんが凄いんだらかな?

 幾ら異世界(テラサード)だからと言ってもこれだけの情報、簡単に集められないから。

 それはそうと、アイさん、名前の分からない使徒が居るんだが」


「うん、どうしても分からないのが2名ほど。

 Aの使徒は最後の使徒と言われていて、Aの使徒を倒した後アルカディアに行くから情報が出てこなくてね」


 ああ、なるほど。

 Aの使徒を倒せばすぐにアルカディアに直行だからな。

 そしてそのまま意識不明の昏睡状態になるから現実(リアル)には情報が出てこないと。


「Tの使徒は使徒の証の入手条件が不明でね。

 資源の森の南にある宮殿に囲まれた城の玉座に触れたら手に入ったって情報があるんだけど・・・手に入らなかったって情報もあって。

 おまけに使徒も出てこないから名前すら判別できなくて」


 使徒が出てこないって・・・それどうやってエンジェルクエストの判断を知れるんだよ。


「ふむ、じゃあ次は取り敢えず場所が近いこのTの使徒を目指すってことでいいのか?」


「ううん、あたしが推すのは『宝石の使徒・Gem』と『迷宮の使徒・Labyrinth』ね。

 この2人は地下迷宮に居るから場所的にも打ってつけだし、早めに攻略しておいた方がいいと思うわ」


「地下迷宮って・・・まさか」


 俺はアイさんの言う地下迷宮と言う言葉に嫌な予感がした。


「そうよ、この地下都市は地下迷宮にあるうちの1つにしか過ぎないのよ。

 地下迷宮の広さは海を越えた隣の大陸イーストエンド大陸のジパン帝国まで続いていると言われているわ」


 ちょっ!? 何だよそれ、メチャクチャ広いじゃないか!


 アイさん曰く、その地下迷宮に『宝石の使徒』と『迷宮の使徒』が徘徊してどこか(・・・)に居るらしい。

 そして地下迷宮を攻略するのに半年はざらだとか。限られた地上へのポイントを目指すだけでも1~2週間は普通に掛かるらしい。


「地下迷宮ごときに1週間以上も時間を掛けてられない。どうすんだよこれ・・・」


「うん、だからね、地下迷宮のスペシャリストに頼もうと思うの」


「スペシャリストって・・・迷宮案内人(ラビリンスガイド)に頼むのか? そいつらに頼んだとしてもやっぱり1週間以上はかかるんじゃ?」


 トリニティの言う迷宮案内人(ラビリンスガイド)は迷宮を専門とする案内人(ガイド)らしい。

 迷宮の構造やモンスターの配置等を把握し安全なルートを提供するいわば迷宮のスペシャリストだ。

 この地下都市コバルトブルーにも案内人ギルドが存在し、数多くの迷宮案内人(ラビリンスガイド)がいるみたいだ。

 トリニティは今日の町の散策で案内人ギルドを発見し挨拶がてら様子を伺ったとか。


「ううん、迷宮案内人(ラビリンスガイド)に頼むんじゃなく、私の伝手のスペシャリストに頼むの」


 迷宮案内人(ラビリンスガイド)じゃないスペシャリスト・・・?

 いや、ここはアイさんを信じてみるか。また俺達の知らない何かがアイさんにあるのだろう。


「よし分かった。アイさんはそのスペシャリストに連絡を取ってくれ。俺の明日の訓練が終わり次第地下迷宮の2人の使徒を目指そう」


 俺の最終判断に2人は頷く。

 アイさんは俺のサポートでAIWOn(アイヲン)に付いて来ているのだし、トリニティに至っては反対意見が出せる様な立場ではないからな。




◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 夕食の後、俺は爺さんの部屋へ尋ねる。

 はっきり言ってある意味昼間の剣の特訓よりスパルタだった。

 1晩で剣姫流の魔法理論を覚えさせようとするのだ。それはもう厳しくなるのは当たり前だ。


 これには流石に俺も頭をオーバーヒートさせながらもフル回転させて必死に覚えようとしたが、難航を極めた。

 覚えることは現実世界(リアル)での英語を覚えるのと同じようなものだ。ただでさえ英語の成績が芳しくないのにそう簡単に魔法理論なんか覚えれるはずもない。

 まさかゲームの世界に来てまで勉強の真似事をするとは思わなかった。




 ――AL103年3月21日――


 俺は重たい瞼を擦りながら今日もフル装備で爺さんと向かい合っていた。

 流石に徹夜してまで勉強をしていては今日の訓練に響くからそこそこの時間で終わらせたが、それでも遅い時間になったのは言うまでもない。


「さて、今日1日で何としても剣姫一刀流をものにしてもらうぞ。昨日より更に厳しくいくが覚悟して挑むのじゃぞ」


 そう言いながら爺さんは左右の刀を持って俺に向かって来る。

 俺は早速昨日の魔法理論の実践を試しながら爺さんの刀を躱しつつ呪文を唱える。


 取り敢えず俺が覚えさせられたのは、火水風土氷雷無の7属性の初級下位魔法だけだ。

 剣姫流は魔法の幅が広ければ広いほどいいので、この7属性を叩き込まれた。

 初級上位魔法以上となると呪文を唱えるだけで覚えれるものではないので、初級上位魔法に関してはこれから自力で何とか覚える必要がある。


「遅い遅い! 昨日の方がまだ早さがあったぞ!」


「ただ呪文を唱えるんじゃない! 攻撃を躱しながらも明確なイメージを持って唱えよ!」


「相手の動きの先を読め! 魔法剣の先にあるのは相手の動きすらも御する先読みじゃ!」


 爺さんの訓練は相変わらず厳しいものだった。

 昼食を挟んでの丸1日、俺はひたすら爺さんの刀を躱しながら剣で、魔法剣での攻撃を続けていた。

 時間も陽が傾き始めた頃、裏庭にはアイさんとトリニティが俺達の様子を伺っていた。

 2人は1日時間が空いたと言う事で、更に26の使徒の情報を集める為に町を練り歩いたそうだ。

 アイさんはAIWOn(アイヲン)での情報集めにトリニティを伴って地下都市コバルトブルーの盗賊ギルドを訪ねたとか。


「ぜーはーぜーはーぜーはー!」


 そんな2人が俺の訓練を伺っている様子を視界に捉えながらも俺はひたすら刀を躱し剣を振る。

 ノンストップでの訓練は流石に息が上がりっぱなしだ。

 だが実は俺以上にヤバかったのは爺さんだった。


「ごほっ、げほっ!」


 突然膝をついたかと思ったら血を吐き出した。

 俺の攻撃は一切当たってない。

 にも拘らず爺さんは血を吐いた。

 そう言えば昨日も最後は様子がおかしかったな。

 もしかして体の具合が悪いのに無理をしていたのか?


「ぜーはー、おい、爺さん、何、無茶してん、だよ。ぜーはー、体が悪い、んなら、黙って、休んで、いろ。ぜーはー、もう、十分すぎる、くらい、訓練して、もらったからさ」


「ふん、戯け。ワシの体はとっくに寿命を迎えてもおかしくないから元々体の具合なんぞ悪いに決まっておる。

 なんせ100歳を超えておるからの。犬人(コボルト)にしては長生き過ぎるくらいじゃ」


 そう言えば爺さんは巫女神フェンリルに剣姫二天流を習ったって言ってたな。

 巫女神フェンリルは100年前の人物だ。言われてみれば100歳は軽く超えている計算になる。


「それに十分すぎるくらい訓練してもらったじゃと? 何を言っておる。まだまだに決まっておろう。

 さあ、訓練の続きといこうか!」


 そう言いながらも刀を振るう爺さんだが、先ほどまでの動きではない。明らかに体に不調をきたしている。


「おい、爺さんやめろ! そんな体をして、訓練を続けられるわけねぇだろ!」


 何と爺さんは血を吐きながらも訓練を続けようとしていた。

 まるで命を削りながら俺に最後の教えを与えてるようだった。

 その様子を見ていたアイさんは、爺さんの最後を予見したのかトリニティにニルちゃんたちを呼びに行かせた。


「どうした! 剣先が鈍っておるぞ! こんなことぐらいで動揺していては幼馴染を助けられないぞ!

 ワシを止めたければ力ずくで止めて見せよ!!」






◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 Alive In World Online雑談スレ609


369:名無しの冒険者:2058/9/30(月)16:42:10 ID:Con8tO10

 何これ? 地下迷宮広すぎwww


370:名無しの冒険者:2058/9/30(月)16:43:21 ID:M369sekI69

 隣の大陸まで広がってるんだっけ?


371:名無しの冒険者:2058/9/30(月)16:44:21 ID:Adl6Ms10r

 確かに広すぎwww


372:名無しの冒険者:2058/9/30(月)16:46:06 ID:H24jkcBu4

 運営は何を考えてこんなに広くしたんだか・・・


373:名無しの冒険者:2058/9/30(月)16:47:35 ID:T1rA3sGkbj

 運営ってバカなの? 死ぬの?


374:四季葉・明日香・嵐昏:2058/9/30(月)16:48:53 ID:EVA2014Snd

 >>372 あんた馬鹿? そんなの面白いからに決まってるじゃない!


375:名無しの冒険者:2058/9/30(月)16:49:10 ID:Con8tO10

 あの広さは異常だよね~

 しかも地下都市に26の使徒が2人もいるんだよ

 どうやって探せってのwww


376:名無しの冒険者:2058/9/30(月)16:50:49 ID:need9kill9

 え? マジ? そんな広いところに26の使徒がいるの?


377:名無しの冒険者:2058/9/30(月)16:52:06 ID:H24jkcBu4

 しかも一定の場所に居ないんだよ

 迷宮内を徘徊しているから見つけるのにどれだけ時間が掛かる事やら


378:名無しの冒険者:2058/9/30(月)16:53:21 ID:M369sekI69

 聞いた話によるとその2人のうち1人は迷宮定番のミノタウロスだとか


379:名無しの冒険者:2058/9/30(月)16:54:35 ID:T1rA3sGkbj

 私が聞いたのだともう片方は金髪の美女だって


380:名無しの冒険者:2058/9/30(月)16:56:21 ID:Adl6Ms10r

 もう片方は銀髪の美女だったなぁ


381:四季葉・明日香・嵐昏:2058/9/30(月)16:57:53 ID:EVA2014Snd

 あれ? 私が聞いたのは赤髪の美女だって


382:名無しの冒険者:2058/9/30(月)16:59:06 ID:H24jkcBu4

 おや? なんか話が食い違っているな


383:名無しの冒険者:2058/9/30(月)17:01:21ID:M369sekI69

 おいおい、青髪の美女だろう。もう1人の使徒は


384:名無しの冒険者:2058/9/30(月)17:03:49 ID:need9kill9

 もう1人の使徒って変身能力でも持ってんのか?








次回更新は3/3になります。

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