♯4 新歓ですか。⑥
新入生歓迎会、当日。
喧騒響く体育館に、男子ばかりの全校生、総勢600人ほどが集まっていた。残り夏に当てられて湿気のこもるそこで、これほどの人数(しかも男)が集まると、暑苦しさも並ではない。
今まで共学しか経験してこなかった俺は、もろにその暑さにやられている真っ最中だったりする。
熱い。暑い。色んな意味でアツい。
生徒会が運営を行うと言うことで、教師人と共にステージ裾に陣取る生徒会執行部。彼らの姿にキャーキャー騒ぐアホどもや、うほうほ言っている馬鹿共が熱気を盛り上げていると言えるだろう。全く、迷惑なこった。
まだましなのは、あの熱気のこもる列の中にいなくていいこと。俺を含めた風紀委員は、体育館の端でそれぞれ配置された場所で騒ぎが悪化しないよう、見張り役を務めているのだ。俺は一番後ろの角。 一番目立たないところ。気が楽でとてもいい。周りも見渡せるし。
風紀委員と言う赤い腕章を少し直してみた。何となく誇らしい。
キィィィィン
耳障りな音が響いた。マイクの音。
あ、あー、とマイクに呼び掛ける声がして、喧騒がやんだ。始まるようだ。確かに定刻。
『開会のあいさつ、生徒副会長イズミ・テラ―』
アセラの司会に従って、イズミさんがマイクを手に壇上に上がった。心なしか場が紅潮して来る。彼の人気も素晴らしい。
『おはようございます。では、これから新入生歓迎を行います。規則だけは守って、楽しみましょう』
そう丁寧に言うと、イズミさんは会釈をして下がっていく。次は生徒会長の挨拶、と呼びがかかり、俺様な彼が堂々と壇上に上がった。騒音にならない程度の歓声が上がる。しかしそれも会長がマイクを掲げると同時に止んだ。
なんつー統率力。器ってやつか。
『お前らっ!俺らに迷惑かけるなよ!んで、存分に走り回れ!!』
わ―っと沸く会場。歓声。悲鳴。雄たけび。
……ついていけない。俺は完全に呆気にとられて、盛大に盛り上がる生徒達の後ろ姿を見ていた。
会釈はせずに会長が壇から降りる。アセラが話しだす頃には、またしんと静まり返っていた。
その後簡単な諸注意の後、これからの動きと景品の連絡があって会は閉じた。景品は食堂タダ券だそうだ。
ま、俺参加しないから関係ないけど。あれ、クラス単位か。
ぞろぞろと体育館を後にする生徒の波から、
「タツミ―ん!」
見知った声が俺を呼んだ。誰かなんて見なくっても分かる。
「おーい!レント、ここ!」
手を上げて叫ぶと、人をかきわけて、ナザと共にこちらへとやって来た。角にいる俺のまわりは波の通り道ではないので空いている。
「俺らのクラスは警察側になった。だから、拘束系の魔法が使えるぞ」
「あれ、そんなルールだっけ?」
「タツミん出ないからって疎かはダメだよ―?第一それ破ってる人を捕まえなきゃいけないんでしょー?」
「ごもっとも」
「じゃぁ、泥棒はどんな魔法使えるか、言ってみ」
「……あ、加速系?」
「そ、当たり。しっかりやれよ?まぁ出番ない方がいいんだろうけど」
もっとちゃんとプリント読んどけばよかったかな?隅々まで目は通したんだけど、魔法とか言われるといまいち身に入らない。てかそんなルールあったっけ?
二人のおかげでルールの確認が出来たところで、人の波も空いてきて、俺達も体育館から出た。
開始時刻まではあと30分ほどある。放送で一斉に開始するまで、好きな位置に着く。捕まった者は指定の場所へ転送する。これはテレポートを駆使して行う。魔力は生徒会の準備した分で賄うそうだ。
暫く三人で談笑しながら歩いて、俺は途中で別れた。風紀は担当の場所がきまっている。俺の担当は特 別教室棟の二階。俺ともう一人一年生がいて、二人でウロウロしていればいい。一緒に行動しては意味がないが。
まぁ、俺はあんまり話したことのない子だったし、最低限の会話しかないことが予想される。
担当場所に着くと、その彼は既に来ていて、腰に手をあててモデルのように立っていた。そう、モデルみたいなのだ。全てが。女性のように細いし、背が高いし、女性よりの中性的な顔をしているし、髪は長いし。アセラとは別の意味でほんとに男かと疑ってしまう。イズミさんに似た美人系だけど、彼とは種類が違う。長いと言っても直毛のセミロングだし。赤いし。目立つし。ほんと、強気な顔を最近のモデルって感じ。
「セガワ先輩、おはようございます」
「おはよう、早いね」
「いえ」
彼、ト―レ・シュアは目を細めて笑んだ。まったく、心臓に悪い。強気な顔とは裏腹に素直なもんだからなおさらに。
二人で談笑交じりに見回りの打ち合わせをしていると、校内放送が入った。時間って早いな。
『準備はいいかー?よくなくても時間だから始めるぞ。……スタート!』
歓声に学校が震えた気がした。
なんか予定していない新キャラが^^;
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