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♯6 友情ですか。②

鬱パートが続けられない(汗

翌日。俺はイ―ズにテレポートで送ってもらい、学校を囲む塀の脇にいた。どうにかしなければいけないという思いと、これ以上心配をかけたくないという思いから学校に、まぁ普通を装ってだけれど来た。多分、装えてない。

校門の方へ歩き出そうとして足の向きを変え、また足を向けを繰り返して、もう幾度になったろうか。いい加減勇気出せよ自分。ナザ達に合わないわけにはいかないって言う点が、どうしても俺の心を乱す。

「怖いなぁ……」

呟いてみる。言葉にすれば逃げていくかなーなんて淡い期待。無駄だったけど。

「……はぁ、行くか」

意を決して、と言うよりあきらめて門をくぐった。


教室には生徒が数人しかいなかった。それもそのはず。余裕のある時間にでてきたのだから。教室にいた数人は一様に俺を一瞥していたのは、多分暫くぶりに学校に着た奴に対する反応だろう。よくあるじゃん、おお風邪治ったか!みたいな。まぁ、俺はそんな仲いい訳じゃないから一瞥なわけだ。ナザ達以外、俺は殆ど話していなかったし、今思えばね。そして彼らはまだ居ない。早めに家を出たのは、ナザ達よりも早めに来ていれば楽かもしれないという何の根拠もない理由で早く来たけれど、それは当たりだったかもしれない。

俺は自分の席に着くと読みかけの本を出して文面に目を落とした。正直、昨日の今日で面と向かって話せるような気がしない。話せない苦痛と、それによって生じる壁に耐えられそうもない。全く、とんだ弱虫だ俺は。自分の保身のために友情を切ってしまったのだから。なんて自分勝手なんだろうね。その友情を、取り戻したいなんて願っているんだから。

軽く唇をかむ。本の内容は全く頭の中に入って来なかった。


教室はちらちらと、視線がむず痒かった。俺とナザ達が話をしないというのは、他の生徒にとって意外なことであるらしい。授業中まで視線を感じたりするものだから居心地が悪かった。どうしてそこまで気にするかな。クラスの、一生徒のことなんてその当事者の問題なんだけど。もしかして俺がこの世界じゃかっこいい部類に入るから、とか?……ないか。

俺はため息をつくと、卵焼きを一つ口に含んだ。昼休みの屋上はナザと初めて会った場所。そんなところを選んで来てしまった自分に呆れた。余計に苦しくなったのは言うまでもない。

金網のフェンスに背をもたれ、空を見上げた。そろそろ暑さも本格化してくるころ合いだ。半袖を着ている人もちらほらと見かける。白い雲が鈍色をところどころに滲ませて漂う。穏やかな雰囲気に体から力が抜ける心地がした。

「もう午後の授業サボっちゃおうか」

「委員自ら風紀を乱すのか」

声に、俺は寄りかかっていた体を勢いよく起こした。そして目を瞠る。

「ダンテさん……」

風紀委員長であるダンテさんが、屋上の入り口付近に立っていた。ここは立ち入り禁止だぞ、と言われ俺は目線を逸らす。

一番見られちゃいけない人だなぁ、なんて思いつつ、どうしても浮かぶのは先日のクラウの話だった。彼は、俺のことを知っているのだ。

「いつも一緒にいる奴らはどうした?」

 そう言ってダンテさんは俺の横に座る。追い出されなかったことに少なからず安堵した。横目で彼を窺えば、無表情にグレーの瞳でどこかを見ていた。目線をたどるけれど、給水塔くらいしか見当たらなかった。

 いつも一緒にいる奴ら、なんて、今の俺にしちゃ胸をえぐられるような心地だ。もちろんダンテさんが俺の私情なんか知っている筈がないのだから、そういった質問が出るのは妥当かもしれない。ダンテさんが気にするくらいだから、クラスの人たちが気にするのはもっともだったのだろう。思って、俺は何度目か分からないため息をついた。やっぱり学校に来なければよかった。

「たまたまです」

「……そうか」

ダンテさんは気づいただろう。俺がごまかしていることに。察しのいい人だ。

「立ち入り禁止の屋上に、ダンテさんがどうして?」

 追及されないよう別な話題を出せば、ダンテさんは眉根を寄せた。俺は首を傾げる。俺の顔をまじまじと見つめてから、首を前に戻し、一つため息をつく。

 なんですか一体、そんなにがっかりさせる様なことを言いましたか俺は。

 俺が眉をひそめたのが分かったのか、ダンテさんは少し声を漏らしてから、なんでもないと言う。絶対なんでもないわけがなさそうなんだけれど、先程の俺同様、追求されたくないことなのかもしれない。

「そうですか」

 そう言って、俺は仕方なく弁当の残りに箸をつけた。唐揚げを一つ放り込んで、一口分くらいのご飯も詰め込めば、久しぶりのイ―ズのお弁当も空っぽになる。もともと少食の俺のお弁当は男子高校生には少ないだろう一段分だが、俺のお中は満腹だ。蓋を閉め、箸も仕舞って抹茶みたいな色をした弁当袋に入れ、俺は伸びをする。視界に入った空は少しばかり雲が増えていて、ひと雨きそうだと思った。

「お前は、創造神には会ったのか」

「え?」

 創造神?

「何をそんな驚いた顔をしているんだ。クラウはもちろん、俺もあったことがあるからな。辰巳もあっているんじゃないかと思ったのだが」

 会っていないのか、とダンテさんはこぼす。

「いえ、会ったことはありますよ。多分、あれをあったと言うのであれば」

 金髪三つ編みで赤眼の合唱団にでもいそうな美少年だったはず。言われた言葉の数々を思い出して、俺は拳を握りしめた。早く、力を操れるようにならなくてはいけない。

 傍らでダンテさんはため息を吐いた。呆れの色は見られない。

「……そうか、それなら話は早い」

「話?」

「奴はお前に余計なことを吹き込んだ様だからな」

余計なこと?なんだろうか。俺は首を傾げる。二度しか会っていないのに俺をえぐるような言葉を吐いてきた神だが、余計なことであったかと言えばそうとも言えないような気もする。

「まずあいつはお前に謝罪をしていないだろう。全く、だから俺はあいつが解せないんだ。自分の非を非とも思っていないのだから。挙句の果てにクラウに手を出そうとしやがって……」

「はい?」

 最後のセリフにそこはかとなく怪しさを感じるのですが、いや、聞かなかったことにしよう。

「ああ、すまん。謝罪されていないだろう?次に会った時にはお前の強烈な蹴りでもお見舞いすることを勧めるぞ」

「いや、創造神なんでしょうこの世界の」

「ただのわがままな餓鬼だ。物凄く厄介な」

 ダンテさんは創造神のあの美少年が嫌いなのだろうか。形相がいつにもまして鬼の様だ。見える横顔だけを窺っても、背に冷汗が流れてしまう。この人、人殺せるんじゃないかな。

「……で、話ってなんですか?」

「おっとすまない。話と言うのは――」


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