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Alive In World Online  作者: 一狼
第2章 Labyrinth
10/83

9.地下都市とコボルトと剣姫二天流

早見唯姫、Alive In World Onlineに捕らわれる。

大神鈴鹿、唯姫を救うため一之瀬愛と共にAIWOnにダイブする。

大神鈴鹿、AIWOnでトリニティと出会い仲間にする。

大神鈴鹿、美刃から唯姫の情報を貰う。

大神鈴鹿、唯姫を探すためエンジェルクエスト・Startを攻略する。


                       ・・・now loading


 ――AL103年3月20日――


 宿屋の裏にある広めの庭で俺は疾風迅雷流の歩法での準備運動をする。

 体が十分温まったところで今度は剣を手に持ち、剣を構えた状態からの歩法を行う。


 素手での歩法は現実世界(リアル)で十分こなしているから問題ないが、剣を持った状態での歩法は若干だがズレが生じているのでそれを修正する必要があるのだ。

 このAIWOn(アイヲン)での戦闘を行うにはどうやっても武器――剣を持った状態で戦闘が出来るようにならなければならない。


 牛歩の様なゆっくりした動きからダンスを踊るようなステップを踏む足運びを交互に繰り返しながら己の動きを確かめる。


 一通り歩法を終えたところで、今度は対戦相手をイメージした仮想戦闘を行う。

 今イメージする対戦相手は昨日戦ったキマイラだ。

 ホーンラビットでは弱すぎて話にならないし、飛竜(ワイバーン)火竜(ファイヤードラゴン)風竜(ウインドドラゴン)、ましてや老竜(エルダードラゴン)なんかはとてもじゃないが練習相手にはきつすぎる。


 キマイラが俺に向かって来るのを歩法で躱し、すれ違いざまに剣を振るう。

 ダメージを受けたキマイラは俺を睨みつけてすぐさま振り返り様に牙を向けてくる。

 俺はバックステップで牙を躱しながら更に剣を振るう。

 キマイラは時には爪を、時には蛇の尾で攻撃を仕掛け、俺はそれを剣で弾いたり歩法で躱したりとお互い攻撃を繰り出す。

 そして再びキマイラが牙で攻撃しようと咢を開いたところを狙って、呪文を唱えてその口目がけて魔法を解き放つ。


「アイスブリット!」


 今俺の魔法の中で最も威力のある弾丸をイメージした氷の弾丸魔法だ。

 回転しながら突き進む氷の弾丸は貫通力があり、あの古竜(エルダードラゴン)の鱗ですら貫くと言う威力を誇っている。


 口の中に氷の弾丸を撃ち込まれたキマイラはそのまま頭を貫通して弾け飛ぶ。

 油断しない様に、止めとばかりに脳天目がけて剣戦技を放つ。


「スラッシュ!」


 剣を振り下した状態で残心し心を落ち着けて剣を収める。


 と、まぁイメージしたキマイラを相手に動いているだけなので傍から見れば変なダンスを踊っているようにしか見えないが。


「ふーん、何か変わった練習だな。

 最初の歩くだけってのも変だったけど、今の剣をぶん回している姿も変なダンスみたいだな」


 何が面白いのかは知らないが、宿屋の裏庭の隅でトリニティが俺の練習を眺めていた。


「まぁな。これは俺が異世界(テラサード)で習っていた武術だ。元々素手で戦うための武術だったから剣を持って使えるように練習しているんだ。

 まだ慣れてないからトリニティの言う通り変なダンスにしか見えないがな」


「そんなんで強くなれるのか? 我流で武器を覚えるよりは誰かから習った方が手っ取り早いと思うけどな」


「そりゃあ流派とか習えればそれに越したことはないが、今の俺達にはのんびり流派を習う時間は無いからな。

 一刻も早くエンジェルクエストをクリアしてアルカディアに行かなければならないんだ」


「それで焦って死んでしまったら元も子もないと思うけど。

 あんたらの世界に急がば回れって諺があるだろ? 確実にアルカディアに行くためにもちゃんとしたのを習った方がいいんじゃないか?」


 うーむ、トリニティの言う事ももっともだな。

 だがそう都合よく指導者が現れるわけでも無いし、さっきも言ったようにそれほど時間もあるわけじゃない。

 アイさんに習うのも手かもしれないが、聞いたところアイさんは流派はそれほど詳しくはないと。

 一見アイさんは完璧なチートのように見えてしまうが、実際のところそれほど何でも出来るわけじゃないみたいだ。


「まぁ、あたしは鈴鹿がどう動こうがどうでもいいからな。

 脇目もふらず一直線にアルカディアを目指してもいいし、寄り道しながら進んでもどっちでもいいしな。

 さて、折角こんなところに来たんだ。鈴鹿の変な練習なんか見てないで町の散策にでも出かけるか」


 トリニティはそう言いながら裏庭から出て行ってしまった。

 まぁ盗賊(シーフ)でもある彼女は散策ついでに町の情報を集めてくるのだろう。


 俺はトリニティに言われたことを考えながら、再び剣での練習を行う。




◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 俺達はエンジェルクスとの『始まりの使徒・Start』をクリアしてから一息つこうとある都市に向かっていた。


 昨日の魔の荒野強行軍から今日の飛竜(ワイバーン)火竜(ファイヤードラゴン)風竜(ウインドドラゴン)、そして極めつけは『始まりの使徒』である老竜(エルダードラゴン)との連続戦闘だ。

 流石にこれまでの連続戦闘での疲労もたまっており、時間的にも日が暮れるころの時間になりここら辺で休める都市があると言う事で向かっているのだ。


「ここら辺で都市なんて聞いたことがないよ、本当に都市なんてあるんだったら目立つと思うけど」


 その都市へ向かおうと提案したのはアイさんだ。

 今はアイさんが先導して走竜(ドラグルー)を走らせている。

 俺は相変わらずアイさんと走竜(ドラグルー)に2人乗りして、情けなくアイさんの腰にしがみ付いていたが。

 そんなアイさんに向かって流石に聞いたことも見たこともない都市に行くのが不安なのかトリニティが心配の声を出していた。


「んー、大丈夫だと思うよ。まだ存在していればだけど・・・」


「ちょっ!? マジで大丈夫なのかよ!?」


 流石に俺もアイさんの言葉に不安を覚える。

 アイさんの仕入れた情報はかなり古い情報なのかもしれないな。


 走竜(ドラグルー)を走らせること十数分。

 俺達は『始まりの使徒』の居た広場からそれほど時間は掛からずに目的地へと到着した。


「着いたわ。ここよ」


「ここよって・・・何もないところじゃないか」


 今俺達の目の前にあるのは始源の森には不釣り合いな巨大な大岩。それだけだった。

 アイさんはその大岩に手を当て何やら呪文らしきものを唱える。

 するとその大岩に巨大な鉄の扉が現れた。

 扉を開けるとそこには地下へと降りる坂が奥底へと続いていた。


「ここが地下都市コバルトブルーの入り口よ」


「地下都市・・・そっか、道理で聞いたことも見たこともないわけだ」


 トリニティは目の前の状況になるほどと納得する。

 確かに都市が地下にあるんだったらおいそれと見つかることもないし、それこそ都市の存在そのものを聞く事は稀だろう。


「アイさんがさっき唱えていたのは地下都市へ入るための合言葉かなんかか?」


「そうね。この地下都市の存在は余り公に触れさないためにも隠してあるみたいだからね」


 俺の質問にアイさんは少し困ったような哀しげな表情で答えてくれた。


「そういや何で隠してるんだ? ただでさえこんな辺鄙なところにあるんだ。隠してたら交易やらなんやら不便じゃないのか?」


 トリニティの言う事はもっともだ。

 ただでさえ地下にあって目立たないのに更に隠してしまえば都市として衰える一方じゃないのか?


「まぁ、それは都市に入ってみれば分かるわよ」


 そう言いながらアイさんは走竜(ドラグルー)を歩かせ地下都市へと降りていく。

 トリニティも慌てて付いて来て地下へと走竜(ドラグルー)を歩かせた。




 地下都市へと着いた俺達は目を見張った。

 立派な体躯、しかしその体表にはモフモフした大量の毛が。

 顔は犬歯を剥き出しにした咢、頭の上には三角の耳、頬にはその存在を主張するかのようにピンと張った髭が存在していた。

 そして一見人間の女性と思われるのもいるが、よくよく見れば頭の上にはモフモフの耳が、お尻には感情に合わせて揺れる尻尾が付いていた。


「何だこりゃ? そこらじゅうモフモフだらけじゃねぇか」


「え? え? え? 何これ? もしかしてここの住人って全部コボルトってわけ?」


 そう、そこにいた住人は全てコボルトだったのだ。

 右を見ても左を見てもコボルトだらけだ。

 中にはちゃんとした人間の姿も見えるが、身なりから見て冒険者たちであろうと判断できるので住人と言うにはまた違うだろう。


「そう、この地下都市はコボルトで成り立っているのよ」


「はー、それまた凄い都市があったもんだ。

 ああ、だからか。地下にあるのは魔物であるコボルトが人間に見つからないためでもあるのか」


「あー、それはちょっと違うな。

 ここに居るコボルト達はれっきとした獣人だよ。野生にいる魔物のコボルトとは全く別物だ」


 俺がこの都市が地下にある理由を納得していたが、トリニティから獣人のコボルトと魔物のコボルトの違いを説明された。


 獣人コボルトも元をたどれば魔物だったのだが、理性を宿し知性を備えてから全く別の進化をたどり獣人への地位を確立したらしい。

 基本的には野生で襲い掛かるのが魔獣コボルトで、知性をもって会話するのが獣人犬人(コボルト)と言うのが世間一般の解釈だ。


「あれ? でも人間の姿をしてイヌ耳尻尾があるのも犬人(コボルト)なんだ?」


「ああ、よく見て見ろよ。人間の姿とほぼ変わらないのは雌だけだよ。獣に近い姿の方が雄だな」


 なるほど。よく見ればほぼ人間と変わらないのは女ばかりだな。

 後で聞いた話だが、基本的に獣人は雄が獣っぽい姿で雌が人間とほぼ変わらない姿らしい。


「まぁ地下に都市がある理由は鈴鹿くんが言った通りなんだけどね。

 ここの犬人(コボルト)は獣人として地位を確立しているけど、中には犬人(コボルト)は魔物としてみる人もいるからね。それを避けるために地下に都市を築いたって訳」


「王都エレミアにも犬人(コボルト)や他の獣人もいるが、あまり真っ当な扱いを受けてなかったりするのも事実だな」


 あー、種族差別って奴か。

 人間は選ばれた種族って勘違いしている奴もいるからな。


「さて、一通り驚いてもらったところで宿を決めましょう」


 そう言ってアイさんが案内したのが「剣を抱いて踊る姫亭」だった。

 宿の隣の小屋に走竜(ドラグルー)を繋ぎ、3人分の宿泊料金を支払い各部屋を取る。


「それではお部屋は2階の205号室と206号室、207号室になります。

 夕食はこの1階の食堂で夜9時までにお願いしますね。それ以降となると別料金が発生しますのでくれぐれもお気をつけてください」


 そう言って説明してくれるのはこの宿の看板娘のニルちゃんだ。

 彼女は10歳ながらも両親の手伝いとして食堂の給仕や宿の説明案内を行っている。

 見た目は栗色の髪のショートヘアで頭の上のケモ耳がピコピコと可愛く揺れている。

 背もそれほど高くは無いが幼い体に反して胸はメロンが詰まっていた。

 その愛くるしい表情と早熟の体でこの辺の宿屋ではそれなりの人気があるらしい。

 現に今も食事に来た犬人(コボルト)や宿に泊まっている冒険者たちから、可愛がりやナンパなどを受けたりしていた。

 彼女はそれを見事に躱しながら俺達の接客をしているのだ。


「鈴鹿、お前ニルちゃんの胸ばかり見てるんじゃねぇよ」


「・・・変な言いがかりはやめてもらおうか」


 確かにその胸を見ていたことは認める。だが胸ばかりを見ていたわけじゃねぇよ。そこん所を勘違いしないで欲しいな、トリニティさんよ。


 俺達は取り敢えず夕食を取るべく荷物を一旦各部屋に置いてからと再び1階の食堂へ集まる。

 もっとも大半の荷物はアイさんのシャドウゲージに入っているので武器防具を外して部屋に於いてくるだけだが。


「それで私は一旦離魂睡眠(ログアウト)をしようと思うの」


 食事を一通り終えて落ち着いたところでアイさんが今後の予定として離魂睡眠(ログアウト)をすると言ってきた。


 ログアウトとはMMOではお馴染みのゲームをセーブして終える事を意味する。

 ただしこのAlive In World Onlineの世界、天と地を支える世界(エンジェリンワールド)での離魂睡眠(ログアウト)とは身体(アバター)をこの世界に残し、中身だけが現実世界(リアル)へ戻ることを意味しているのだ。


 なので身体(アバター)だけがこの世界に取り残されるので、当然残された身体(アバター)は無防備に晒されてしまう。

 だがそこは女神アリスの加護で、離魂睡眠(ログアウト)をした身体(アバター)は3分間だけ無防備に晒された後は完全に外的要因に作用されない様になっている。

 何故3分間は無防備なのかと言うと、他の異世界人(プレイヤー)が犯罪などを犯して即時離魂睡眠(ログアウト)して逃げると言う手段をとれない様にするためだ。


 その仕様の為、離魂睡眠(ログアウト)をする時は宿屋などの安全確保した状態で行うのが普通だ。

 幾ら帰魂睡眠(ログアウト)時に外的要因の影響を受けない様になっていても、睡眠状態の身体(アバター)をモンスターの群れの中に放り込んでKillするやり方もあるので安全確保は最優先されるからだ。

 もっと安全を確保したければAlice神教教会の召喚の間で離魂睡眠(ログアウト)をすることを勧めている。

 身体(アバター)が女神アリスの元へ戻されるから安全度は完璧だからだ。


 因みに、再びAIWOn(アイヲン)に戻ってくるのを帰魂覚醒(ログイン)と言って、宿屋で離魂睡眠(ログアウト)をして長期間帰魂覚醒(ログイン)をしない宿泊客はE級冒険者に依頼を出しAlice神教教会の召喚の間で強制的に身体(アバター)を女神アリスの元へ返されるらしい。


「急に・・・って訳でもないか。

 普通の異世界(プレイヤー)だったら1日も天と地を支える世界(エンジェリン)に居ないからな。寧ろ2日もここに居る鈴鹿達の方が珍しい方だな」


 トリニティの言う通り普通なら現実世界(リアル)の事もあるから異世界人(プレイヤー)は頻繁に離魂睡眠(ログアウト)をするものだ。

 まぁ俺達は事情が事情だから1週間程度は大丈夫なはずなのだが。


「アイさん、どうしてまた離魂睡眠(ログアウト)をしようと?」


「うん、あっちでエンジェルクエストの情報を集めようと思ってね。

 一応こっちでも情報を集める事が出来ると思うわ。けどその場合盗賊ギルドを通して情報を手に入れることになると時間がどれだけ掛かるか分からないの。当然情報料もね。

 トリニティに聞いた話によるとエンジェルクエストはかなり高値で情報を取引されているからね」


「ああ、何せ女神アリス様のクエストだからな。26の使徒の情報全部ともなるとお金だけじゃない、時間も相当かかると思うぞ」


 なるほどな。それで現実世界(リアル)で情報を集めようと言うのか。

 向こうならばネットで検索すれば直ぐにWiki等の攻略サイトが見れるからな。


「そういう事なら了解した。アイさんには手間を掛けるがお願いするよ」


 アイさんなら電脳警備会社(サイバーガーディアン)に勤めていた腕もあるから直ぐに情報は集まるだろう。


「それで鈴鹿くんはどうする? 私と一緒に一旦離魂睡眠(ログアウト)する?」


 俺は少しの間考える。

 まだAIWOn(アイヲン)にログインして2日目だが、親父達に顔を見せて安心させてもいい。

 だがこれからの事を考えるともう少し強くなっておきたい。

 昨日今日の戦闘では殆んどアイさん頼りだったのが少し情けなく感じていた。

 これは俺が唯姫を連れ戻す旅でもあるのだ。アイさんに頼ってばかりはいられない。


「いや、俺はアイさんが戻るまで剣の訓練をしておきたい。

 少しでも実力を付けておかなければこの後苦労しそうだからな」


「・・・そう、分かった。向こうでは大河さんや鈴さんに上手く伝えておいてあげるわ」


「ありがとう。

 そう言えばトリニティはどうする? 明日は1人になってしまうが」


「何だよ。鈴鹿に心配される覚えはないぞ?

 あたしは折角だからこの都市を少し見て回るつもりだよ。お前らに無理やり連れてこられたけど、こういう機会でもないと他の都市に来ることなんてないからな」


 まぁ、確かに無理やり連れてきたけどな。

 そういう事なら俺は剣の訓練に精を出そうじゃないか。


 お互いの予定を立てて今日のところはそのまま部屋に戻って休んだ。

 よほど疲れていたのか俺は直ぐに眠りについて朝まで熟睡していた。




◇ ◆ ◇ ◆ ◇



「ほう、なかなか面白い訓練をしているのう」


 トリニティが町へ出かけても俺は剣の訓練を続けていた。

 そんな俺をいつの間にか裏庭の隅に杖を持って座っていた犬人(コボルト)が座って見ていた。


 若い時は張りのある毛並みだったのだろう。

 今ではかなりくたびれて色あせた毛並みをしていた。

 雄の獣人にもかかわらず分かるほどの髭を蓄えていて、一目見てかなりの老人であると判断できた。


「ふむ、足捌きはかなりのものだが剣の腕はまだまだこれからじゃのう」


「爺さん、何時からそこにいたんだ?」


「ほっほっほ、先のお嬢ちゃんが出かけるころからおるぞ?

 ああ、警戒しなくても大丈夫じゃ。ワシはこの宿の経営者じゃ。もっとも今のワシは経営にはタッチしておらぬがのう」


 マジか? そんな長い間気が付かなかったのかよ。

 それに経営者と言われてもそんな風には見えないな。

 この犬人(コボルト)の爺さん、ただ座っているだけだが雰囲気(オーラ)がどこか違うし、俺の歩法や剣の腕を判断しているところから見るとかなりの実力者じゃないのか?


 そんな俺を見ていた爺さんは俺を舐めまわすように見て残念そうに、そして期待したように言ってくる。


「うむ、実に惜しい。惜しいのう。それほどの足捌きをしておりながら剣の腕はいまいちとは惜しいのう」


「・・・爺さん何が言いたいんだ?」


「なぁに、簡単な事じゃ。お主、剣姫二天流を覚えてみる気はないか?」


 剣姫二天流? どっかで聞いたことがあるようなないような・・・


「何じゃ、お主剣姫二天流を知らんのか? かなり有名な流派じゃぞ?」


「あ―すまんな、爺さん。俺は昨日天と地を支える世界(エンジェリン)に来たばかりの異世界人(プレイヤー)なんだ。

 まだ世間知らずなんでな。多少の無知は勘弁してくれ」


「ほう、お主異世界人(プレイヤー)じゃったのか。しかも昨日今日来たばかりの・・・

 それでそれだけの動きが出来るとは・・・面白いのう。

 ・・・しかもその雰囲気・・・あの人を髣髴させる感じがするのう・・・」


 何やら爺さんは俺の歩法がいたく気に入ったようだ。

 最後の呟きは良く聞こえなかったが、爺さんの俺を見る目が少し暖かくなったように感じる。


「まぁよい、ならばワシが教えてしんぜよう。

 剣姫二天流とはかつて魔王を倒したと言われる七王神の1人、巫女神フェンリルが使っていたと言う剣術じゃ。

 踊るような華麗なステップで敵の攻撃を躱し、2本の剣に魔法剣を掛け合わせて戦う流派――それが剣姫二天流」


 ここでも巫女神フェンリルが出てきたよ。

 魔王を倒した七王神のリーダー的存在で、最強冒険者。『イメージ効果理論』の提唱者であり、魔法剣などの三大秘奥を生み出した人物。

 そしてここで新たに判明したのが魔法剣と二刀流を使う剣姫二天流の開祖ときたもんだ。


 ああ、そう言えばトリニティが言ってたな。

 もっとも有名な流派でありながら使い手が殆んどいない幻の流派だって。


「それを俺に教えてくれるって訳か?」


「そうじゃ。その昔、魔王と戦う前のフェンリル様がこの宿を訪れた事があるのじゃ。

 その時ワシはフェンリル様に剣の手解きを受けたことがあってのう。

 剣姫二天流の基礎であるステップと二刀流、そして魔法剣の扱い方を教わったのじゃ」


 ・・・いきなり眉唾な話になってきたな。

 この爺さんがフェンリルに剣を教えてもらったって?

 確かフェンリルって100年も前の人物だよな。

 この爺さんの年齢が100を超えているとすれば決してあり得ない話ではないかもしれない。

 それにこの爺さんの放つ雰囲気(オーラ)がただ者じゃないと俺の武術かとしての勘が告げている。


「何故俺にその剣姫二天流を教えようとするんだ?

 そう言うのは普通もっと才能のある奴に教えようとするんじゃないのか?」


「才能と言う点ではお主もその内に入るかの。

 お主に剣姫二天流を教える理由としてはお主のその足捌きは剣姫二天流に通じるものがあるからじゃ。

 それにお主はその足捌きに剣を覚えようとしているのじゃろう? なればこそ、ワシはその足捌きに二刀流と魔法剣を覚えた剣姫二天流を見てみたいのじゃ」


 うーむ、この爺さんの提案はかなり魅力的だ。

 ついさっきまで我流の限界を見越して出来れば流派を覚えておきたいと思っていたところだ。

 天の采配でまるで狙ったように流派を教えてくれる人物が現れるとは・・・

 しかもそれが最強と言われた幻の剣姫二天流ってのは出来すぎか?


「さぁ、どうじゃ? ワシの教えを受けてみる気はないか?」






◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 AIWOn ケモモフを愛でるスレ232


1:ケモモフ命:2058/2/2(土)6:10:22 ID:km0Nmfm2L

 このスレはケモモフを愛でるスレニャ

 ケモモフ達に迷惑を掛けない紳士淑女の集まるスレニャ

 清く正しいケモモフ生活を心がけるニャ


2:名無しの冒険者:2058/2/2(土)6:11:29 ID:Oy9so9Dth

 ケモモフサイコー!


3:名無しの冒険者:2058/2/2(土)6:12:39 ID:3GAthe3ga3

 ケモモフサイコー!


4:名無しの冒険者:2058/2/2(土)6:13:56 ID:DigiCalat201

 ケモモフは正義!


5:名無しの冒険者:2058/2/2(土)6:14:53 ID:gGa444AsSin

 ケモモフは正義でござる!


6:名無しの冒険者:2058/2/2(土)6:16:09 ID:UcAn9cH3tha

 ケモモフ '`ァ'`ァ (*´Д`*) '`ァ'`ァ


7:名無しの冒険者:2058/2/2(土)6:17:49 ID:100Sho9Zoc

 おまいら気持ちは分かるがもちつけwww


8:ケモモフ命:2058/2/2(土)6:18:22 ID:km0Nmfm2L

 そうだニャ落ち着くニャ

ケモモフケモモフケモモフケモモフケモモフケモモフケモモフケモモフケモモフケモモフケモモフケモモフケモモフケモモフケモモフケモモフケモモフケモモフケモモフケモモフケモモフばかり言ってないで、ケモモフケモモフケモモフケモモフケモモフケモモフケモモフケモモフケモモフケモモフケモモフケモモフケモモフケモモフケモモフケモモフケモモフケモモフケモモフケモモフケモモフを語るニャ!


9:名無しの冒険者:2058/2/2(土)6:20:06 ID:monono6Ono

 >>8 お前が一番落ち着けwww


10:名無しの冒険者:2058/2/2(土)6:21:53 ID:gGa444AsSin

 8のケモモフ好きは相変わらずでござるな


11:名無しの冒険者:2058/2/2(土)6:23:39 ID:Pa9Ma3m3IL

 はぁ~、早く冒険者ランクが上がって獣人王国へ行きたいよ


12:名無しの冒険者:2058/2/2(土)6:24:29 ID:Oy9so9Dth

 うむ、王都エレミアに居るケモモフ達もいいが

 獣人王国だとそこらじゅうケモモフで溢れているだろうな


13:名無しの冒険者:2058/2/2(土)6:25:09 ID:UcAn9cH3tha

  ケモモフ '`ァ'`ァ (*´Д`*) '`ァ'`ァ '`ァ'`ァ (*´Д`*) '`ァ'`ァ


14:名無しの冒険者:2058/2/2(土)6:26:53 ID:gGa444AsSin

 個人的にはバニットを見てみたいでござるな


15:名無しの冒険者:2058/2/2(土)6:28:56 ID:DigiCalat201

 バニットって言うと兎の獣人の?


16:名無しの冒険者:2058/2/2(土)6:29:06 ID:monono6Ono

 なwるwほwどw

 すなわちリアルバニーガールだなwww


17:名無しの冒険者:2058/2/2(土)6:30:49 ID:100Sho9Zoc

 リアルバニーガールwwwwwwwwwwww


18:名無しの冒険者:2058/2/2(土)6:32:39 ID:3GAthe3ga3

 獣人王国って言うとウィーウルフ(狼人)やガルディグ(虎人)なんかの如何にも武闘派っぽい獣人とかが多そうだ


19:ケモモフ命:2058/2/2(土)6:33:22 ID:km0Nmfm2L

 ニャ―――――――――――――!!!!

 ここはケモモフケモモフスレニャ!!!!

 エロモフスレじゃないニャ!!!

 エロモフを語りたければ他スレ行くニャ!!!


20:名無しの冒険者:2058/2/2(土)6:34:39 ID:Pa9Ma3m3IL

 あー、歴戦の強者がいそうだな

 もしかしたら獣人の中にも26の使徒がいるかもな


21:名無しの冒険者:2058/2/2(土)6:35:09 ID:UcAn9cH3tha

  ケモモフ '`ァ'`ァ (*´Д`*) '`ァ'`ァ '`ァ'`ァ (*´Д`*) '`ァ'`ァ' `ァ'`ァ (*´Д`*) '`ァ'`ァ


22:名無しの冒険者:2058/2/2(土)6:36:06 ID:monono6Ono

 サーセン


23:名無しの冒険者:2058/2/2(土)6:36:53 ID:gGa444AsSin

 すまんでござる


24:名無しの冒険者:2058/2/2(土)6:37:56 ID:DigiCalat201

 26の使徒といえば『始まりの使徒』の森にコボルト(犬人)の都市があるって聞いたことがある


25:名無しの冒険者:2058/2/2(土)6:38:29 ID:Oy9so9Dth

 >>24 mjd!?


26:ケモモフ命:2058/2/2(土)6:39:22 ID:km0Nmfm2L

 あそこはケモモフパラダイスニャ


27:名無しの冒険者:2058/2/2(土)6:40:56 ID:DigiCalat201

 『始まりの使徒』やセントラル遺跡に潜る冒険者たちの拠点になってるって

 ケモモフだらけの都市なんだからさぞかし憩いの場になっているんだろうね


28:名無しの冒険者:2058/2/2(土)6:41:39 ID:Pa9Ma3m3IL

 なんだと・・・!?

 くっ・・・! 俺の実力じゃまだセントラル遺跡さえも行けない・・・!


29:名無しの冒険者:2058/2/2(土)6:42:53 ID:gGa444AsSin

 むぅ、獣人王国に行くかコボルト都市に行くか迷うでござるな・・・







次回更新は3/1になります。

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