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婚約破棄モノ

濡れ衣を着せられる前に逃げます!~試し書き~

作者:

ふと夢に出てきた設定で勢いだけで書いちゃいました。

いずれは連載化できればな~と…

いろいろとギュウギュウに詰めてあったり端折ったりしています。


ツッコミ不可でお願いいたします。

「お父様、私、学校をやめようと思います」

お父様の書斎に入るなり告げると、書類にサインをしていたお父様が驚きのあまりインク瓶を倒してしまいました。

「な、なんでだ?」

慌てるお父様を横目に倒れたインク瓶を起し、魔法で汚れた書類をきれいにする。

「……」

「キャリー?」

「私はお母様のオマケ。本当の侯爵令嬢にはなれない」

「キャリー、落ち着きなさい。いったい何があったんだ」

「本日、殿下からお話がありました。婚約は白紙に戻すと…」

「な!?」

「殿下は新しい伴侶候補を自分で見つけられたのです」

「だがお前との婚約は……」

「『今は侯爵令嬢と言われているが、本来は伯爵令嬢のお前では身分が釣り合わない』とおっしゃいました」

「…………なんだと?」

「お母様がお父様と再婚したことで私も侯爵家の一員に迎えられ、私なりにお父様の為にと頑張ってきましたが……。どんなに学校で好成績を修めても、社交界で淑女として振る舞っても……出自は変えられないと大勢の生徒の前で言われました!……これにその時の様子が録画されています。生徒会の方がわざわざ(・・・・)あの場を録画していてくださいました」

虹色に光る玉(魔法で映像を保管している魔導具)を渡すとお父様はすぐに中身を確認して小さくため息をついた。

「すまない。婚約は我が家から破棄しよう」

「お父様!?それはなりません!我が家から破棄するということは王家に楯突くことですのよ!?」

「キャリー、殿下の最近の素行は私も陛下も知っている。陛下は相当頭を抱えているよ。王家と神殿が正式に認めた婚約者を蔑ろにしている殿下に対してね」

くすりと笑うお父様。

「それにね、私はもともとこの婚約には反対だったんだ」

「え?」

「キャリーには侯爵令嬢という肩書を背負合わせて無理をさせているからね、結婚はキャリーが本当に愛している人としてほしいんだ。たとえそれが平民でも他国の人でも構わない。ただし、私が最終審査を……キャリーを本当に幸せにできるか見定めさせてもらうけどね」

おどけてみせるお父様に私はくすりと笑ってしまった。

「キャリーは笑っている方がいいよ。キャリーが心から笑った笑顔は皆を幸せにしてくれる。もっとその笑顔を見ていたいけど……さっそく陛下に婚約破棄の報告してくるよ」

そう言い残して父は王宮直結の魔法門(ゲート)を潜ってしまった。

まだ言いたい事があったのだけど……夕食の時でいいかな?

お母様やお兄様、弟の協力も必要だし……




***


数時間後、憔悴しきった(ヘロヘロになった)お父様が王宮から帰宅しました。

今度は魔法門(ゲート)ではなく馬車でお兄様と一緒に帰宅したのです。

「お父様、お兄様、お帰りなさい」

玄関までお出迎えするとお兄様が私をぎゅっと抱きしめました。

ん?

なんで抱きしめられるのでしょうか?

「お兄様?どうなさったのですか?お兄様のオーラが真っ赤になっていましてよ?」

実は私、他人の感情が高ぶっている時に発するオーラが見えたりするんです。

本来この力は王族の血筋に出るそうなのですが(それでも数百年に一度の割合)なぜか、私に現れちゃったんですよね。

この力の事を知った神官長様に見てもらいましたが本物であると認められています。

心が清らかな人ほど綺麗な色なので見ていて楽しいです。

嬉しい・楽しい時は明るく暖かい色(暖色系)、悲しんでいる時は寒々しい色(寒色系)など感情のオーラが全身を包み込みます。

怒っている方は炎のように赤く、激怒していると青白く火花を飛ばす方もいます。

喜怒哀楽によって変わるのですが、喜・楽は区別がつかないんですよね。

感情の度合いによって色の濃さが変わるので見ていて面白いですけど、普段は常に身に着けているブレスレットに魔力を込めて他人のオーラを直にその方に触れない限り見えないようにしています。



この力のことは家族と国王陛下と神官長様しか知りません(たぶん)。

この力を悪用されないようにする為だそうです。

どうやって悪用するのか想像できませんが……

ただオーラが見えるだけですのに……

生まれた時からある力ではないので一時的なモノかも知れないという判断です。

私がこの力に気づいたのはお母様がお父様と再婚すると話した時でした。

ピンク色のモヤがお母様の全身を包み込んでいたのです。

そのときは気のせいかな?と思っていたのですがお父様を紹介された時、二人を包むピンクのモヤが見えて思わず

「お母様は侯爵様のことが本当に好きなんですね。そして侯爵様もお母様を心底愛していらっしゃる…二人を包むモヤ…オーラがピンク色ですわ」

と言ってしまった。

私の言葉を聞いたお父様は驚いてすぐに私を神殿に連れて行きました。

王家管轄の……一介の貴族が入れない中央神殿の神官長様の前まで連れて行かれました。

神官長様からの質問に正直に答えていくと神官長様から笑顔が消えました。

あの時は怖かったです。

ずっとニコニコしていた神官長様が質問を重ねるごとに笑顔を消していったのですから……


神官長様からはこの力の事は絶対に秘密にすることを誓約させられました。

別にべらべらと話すつもりありませんけど、いろいろと脅されました(反王政派に誘拐されいいように利用されるなど…)ので大人しく誓約しました。



それと、私とお兄様とは血のつながりはありません。

お兄様・クリストファー(20歳)はお父様の連れ子。

私(15歳)はお母様の連れ子。

弟・レイモンド(10歳)はお父様とお母様の間の子です。

お父様とお母様が再婚されたのは11年前…私が4歳の時でした。

最初はぎくしゃくしていましたが、私がちょっとへまをして大怪我をしたら大変過保護な兄と父になりました。

お母様は『私の娘ですから簡単には死にませんよ。でも、キャリー。お父様とお兄様を心配させたのですからしばらくは大人しくしていなさい』と言われ、外で遊ぶことを禁止しされ徹底的に淑女教育を施されました。

お母様にとってあの時が私を大人しくさせる為の絶好のチャンスだったみたいです。



「これが怒らずにいられるか!」

お兄様とお父様はいったん自室に戻られてラフな格好に着替えてから食堂に集まりました。

「クリス兄上、一体王宮で何があったのですか?父上は真っ白になって使い物にならないし、クリス兄上は怒ってばかり……僕にもわかる様に話してください」

弟のレイに諌められてお兄様は食後のコーヒーを飲みながらお話してくださいました。

お父様が国王陛下に私の婚約破棄の話を持ち出した時、たまたま(・・・・)王太子様と護衛役のお兄様もご一緒だったそうです。

お父様が婚約破棄の理由に私が生徒会から渡された例の映像を見せたところお兄様が激怒して備品を少し壊してしまったとか。

王太子殿下も映像を見ながら薄らと黒い笑みを浮かべ『バカな弟め』と呟き、国王陛下は顔面蒼白になって『あいつには再教育が必要だ』と嘆いていたとか……

「婚約白紙の話はいったん保留」

「クリス兄上…それではわかりません」

「当分の間キャリーはまだあのバカ殿下の婚約者でいなければならないということだ」

「父上とクリス兄上は何としても白紙にしたかったけど王家側が保留に話を持ち込んだってことですか?」

「そういうことだ」

「父上が真っ白なのはいつものように上手く陛下を誘導できなかった事にショックを受けての事ですね」

「そんなわけあるか!あの腹黒王太子が傍にいたらいくら父さんでも誘導は無理だ。あの腹黒王太子に敵う人物などいない!寧ろうちから婚約破棄した場合の厄介な申し出が父さんに衝撃を与えたんだろう」

「一体、何を話されたのです?」

「今はまだ秘密。ある程度落ち着いてからじゃないと混乱を招きかねない…というか話を進められない」

「……当然姉上に関する事ですよね」

「当たり前だ。父さんがあんなふうになるのは義母(かあ)さんとキャリーに関する事だけだからな」

深くため息をついて頭を抱えるお兄様。

「…って、姉上!なにのんびりコーヒーを飲んでいるんですか!姉上自身の事ですよ!?」

あら、のんびりとお兄様とレイの会話を聞いていた私に矛先が向きましたね。

「お兄様の話を聞いていたら殿下との婚約を破棄しても次の婚約者が待ち構えている気がするのよね」

「な、なんでそう思うんだ!?」

思いっきり挙動不審になるお兄様。

「お父様をあんな状態にしたということは第二王子殿下よりもさらに厄介な人が待ち構えているのでは?」

「…………」

沈黙するお兄様にある程度の候補が絞れました。

が、あえてここは流しましょう。

「それよりもお兄様とレイに協力してほしい事があるんだけど……」

「キャリー?」

「姉上?」

「あと、お父様とお母様にも……」

少し離れたところで私たちの会話を聞いていたお父様とお母様も近くに移動してきました。

いつの間にかお父様は復活されていました。

きっとお母様に慰めてもらったのでしょう。

お父様はお母様に慰めてもらうと瞬時に復活しますからね。

逆にお母様に冷たくされると再起不能になるから困ったものです。

「お父様」

「ん?」

「伯爵家って王家との婚姻ってできないんでしたっけ?」

「いや、子爵、男爵は無理だが、伯爵以上の令嬢ならだれでも妃に立てる。よっぽどの事がない限りはな」

「わかりました。今後の事についてお父様たちに協力してほしいのです」

「一体、何をやらかそうというのかしら。私達のキャリーは」

ため息をつきながらもどこかワクワクしているお母様。

「セシルが私に予言をしました」

「セシルってあのセシル・アイゲン子爵令嬢か?占い・予言ほぼ100%の?」

セシル・アイゲンは私の初等部時代からの友人で彼女の占いは外れることが少ないので信憑性が高いです。

「ええ、彼女があのバカ騒ぎ(殿下の婚約破棄宣言)の後しばらくして預言したのです。『このまま何もせずにいたらキャロライン様は無実の罪を着せられてよくて国外追放、最悪の場合処刑される』と」

この予言騒動を思えば、殿下の婚約破棄宣言騒動はかわいいモノでしたわ。

あの後、学校中が私に関する話題で授業中どころではありませんでしたもの。

あ、殿下と殿下の意中の方とその取り巻き達は授業を『公務を行う』という嘘で堂々とさぼって城下町に遊びに行っていたのでこの騒ぎは知りません。

知った所で何もしない…いや出来ないでしょうね。

下手に今動いたら自分たちの首を絞めかねないですから……もちろんそのことに気付いていればの話ですけど。

ちなみにサボリについては風紀委員から教師に教師から各家庭に瞬時に確認・報告されました。

「……で、キャリーはどうしたいの?」

「セシルの予言の『このまま何もせずに…』ということは何かしら行動を起こせばセシルの予言は回避できるということです。なので、学校を自主退学してフォレスト王国に留学しようと思います。濡れ衣を着せられる前に国外に出ちゃおうかなと……」

「……なるほどね、キャリーは巻き込まれる前に渦の外に出ようってわけね」

「お母様は理解が早いですわね」

「ふふ、実はフォレスト王国の知り合いからキャリーの魔術論文を読んだお偉い先生方が是非に会いたいと言っているから会いに来てくれないかと打診されていたからどうしようと思っていたけど、ちょうどいいわね」

にっこりと微笑むお母様ですが、口元はにやりと意地の悪い笑みが浮かんでおりました。

「あなた、さっそくキャリーの留学届を学校に提出してください」

「留学届?母上、退学ではなく留学なんですか?」

レイが首をかしげながらお母様に視線を送るとお母様は小さく頷いて

「いきなり退学では要らぬ憶測が飛び交うでしょ?しばらく殿下たちの様子を見る為に留学扱いにして、時期を見て自主退学でいいんじゃないかしら?」

コーヒーを一口飲んだお母様はそれはそれは美しい笑顔を浮かべた。

お母様が美しい笑顔を浮かべる時は要注意です。

いつ暴走し出すかわかったもんじゃありません。

お父様でも止めることが出来ません。

唯一止めることが出来るのは……隣国にいる伯父様しかおりませんからなるべくこの笑みを浮かべさせない様にしていたのですが……今回は多分伯父様も一緒になって暴走しそうな予感がします。

「第二王子には自分が逃がした魚がどれほど大物だったか後で思い知るといいのですわ!」

実際には高笑いはしておりませんが、きっとお母様の内心は『おほほほ~!思い知るがいいわ!』と高笑いしていることでしょう。


その後、なぜかお母様主体で今後の事が決定しました。

あ、もちろん私の意思を優先してくださいました。


お母様の計画は実に簡単。

『娘が婚約者である殿下にひどい仕打ちをされ落ち込んでいるため気分転換を兼ねてフォレスト王国に1~2か月ほどの短期留学させる』とお母様とお父様が社交界で流す。

お兄様とレイも周囲に私の留学理由を

『妹(姉)が一方的に婚約破棄宣言され、傷心している。殿下の為にと幼い頃から我儘も言わずに殿下に釣り合おうと頑張っていただけに見ている私たちも辛くてね……母の実家に相談したら気分転換になるだろうからとしばらくフォレスト王国に行かせることにしたんだよ』

と周囲の者達にどれだけ妹(姉)の心が深く傷つけられたかを印象つけて少しずつ第二王子殿下への不満感を募らせておく。

すでに婚約者を蔑にして、別の女性といちゃついている時点で殿下への評価は急降下中ですけどね。


第二王子とファルディア侯爵令嬢の婚約は10年前、第二王子が熱望したため結ばれたというのが社交界での認識である。

その頃、ファルディア侯爵令嬢には別の婚約者候補(しかも幼いながらも相思相愛)がいたがその者を押しのけての婚約だったため、一時期話題になったほどである。


留学の話が出てから社交界で会う人全員に『ガンバレ』とか『殿下を逆に振っちゃいなさい』と声を掛けられるようになりました。

殿下の評価はどこまで落ちるのかしら……


その後、留学先のフォレスト王国の王立研究所(学校)での研究が楽しくフォレスト王国に長期滞在することを申し出る。

フォレスト王国は魔術の国と言われるほど魔術に関する書物も多いし実験環境も整っているのできっと私も気に入るだろうとお母様が太鼓判を押しております。

話を聞くだけでワクワクしている私にお父様が『たまには帰ってきておくれよ。行きっぱなしはイヤだぞ』と呟いておりました。

長期滞在(又は移住)の手続きの為に一度帰国し、王立学校に退学届を提出。

この時に正式に王家側からの(・・・・・・)申し出で婚約破棄の手続きを行う。


といった感じでしょうか。

王家側からの申し出というのは苦労しそうですが、いろいろと証拠もあるみたいなので大丈夫でしょう。

まあ、行き当たりばったり感はありますが臨機応変にやることにしましょう。


留学先のフォレスト王国は諸手を上げて私を歓迎してくれるそうです。

そんなに私の論文が気に入ったのでしょうか?

そう呟いたらお母様が苦笑しながら

「違うわよ。あなたの論文はあくまでも口実。あなたの伯父様方があなたを構いたくて仕方がないのよ」

と、伯父様達からの手紙を広げながら教えてくれました。

留学期間中はその方たちが私の面倒を見てくださるそうです。


殿下の婚約破棄宣言の翌日から学校を休んでいた私でしたが留学手続きの為に学校を訪れると社交の場では会えないクラスメートに囲まれました。

お父様たちが流した話の確認でしょうか、朝から引っ切り無しに声を掛けられ留学することをお話しました。

その時、ちょっと伏し目がちに寂しそうに言うことは忘れずに……(要は殿下の為さり様に傷ついているという雰囲気を醸し出して……)

そして手続きを終えて帰宅する時、セシルにまた予言されました。

「新たな地で、再び出会う者との運命の輪が回り始める」

その予言を一緒に聞いていたクラスメートたちに『絶対に幸せを掴んで下さいね』と励まされました。

なぜでしょう……


***


その後、お母様の計画は順調に消化されました。

お母様のいうとおりフォレスト王国は私にとっては夢のような国でした。

大好きな『魔術』の研究をどれだけしても怒られない!

第二王子の婚約者ということで好きなことを制限されていたあの10年間を取り戻すべく私は魔術の研究にのめり込んでしまいました。

当初の予定の2か月が過ぎ、半年もフォレスト王国に滞在しておりました。

『一生この国で暮らしたい!』と伯父様に世間話程度に話したら嬉々として手続きを始めてしまい慌てて止めました。

まだ第二王子との婚約破棄が正式に決まっていないうちに戸籍を国外に移すことはできないからです。

婚約破棄が成立したらフォレスト王国に戸籍を移すことはお父様に了承を得ているのでそれまで伯父様には待ってもらうことにしました。


「キャロライン、本当に大丈夫か?」

婚約破棄の手続きの為に一旦サンザイルに帰国する私に伯父様が心配そうに顔を覗き込んできます。

「はい、サンザイルでの手続きはほぼ終わっているそうです。あとは私が帰国して婚約破棄の書類に署名すればまた戻ってこれます」

にっこりと微笑むと伯父様は難しい顔をして一人の騎士を私に付けてくださいました。

「彼は私が信頼している騎士の一人だ。もし、サンザイルで手こずることがあったら彼を頼るといい」

「……伯父様。彼を私の相手に…って考えています?」

「…………」

伯父様が紹介してくださった騎士は私がフォレスト王国に来てからずっとそばで守ってくださっている方でした。

彼・ディートヘルム様は魔術に長けているのですが御実家の関係で騎士として勤めております。

今では魔術騎士(魔術師と騎士を兼任)として唯一の地位を確保しております。

彼の知識は魔術だけではなく色々な事に精通しており、話していて飽きが来ません。

実は、彼は幼い頃にサンザイル国で過ごしたことがあり、私の初恋の人でもあります。

淡い初恋はサンザイル国の第二王子の婚約者に内定した時に終わりました。

幼い頃に諦めた想いが再熱するのにそう時間は掛かりませんでした。

幼かった頃よりも凛々しく、そして逞しくなり、それなりの地位にいる彼は大変もてます。

彼のファンから何度やっかみを受けた事か……

しかし、私はまだサンザイル国第二王子の婚約者という立場なのでこの想いは私の胸の内に秘めておこうと思っています。

それに彼には恋焦がれている愛しい方がいるらしいですし……



サンザイル国の実家に帰るとお父様とお兄様に締め殺されるかと思うほどに抱きしめられました。

魔力制御のブレスレットを外していた為、お父様とお兄様の歓喜のオーラで目がチカチカします。

お父様やお兄様程ではないですが、お母様やレオ、使用人の皆様からも喜びのオーラが溢れていました。

「長らく留守にして申し訳ありません。ただいま戻りました」

私が挨拶すると全員から「おかえりなさい(ませ)」と返事がきました。

ディートヘルム様は一瞬驚いておりましたが、優しい笑顔を浮かべていました。

「ん?ディー?お前はディートヘルムか!?」

私の後ろの控えていたディートヘルム様に気付いたお兄様がじーっと見つめておいでです。

「はい、お久しぶりでございます。クリストファー様」

「そうか!キャリーの……ってお前だったのか!うんうん、お前なら任せられるな」

なにやらお兄様とディートヘルム様は親しい仲のようです。


その後、私は王立学校への自主退学手続きと第二王子殿下との婚約破棄の手続きにとあわただしい日々を送ることになりました。

ある程度は事前に手回ししていたおかげで、退学手続きも婚約破棄もなんとかなりました。

婚約破棄の手続きがすべて終わった後に

「この瞬間をもって、フォレスト王国姪姫・キャロライン様とサンザイル国第二王子ディオン・サンザイル殿下との婚約は無効といたします」

という神官長様の言葉に殿下が目を大きく見開いていたのは見物でしたね。

どうやら殿下はご存じなかったみたいです。

私がフォレスト王国の現国王の姪であることを。

お母様がフォレスト王国の王女…今は王妹殿下であることを。

普通婚約する時に調べるのにね。

陛下と王太子殿下はご存じだったみたいですが敢えて第二王子には伝えなかったみたいですね。

それにしても社交界では知らぬ者がいないほど有名な話なのに……

フォレスト王国の先の王位継承権争いに巻き込まれる前にお母様達がサンザイル国に身を潜めていた話は……

小説にもなって男女共にかなり人気があるので殿下もご存知かと思っておりましたわ。

「ディオン殿下、これからはターニャ・ムーリ男爵令嬢とお幸せに……男爵令嬢と婚姻を結ばれるために王位継承権を放棄してまでその愛を貫くとは素敵ですわ。私も早く殿下のように身分を捨ててでも私だけを愛してくださる方にお会いしたいですわ」

にっこり微笑んでその場を立ち去った私は知らなかったが、婚約白紙を撤回しようと躍起になった殿下がいたとかいないとか……

婚約破棄の書類に署名する時に『二度と復縁は出来ませんがよろしいですか?』と神官長様が念押ししましたのにね。


さて、私は少し親孝行をしたらフォレスト王国に戻ることにしましょう。


新しい出会い、新しい恋も経験したいです。


ただ、このオーラが見える力がある限り面倒事が起こりそうですが……

内緒にしておけば大丈夫ですよね?



しかし、水面下で恐ろしい事が進められているとをこの時はすっかり忘れていました。

第二王子殿下との婚約を破棄した後に訪れるであろう厄介な人物との婚約話の事を……


さて、どうやって厄介な人物から逃げましょう。

私はあの方だけには嫁ぎたくありません!

腹黒王太子殿下の妃なんて絶対いやーーーーーーーーー!

だってあの人……私のオーラが見える力が欲しいだけなんですもの!


絶対に逃げ切ってみせます!


~人物紹介&裏設定~

キャロライン・ファルディア(愛称:キャリー)

 ファルディア家の長女(養女)15歳

 プラチナブロンドの髪

 ルビーのような赤い瞳

 背は女性平均より少々高い(地味にコンプレックス)

 普段は吊目が災いして冷たいイメージを持たれる。

 あまり見せない笑顔を見た者は一発で落ちるほどにギャップがある。

 母親の再婚によりファルディア侯爵家の娘となる

 義父に嫌われないようにと小さい頃(4歳)から勉学・ダンス・刺繍・乗馬など一生懸命こなす。

 侯爵家に引っ越して暫くした頃、乗馬の練習中に調子に乗って馬場を駆け巡っていた時落馬し大怪我を負う。

 魔法の能力も高く、上級魔法も呪文無しで出来る。

 両親の再婚の際に人のオーラが見えるようになった。

 その力の事は家族と国王陛下と神官長しか知らない…はず。


エドモンド・ファルディア(通称:エド)

 ファルディア侯爵家当主

 キャリーの義父

 キャリーを実の娘のように溺愛

 元近衛騎士団長


クリストファー・ファルディア(通称:クリス)

 ファルディア家次期当主 20歳

 キャリーの義兄

 近衛騎士所属・王太子の護衛

 公私共に認める妹バカ(シスコン)


レイモンド:ファルディア(通称:レイ)

 ファルディア家次男 10歳

 キャリーの父親違いの弟

 王立学校初等科に通っている

 姉上大好きと公言しクリス同様姉バカ(シスコン)

 クリスとキャリーの取合いをして父親に横取りされていることは社交界では有名な話


クローディア・ファルディア

 キャリーの母親

 前夫を事故で無くし、細々と暮らしていたところをエドに見初められた

 隣国のフォレスト王国出身

 フォレスト王国国王の実妹

 先の後継者争いの時に密かに兄によって夫のガイルと共に隣国に逃がされていた

 争いが終わった後、帰国するよう再三兄王から話があったかサンザイル国に残り二国の架け橋となる。

 平民として暮らしていたが、サンザイル国王に見つかりすったもんだの末、夫の功績により伯爵領が下賜された。


ガイル・ルシフォード

 キャリーの実父

 フォレスト王国の公爵家出身

 先の後継者争いの時に当時の皇太子に懇願され、渋るクローディアを連れて隣国のサンザイル国に身を顰める

 平民として暮らしていたが、領主の無能さに呆れて勝手に改革を押し進めた

 (もともと公爵家の次男で兄と共に領主としての教育も受けていた為、無理なく改革を推し進めた)

 『影の領主様』と領民に慕われていた。

 領主が病気で亡くなる前にサンザイル国王にその存在がばれ、領主の後継者となり伯爵領をそのまま受け継いでしまった。

 キャリーが1歳の誕生日を迎える頃、王都からの帰還途中の馬車事故に巻き込まれ死亡


セシル・アイゲン

 アイゲン子爵令嬢 15歳

 キャリーの友人

 占いが得意

 ほぼ的中率100%なので彼女の占い・予言は重宝されている

 初等部時代、陰険・根暗とイジメにあっていた所をキャリーに助けられる

 キャリーが彼女の占いや予言の力は素晴らしいものだと褒め、時々占ってあげていた所を見ていた他のクラスメートたちも彼女の占いを通して徐々に親しくなっていく。

 特に恋占いは100%だったので女子からは絶大な信頼を得るようになる。


セシリオ・サンザイル

 サンザイル国王太子 18歳

 クリスの妹自慢のおかげでかなりのキャリー通になった人

 実際にキャリーと出会ってクリスの話が嘘でない事を知るとキャリーに興味を持つ

 興味が何時しか恋愛感情に発展したが時遅く、キャリーは第二王子の婚約者に内定していた。

 第二王子の失脚を虎視眈々と狙って情報集めに余念がない。

 キャリーを手に入れる為なら何でもやろうと思っている。


ディオン・サンザイル

 サンザイル国第二王子 15歳

 キャリーの一応の婚約者

 10年前キャリーと引合された時に一目惚れ

 だが恥ずかしさから思っていることとは逆の事を口にしてしまう。

 その積み重ねでキャリーからは避けられている。

 深くなった溝をどのように埋めればいいのかと悩んでいる時にターニャ・ムーリ男爵令嬢に付け込まれ落ちる

 キャリーとの婚約破棄後、王位継承権を剥奪されるが公爵位を賜る。

※婚約破棄後の処遇については連載化の際には変更いたします。うん、これ罰になってないモノね……(多数のご指摘ありがとうございます)


ターニャ・ムーリ

 男爵令嬢

 ディオンを言葉巧みに誘惑し落した女性

 玉の輿に乗る(王族の妃になる)つもりだったが、ディオンが王位継承権を剥奪されたため目論見が外れるが、転んでもただでは起きない。

 公爵妃としての生活を確保するため、態度が冷たくなったディオンに縋り付く。


ディートヘルム・ハインミュラー

 フォレスト王国の魔術騎士 23歳

 ハインミュラー公爵家の長男

 幼い頃、身分を隠して国が荒れていたフォレスト王国からクローディア経由でサンザイル国に預けられていた

 キャリーの遊び相手兼婚約者候補。

 キャリーの初恋相手であり、ディートヘルムにとってもキャリーが初恋の人である。

 クリストファーとは親友と呼べるほどに仲が良い

 キャリーとディオンの婚約破棄前から、フォレスト国王とエドモンドとクローディアにキャリーとの婚約を申し込んでいたりする。

 用意周到にキャリーが逃げれない状況に追い込もうとしていたりする。


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