♯2 風紀ですか。④
放置気味ですいません(汗
今回は王道でいきます。
「驚いたでしょ?」
教室棟へと続く渡り廊下をアセラと並んで歩く。視線を向けられずに問われたこれは、いったいどれのことを指しているのだろうか。たくさんありすぎる。
「まぁ」
それでも既に順応して片っ端から受け入れてしまっている俺は、きっと反応が薄い方だと思う。
この世界に来てからも取り乱したことは殆どないはずだし。
そんな俺を見て、アセラはあまり反応のない俺に肩を落としてため息をついた。傍見ても分かるくらい大げさに。
なんか俺が悪いみたいだな。
「もうちょっと驚いてもよくない?」
「いや、驚いてるんだけど。……っていうか、美形さん多いよね、この学校。なんか怖いくらい」
「え?タツミ自分の顔見たことある?」
「そりゃぁ、なんで?」
わずかに首をかしげてアセラを向くと(身長の関係上ななめ下)またまた大きなため息をついていた。
「……幸せ飛んでくぞ?」
「??なんで?」
この世界にこの認識はないようです。
一年生の教室がある三階への階段を登り終えた時、
「キャ―――!」
悲鳴に似た奇声がこだました。
向かって左側の結構近く――つまりおれのクラスのある方。
「ダンテ様だ!!」
「キャぁぁ――!」
念のため言っておく。
ここは男子校だ。
はっきり言わなくっとも、この声は断じて黄色くはない。強いて色で表せば、緑に近い黄土色って云う感じだろうか。……あんまり見たことのない色だ。
ついでに、ダンテ様って聞こえたような気がする。
……風紀委員長とおんなじ名前。俺の予想が当たっていれば、間違いなく本人だと思う。
あぁ、なるほどね。
良くあるパターンだ。(アンソロで)
ランキング上位の先輩が一年生の教室に来たら、こんな風になるわけだ。なんで現実になるかな。
「なんでいんの、風紀委員長でしょ?あれ」
あからさまにいぶかしんだ顔で人込みを一瞥し、さっさと教室に入っていくアセラに倣って、俺もとりあえず教室に入る。
案の定教室はから。まだ早い時間とはいえ既に登校している人は少なくない、らしい(隣でアセラが言った)。それでもあんなにたくさんは一クラスではいないから、他クラスからも野次馬が来ているのだろう。中心にいるだろう人物の顔は全く見えない。ささやかに聞こえる声は、なんて言っているのか聞き取れるほどではない。
大変だな。生徒会って。
うっすらと察しがついている風紀委員長の用事。でもあの中に入って行くのはかなり遠慮したいな。もちろん彼に見つかって呼ばれるのも。
ここは避難するのが得策だ。
そう結論に達し、アセラに声をかけようとした時、
「!タツミ!お前に用だ!」
焦ったような風紀委員長の声がした。
人の波にのまれ、視線にさらされながら連行された先は風紀委員室。
まさかのUターンだよ。
さっきまで此処の隣にいたんですけど?すれ違いだよ。
無駄な労力を使った気がしてたいして疲れてもいないが、ものすごく重たい気分になった。
まだ風紀委員長からは何も言われていないが、たぶん、俺はこの後見たくもないものと対面するのだ。
そうしてその予想はものの見事に的中する。
扉を開けて委員長の後に続いて入った部屋の中には、縛られた生徒が三人。
顔にしっかりとした覚えはないが、一人は確実に知っている。へらへらした笑顔は消えていた。
「おかえん……なさい」
生徒を縛った張本人らしい、天然パーマの青年は気の抜けた声を委員長に掛けた。
黒髪だ。この学校では初めて見た。
陛下の近くにいる黒髪の和風美女くらいしかこっちでは見なかったから。
珍しいんだろうか?イ―ズに聞いてみよう。
「そっちが……タツミ君?」
彼を無視してずかずか入っていく委員長を気にする様子もなく、天パ君は突っ立っていた俺へと視線を向けた。
そして俺がうなづいたのを確認すると、ほんわかと顔を歪めた。
「よろしくね……俺はケイアント・リーマル。ケイでいいから……二年生、同い年だね」
たれ目をつむって笑った彼の顔は完ぺきな癒し系。
俺の中でもやもやしていた重い気持ちがじんわりと溶けて、穏やかな気分になる。効果絶大だ。
なんだろう……言っちゃぁ悪いけど、緩キャラっぽい。俺より二十センチは高いんじゃないかと言う長身だけど、そう思わずにはいられない雰囲気を彼は体から発している。
「タツミ・セガワです。よろしく……ケイ」
再び発せられたマイナスイオンに一人和んでいると、
「おいタツミ。一応こいつらの処置はお前に一存したいんだが、どうだ?」
と、風紀委員長に現実を思い出させられた。
あぁ、もうちょっと現実逃避したかった。
「俺がやっていいんですか?被害者本人にやらせると公平な判断できませんよ」
一応拒否はせず(やっていいならぼこりたいし)曖昧に返す。
だから弁護士とか検察とかいるんだよなぁ、とか思っていると、にやりと笑みを返された。
え?なんですか?
今の笑うところじゃないよね?
悪だくみしてるわけじゃないからね?
「構わない。どうしたいんだ?」
ちらりとケイに目をやると、傍観者の位置を決め込んでソファーに座ってお菓子を食べていた。朝っぱらから一袋開けてるよ。
ゆっくりと視線を縛られた三人に戻す。さっきから一言も聞かないところを見るとちゃんと反省はしているようだ。あ、意識はある。
なら、俺がとる行動は一つだ。
「お」
俺が急に歩みを進めてか風紀委員長から声が上がった。
三人の不安げな目が見上げる中、俺は目線を合わせるようにかがむ。
そして。
「ぶべっ」
「げっ」
「ぶっ」
一発づつ、思いっきりパンチした。
握ったこぶしを気持ちわるいから服で拭って、痛そうに顔を歪めている三人を見ながら立ち上がる。見下ろしても気分のいいものじゃないから、そのまま風紀委員長に向き直った。
「こいつらももうしないでしょう。したらこれを百倍にするだけですから。これでいいですか?」
「そんなもんでいいのか?随分軽いな」
「面倒なんで、これでいいです」
自分でだって思ってるとも。こんなもんで勘弁してやるとか俺心広い!!
でも実際こいつらに使う労力とかほんともったいない。つか本当は顔も見たくない触りたくない。
俺早く教室戻りたいよ。
いや、考えてみればクラスに人たちにたかられるんじゃないか?二日連続とかきついな。
うわ、教室やだ。
でも、この部屋もやだ。
どうしよ。授業サボろうかな……余計変なうわさが出そうだ。
「じゃぁ俺はこれで。失礼しました」
「おう、またな」
「ばぁい」
2人の声を聞きながら、俺は覚悟を決めて教室へ戻るべくドアを開けた。
教室に戻っても、たかられることはなかった。
その代わりか、羨望や好奇の目で見られているような気がしたが、それくらいは我慢することにした。
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