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♯2 風紀ですか。⑧

 ベージュ色が見えた。

 あぁ、あれはきっと天井だ。俺気を失ったから。

 自分の状況を見失わずにいたことに吃驚しつつ、意識を覚醒させると、視界に影が入った。


「タツミ!起きた……大丈夫か?」

「心配したんだよ―!?」

「タツミ?」


 ナザ、レント、アセラといつもの三人が俺の顔を見下ろして次々に言った。皆さま、近いです。起き上がれません。すっごく嬉しいけど。

 俺はその言葉に返すように笑って見せた。


「ありがと、大丈夫。起きるから」


 俺は彼らがどいてくれた空間に起き上がる。

 まだ心配そうな表情でいるナザにもう一度笑い返して、俺を運んでくれたのは誰か聞いた。ちゃんとお礼言わないとね。あ、もちろん三人にもお礼を言ったよ。


「ヘラインせんせ―だよ~」

「先生か、後でお礼言っとかないとな。どこにいるだろう」

「ここにいるぞ」


 仕切りのカーテンの裏側から声がしたと思ったら、シャーと間の抜けた音がしてラフな格好をしたイケメンさん――ヘライン先生が顔を出した。

 先生もついていてくれたんだろうか?え、でもそうなると誰が授業するのさ?


「授業は終わった。もう放課後だ」


 また俺の心の中を読んだようにナザが言ったので、お礼つもりでまた微笑んでおく。

 なんだかナザ、俺の表情読むのうまいな。最近当てられっぱなしだ。


「授業中断させてしまってすいません。運んでくれてありがとうございました」

「大事に至らなくて良かった。ところでセガワ、質問してもいいかい?」

「はい、なんでしょうか」


 座ったままの俺を不敵な切れ目で見下ろして、彼は言った。

 口元が笑んでいるが、これは嘘っぽいなと思った。営業スマイルに近い、貼り付けたもの。同じ貼り付けたような笑みでも、ダンテさんみたいな滲みでる感情が無い。

 熱血体育教師風の格好とは裏腹に冷めた人なんだな。


「発動させるとき、何をイメージした?」


 あ、イメージする方法で良かったんだ。俺あったまい―。二次元の賜物だけど。


「炎を」

「どのくらいの?」

「……小さな?」


 語尾が疑問形になったのは仕方ないと思う。うん、初めは小さいのイメージしてたよ。そのあとガスコンロをイメージして、次に出したのはただの炎って言う概念だったけど。

 ……ってことは、俺は形を安定させずにイメージしたから暴発したのか。

 つか、今更だけど俺魔法使えるのね。えへへ、やったぜ!


「じゃあなんでああなる。もっと大きいものを想像したか、曖昧なものを想像したんだろう?そう言うのは事故につながると中学で教わらなかったか?」


 知らないですよー。これここの出身じゃないですもん。

 あーもうちゃんと教えてよねイ―ズ!俺怒られちゃったじゃんか!俺の責任じゃないのに!!


「はぁ、次からはもっと気をつけるように。今回は怪我が無かったためこのくらいにしておく。見たところ魔力量も多いようだからちゃんと制御しないと危ないからな?わかったか」

「はい」


 俺が黙っているのを反省を取ったのかヘライン先生はそう言い残すと保健室を出て行った。

 追求されなくってよかった。ぼろが出るようなまねはしないけど、なんて言ったらいいかわからんかった。ってか俺って魔力多いんですか?チート設定はいらないよ?

 あー、もうなんかどうでもいいや。

 俺は安心して、無意識にため息をこぼしていた。


「はー、じゃない。先生の言うとおりだ。前の学校でも魔法の授業くらいしてたろ」


 まだ安心できませんでした。

 ナザめ、目ざといな。

 どう切り抜けようか。

 むっつり顔でこちらを見下ろしてくるナザを交わすのはどう考えても至難の技。

 あ、そうだ。心の中でぽんと手のひらを打った。こりゃいい。いいこと思いついた。


「俺前の学校でもサボってたから、まともに授業受けたことない」

「「……」」

「マジで?タツミん」


 すっと冷えた室内の温度に、俺は不安を覚える。

 え、そんなまずいこと?まー良くないことではあるけど。別に俺行ってたの進学校じゃなかったから、結構いたよ?

 ガラの悪い奴ばっかだったけど。

 でも彼らの目はそう言った異物(・・)を見る目ではない。どちらかというと、羨望や納得。一体この世界でのサボりの扱いってどんだけ高いんだ。それとも不良へのあこがれでもあるのだろうか。


「まぁ……お前頭いいもんな」

「へ?」


 あたま?頭っすか??


「でもさ―?魔法の成績そんなにいーんなら~、さっきみたいなミスしないんじゃないのぉ~?」


 は?成績?

 もしかして、サボりって許可を取ってやるものなの?それじゃぁサボりじゃなくない?そして今まで俺がやっていたのは何になるの??

 ちょっと、絶賛混乱中です。誰か説明して!


「……タツミ?お前、俺らの行ってる意味分かってる?」


 最近俺の表情を読むのがとってもうまいナザに、完ぺきに分かるような表情で訴えた。

 ぜんっぜん分かりません!ヘルプ!!

 やっぱり気づいてくれたナザに全力で首を横に振る。


「タツミって結構非常識だよね。ここ最近思うんだけど」


 俺のその行動に、非常にもアセラはそう漏らし、珍らしいものを見るような眼で俺を見た。

 仕方ないだろ。もう開き直って情報収集する!

 座ったまま見上げて説明を待つ俺に、三人はシンクロしたかの如く同時にため息をついた。

 ……なんか、もうしわけない。


 俺のいた学校は田舎すぎて都会と指導が違うという、実際の田舎のみなさんに怒られそうな(どうなってるか知らないけど)理由を述べると、三人は微妙な顔をして納得してくれた。

 そのあとの説明を要約すると、サボりに許可を取るのかという俺の予想は間違いで、サボりはサボりらしく無断欠席。しかし、普通そんなことをすれば親に電話が行ったり呼び出しを食らったり居残りさせられたりと、それなりの罰があるそうで(進学校とかってそうだったよな)やる奴はほとんどいない。ただ、成績のいい奴はサボってても分かるだろうと何も言われない場合もある、ということだった。

 ナザ達は俺がその成績優秀者だと思ったのだろう。

 残念ながら魔法とつく物の成績はあまり良くなは無いのだが。だってその他の教科って俺もう学習済みだし?ある意味ずるいと思う。

 話を戻すが、そうすると疑問が生じる。

 なぜ今まで魔法実技の授業をさぼりまくって来た俺に、そう言った罰が及ばなかったのか?

 ナザ達に聞いてみても、転校生だからじゃないか?とか、田舎の事情くらい知ってたんでしょ、という平々凡々な答えしか得られなかった。

 ……たぶん、違うと思うんだよね。

 俺の感はほぼ100パーセントで当たるから、多分別の理由がある。

 なんだかは、分からないけど。

 俺はどこかの名探偵よろしく、教室へ戻るまでの間三人の声をBGMに考え込んでいた。


誤字脱字等ありましたらお知らせください。

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