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作戦会議

ドキドキして読んでいただいている方が多いようで、ありがとうございます。みなさんの心臓に優しく、きりのいいところくらいまで書き溜めつつ投下しようかなと考え中です。とりあえず、試しの3話追加です。




みんなの心配そうな視線を受けながら、過保護なくらい側にいてくれるのも感じつつ、なかなか気持がまとまらなくて。

なんとか自分なりの結論がでたときには腫れていた頬は薄く赤紫色が残るだけになってしまっていました。


「相談があるの」


その言葉にみんな、ほっとしたような顔で微笑んでくれて、その日のうちに、ユリウス君のお家に集合させていただくことになりました。

都さん、麗子さんも来て下さるそうで、ありがたいことです。


「小娘、その頬はどうしたの?ますます不細工になってしまっているじゃない!」


開口一番に、驚いた声をあげたアーデルさんは、その辺をうろうろと周り、氷を用意するように言った後、都さんと麗子さんに止められていました。


アーデルさん・・・お気持は嬉しいのですが冷やす時期はすぎました・・・。


とりあえず、お茶を頂きつつ、意を決して話はじめます。


「小学校を変えたいんです。いじめを無くすよう支配したい。協力してもらえませんか?」


とりあえず、現在の私の状況。影からのいじめを無くすことができない現状。いじめられた子を助けたときに言われた言葉。そして、私の望み。


しかし、その話を聞いたみんなは一様に眉をひそめ、考え込んでしまいました。


「小娘、助けられた人間にそんなブサイクにされて、報復もしないで、馬鹿だとは思っていたけれど、本当に馬鹿すぎるわ」


ワナワナとハンカチを握り締めながら、アーデルさんがまず、耐え切れないように叫ぶように言いました。


「戦えないものは脱落していくのよ。戦いたくないことを前面にだすのは弱みをさらけだすようなものですよ」


「はい」


涙目になりかけているアーデルさんに、できるだけ真摯な言葉で返事をかえす。


「前面に出すつもりはありませんが、困難な道を歩こうとしている自覚はあります」


小娘のくせに、と悔しそうに呟いて口をつぐんでしまいました。


そこで、京ちゃんが口を開きます。


「私たちが協力しないって言ったら?」


「きっと、失敗するかな」


そのときは残念ですが、失敗してしまうでしょう。

この計画を作ることができたのも、みんなの影響力や力があるからです。

私だけの力で思いつく計画はもっと小さくて、どうしようもない悪手になるでしょう。


それでも、きっと、私は試してみるでしょうけど・・・。


そんな風に言ったら、私を見捨てきれないだろうみんなの気持ちも分かった上での発言です。


「だから、どうか力を貸して欲しいの」


そして、すがるのです。目的達成のために・・・。

そんな気持ちでみんなをみていると、いままでじっと黙っていた都さんが口を開きました。


「沙良ちゃんは、いじめられていた彼女は感謝されて、好かれたいの?」


落ち着いた声で聞いてくるその顔は真剣です。

京ちゃんに似た長いストレートの黒髪の毛先をもてあそびながらも、切れ長の目の奥には深謀遠慮がはりめぐらされているかのようです。


「そうなれば、いいんでしょうが・・・」


思わずため息をついてしまいます。


「あら、いじめを無くしたら彼女は助かるんでしょう?」


にっこり笑う麗子さん。都さんと違い彼女の髪はくるくるパーマで回っています。


「たぶん・・・さらに、憎まれるんじゃないでしょうか」


じっと見つめてくる2人からの視線に向き合います。


「なぜ、もっとはやく助けなかったのか。なぜ、同じ立場の私が助けるのか。なぜ、自分ができなかったことをやってしまうのか・・・」


ほうっとため息をつく2人に、申し訳なく思います。


「でも、違うんです。感謝されたいんじゃなくて、自己満足のためというのが一番近いと思います」


「たとえ、傷ついても?」


茜ちゃん、ごめんね。心配かけて。


「うん。たとえ傷ついても。みんなも傷つくかもしれない。一緒に危ない目にあってほしい」


ひどい言葉だと思います。

でも、協力を頼む以上の真実です。私はみんなに危険な橋を一緒にわたってほしいとお願いしているのです。


重い、重い沈黙が場を支配します。

それでも、私は私がうつむくことを自分に許せません。じっと言葉を待ちます。


「俺は父様に言って、沙良を転校させることもできるんだよ」


今まで黙っていた亮君が声を出します。

そうですね。私は援助を受けて小学校に通わせていただいている身です。

亮君のお父様次第で、転校を余儀なくさせられるでしょう。


「それでも、どうか、やらせてほしいの。わがままを聞いて欲しい」


できるかぎりの説得をして、どうしても転校させられるとなれば、私はしょうがないかと思うかもしれません。亮君の優しさを感じつつも、ただ、ひたすら懇願を繰り返しました。


「ねえ」


それまで、黙っていたユリウス君が話します。


「このノートに書いてあるうちの4と5と6を直訴してみたらいいんじゃない?」


えーと、確か4はクラス別大縄跳び大会の開催と、5が無遅刻無欠席の表彰、6が縦割り教育の実施だったはずです。

クラスの結束力をあげるのに大縄跳びを利用し、無遅刻無欠席を一番価値ある賞とすることで、どんな人間でも努力すると報われることを体感してもらい、美術や音楽などで、たとえば2年と3年などを合同にして授業することで世界を広げようという作戦です。


縦割り教育などまだどこでも実施していないこの時代にどこまで受け入れられるのかはなぞですが、とにかく理事長に直訴してみないといけない内容です。


「これなら、それほど敵をつくることなくできるでしょう?まずは沙良ちゃん1人でこれをやってみたらどうかな?」


「うん。わかった」


「ごめんね。すぐに手伝うとは言えなくて」


「ううん。よく考えてから決めて欲しい」


まずは自分でできることをやってみることにします。

にっこり笑ってみんなに感謝を伝えると、さらにため息をつかれてしまいました。









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