プロローグ⑤
わわっ
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もう、なんて言うか
ありがとうございます!
こんな素人の文を読んでくださって!!
活動報告もやってるんでよかっty((殴
……本文どうぞっ
案内されたのは一際繊細な装飾の施された両開きの大扉の前だった。これまで続いていた、ベージュとくすんだオレンジの壁に茶色の扉と言う組み合わせではなく、赤と金色の豪勢な扉。変わらない壁に挟まれて少し浮いてしまっている。
なるほど、ここに陛下がいるのか。やけに派手な訳だ。
好青年がコンコンとドアをノックする。すると示し合わせたかのように内側から扉が開いた。ギィィとあまりよろしくない音を立てて開いた扉の向こうは、またしても赤い。正確には白い大理石の様な床の上にレッドカーペットが敷いてあり、赤い壁の合間に黄色い円柱型の柱が立っているのだ。
失礼しますと一礼して歩を進めた好青年に倣って、一礼し後を追う。
正面にいるあのイケメンさんは例の陛下だろうか。最上段にある金色の椅子に腰かけて、こちらを見て微笑んでいる。さっきの帽子男とは違うタイプで美しい人だ。帽子男を大人の色気のある美形とするなら、彼はさわやかな空気を醸し出す若々しい美形さんだ。
あぁ、嫌な奴を引き合いに出してしまった。
気を紛らわそうと少し周りを観察してみる。
兵士とかでたくさん人がいるかと思ったが、そうでもないようだ。
陛下だろう人物の横にはこれまた超絶に綺麗な女性がいる。奥さんだろうか。綺麗な金髪はカールしてクルクル巻かれていて(用語なんて俺は知らない)、目が行っちゃって困るぐらいグラマラスな体型をしてらっしゃる。男の目にはよろしくない。
そして反対側には、陛下ほどではないがジャニーズに入れるだろうイケメンがいる。まだ幼い顔つきに見えるから、多分俺とそう年齢は変わらないだろう。それから、壇の上ではない俺達と同じ高さのところに、さっき見た長髪の女性がいる。しなやかに垂れ下る青みがかった黒い髪は、腰に届きそうだ。彼女も遠目では分からなかったがきつめの美人。…そのきつい目でこちらをあまり見つめないでほしいが。
「お待たせいたしました、陛下。こちらが例の瀬川辰巳です」
あれ、俺名乗った覚えないんだけど。
「御苦労。瀬川辰巳だな。こちらの都合で気苦労をかけてすまない。今の状況はどのくらい呑み込めている?」
「あ…えっと、ここが俺の知らないところって言うことぐらいで…」
急に笑顔が向けられて混乱してしまう。もしかして俺って美形に弱いのかな。俺男なんだけど、別に憧れはおかしくないよな?
「そうか、うん、そうだな。まだ何も説明していないからな。ではこれから私の口から説明しようと思う。長くなるから場所を変えよう。立ったままではきついだろう」
陛下はそういうと立ち上がり、後ろの二人を引き連れて壇を下り、俺の横をすぎて扉へと向かってしまった。行動が早いというか急と言うか。軽く礼をして後に続いた好青年に続いて俺も後を追った。
通されたのはこれまた大きな部屋だった。さっきのドーム型の講堂の様な所とは違い立方体の様な空間。そこにぽつんと大きな長机が置かれている。もちろん純白のテーブルクロスつき。
「無礼講だ。皆こちらに座れ」
陛下が長机を縦に一望できる席に腰を下ろすと俺をその斜め手前に促した。俺の隣にまた一礼して好青年が着き、その隣に同じく一礼して長髪の女性が着いた。俺と好青年の向かえ側にはそれぞれグラマラスな美女とイケメンが座る。
「まず、わたしはこのセプテリア王国の王、ヴァランだ。ヴァラン・ファリスアーナという。まぁ、ヴァランと呼べ」
「セプテリア王国…ヴァラン、陛下、ですね」
たぶん、これから覚えなくてはいけないことだと思うから、反復して頭にインプットした。自慢じゃないが暗記は結構得意なんだ。
そうしているとヴァラン陛下に苦笑いで返された。
「陛下などつけなくともよいのだが、まぁ周りの者はそう呼ぶからな。そしてこれらがわたしの妻だ」
そう言って陛下が指示したのは迎えに座っている二人。
ん?二人?確かにこれらって言ったけど、妻とも言ったよな?片方イケメン君ですよ。
「第一妻のメリッサと第二妻のゼンだ。…どうした、固まって?」
拝啓、母さん父さん。もしかすると俺の今いる世界はあなた達がこよなく愛する物が可能な世界かもしれません。
「…少し、驚いただけです。…俺のいた国では妻は一人だけでしたし、同性婚も認められていませんでした。ましては王もいませんでしたし。…それらのある国もありましたが、俺は国を出たことはなかったので」
ヴァラン陛下から目を離さずに言った。俺の話に逆に驚かれてしまったようだ。陛下はわずかに目を見開いている。周りからも同じような気配を感じる。
異国、なんだと改めて思った。まさか自分がこんな“非”現実的な体験をしようとは。
そういえば元の世界で、俺は神隠し的な扱いをされるんだろうか。
「…それは、まぁ、世界が違えばいろいろだからな。・・・この国、いや世界だな、では恋愛事はいたって自由だ。性別など関係はない。ついでに複数の妻を持つことが許されているのは王である私だけだ。これから過ごしてもらうに当たってその辺の常識も必要になって来るだろうな。そのあたりは置いておくことにしよう。ひとまず現状確認だ」
思考が完全に反れていた。危ない危ない。
ってか俺話ずらしちゃってるじゃん。いや、でもしょうがなくない?まじめに驚いたし。
「辰巳、お前の中には『神力箱』と呼ばれる力の塊がある。神の力の箱と書くのだが、その名の通り神の力を納めたものだ。これはあくまで世界神話の話だが、『創造神がこの世界を創造した際に神は世界の安定を見守り保つために“はざま”へと身を置いた。』…“はざま”というのは不安定でわたしたちの世界の中枢となっている場所を指すのだが、私達はそれがどこにあるのかさえ掴んではいない。だが、それに関する古い文献や、それに近い場所などは発見されていて、調査も行われている。…『神は力を使わなくとも時を経るごとに湧き上がってくる。そうなるといつしか満杯になってしまうときがある。そうなると世界のバランスが崩れてしまう。それに危機を感じた神が己の力を注ぎこんだ力の塊を、別世界へと飛ばしてしまおうと考えた。飛ばされた力はその世界の何らかの生物に取り込まれ、稀に異能を発揮するという。』…わたしたちは別世界へなど行くすべを持たないからこの神話を確認したことはないが、この現代まで信じられてきた。実際こうして辰巳がここにいるのだから実在するのだろう。世界を渡ったのだからな。なにか、自分に不思議な能力があると思ったことはないか?」
ヴァラン陛下は一度そこで切ると俺の目を見据えた。
正直、あった。でも、気のせいだと思っていた。普通そう思うだろう?
俺は頷いた。
ヴァラン陛下も頷いてくれた。
「問題はここからだ。実在するという事実をどうやってか突き止めたやつら…辰巳をこの世界に連れてきたあいつらだ。『黒蝶の騎士』なんて名乗っているがこれまでいくつかの聖地を荒らしている如何わしい奴らだ。何が目的かは知らんが力を欲しているらしい。そこで『神力箱』に目をつけたのだろう…何か、されなかったか?」
何か?
瞬間、俺の内に熱がともる。熱い。覚えのある感覚に、背筋が冷える。
無意識にワイシャツの胸元をわしずかみにした。
内から湧き上がる熱と力を強制的に抑え込んで、ギュッと力を込める。
「どうした?」
「なんでもないです。あの、鍵って分かりますか?」
「鍵?」
ヴァラン陛下はあごに手をあてて考えている風な仕草をすると、ハッとして俺に視線を戻した。
わざとらしく見えるけど…素っぽいな。
「もしかして、辰巳自身にさしたのか?」
「はい」
「まわしたのか」
「と言うか回されました」
部屋に重い空気が流れ始める。俺、まずいこと言ったかな?いや、言ったよね。絶対よくない代物だよね、あれ。
「…平気か?」
「へ?」
「体だ。それは辰巳の中に眠っていた力を開放する鍵だろう。彼らが神話の中だけのその鍵を手に入れたと聞いた」
心欝な表情で言うヴァラン陛下に、隠し事はしてはいけないような気がした。
「…熱い、です。何かが内から湧き上がって来るようで。・・・でも、どうにか抑え込んでるんで、大丈夫です」
そういうと、ヴァラン陛下は目をいっぱいに広げる。ほんとに変なこと言っただろうか。
「抑え込んでいるん、ですか?」
そう言ったのは俺の横に座っていた好青年。彼もまた驚きに目を見張っているようだった。
ほんとに俺変なこと言ったかな。
「・・・なんとか」
「初めから力の制御が出来るのか。すごいな。こちらが手ほどきをする必要がなくて助かる。…では最後に、これからのことについて話そう」
今一度仕切りなおしたヴァラン陛下に向き直り、真剣に聞く体制になる。
「もう君は帰れない」
潔く告げられた真実に、わずかに顔がこわばる。でも、分かっていたと言えば分っていたことだ。
俺は、それを受け入れたのだから。
「やつらは辰巳を狙ってくるだろう。ここで匿ってもいいんだが、それではこれからこの世界で生活し ていく君にはとても不便だろう。それにわたし達としても君の存在は公にはしたくない。幸い奴らはここしばらくは手を出してこないはずだ。儀式をするための装置を、君を奪還した時に少し壊せたからな。準備にはそこそこかかるはずだ。そこで、辰巳には一般的な学校に通ってもらおうと思ったんだ。 学校等の制度は元の世界ではあったか?学ぶ場所なんだが」
「はい。俺も高等学校に通っていました」
「よかった。不思議なものだ。それから、一般的な常識や、基礎能力の向上、および身の回りの世話の ために彼をつける。まぁ、家庭教師兼護衛と思ってくれ。…私達王族との繋がりは極秘で頼むよ」
そう言ってヴァラン陛下は俺の隣の好青年を指し示す。彼はさわやかすまいる全開で目のあった俺に笑いかけた。
うわ―イケメンがそんなことしたら女の子いちころだろうな。
「よろしくお願いします。辰巳様」
「あ、こちらこそ。よろしくお願いします」
俺が慌てて頭を下げると、彼はまたもや微笑んだ。