幼稚園2
かくれぼをするからには見つからない場所を探したい。
ということで、少しだけ背の高い草むらのなかを進んでいっております。
ガサガサガサ
自分の背より大きいので、動くたびに揺れます。10数えるより前に隠れなければ、一番に見つかってしまうでしょう。
ガサッ
大きく掻き分けたら、目の前に物体エックスが・・・。
もとい、ふわふわの栗毛の髪をした青い目の天使が泣き腫らした顔でこちらをびっくり見つめていました。
びっくりしてこちらも体が動きません。
思わず目と目をあわせて向かい合ったまま、固まってしまいました。
しかし、このまま固まっているわけにもいきませんよね。
えーと、たしかこの子はユリ組に最近入った噂のユリウスくんではないでしょうか。
確かドイツあたりから来たんだよね。
あまりに綺麗なのでみんな遠巻きにしているとか・・・。
そこまで考えたところで、天使が泣いている理由が分かったような気がしました。
幼稚園児に、この美貌を前に最初から普通に接しろというのも無理な話で、クラスにまだなじめてないんじゃないでしょうか。異国に来て、さらに仲良しもいないクラスにいるのはキツそうです。
と、とりあえず、困ったときには愛想笑いです。
そーれ、
ニコッ
おっと、びっくりされました。
こんな小さい子が泣いているのは可哀想です。
しかし、こんなに警戒されていては逃げられてしまいそう。
こんな時には餌付けでもしてみましょうか。
そっとポケットに隠しているお菓子を出します。
いつも隠れてこっそり食べているとっておきのだけど、しょうがない。
「クッキー半分あげる」
えぇ、でも半分は私のです。
半分手に握らせて、座り込んでハムハム食べる。
ふぅーうまー。
お隣さんからもらったクッキーだけあって、めっちゃ美味しい。
大事に1枚づつ包装して、こっそりポケットに隠し持っている品だけあります。
天使君も、きょとんとしていたけれど、私が食べているのをみて一口食べたようです。
「おいしい」
呟いて、食べていきます。食べると泣き止むんだよね。さすがちっちゃい子。
私も小っちゃいんだけど、まぁ精神年齢が高いから、どうしても同じ年という感覚がありません。
全部食べたところで口止めをしてみました。
「クッキー食べたの内緒だからね」
「うん」
落ち着いてうなずいてくれたのを見て、さて、どうしたものでしょう。
世話焼きな気持ちがムクムクと湧いてきました。
「いっしょに、あそぼ」
無理やり手をひっぱって藪を出て行ってしまいました。
「さらちゃん、みつけたーー」
そういえば、かくれんぼしてたんでしたっけ。
しまった、みつかっちゃった。