閑話③
今回は
ダンテ→ト―レ→ダンテ
の順番でちょっとづつ。
ごたごた楽しいなwww
「やっぱ、お前何もんだ?」
「……」
弧を描いていた口元が結ばれる。勘の鋭い奴だ。
俺――ダンテ・アルベールは飛ばした減速魔法の感触を確かめつつ、相手の様子を窺う。微動だにしないように見えるだろうが。
辰巳は無事に寝かせられたようだ。魔法が間に合ってよかった。
「おい、聞けよ」
重厚な槍の柄を地に落ち着かせ、しかし臨戦態勢を崩さずに、余裕を消した鋭い釣り目を向けていた。
俺は何も話す気はないと言うのに。第一、話すわけがないことくらい、分かるだろうに。
「校内から立ち去ってもらおう」
シャツのボタンを第二まで開け、俺は放った。
「ちょ、なんでこんなことになってんだ!?」
職員棟二階、職員室隣にある放送室からグラウンドを見下ろし俺は声を上げた。その現状は凄惨なものだった。
他の窓から見下ろしている生徒会の面々も唖然としている。俺達が伝えに来てすぐに走り出して行った、生徒会長と会計のクラウ先輩を除いて。必死な形相でどこへ行ったのか気になるところだが、今はそれどころではない。
グラウンドはめちゃくちゃだ。
穴があいていると思えば不自然に盛り上がり、起伏が激しく捲れ上がっている。俺達の習うような地面を操る魔法とは程度の違う、地割れさえ起こす規模のもの。
幸い、グラウンドには誰もいなかったようだ。逃げたのだろう。
ただ一人。グラウンドに佇むもの。どう見てもこの学校の生徒ではない、女性。
黒と白を基調にしたフリルの多いドレスを身にまとった、ピンクの髪の女性。この距離からでは顔までは分からないが。
彼女がやったのか……?あの女性が、これほどまでの破壊を……?
さっきの緑色の髪の男の仲間か?だとすると、あいつは暴れなきゃいけないんだとか言ってたから、彼女もそう言った目的で来たことになる。それは……物凄くまずいんじゃないのか……?
ふと、女性がこちらを向いた。
「!」
一瞬目があって、すぐに横に逸らされる。窓から見ていた俺達と生徒会の面々を見定めるように瞳に映してから、女性は笑みを浮かべたように見えた。
美しい顔立ちをしているようだが、既に俺は寒気と恐怖しか感じない。武道は幼少から鍛えている。しかしそれはあくまでも、護身程度のものだ。校内の風紀を守るくらいなら通用しよう。だが、今はそのレベルをはるかに超えている。これは……国家の犯罪者レベルの魔力と力量だ。
「下がれ!」
サナ先輩が叫んだ。
咄嗟に体を動かしたのと同時に、ガラスが砕け散った。
廊下には中心から折れた槍が転がっていた。
俺は振り上げたこぶしを確かめるように開き、また握って開く。骨に異常はない。
片膝をつき、殴られた腹を押さえ、頬を腫らす緑色の髪を持つ『黒蝶の騎士』のメンバーであるのだろう男は、冷たく見下ろす俺を下から睨み上げていた。
終わったのだ。早く去ればいいものを。
「殺さねぇのか」
「一般人はそんなことはしない」
「はっ、よく言うぜ、そんな力持ってて一般人とは」
「早く立ち去れ」
追い打ちをかけるように言い放つと、男は舌打ちを漏らし、何かを唱えた。
そうして、跡形も残さずに消えた。
あれはテレポートの正式な呪文だ。普段俺達の使う、道具に記憶されて魔力まで蓄積されたものを使う機械的なものではない、アナログで高度な術。
消えた場所から目を離す。
やはり、一筋縄ではいかない。
服に着いたほこりを払って、俺は外の茂みで倒れているだろう辰巳の元へ向かおうと足を向け――グラウンドに大きな魔力を感じたのはその時だった。
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