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♯4 新歓ですか。②

新キャラ登場。


相変わらず辰巳君は察しが良くて助かるよ←

 既に一カ月は住んでいるマンションの一室。普段穏やかに夕食を会するその部屋には、妙に重たい空気が漂っていた。


 対峙する俺とイ―ズ。


 なぜこんな状況なのかというと、俺も分からない。帰って来てリビングのドアを開けたら、神妙な顔をしたイ―ズの出迎えを受けたのだ。声をかけても返事をせずに、普段の彼からはあまり考えられない程の冷たい視線で俺を見つめる。はっきり言って背を冷汗が伝うほどに重く、冷たい空気がこの部屋を覆っている。

 俺なんか悪いことしたかな?

 昨日こってり怒られたばっかなんだけど。まだ足りない、とか……?正直それは勘弁してほしい。

 どうしたものかと一寸俯いて彼を窺った。目を合わせると怖い。

 暫くそうして窺っていると、重い空気が飛散した。


「……悪い、考え事だ」


 イ―ズはそういうと夕食時に座る席へと腰を下ろした。呆ける俺に対面の机上を軽くたたくことで促す。俺は荷物を置いて席についた。

 まだ難しい表情のままのイ―ズを不思議に思いつつ見つめる。話してくれる気はあるようなので、気持ち真剣に彼の言葉を待った。


「少しの間護衛の任から外れる事になった」

「……へ?」

「代わりの者はすぐに来るだろうから心配はない。なに、たったの7日だ」


 7日。7日間イ―ズには会えないのか。多分、騎士様の仕事なんだろう。王宮騎士という偉大な人物が俺一人につきっきりになっている時点で異常なんだから、おかしくはない。そう、理屈はわかる。

 でも、やっぱり寂しいと思ってしまう。まだ短い期間だが一緒に過ごした時間は少なくはないのだ。何より、全てを知った理解者であり、家族。

 少し離れると聞いただけで、心に穴があいてしまったような気分になった。俺って結構イ―ズに依存してたんだな。


「そんな顔するなよ、もう会えないってわけじゃないんだから」


 イ―ズは苦笑して手を伸ばし、俺の頭をくしゃくしゃと撫でた。一寸手加減が出来てない乱暴さももう慣れた。むしろ心地いいほどに。大丈夫。七日の辛抱。わがまま言っちゃいけない。お子様じゃないんだから。

 無意識に瞳を閉じて撫でてくる手を感じていた。


「あー……」

「……?」


 俺の頭の上に手を乗せたまま、動きだけを止めたイ―ズが瞳を泳がせる。態とらしく頬を描いて見せ、そちらの手で俺を手招きした。

 イ―ズのいる側に来いということだろうか?

 彼の座る傍らに立つと、俺の行動は彼の意図に沿っていたようで優しく笑った。

 屈んで、と指示され、何か耳打ちでもするのかと僅かに顔を寄せた。と、右腕を掴まれ、引かれた。

 ぼふっと落ちたのは彼の胸の中。両腕でしっかり背をホールドされて、肩に顔を埋められて、黙ってしまった彼の表情は読めなかった。


「……イ―ズ?」

「……」


 彼に抱き締められるのは初めてではないが、しょっちゅうしているわけでもない。まぁ、あたりまえか。俺が暗かったり、元気がなかったりとか、そういうときには温もりをくれる。今もその条件に当て はまらないわけではないが、どちらかと言えば精神不安定なのはイ―ズの方。


 ……そんなに大変な仕事なのだろうか。まさか、生死にかかわるような?


「っ、イ―ズ。どうしたの」

「ありゃ、お邪魔してもうたかなぁ」

「!?」

「……忘れてた」

「ひど!隊長ひどない!?」


 ……誰。


 細い切れ目が印象的な、どこか浮ついた空気を纏うその男はなぜか関西弁。いや、この世界に関西があるわけはないんだけど……たぶん似た様な方言の地方でもあるんだろう。白く滑らかな髪をオールバックにし、持って行った分を後ろで束ね、余った分を肩に垂らしている。肩に着くかどうかというギリギリで浮く髪の毛は、跳ねる事もせずにまっすぐだった。手入れとかしてんのかな。青を基調とした軍服に似た上下を着崩し、中には黒いタートルネックを着ていた。イ―ズがびしっと着ていたのと比べると大分ラフだ。

 ひとまずその闖入者を観察し、今の状況も分析する。イ―ズの知り合いの様だけど……ってか俺たち抱きあったままなんじゃないかな!?


「――!!」


 どっと襲ってきた羞恥に耐えきれず思い切りイ―ズを離した。

 驚いた顔する前にお前も気づけ!!思えば最初にこの人お邪魔しちゃったとか言ってたじゃん!思いっきり勘違いしてんじゃんか!


「別にそのままでもよかったんやけど?わいは気にせんで?」


 白髪の人はへらへらと笑って嘲るように俺を見る。俺は表情からムッとした。

 お前じゃなくって俺が気にする。第一なんか用事なんでしょ。俺イ―ズの仕事とか知らないからさ、聞いていいのかわかんないじゃん。さっきの口ぶりだとイ―ズは俺に内容を話す気は無かったっぽいし。


「ほな、本題入ってええか?」


 白髪はそういうと、さっきまで俺が座っていた席へと勝手に腰を下ろした。

 あれ、俺いていいのかな?いや、いない方がいいよね。


「俺修行部屋行って――」

「いや、いろ。辰巳にも関係のある話だ」

「え……」


 俺にも関係あんの?

 えっと、つまりは……。


あいつら(・・・・)


 ぞわっと肌が泡立った。そんなに熱くもないのに背中が湿ったような気がする。

 イ―ズはそんな俺に一つ頷き、彼の隣の席に俺を座らせた。

 自然と表情が強張る。

 いい知らせだと、いいんだけど。それはきっとあまり望めない。実態がほとんど掴めない組織なのだと聞いている。暫くの間は動きがないだろうことも同時に聞いていたが。まだ俺はこの世界で一カ月ほどしか生活していないぞ?こういう場合それなりの臨戦態勢が整うまで、いい感じに期間が空くのが常じゃないの?……RPGのだけど。


「隊長から此処を離れる旨は聞ぃとるやろ?自分も感じとる様にその中身は『黒蝶』に関するもんや。 まぁ、詳しくは教えられへんけどな。ただ、安心せぇ。一寸動きがあったらしいってなだけで、即座に戦が始まるわけやないから」

「……はい」

「あー、ほら不安にさせただろー。だから言いたくなかったんだ」

「言わんで行ってまう方が心配な時もあるんやから。ほんとその癖直してもらえへんかなぁ。隊長が突っ走るたびハラハラしなあかん身にもなってくださいよ」

「お前らが心配なんかしたことあったか?」

「ひど!隊長ひどいでっせ!わいらちゃんと隊長が一人で危険な任務行っても酒盛りしながら祈ってんのに!」

「酒盛ってんじゃねぇか!!」


 ちょ、無理無理、もう真面目に考えらんない。


「ふっ、くくっ」

「あ……」

「おぉ?」


 俺がいきなり笑い出したもんだから、大人二人は唖然とした表情になっていた。その表情すらもう笑いの燃料にしかならなくて、俺は腹がよじれるんじゃないかってほど笑った。

 ほんと、こんなに笑ったのはいつぶりだろう。始めは二人の会話がコントみたいで笑ってたのに、だんだんなんで笑ってるのかも分からなくなってきて、終いには笑いすぎて涙が出てきて視界が霞んだ。


「ちょ、そんなに笑わんでもええやん」

「お前のせいだぞ」

「いやいや、わいだけやないでしょ!?……ってか、隊長こんなん一人占めしとったんですか」

「あ?」

「なんでもあらへんー、自分、そろそろ止まろか?」

「は、はい……くくっ」


 なんか今までのって言うか、ストレスみたいな溜まっている物が全部出てって気がする。一寸肩も軽くなったような。多分、いろいろありすぎて欝な気持ちも溜まってたんだろう。発狂とかしない時点で何かしら俺の心にも負荷がかかっていてもおかしくない。自覚している分には『黒蝶』のなんたらは名前を聞くだけで大きすぎる負担だし。

 滲んできた涙をぬぐいながらまだ収まらない笑いを洩らしつつ言うと、固まる二人が目に入った。

 あ、笑いすぎて引かれちゃった?ええと。どうしたらいい?


「えっと……すいません」


 気分を悪くさせてしまっただろうか。不安になって肩を縮こまらせた。


「ええよー、明るくなって何よりや」


 キツネみたいなつり目の目元を僅かに下げて白髪の人が言った。ぐしゃりとイ―ズに頭を撫でられる。

 よかった、特に気分を害した様子はないようだ。

 俺は撫でられる心地よさと安心から、一寸照れたように笑った。

 と、イ―ズに手が止まる。

 不思議に思って顔を上げると複雑そうな顔をした彼と目があった。


「……?」

「……はぁ、辰巳。悪いが修行部屋の方行っててくれ」

「え、うん」


 やっぱり何か俺は聞くべきじゃない用事があるんだろうか。仲間外れにされたようで悲しいけど、仕方がないことなので、俺は椅子から立ち上がり、『|空創紙〈くうそうし〉』から成った修行部屋へと足を向けた。

 リビングの壁に貼り付けたそれは防音のため、普通の部屋を遮るのと同じような扉が付いている。重厚そうでその実軽いという魔法ならでわな扉は、壁の色とは不釣り合いな銀色。

 俺がその銀色をくぐり終えようとして、


「あ、隊長の代わりわいやから!よろしくな!」


 白髪さんが陽気に爆弾発言投下。


「へ、えぇ!?」


 振り返った俺の眼前にあったのはガシャンとしまった扉だった。


誤字脱字等ありましたらお知らせください。

若干スランプなためおかしなところが多々あるかもしれません。

ご指摘いただけると幸いです。

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