理事長に直訴だぞ
水月沙良、作戦会議からさらに1週間が経過しました。
その間に図書館に通い、説得できるだろう情報を集め、やっとこさ理事長室です。
あんな風にわがままを言ったのに、みんなは私に危険がないように気を配ってくれました。
そんな優しい気持ちを感じつつも、どうしても止まれずにここまで来てしまいました。
トントントン
ドキドキしながらもノックをします。
「どうぞ」
「失礼します。小学校過程4年生の水月沙良です」
中に入ると太ったおじさんの理事長が椅子に座って、こちらを見て驚いていました。
部屋の中はキンキラキンで金色にゴテゴテ装飾がされていて、悪趣味な成金風で、見ていて気分が悪くなりそうでした。
「おや、小さいお客さんだね。何の用かな?」
「お願いがあって来ました。お話しを聞いていただけませんか?」
「ここはね、大事な用のある人だけが入れるんですよ。大人の仕事の邪魔をしてはいけませんよ」
そう言って追い出されそうになったのをなんとか部屋の中に滑り込んで、話をはじめてしまいました。
「大事な用なんです。小学校ではいじめが起きています。お金がない子が馬鹿にされていじめられています。助けてもらえませんか?」
必死に言い募ります。
「小学生が親のお金がないからと馬鹿にされるのは可笑しいと思います。たとえそれが綺麗ごとだったとしても、掲げるべきものを掲げていないから余計悪くなっていってるんだと思います。助けてください。お願いします」
理事長は自分の腕を重そうにあごにあて、ふぅむとうなった後、聞いてきました。
「それで、水月さんは誰かに言われてここに来たのかな?たしか、君には仲のいいお友達がいたよね」
「いいえ、自分ひとりの考えできました。こうしたらいいと思う改善案を持ってきています。これを読んで見ていただけませんか?」
一生懸命徹夜して、自分なりに改善、見やすくまとめたレポートを渡します。
「そう。君1人の意見なの」
そういうと、レポートをぱさっと机になげて、にっこり笑って言いました。
「じゃあ、読ませてもらおうね。でも私は今は忙しいんだよ。前向きに検討するから、出ていってもらってもいいかな?」
「ちゃんと読んでもらえますか?適当に追い出して忘れないですか?」
そう言うとむっとしたような表情で怒った声をだしてきました。
「君は失礼な子だね。そんな台詞を言うなんて、担任を叱っておこう」
「やめてください。失礼なことを言ってすみませんでした」
「うん。わかればいいんだよ。今のは冗談だからね」
また気持ちの悪い笑みを浮かべて、理事長室のドアは閉められてしまいます。
私はどうしようもない無力感を感じつつ、ドアの前に立ちすくんでしまいました。




