♯4 新歓ですか。⑤
お久しぶりです。
「あらぁ―?ちゃんと買ってきてるじゃん」
「え?」
教室に戻ると、いきなりそう言われ、俺は心外だと目で訴えかけてやった。そんなに方向音痴じゃありませんよ。
三人ともすでにお昼は食べ終えていて、俺が近くのあいている席に腰を下ろすと、顔をこちらに向けてきた。
だからいったいなんだって。
「だってさ、今日水曜日でしょ?誰もいなかったんじゃないかと思って」
……なんで?
「いたけど」
「……へ?」
「いたって、誰が?」
「誰ってサナさんが。あそこイズミさんと二人でやってるんでしょ?」
買ってきたパンの包み紙を開けながら言う。この赤い実なんだろう。おいしいかな。
「イズミ先輩だけじゃないのか?俺もたまに行くけど、あの人しか見たことねぇぞ」
「言った曜日の問題じゃない?だっていたし。二人でしてるって言ってたし」
途端にナザは苦虫をかみつぶしたように顔を歪めた。
え、俺なんか変なこと言った?
炭酸系のジュースも開けて口に流し込む。あ、オレンジだ。
はぁ。と、盛大なナザのため息が聞こえた。いや、だからなんだって。
飲み口から口を離し、ナザに目線を移す。いや、移そうとした。
「でっ!」
「お前はっなんでっ、そう誰もかれも……!」
「いだいいだい、な、何、どうした!?」
某万年5歳児がよくやられている攻撃を食らった。これマジで痛い。
「痛がってるよ―?」
レントが言って、ナザは俺の頭から手をどけた。その後もなぜかむすっとして、腕を組んだまま椅子にふんぞり返る。なぜかは知らないが、ご機嫌斜めらしい。
俺が原因だろうか……?流れ的にそうとしか思えないが、何せ全く覚えがない。
「タツミ、そんな不安そうな顔しなくていいよ。ナザの問題だから」
「……そう?」
「うん。それより、サナ先輩がいたの?」
アセラ可愛い。あ、違う、優しい(レントの目が怖い)。ってか俺顔に出してたと言うことか。とりあえず話題が戻ったのでそれに乗っかります。
「始め誰もいなくて、で、奥に入ってみたらドアがあって……ってのは分かる?」
「ドア?」
「そんなのあったっけー?」
「あるんです。」
なんで俺の方がしってるのさ。
「で、そのドアに用があったらノックしろって書いてあったから、その通りにしたら」
「先輩のお出ましか」
「そんなとこにいたんだねー」
「意外。ちゃんとしてたんだ。てっきりイズミさん一人でしてるんだと思ってた」
「もしかして、人がいなかったのは今日が定休日だと思ってたから?」
「うん。少なくとも僕はそう思ってた」
「みーも」
「……同じく」
二人はともかく生徒会のアセラがそう思ってたんじゃ、人なんか来ないわけだ。なんだかそれも可愛そう。サナさんちゃんとやってたんだけどな。俺に宣伝してくるぐらいに。
「じゃぁ、俺これからしばらくあそこのパン屋さんにお世話になろっかな」
むすっとしたまま、ナザが眉を上げた。
「……お前、兄貴が弁当作ってくれるんじゃなかったのか?」
「一週間留守」
「え―お兄さん御留守なの―?大変だね―」
「平気だよ。料理は出来ないけど頼りになる親戚が来てくれたから」
そうなのー、と、大して興味なさげにレントは笑う。そのくらいの距離でいてくれるのが助かった。
……ナザ、どうしたんだろう?
短め且つ会話文多めでお送りしました。
明日の夕方も更新します。
誤字脱字等ありましたらお知らせください。