選んだのは
あまりに綺麗な笑顔につい見惚れてしまったけれど、自分の人生がかかった選択です。一生懸命考えなくては・・・。
普通なら申し訳ないとか、そんな甘えれないとか考えるのかもしれないけれど、そんな遠慮はありません。おじさまはおじさまの利益とかいろいろ考えた上でのことでしょうから、私は私の気持ちだけ考えます。
いけない理由はなくなりました。
あと不安があるとしたら、イジメにあわないかということと、お金持ち用の授業についていけるかといったことでしょうか。
逆にメリットとしては、自分の家では到底通えない学校に通い、普通なら受けれない授業を受けれるということでしょうか。
というか、無理だと思ったらやめればいいんだから私には全くデメリットのない話ですね。
そこまで考えたところで腹が決まりました。
考え込んでいる私を面白そうに見ていたおじさまに向かってお願いします。
「援助よろしくおねがいします」
おじさまは耐え切れないように笑いました。
むっ、何で笑われるんでしょう。もしかして冗談だった?
「くっくっく。いや、ごめんね。沙良ちゃん。わかったよ、じゃあこの話は君のご両親とさせていただくね。」
訳の分からないところに笑いのツボがあるおじさまが笑いながら言ったので安心した。
安心ついでに付け加えておく。
「それとお願いがあるんですが」
「なにかな?」
やさしい顔で促すおじさまに勇気をだして条件を言う。
「まず、中学は公立に進みます。亮くんとはまたお話してわかってもらうつもりです。学費の援助は小学校の間だけの話でお願いします」
じっとこちらを見る目に緊張しつつ、話を進めます。
「もし、私に失望した場合には、援助をやめてください。私は援助をされていても行動を変えません。亮くんとケンカや仲が悪くなった場合も援助をやめてもいいです。でも、その場合はその年度が終わったときに援助を打ち切ってください。ある日突然っていうのはやめてくださいね」
おじさまと目をあわせて聞く。
「いいですか?」
「中学に公立を選ぶ理由も聞かせてもらえるかな?」
じっと私も精一杯の気持ちを目と声に乗せながら答える。
「自分の足で立ちたいから・・・でしょうか。私が私でいるために必要なことだと思っています」
おじさまはこちらをみてニッコリ笑っていた。
「いいよ。可愛らしい交渉上手さん。契約成立だね」
大きな手を差し出してくれたのでドキドキしながら握ってみます。
「おや、震えているね。私は君にかなりプレッシャーをあたえてしまったようだ」
えぇ、ついでに言えば足もガクガクブルブルに震えていますけどね。
「考えすぎて頭が痛いです」
眉を八の字にして、ちょっと膨れて見ると、片眉をあげたおじさまが意外そうな顔をわざと作りながらイタズラっぽく笑った。
「大人顔負けの交渉力と決断力だよ。私の目を見て話せる人間は珍しいのだから」
ふふふ。となぜか笑いたくなった。
「それはきっと、おじさまの目が綺麗すぎるからです」
さて、前世の記憶も総動員して頑張りすぎた私の6歳の脳はすでにオーバーヒートを起こしてしまったようです。
「ごめんなさい、がんばりすぎてねむいです」
書斎の椅子の上なのに、落ちてくるまぶたが重くて重くてあがらない。
どうしようもない睡魔に負けて、そのまま眠ってしまった。




