閑話①
お気に入り登録、評価等ありがとうございます。
ちょっと新しいこと。辰巳君視点だけでは書ききれない部分を補っていこうと思います。欲しいなって思った時に入れるので、これからところどころに入ると思います。
視点は辰巳君以外必要な人。つまり固定はしません。その時その時で違うと思います。
今回はイ―ズです。
ではどうぞ^^
担任だと名乗る嗄れ声の男性から連絡を受け、俺はつけていた剣の指導を切り上げて辰巳の通う学校に『空間移動』した。どうやら襲われて動けない状態らしい。問いただしたところ肉体的なものらしいのでまだよかった。いや、良くはないのだが。
懐かしい校地内を歩いているというのに、俺の中は焦燥が駆けていてそれどころでは無い。肉体的ということは相当怪我をしたのだろう。動けなくなるほどなのだから。やった奴らが見つかったら俺にも教えて欲しいものだ。俺の保護対象に何をしてくれるか。あんなに綺麗で脆いものをどうして傷つけられるのか、その根性をたたき直してやりたい。
それにしても毎日鍛錬もしていて風紀にも受かったという辰巳がそこまでやられるとは。何かあったのだろうか。
どちらにせよ早く顔が見たい。ちゃんと俺の目で怪我の程度を確かめて、ちゃんと処置しないと気が済まない。俺は仕事に抜かりがあるのは許せないし、辰巳を守りたいという気持ちは仕事以前に本物だ。
俺は辰巳がいる柔道部室へと速足で向かった。
その途中。
「……センサス、さん?」
黒い鞄を肩に担ぎ、こちらを注視したまま棒立ちした知人の姿に自分がどれだけ焦っていたか理解した。素性を知る者がいるということを考えていなかった。不用意過ぎた。しかしまさか出くわすとは、もはや運が悪かったとしか言えない。
右の頬に入れられた黒い刺青の上にある鋭い目を見ひらいて、呆けた顔をこちらに向けているのは間違いなくかの雷魔法の名門カーティス家の跡取りであるディル・カーティス。俺の家も俺の代から名門の仲間入りをしたことで、少なからずの交流のある家柄だ。もちろん、顔を直に合わせてこともあるわけで。数少ない『王宮騎士』としての顔が知れている人物だ。彼がこの学校で生徒会長を務めていることは知っていた。しかしまさか出くわすとは、以前に俺がこの学校に足を踏み入れる事態が来るとは思ってもいなかった。
これはどうしたものか。
洗いざらい話すというのは激しく面倒だし、何より陛下からの口止めなので却下。適当に言い訳をするとなるとあらぬ誤解を招く可能性もある。というか、確かこいつは俺を尊敬している。下手な言い訳をすると何かしら付き会わされるかもしれない。今俺は辰巳を迎えに行かなければならないわけで。あぁ、でもまぁ、少しくらい話してもこいつには欠片を合わせる事は出来ないだろう。確かこいつは勉強 以外は本当に馬鹿だった。
「久しぶりだな、急いでるから行っていいか?」
「や、急いでるって……ここ学校ですよ?下の子なんていませんでしたよね?」
「保護対象がいる。詳しいことは言えない」
ディルは余計に目を瞠る。
「その、保護対象って言うのは、誰ですか?」
「……聞いてどうする?」
「騎士様が守らなければならないということはそれほど重要な人物なんでしょう。ならば生徒会としても把握しておきたいところです」
ほう、前合ったときよりは賢くなった。一年足らずで成長するもんだな。やはり生徒会長というポストは人を成長させるのか。
俺は心中で感嘆し、果たして辰巳の名前を出すべきか迷った。多分面識はあるだろう。風紀の適性試験は生徒会の権限を持って行われる。それにあの容貌だ。生徒会の目に留まらないわけがない。
しかし、と考える。
いつ『黒蝶の騎士』が体勢を立て直し、攻めて来るとも限らない。戦力は多いに越したことはない。
陛下はこの学校を選んだ理由の一つとして、戦闘力の高さを上げていた。学力は平均的だが、この学校の魔法戦闘力並びに非魔法戦闘力は他の学校とは段違いの高さを誇る。特にこの雷魔法の名門ご子息や、武道の名門のご子息はまた頭一つ上だと言っていいだろう。もしかすると国の騎士団に並ぶやもしれない。
こいつらに協力を仰げるとなれば、心強い。
「そうか……本人の前でそう言った素振を見せないと約束するなら教えよう。もちろん、他言無用で」
「わかった」
俺はふうと一息吐きだし、真剣な面持ちで見つめてくる彼に目を合わせた。
「瀬川辰巳。知っているだろ?」
「!?」
彼は俺と会った時よりも驚愕の色を顕わにした。
はっきり言ってこれほど驚かれるとは思っていなかったので、こちらも驚いてしまう。やはり知った中のようだが、それ以外に何か関わりでもあったのだろうか。……まさか変な気を持ってはいないだろうな。
「どうした。この時期に転校してきたんだから、納得して然るべきだと思うけど?」
俺はがそう言うと、ディルはいつど瞬きをしてから目を逸らした。そして不機嫌そうに眉根を寄せる。
「いえ、そうですね。確かに変な奴ですね。何やらかしたんですか?」
ぶっきら棒に吐き捨てたそれはどこか悪意を含んでいるように感じて、なんとなくこいつが辰巳に抱いている感情が分かった。どうしてか知らないが、こいつは辰巳が嫌いらしい。まぁ、こいつに好かれて辰巳にいいことがあるとも思えないので口出しはしないが、辰巳が何かをやらかして俺の監視下にいるかのような思い込みは此処で削除しておかないと気が済まない。なんか腹が立つ。
「……詳しいことは言えないが、あいつは何もやっていない。そんなに辰巳は此処で奇行を取っているのか?」
俺がうっすらと怒気を含んだのに気づいたのだろう。
「!……いえ、失言です。忘れてください。では、俺はこれで」
ディルは体を強張らせ、逃げるようにその場から立ち去った。
彼からもしものときに助力を仰げるか、微妙なところだな。嫌いな奴を助けるほどお人好しな性格ではなかった。
「あ、やっべ」
その辰巳が怪我してんだった。
少しの間でも忘れていた俺が間抜けで仕方ない。
俺はあのぼろ部室へと走った。
イ―ズ君はまだ仕事と保護者っていう感情しかないと思ってますねぇwww
次から第四話です。
誤字脱字等ありましたらお知らせください。
また観賞評価など頂けたら幸いです。
ちょっと宣伝しちゃうと、
短編も不定期で出しているので良ければそちらもお願いします。
こちらとは関係ありません。