♯4 新歓ですか。③
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先週さぼってしまいましたね。
すみません。
活動報告の方では書いたのですが、体調不良やらなんやらです←
最近ちょっと忙しいので
またこう言ったことがあるかもしれません。
その分は取り返せるところで取り返したいと思いますが。
更新がまばらになる可能性が大きいので、一応報告しておきます。
「……ん…ろそろ、起きんと遅刻するで」
「う、わぁ!?」
俺は朝っぱらから大声を出して飛び起きた。
「そないに驚かんでも」
「いや!驚く!顔近いです!」
「起きんでもよかったんに」
にやにやと怪しげな笑みを浮かべて、くの字になっていたからだを元に戻す彼――白髪の関西弁副隊長、エニマ・帳・ヴァールさん(イ―ズから名前を聞いた)。昨日から長期任務に出たイ―ズの代わりに俺の護衛をしてくれることになった人である。未だにどういった人物なのか、掴めていないところでいきなり共同生活と言われても困るのだが。それもこれも荷物共々一晩でやって来て居座る準備を終えたエニマさんは、早々に就寝してしまったのだ。
だから、俺は彼について何も知らないのだが……。
なぜ目を開けて、一番初めに目に入るのが彼の目なのか。
この世界の人はみんな顔を近づけるのか!?……いや、そうでもない人の方が多いな。じゃなにか、イ―ズやこの人がおかしいのか。そうか、なら納得しよう。
ってなんで俺納得した!?
起きなくても良かったって何かするつもりでしたか!?第一今何時!?
「7時や。自分、学校やろ?隊長からその辺も頼まれてん。もうあの人ほんとの親みたいになってんのな」
俺もイ―ズはすでにお父さん的な認識なんだけど。懐き過ぎかな?
……ん?
「俺、声に出してました?」
「いんや、軽く読んでもうた。すまん、癖なんよ。そか、お父さんか」
「へ、え?はぁ!?」
「なんや楽しいな自分」
エニマさんはなおも楽しそうににやにや笑う。
読んだ?心の中を読んだって事!?
つまりあれか、チート能力の一つである読心術的なあれが使えるのか。なんてすばらしい人材。きっと誰でも出来る術じゃないんだろう。練習すれば出来ますよな術だったら世界中大混乱だからね。
「す、すごい……」
俺はうって変わって羨望の眼差しを彼に向けた。いや、だってね?いきなり目の前にいた時はそりゃぁ驚いて若干引いたけど、相手の心読むとか、すごくない?
「騎士様の直属の部下やからな、それくらいのスキル持ってへんと入れてもらえんよ」
なんだかすごい人に守られているんだなぁと実感してしまった。
変な人だと思っていたが、さすが王立の軍隊。簡単に仕組みを聞いたことがあったのだが、何人かいる騎士や魔法使いがそれぞれ小隊を率いるとか。隊員も個々に実力のあるものを選ぶ、国家最強の集団だという。俺の通っている男子校はそう言った戦士たちを多く輩出している、武力の名門であるということも聞いた。しかし学力試験ともに至って普通であるため、一般校と同列扱いになっているそうだ。
と、俺その学校行かないと。7時ならいつもと大差ない時間に起こしてくれたことになるな。親切な人だ。
「あぁ、そうや。朝食作っておいたで」
まだ縛っていない白髪を耳にかけ、細い切れ目を余計に細めて彼は言った。
「……」
食卓に置かれた至って普通のご飯とスープ(米に似た植物がある。味噌汁ではないにしろ汁物を一緒に付けるのが定番なのは同じらしい)を口に含み、俺は閉口した。
なんというか……今まで不便に感じたことのなかったことがとてつもなく愛おしく感じる。
「やっぱり不味かった?」
腕を組み仁王立ちするエニマさんは、ポーズに似合わず困った風に首をかしげる。
「いえ……不味くは無いです。ただ……正直おいしくもないです」
言いにくいが、なんというか、そうなのだ。
食べられない程不味くはない。でもおいしいとも思えない。なんだ?なんの味が足りないんだ?というかこれはなんの味なんだ?ご飯べちゃべちゃだし。
「あの、エニマさん「帳兄って呼んでや」……、つかぬことを聞きますが普段料理は?」
「せんなぁ。部隊寮の食堂で済ましとる」
「……では、明日から俺が作りますんで、せっかく作ってもらって悪いんですが、エニマさ「帳兄」……、帳さんは俺がやっていた家事を引き受けてもらえますか?」
「ええよ。で、さっきから無視しとるけど帳兄って呼ん「嫌です」……酷いなぁ」
何、あなた変態なの?なんだよ『とばりにぃ』って……俺エロゲーとかしたことないけどそっち系の言葉じゃないのそれ。こっちの世界ゲームないのに。一体何なんだ。もちろん絶対呼びたくはない。妥協案って事で帳さんと呼ぶからそれで勘弁しておくれ。
「自分、そないに嫌か。ほな、それでもええよ。ってかそろそろ時間危ないんちゃう?」
残念そうな声音で言われ、はっと時計を振り返る。時刻は7時40分を回っていた。
「え!?そんなちょくちょく心読まないでくれません!?あー!ほんとだ時間が!」
「テレポートでいけば?」
「俺やり方分かんないんですよ!」
「連れてってやるさかい、準備してきぃや」
「へ?」
「ほな、はよう」
背を押され、わたわたを髪を整えて歯を磨き、準備しておいたカバンを肩にかけた。連れてってくれるって、どういうことだろう?
「出来ましたけど」
「ん、ほな、手ぇだして」
言われるがまま片手を彼に差しだした。すると俺の手に重ねる様にして彼が手を置き、何かを唱えた。
瞬間、体が浮遊感に包まれる。轟と下から突風が吹き、あっという間に校舎の裏の塀の影に来ていた。校舎内に魔法で入ることはできないため、一番近くまで来たことになる。
「わ、が、学校だ……ありがとうございます」
目を白黒させながら俺より高い彼を見上げると、口元と眼もとで同じよう名三日月を描いた彼が満足げに頷いた。俺から手を話すと、一言「いってら」と残して消えてしまった。
数分、初めてのテレポートの感覚と慣れない彼との生活に思いを寄せ、背後から聞こえた鐘の音に肩を跳ねさせた。
やっべ、遅刻になる。
小走りで校門へと向かう途中、
「あ、弁当忘れた。ってか、誰が作るんだ」
自分にとって結構大事な問題に気が付いたのだった。
誤字脱字等ありましたらお知らせください。
帳はエニマとかヴァールとか呼ばれるより帳と呼ばれるのが好きです。漢字が好きなんだそうです←
そして変態ですwww