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♯5 神の子ですか。③

お久しぶりです!本当に;;

長らく更新してませんですみません

こんな状態が続きそうです;;


いまさらですが、

あけましておめでとうございます

今年もこの作品を、どうか温かい目で、よろしくお願いします。

 やっと俺の熱が引いたのは、新歓から4日後のことだった。

 熱が下がるとすぐにアニマさんに、王宮に来るようにと言われた。今回の件で、話し合いを持とうということだった。良い予感は全くしなかったけれど、ヴァラン陛下が言うのだから行かないわけにもいかない。実際、俺にとっては聞かなければならない話しだろうから、俺はまだ萎えている気分を奮い立たせてアニマさんの後について行った。

 久しぶりに訪れた王宮は、相も変わらず塵一つなく豪華絢爛と言う言葉を具現化したようだった。思えば、俺がここに飛ばされ、何も分からずに説明を受けたあのとき以来だ。メリッサさんとよく合うからか、もう少し近いもののように感じていたが、身分と言うものを考えるととんでもないなと、今更ながら思った。俺の身分がどこに位置するのか分からないけれど、気分的には一庶民なわけだから。一度歩いたことのある廊下を、今日は冷静と言うよりは虚ろな気分のまま進む。前を行くアニマさんも嫌に静かだ。病み上がりで鼻がむずむずするが、厳かな雰囲気にくしゃみ一つ出てこなかった。

 いつかの大扉が近衛兵の手で開かれる。重厚なそれは今の雰囲気にあった低い音を撒き散らした。

 ヴァラン陛下との謁見の間にいたのは、ヴァラン陛下とその妻であるメリッサさんとゼンさん。そして黒髪の女性、確か彼女は初めの時にも居たイ―ズとは別の小隊の隊長だったはずだ。その隣にはイ―ズもいる。帰ってきていることは床でアニマさんに聞いていた。ここではセンサスさんと呼んだ方がいいのかもしれない。他人行儀なようで、その名を呼ぶのはあまり好きではないけれど。そして、少しばかり目を瞠ったのは、イ―ズ達と反対側にクラウとダンテさんが制服姿で立っていたこと。陛下に会いに行くようなことは言っていたが、実際ここで会ってしまうと違和感がある。俺は多分、もう彼らと前のようには接せないなと思った。

「辰巳はそこにいて」

 不意にかけられた声はアニマさんのものだった。俺の方を振り返ってそう言い残し、彼はイ―ズの隣に並ぶ。

 そこにいて、と言われても。俺がいるのは真ん中で、右手にはイ―ズ達、左手にはクラウとダンテさん。なんと言うとこに残して行くか。冷汗をかきそうになっていると、では、と聞きやすいテノールの声が部屋中に響いた。

「始めよう。辰巳、あまり緊張しないでおいて。その位置は客人なのだ。居づらいのならどちらかによっても構わない。本日はこの場で行う」

 十段近くある階段の上、玉座の置かれたその横に、ヴァラン陛下は立ちあがってそう言った。俺はお言葉に甘えてクラウの横に少し間を開けて並ぶ。気になって陛下を窺うと、彼は目元を和らげていてくれた。安心して息をつく。それを合図にするかのように、イ―ズが一歩前に出た。

「では私から、よろしいでしょうか」

「ああ」

「学校が襲撃される二時間前、〝黒蝶の騎士″の根城と思われた山中の空き家から、奴らと思われる一段の襲撃を受けました。一個小隊ほどで、気性の荒い女性が仕切っているようでした。彼女以外も手だれのものが多く、こちらが押されるような状態が続き、三時間ほど交戦後、ちょうど学校の襲撃が終わった頃に奴らはいきなり撤収し、私達は事なきを得たといえます。見張っていた空き家に乗り込んでみたのですが、中はもぬけの殻でした。囮に使われただけだと思われます。私の小隊は、副隊長を置いて行ったとしてもこの国で一二を争う小隊であると自負しておりますが、あのまま戦っていれば確実にこちらが負けていました。あちらの戦闘能力はすさまじいものがあります。私からの報告は以上です」

 彼は淡々と、険しい表情のまま報告をし、終えるとまた一歩下がった。陛下は一つ頷いて、右の指を顎に添える。

 事態は深刻。そしてその深刻など真ん中、危険な地にイ―ズは行っていたのだ。分かっていたはずなのに、イ―ズが戦いの中に行くことは分かっていたはずなのに。彼は騎士だ。騎士の任務と言えばサーベルをふるうようなものを想像するのが普通だろう。だから、今さら彼を心配するのは筋違いではある。けれど、実感として戦いに身を置いた彼の話を聞いて、最悪の事態を想像してしまったのだ。負けていた。その言葉が頭を反芻する。彼が帰って来なかったら。両親を失った時に味わった吐きそうな消失感を思い出し、俺は一瞬倒れそうになった。しかし、そんな想像だけで倒れるわけにはいかない。彼は今ここにいる。まだ俺を置いて行ってはいない。安心するところだ。そうだ、大丈夫だ。俺はもう一度自分を奮い立たせた。どうもネガティブになっていけない。

 そのあとはクラウが報告した。内容は彼らの素情と学校の襲撃。俺もいくつか質問をされ。事実だけを答えた。一つを除いて。あのとき俺の中に巻き起こったどす黒い感情だけは、人に言えるようなものではなかった。人一人の命くらい軽くひねりつぶせるという快感。そしてそのことに対する認知と傍観。あのとき俺は全てがどうでもよかった。あの感覚は、言葉に出来そうもない。

 一通りの報告が終わり、部屋が再び静まり返る。ヴァラン陛下はずっと何かを考えている風で、それはイ―ズやクラウも同じだった。

「辰巳」

 俺を見下ろして、ヴァラン陛下は突如口を開いた。静寂が2分も続いただろうかと言う時だった。

「気になっていたのだが、お前は初めて会った時、俺が不思議な能力を知覚したことがあったかと尋ねて、はいと答えたな。その内容、聞いても構わないか?」

「え……あ、えと……」

 真剣な面持ちで、陛下は俺を見据える。言えないことではない。しかし、言ってどうにかなるものとも思えない。

 自然と俺に集まった視線に、心臓がうるさくなった。いらないあがり症のせいでなんと返したらよいかもわからない。

「あの、それほどすごいことでもないのですが……?」

「それでもかまわん。どんなものか、知っておきたいのだ」

 そう促されてしまえば断ることはできない。

 俺はなんとか思い出して、そうかな、と思ったことを答えた。

「第六感、でわかりますか?それが鋭いというか。近い話だと、学校が襲撃された時も、階下からの嫌気を感じたと思ったらマリ、ダンテさんと戦った男が出てきて。そういう、一寸勘が鋭いだけのことです。あとは敵意を察知しやすいとか、そういう魔法があればそれほど珍しくもないことです」

俺が話し終えると、陛下はなるほど、とうなる様に呟いて、またもや手を顎に当てた。

「向こうにいた時でも、そうだったんだよね?」

「はい」

「うん……それは多分、大きすぎる魔力を有するが故に、魔力が辰巳の体からあふれ出てしまったのだろう。あたりに充満した魔力が辰巳の感覚を助長した。そう考えるのが一般的だろう。どう思う?」

「俺もそう思います。辰巳の感覚の鋭さは俺も感じていたところです。それで納得がいきます」

 視線を向けられたイ―ズが答え、ついで向けられたクラウも頷く。

 俺が長年不思議に思っていたことがこの一瞬で片付いてしまった。なんとも形容しがたい気分だ。

「こちらに来てからも衰えてはいないんだね?」

「私にはそう見えました」

 向けられた視線に肩が跳ねる。

「あ、はい。変わりありません」

 魔法のあるこの世界なら珍しい力でもないのではと思う。ゲームなら策敵とか言って、メジャーなスキルとして入っているわけだし。ヴァラン陛下は何を考えているのだろうか。

 ふと、陛下が顎に添えていた手を離し、空を見据え、もう一度俺に視線を戻した。

 ぶれの無い視線は、何か決意を匂わせる。

「やはり、辰巳には魔法を徹底的に学んでもらう必要がありそうだ。メリッサ、今後とも指導を頼む。それからゼン、辰巳の魔力制御の講師をやってくれ」



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