♯1 転入ですか。②
ちょっと長め?
かもしれません。
活動報告の方で辰巳君が頑張ってますんでそちらもよろしく^^
そつなく終わった始業式の後、案内された教室は2―Cと書いてあった。簡単に挨拶した俺を生徒が凝視する。
なんでみんなこっち見るのってそりゃそうだよね。転校生だもん。でもなんでにやにやしてたり目をまん丸にしてたりするのかな?そんなに俺は浮きますか。まぁなんか皆さま美形ですものね。
でもちょっと安心したのが、平凡さんや体育系さんもいるということだった。
ホームルームが終わると同時に人にたかられた。いるよねこういうやつら。俺は転校したこと無かったけど、やって来た奴にたかっているのは見たことがある。どこも一緒だ。窓側の一番後ろだったんだけど、広かった後ろの空間に、もはや逃げ場はない。俺は質問攻めに答えるはめになった。
…疲れた。
まさか初日にこんなに疲れるとは思わなかった。質問攻めは1,2校時目くらいで終わったけど、なんか視線とか。意味分かんない。そんなに異物か?
質問だって答えたというか、あんまし答えられる質問もなかったし。
『どこから来たの?』の回答は準備してきたけど、『どんな所』って聞かれると、イ―ズからの伝聞を頼るしかないし。一般的なものになってしまった。他の質問だって二言三言答えて、無視した質問も多い。
なんだか初めっから社交性の無さが全開だ。…ぐすん。
現在昼休み。イ―ズお手製のお弁当を持って、さっさと教室を抜け出したところだ。なんか視線が怖かったから。
食堂がどこにあるかなんてまだ分かんないから(そういえば案内されてない)とりあえず上に向かう。屋上くらいあるだろう。
案の定適当に階段を上っていたら半開きの鉄製の扉があった。
ラッキー。ここで食お。いつも一人で食ってたしね。…寂しい奴。
扉を押すとギィィと耳につく音を立てて、空いた隙間から生ぬるい風が吹きこんできた。
そして、固まった。
「・・・」
「なんだよ」
まさかだ、まさかだよ。
先客だ。
いや、まぁ誰もいない保証なんて無かったけど。いつもは誰もいないから、あ、異世界でした。
俺は反射的に扉を閉めようとして
「ここで食うんじゃねぇのか?」
止めた。
「や、邪魔かなって・・・」
「こんなだだっ広いところで邪魔も何もねぇだろ」
ちょうど正面のフェンスにもたれかかってパンを食べているのは、どう見ても体育系の比較的がっしりした男だった。やっぱりそれなりな美形。群青色の短髪が似合ってらっしゃるよ。
ジャニーズがあったら仕事にならないだろうな。普通にいすぎて。
「じゃぁ・・・」
他に行くあてもないので彼の言葉に甘える事にする。
どこに座るか迷って、彼の2メートルほど横に座った。
彼はそんな俺の様子をうかがいながら、またパンを取りだす。
ビニール袋いっぱいじゃんか。てか見るな、俺を見るな。
「おめぇ、うちのクラスの転校生だよな?」
「へ?クラス一緒?」
「あぁ、てか一応お前の隣の席」
うそぉ!?疲れすぎて気にしてもいなかった。あれ、俺ってかなり失礼な奴じゃい?
「いや、別に覚えてなくってもいいんだけどさ。あんだけ囲まれてりゃ隣も見えねぇからな」
「は、はい・・・すいません」
優しい人じゃないか。俺はほっと胸をなでおろす。
「おい。もっとこっち来いよ。ちょっと話そうぜ」
「へ?あ、うん」
とんとんと彼は隣をたたいて俺を導く。こういうの初めてだからなんか構えちゃうな。あんまり周りの人と積極的に関わらなかったし。
「おめぇ、名前は?俺物覚えわりぃんだ」
「瀬川辰巳、あ、辰巳がファーストネームね」
「タツミか、珍しい名前だな。俺はナザ・スィンスってんだ」
「よろしく、ナザ」
「おう」
それからいろんな話をした。とりとめもない話だったけど、お互い気があって。
…俺が質問して、回答を聞いていることが多かったけど。
だってほら、俺あんま話せること無いんだよね。この一週間、勉強漬けになってただけだし。
「辰巳の弁当ってうまそうだな。母さんうまいんだろ、料理」
「いや、これはイ…兄貴が作ってんだ。俺ら2人暮らしだから」
「そうなんか。すごいな兄貴。いくつよ?」
「20代だったはず」
「わかんねぇのかよ。魔高大学とか?」
「……いや?働いてるからね」
なんでイ―ズの話に・・・。俺あんま知らねぇんだけど。
「へーどこでよ?」
「ど、どこっだったかなぁ?忘れちゃった」
これ言ったら終わるでしょ。ごまかすにしてもそんな職業が一般的なのかとか知らないし!
「自分の兄貴だろ?まぁいいけど。あ、やべ。そろそろ五限目だ」
「えっ」
「行くぞ」
そう言って手招きしてくれたナザに、俺はなんだかあったかい気持ちでついて行った。
友達、出来たね。




