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閑話⑥


「ご苦労だったな。センサス。辰巳の一件、聞いているな?」

 王宮の執務室、豪華な装飾の施された調度品の並ぶそこで机を挟んで対面するのは、ヴァラン陛下とイ―ズことセンサス。

「はい」

 陛下の言葉にセンサスはぎゅっと眉根を寄せた。

 自らが監視していたはずの『黒蝶』にまんまと護衛対象をやられたのだ。当然と言えば当然の反応だった。しかもこの一ヶ月間寝起きを共にしたという事もある。私情が混ざっていたとしても、誰もとがめはしない。

「交戦したと報告があったが、死傷者は?」

「軽傷数名で済みました。ただ打ち取ってはいません。今思えば時間稼ぎだったのでしょう。引き際は やけにあっさりしていました」

 そうか、と陛下はため息と共に吐いた。では、と一呼吸置き、陛下はぱっとセンサスを見据えた。

「今日から辰巳の護衛の任に戻れ。それと……」

 ふっと柔らかく、それこそ麗しい外見を最大限に生かした笑みを作り出し、陛下は微笑んだ。

「辰巳を癒してやってくれ。大分君に懐いていると、メリッサから聞いた」

「はい!」

 センサスもとびきりの笑みでこたえた。




 深い森の奥、怪しさしか漂ってこないような古びた洋館の一室に4つの影があった。一つは小さく、一つは華奢で、二つは高かった。室内の空気は部屋の雰囲気とうって変わってそれほど重くはない。明るくもないが。

「ノエルはどうしたんだい?」

「まだ塞ぎこんでる。よほど怖かったんだろうさ」

 よく通るテノールが聞き、低めの女声が答えた。

「そうか……ヒラクが助けてくれなかったら、彼女は瀬川辰巳に殺されていただろうから、仕方ないかな」

「はっきり言いますよね、あなたは」

「事実だろう?」

 紫色の髪が特徴的な男は妖艶に笑った。それが彼のデフォルトのため、その場にいた面々はなんとも思わないが、耐性の無い人が彼の今の笑みを見たら、確実に落ちる。それほどの色香を放つ笑みである。

 男は笑みをたたえたまま、部屋の隅で椅子に腰かける人物へと視線を向けた。

 場に似つかわしくない、子供がそこにはいた。白いシャツの上に黒のベストを羽織り、下は短パンに白のソックス。まだ幼い少年は、真っ黒の大きな相貌を床へと向けていた。

「ジェス、神は何か言っていたかい?」

 ジェスと呼ばれた少年は、ゆっくりと頷いた。

 場が一瞬にして緊張に包まれる。

「向こうにも、神子がついた。神様は、瀬川辰巳が気に入ったから、話をした。そう、神様は言ってる」

 傍にいた女性と青年が息をのんだ。

「この大陸の神子か……。これでイーブンかな」

「辰巳があの魔力をものにしたらそうも言っていられなくなるでしょうけどね」

「あれをものにするには数年かかるよ。あー、でも彼は筋がよさそうだからね。今回も解き放つことには成功していたようだし、一年もあればものにしてしまいそうだ」

「だからそれを危惧しているんでしょう」

「そうだ。ノエルがやられたんだろう?あいつは弱くねぇぞ」

 不安そうな女性の声が二人の青年の間を割って入った。その声音には確かに焦燥が見て取れる。

 『黒蝶の騎士』が目標とするものへの準備は、陛下が読んだ様にまだ整ってはいない。まだ時間がかかることが目に見えた状態でもあった。

 目標を達成する前につぶされてはたまらない。一つの目的を持って集った彼らにとって、目的のために必要な辰巳の力は希望であると共に、脅威でもあった。

「大丈夫さ。辰巳を揺さぶる手は打ってある。ね?」

 笑いかけるのは傍らの青年。青年は妖艶な笑みに、僅かにたらない色香で苦笑した。


さて、おわかりかな?(うざい←

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