幼稚園3
結局一番に見つかってしまったようなので、ユリウスくんと一緒に鬼をすることにしました。
え、鬼が二人?
気にしてはいけません。
ユリウスくんは私と手をつないだままなので、無理やりにひっぱられて連れまわされています。
無理に振りほどかないのは、きっと育ちがいいからなのではないでしょうか。
最初は緊張してかたくなっていたようですが、だんだんと慣れてきたのか、一緒に探してくれるようになりました。
というか、私よりよほど繊細なようで、見つけるのが上手です。
「さら、あそこ」
指摘されたところに一緒に走って行ってつかまえていきます。
「「みーつけた」」
一緒に声も出してくれるようになりました。
ニコッて笑う笑顔がマジに天使です。
かーわーいーいー。
青い目がキラキラっとしてて、やっぱり子供は笑っているほうがいいですね。
二人でニコニコ笑っていると何か気配が・・・。
「さらの浮気者」
後ろからなぜか冷気が漂ってきた気がして振り向くと亮くんがいました。
げっ。
「僕をほっておいて手なんかつないで・・・・」
上目遣いににらんできます。
うーん、ぴんち。
「手をはなして」
焼き餅でしょうか。可愛いんですが、めんどくさいんですよね。
てことで、とりあえず手を放そうとしたらユリウス君がきゅっと手を握ってきました。
「やだ」
きゅん。
ちょっと涙目に威嚇するのが子犬みたいです。可愛いです。
可愛らしさにきゅんきゅんしていたら、亮くんが堪えきれないように叫びました。
「しょーぶだ!」
ん?勝負?
さすが男の子だね。大人になったら幼稚園のときに男の子に取り合いされたことあるんだよーなんて語っちゃったりして。ほほえましいなぁ。
どうせ幼稚園特有の小さい恋の物語みたいだしと、まったりした気持ちで見守っていたら、急になんかしゃべりだした。
「Can you speak English?(英語はできるのか?)」
「sure」
これは聞き取れた。さすがに過去に中高と6年も習ったからね。
そっからが早口すぎて聞き取りきれない・・・。
どうやら英語じゃないっぽい。フランス語やドイツ語や聞いたことないような言葉にまでチャレンジしているようで・・・。
ちゅうか、ふつう幼稚園で勝負っていったらもっと微笑ましい勝負でしょう・・・。
なんだか呆れた気持ちになりながら、見ていたら、いつの間にか体力勝負にうつっていたみたい。
二人でドッチボールもどきをしています。
当てて受け取れなかったら負けだそうで・・・。君たち5歳児が投げる球とは思えませんよ・・・。
運動神経が発達している亮くんの圧勝かと思いきや、ユリウス君もなかなかのもので、どんどん白熱していく。周りもどんどんギャラリーが集まってきて、二人を必死に応援しています。
「りょうくん、がんばれー」
「ユリウスくん、がんばれーーー」
君たち人気ものだね。
そうこうしているうちに、亮くんがボールを取り逃がしたみたいで、落としてしまったようです。
「くそー、もう一回」
そういって投げる。
ユリウスくんが落としてしまったときにも、
「ユリウス、はやく拾ってきて。もう一回」
亮くんも、ユリウスくんも段々楽しくなってきたみたいで、なんではじめたのか忘れたように楽しくキャッチボール・・というには勢いがありすぎるみたいだが・・・をしている。
私も座ってギャラリーにまじる。
「二人ともがんばれー」
いやぁ、いいお友達ができてよかったね。